$世界映画博-空気人形

2009年・日本 


まるで天使。


空気人形と言えば、18禁。
大人の人形なのだ。
欲望を処理するオモチャなのだ。

その人形が息をして、心を持って、動き出して、外の世界に目を向ける。
夢のような話。
人形が歩き出した先で、出会うものたち。
夢よ続けと、願うような話。


動き出した人形が、可憐すぎる。
白くてツルンとして、大きな瞳で世界を吸い込む。
片言の言葉が、健気に映る。

人を知って、ときめきを知る。
景色が変わる。
ずっと彼女の周りにヒラヒラと、花びらが舞っていたような印象。

その美しさ。


韓国女優ペ・ドゥナが演じた人形は、絶品。
この人は、いつ見ても素晴らしい。
ダメだったことがない。

惜しげもない脱ぎっぷりの良さ。
肌の白さ、そのスタイルの人形的なこと。
完璧ではないか。
しかも、芝居が抜群。笑いのカンもいい。
撫でたくなる魅力。


ARATAを見るたびに、いつも違和感。
『ピンポン』では超絶イケメン印象であったのに、その後のARATAは故意に普通メンになっていないだろうか。でも、この人はよい。

板尾創路が芝居をしていた!さすが、是枝映画。
実にいろんな役者が出ているのだけれども、岩松了のイヤらしさは国宝級。

脚本・監督の是枝裕和の演出は、俳優が光りまくり。
さすが、傑作『誰も知らない』を作った男。
人形・のぞみのセリフも愛らしい。

今作、映像が極めつけであった。
撮影監督リー・ピンビンの切り取る空気には、密度がある。
魔法のホウキで履いたような、透明な清澄な酸素。
それが見えるよう。


と、最高であったのだけれど、途中までは。

おそらく、人形のデキがよすぎた。天使すぎた。
感情移入しすぎてしまった。

この転結は、若い頃であれば印象が違ったかもしれない。ご覧になった方、どうでしたか?
当方は、ううむ、うむう、むうう。と、自分の頭を撫でてしまった。

寂しさの上に建てられた街であるかのような描写。
それぞれの孤独は個別であるべきなのに、類型的に見えてしまったのも、もったいない。


形にするなら、
恋は△。愛は○。
△は方々にぶつかって、傷を作る。

その傷を開いたら、やはり心は洩れてしまうのですね。



『空気人形』

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