確かに、鮎釣りは人に見られる | 鮎釣り師のひとり言

鮎釣り師のひとり言

鮎釣り師ガバチャの綴る悲喜こもごもな日常。
聞いてやってください。

  
 昨日、高知の釣り友に電話をした。相変わらず安田川は釣れているらしい。
釣り友は21センチから23センチを30数匹釣ったそうだ。

 この電話の最中、ひとつプッと吹き出した話があった。
 釣り友によると「おらの釣りを道の上からオヤジさんが見よったぜ」とのことだ。オヤジさんとはボクの父に違いない。
 目に浮かぶ。鮎を大好物とするオヤジが、ネコが魚でも見るような目つきでジッと釣り上げる鮎を見ている姿が。

 それから電話を切って二度笑いしてしまった。この前安田川に帰郷した際、夕食で鮎を食べながら話したことを思い出して。

 オヤジはボクが釣った鮎の塩焼きに、ネコがしゃぶりつくようにしがみついていた。

「おまん、そればあ鮎(あい)が好きやったら自分でちっと釣ったらどうぞね」
 と笑いながら母が言う。

 するとオヤジは口を手でぬぐいながら、
「おらぁ、鮎(あい)釣りは磯釣りと違うて人に見られるきに嫌じゃ。この前も釣った鮎(あい)を引き抜いたら、体の周りを三回ばあブンブン回っちょいて、あげくに背中に鮎(あい)と一緒に針が刺さって悲鳴を上げたがよ。ほんで慌てて外そう思うて竿を置いてベストを脱ぎよったら、橋の上から3人ばあに見られよっておもいっきり笑われたが。おらぁ鮎(あい)釣りはすかん」

 言い捨てると、オヤジはまたせわしく鮎にしゃぶりついた。
 その様に、ボクと母はイスから転げ落ちるほど笑いしゃくった。

 確かに、鮎釣りは人に見られる。
 橋の上からなら、鮎が水中で掛かった瞬間まで目撃できるので見ているだけでも楽しい。
 また、離れていても、その人の竿さばきや掛かり鮎の引き抜き方を見ているだけでも楽しい。

 オヤジによると「この前も、ここやったら人に見られまいという場所でこっそり釣りよったら、岩のてっぺんからジッと人が立って見よったしな」と、ややトラウマチックな感じもする。 
 ボクは磯釣りをやらないのでわからないが、オヤジに言わせると地続きの磯でも鮎釣りのように他人からじっと「見られる」ことは無い、とのことだ。

 まぁこれはオヤジの偏見なのかもしれない。
 が、他者の鮎釣りを見学するというのが楽しいのは確かにその通りだと思う。 ボクが帰郷して安田川で鮎釣りをすると、必ずオヤジはどこからかボクの釣りを見ている。

 それは、ボクの鮎の釣り方を勉強しようとながめているのか、それとも今さっき釣り上げた大きな鮎を今晩塩焼きにして食べられると思って猫の気持ちでながめているのかはわからない。
 わからないが、自分的にはいつまでもオヤジから見られる側でいたいものだと思うのである。





 人に見られているときは釣れない、というジンクスを皆さんもお持ちではないでしょうか。だから入れ掛かりが止まって釣れなくなったら、後ろを振り返ってください。必ず誰かに見られているはずです・・・って・・ん?
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 ワーオッ! 振り返ったら、
 た、タケちゃん、おどかすなって! いったいどっからのぞいとんねん。
 ズッコケそうになるほど驚いたがな、ほんまに。
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 ボクのオヤジと同様、タケちゃんも鮎が大好物なので「パブロフの犬」のように竿が曲がるとヨダレがダァーっと出る条件反射の持ち主です。
 ちなみに、ボクは前アタリがあっただけでヨダレがダァーっと出ます。
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