『ゴールデンスランバー』 2009年・日本
走る。走る。
たいして速くもないし、どこに向かったらいいのかもわからない男が走る。
仙台の街を、町を抜けていく。
慌てているので、転びそうになるのは必然。
そこに差し伸べられる掌の、なんと暖かいことか。
オズワルドに仕立て上げられる。というのは、ある種、ホラーだ。
真っ当に市井に生きる庶民が、犯罪を負わされる。
ジリジリと焼けるような逃亡劇かと思いきや、焦燥はそのままで、奥底は深イイ。満足。
堺雅人はハマり役。普通の人を当たり前に演じて、非凡。
竹内結子は若さ爆発。可憐、そして、毅然。
原作の伊坂幸太郎が当て書きした濱田岳は、さすがのハマりっぷり。フワフワと軽妙、かつ深刻。
近頃、何を観ても、柄本明の一族。もうお腹いっぱいながら、今作は力が抜けていて見やすい。
香川照之も同様で、適温。
吉岡秀隆と劇団ひとりについては、若干、濃すぎた。
殊に若作りに際して、ヘアメイクにはひと工夫ほしいところ。
終盤、当方のとある大好き俳優も登場。興奮。観てよかった。
音楽の斉藤和義は、いわずもがな。
中村義洋監督、現在と過去で極端にリズムが変わる。
ハラハラからヌルヌルになる。
なので途中、つまらないんじゃないか疑惑も浮上したのだけれど、まとめ上げる手腕はさすが。伊坂・中村・濱田トリオはやはり、いい。
捨てる神あれば、拾う神もその道の向こうに。
走れ。走れ。
人情で彩られた逃走中。
ただし、女というものはあんなに優しくないと、ババア（冷酷）は思ったり。
WOWOW
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