$世界映画博-凶悪

『凶悪』 2013年・日本 


こんなに胸糞の悪いヤツらがいるのか。
今もなお、生きているのか。

暴力団、闇ブローカーと聞くと心情がシャットダウン。
ニュースを見てもスルーしがち。それではいけないと再認識した。

月刊誌 『新潮45』の宮本太一記者が追った、連続殺人事件を映画化。
実話である。
映画なのでフィクションも多々。
良いバランス、演出であったかと思う。

犯罪シーンの異常性が、極めて高い。
けれど同じ場面に、戸惑う普通人を配置することで、物語が狂気に飲み込まれていない。

これは、観客にとっての判断を安定させてくれる。
実行犯たちの非道ぶりを印象づけてもくれる。


リリー・フランキーが素晴らしい!
助演男優賞を差しあげたい。本物のサイコパス。笑い声に背筋が震える。

ピエール瀧は、けして芝居巧者ではない。その拙さが奏功した。
人心に愚鈍で、犯罪に俊敏な男を演じて印象深い。

山田孝之は主演ながら、出番は少なめ。ただし、集中力はさすが。
池脇千鶴が切なく、老人を演じたWAHAHA本舗のジジ・ぶぅ(57)の熱演が凄まじい。

白石和彌監督は、芝居演出力が優れている。
怒鳴らせずに緊張を高めるのは、よほど怖い。


記者の妻の言葉が胸に刺さる。
宮本記者自身も、あのセリフに言葉を失ったと語っていた。
こういう作品を観て、面白いと感じてしまう我々もまた、愚鈍なのだろう。

現に観終わってから数週間、「ぶっこんでやるよ!」が口癖になりつつある。
やはり、当方は阿呆だと再認識だ。


事件の現場を目にしているような。
凶悪の残り香にむせ返るような。

この現実は、ホラーだ。
こういう犯罪をスルーしてしまう我々もまた、増長に荷担してはいないか。
凶悪の芽を摘みたい。
悪の魅力に負けることなく。
そうして駆け回った記者の姿を、覚えておきたい。



映画 スクリーン

[関連作品]
山田孝之 『悪の教典』『乱暴と待機』



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