2009年・日本
人を騙す。
常識から飛躍すればするほど人は騙される。
思いっきり日本人であるのに、西洋人設定。
英語が話せないのに、米軍基地勤務設定。
金が無いのに、ある設定。
余裕もないのに、ある設定。
語弊を承知で、結婚詐欺も大変ではないか。
常人では到底、やり仰せない。
すぐにボロが出る。
しかしこのクヒオ大佐、ボロが出ても気にしない。
いろんなことを気にしない。
そんな才能を持つ男。
天然。
ふと、その言葉が浮かぶ。
自然の恵みの凝縮が、この男だ。
軍服を着て、鼻を高くして、英語訛りで話をする。
アホである。
超絶にアホ。
いかんともしがたい。
その面白さ。
堺雅人が出色の出来栄え。
コントぎりぎり。
しかし、そちら側には決して転ばない。
これは難しいと思う。思いませんか?
滑稽と華麗の狭間で、そのギリギリをクソ真面目に演じている男を、演じている。
堺雅人でなければコケていたと思う、この映画。
実は、騙される女もアホである。
そう描かれている。
しかしその抜けっぷりが、可愛くてたまらない。
女が見て、女が可愛らしく見える映画というのは多そうで少ない。
松雪泰子は素晴らしい。
ダメなのである。いろいろとダメな女。そのダメっぷりを凛と演じている。
満島ひかりはよい。
この人はもう、一級品だ。
衣装は違うのに、いつも作業服を着ている印象がある。
敬称として、作業服女優と呼びたい。
特別じゃなくてどこにでもいるような。そしてどこかで今日も泣いているような。
新井浩文が最高。
繰り広げられるボケとツッコミの絶妙さ。
そのリズムは画面の切り替えでも醸し出されていた。
カット割が素敵すぎる。
吉田大八監督、脚本も書いているのだけれども、よい。
この人は女を撮るのがうまい。
『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』とは一見違うように見えて、今回も女がキラッキラしている。
惜しむらくは、終盤のドタバタだ。
唐突さが勝ってしまった。
あの混乱が無ければ、もっと伸びた気がする。惜しい。って、何様ですか。
実際のクヒオ大佐が逮捕されたときの驚愕は、木嶋佳苗容疑者のそれと同等であった。
犯罪は、時として滑稽。
『クヒオ大佐』
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