2010年・日本
4時間38分である。
おケツも痺れる、この長尺。
受けて立ちたくなる。
観た。
飽きなかった。
あれ?もう終わり?とさえ、思った。
これは見事だ。
9章から成る物語。
それぞれの章、登場人物が、互いに袖を振り合わせていく。
章が変わるごとに視点が変わる。
各章の収束と導入が、鮮やか。
あっという間のポイント切り替え。
手練である。
光市母子殺害事件が下敷き。
現実にモチーフを求めた場合、事件と創作との距離感がとても重要。
繊細さが要求される。
まして、あれほどの事件である。
この人はあの方がモデルだと、すぐにわかるわけなのだ。
けれど、映画への嫌悪感は無い。
これも見事だ。
苦しんでいる人には、人は知らず寄り添ってしまう。
映画であっても、現実であっても。
苦しみの表出が自然な映画には、尚更だ。
とにかく俳優の数は膨大。
しかも皆が皆、芸達者。
寉岡萌希、栗原堅一、2人の若者が光っていた。難しい役であったのに。
えらくカッコいい中年が出ている。と思ったら、村上淳であった!
西島秀俊と並ぶ、日本2大ほうれい線イケメンと名付けたい。もう一人募集したい。
菜葉菜は高い集中力。ぐちゃぐちゃな泣き顔を見せられる女優は、よい女優。
長谷川朝晴、『川の底からこんにちは』とも違った色。この人が映画を引っ張るとは嬉しい。
光石研マイレージも貯まり、古舘寛治のモジャモジャ版も観られて、満足。
特筆は柄本明!
近年、何を観ても同じ印象を求められるせいか、猛烈に失礼ながら、切ない思いを抱いていたわけなのですけれども、今作は抜群!
まさに胸が痛くなる。
にっかつ映画ピンク四天王の中ではサトウトシキ監督ばかり観ていたので、瀬々敬久監督作品は2本目。
この尺を操る豪腕ぶり。
張り詰めた緊張感を、淡い色合いで包み込む映像。
もしやこれは傑作か?と興奮してしまった。
なのに、どうして終盤、ああいうことになったのか。
残念すぎる。
思うに、監督の感情が入りすぎたのかもしれない。
リアルさに感じ入っていたら、突然のファンタジー。
唐突さに立ち往生。
加えて、エンディングテーマの破壊力。
あらすじ・心情を全部歌ってくれるサービスに、ポカンとなる。
えっ?えっ?映画観る必要なかったのかな?と、4時間38分を思うと苦笑い。
3時間半までは、とても面白い。
以降、キツネにつままれる。
あれ?もしかして当方、ヘヴンに行っていましたか?
『ヘヴンズ ストーリー』
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