2008年・日本
男が闘っている。
汗水垂らして地べたを這い、真実を届けようともがく。あがく。張り上げる。
御巣鷹という山の意味が変わったあの夏に、苦闘していた男たち、女たち。
日航機墜落。
史上最悪の航空事故。
お盆の空に、ジャンボ旅客機が姿を消した。
空前の大事故を、どう報じるか。
どう伝えるか。
地元新聞にできることは、何なのか。
硝煙上がる現場を記者が駆けずり回る。
山の全景はほとんど映らないのに、焦土と化した山肌が見えるよう。
自衛隊、消防団、マスコミの入り乱れる斜面。
その臨場感。
デスクで力を尽くす編集者たち。
編集部の騒然とした空気。
怒号と計算。
報道が息をしている。
ここもまた現場である。
事故報道、山、嫉妬、意地、メンツ、友人、親子。
手に余りそうな、ともすれば散漫になりそうな素材を集めて、束ねて、練り上げて出来上がっている映画だ。
当時、現場で報道に苦闘していた横山秀夫の原作の上に建てられた、頑丈な骨組み。
ぶつかり合う人間と人間の汗が、こちらにまで飛んでくるよう。
ポスターは堤真一オンリーだけれども、この作品は脇が凄い。凄いですよね?
どうして脇役の面々をポスターに並べなかったのかと思うほど。
堺雅人、尾野真千子、遠藤憲一、田口トモロヲ、マギー、皆川猿時、野波麻帆、西田尚美、螢雪次朗と、錚々たるお気に入りな顔ぶれ。あ、すみません、当方のです。
光石研の名前が無いのが、むしろ不思議である。
中でも、御巣鷹山を駆けた滝藤賢一がよい!
観客としては、山の現場と編集部の温度差に架けられた橋のような存在。
滝藤賢一の表情を見ているだけで、辛くなる。
彼が目にした惨状が、こちらの脳裏にも浮かんでくる。
でんでんは、熟練の旨み。
一朝一夕には生まれてこない、あの説得力。
こういう人がいると職場がまとまるというお手本。
山崎努の俗物さは、たまらない。
じーさんであることを忘れるほど、セクシーである。
原田眞人監督、演出力が際立っていた。
大勢が画面に溢れているのに、誰一人も霞んでいないのだ。
記事を作り上げるために、多くのことが動く。人の心も、企業の都合も、思惑も、政治信条も。
一人一人に背景があり、求めるものがある。
それらを束ねて練り上げて、紙面を作る。
携帯もパソコンも無かったあの頃、足と鉛筆と信念でネタを拾った記者たち。
会社を成り立たせる、営業、販売。
彼らは格闘した。
地方新聞社の、熱い1週間の記録。
これはフィクションである。
けれども、とてつもなく間近で現実的で、冬だというのに少し、汗をかきました。
『クライマーズ・ハイ』
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