$世界映画博-アウトレイジ ビヨンド

『アウトレイジ ビヨンド』 2012年・日本


上映後、モノマネ大会。
大友でクビ動かして、石原でガナって、片岡でニヤケる。
まさかポップコーンずっと食うとは思わなかったぞコノヤロウ!と隣席の兄ちゃんに無言でスゴんだり。

観たのは先週、まだ冷めない。きっと、ずっと冷めねぇぞ。


傑作『アウトレイジ』を如何に超えるのかと構えていたら、フワ~ッと乗り越えてしまった。
前作が、動からの静寂ならば、今作は、静からの躍動。

一見、淡々と始まった思惑は幾重にも敷き詰められ、ワイヤーが張り巡らされ、絡めとる瞬間に向かって息を潜めて地を這い、泥を呑む男たち。

まるで、秀逸なミステリー。
惚れ惚れしていると、爆笑に襲われる。クックッと笑っていると、緊迫。
この緩急が快感すぎて、麻薬状態。


錚々たる顔ぶれの俳優陣が皆、絶賛怪演中。
大人数。なのに、誰一人、霞んでいない。誰一人もである。誰一人もだ!ああ、すみません、興奮しました。
全員に、輝く見せ場。この演出は、凄まじい。

殊に、中野英雄(チョロ)は台本を手にして震えたかと想像する。最高な役!そして、最高な芝居!
松重豊は誠実。塩見三省の顔芸。
小日向文世の矮小さ。
加瀬亮、さらに矮小で卑屈で、悶絶。好きです。

桐谷健太・新井浩文ペアにはヤラれた。桐谷健太の愛嬌は実にいい。
光石研マイレージがとうとう貯まったなう。
カッコいいヒットマンがいると思ったら、高橋克典。無言で働く金太郎。
韓国人役・金田時男(素人)のホンモノ感。

前作に続いて、エキストラの一人一人に至るまで完璧にヤクザ。
ストーリーも映像も、どこにも綻びが無い。

カメラの柳島克己は今回も、鋭利で儚い色味。
衣装の凛々しさ、リアルさ!当方のご近所だったヤクザ集団とまんま同じで、噴き出す再現度。


脚本・監督・編集・主演の北野武。
天才という言葉は軽薄に思えるほどの才能レベル。
この人が凄いのは、努力しているということだ。それを見せないということだ。

こんな脚本が書けて、編集も完璧で、演じたら人間味に圧倒される。
ジュード・ロウやサミュエル・L・ジャクソンが直接、出演を乞いに来るのも至極自然。ジュード・ロウは石原(加瀬)役がいい。


北野映画のバイオレンスに惹かれるのは、ヤクザを描いて、ヤクザをこき下ろしている軸足がブレないからかと思う。

コレを観て、ヤクザに憧れる人はいないだろう。
地べたに這いつくばって、汚物を負わされて、企んで、裏切って、ゴミのように扱って、扱われる。

たまらなくカッコいい。
引くほどにカッコ悪い。
全員が、クソみたいな生き物。


またしても、北野武監督の傑作登場じゃないですか?



映画スクリーン


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