銀二貫 ~序章②~ | 北浜・西天満で働く弁護士のブログ

銀二貫 ~序章②~

1月29日、愛車のリコール修理に2~3時間かかると言われ…。(「ご愛用車のリコールのご案内!? 」)

しかし、これは望外の時間を得た。あの小説を読む時間に充てられる。


愛車が帰って来た頃に無事読了。



大阪・北浜で働く弁護士のブログ
高田郁(かおる)著/銀二貫/株式会社幻冬舎/2010年8月発行
(1月21日ブログ「銀二貫 ~序章~ 」)


「小説らしい小説を読んだことがない」私ですが、


・主人公・松吉は、(仇討ちで)父親を亡くしていること。(⇔私も3歳で父を亡くしていること)

・松吉は美濃の出身であること。(⇔私は岐阜県大垣市出身であること。(美濃地方に含まれる。))

・小説の舞台が私の生活圏に近いこと。


以上の接点もあって、感情移入してしまった面もあることは否めませんが


客観的にみても面白く、かつ、秀逸な作品でした。具体的に言うと、


…失礼ながら女性コミックの世界で、これほどジャーナリスティックなメッセージをエンタテインメントとして成立させる原作者がいるとは、正直驚きだった。後で知ったことだが、震災で彼女の自宅は半壊している。

(同書末尾・解説344頁/水野晶子(毎日放送アナウンサー))


と評されるとおりです。


1月21日ブログ「銀二貫 ~序章~ 」で紹介した「あらすじ」のとおり、この物語では大阪の町を襲う「大火」が何度も登場するのですが。


「ほんまに、あったん?」と疑ってしまい、少し調べさせていただいたところ、

(論文じゃないのだから、小説の隠微な世界に素直に浸っていればいいのですが。何事も裏付けを求めるあたり、弁護士の悪い癖かと反省しています…。)


「これは実話ではないか」と錯覚してしまうほど、史実に限りなく忠実な物語であることが分かったからです。


平成21年大阪市消防年報 、大阪市ホームページ

(大阪市TOP>統計>消防統計>平成21年の災害概況・消防年報>平成21年大阪市消防年報)

付録編-2(大阪の火災記録(昭和22年以前) (pdf, 747.14KB)に、

大阪市における昭和22年以前の火災記録が掲載されています。



1746 

船場大火:西横堀順慶町より出火、東は横堀川、北は久宝寺浜まで



1777.12.19

天満火 :堂島蜆橋北東詰、小茶屋の二階より出火…淀川岸まで焼抜け



1783.12.23

内平野町出火:内平野町二丁目米屋平右衛門家尻より出火…凡1500戸焼失



1791.10.10

伏見屋四郎兵衛町出火:南堀江伏見屋四郎兵衛町…町数87町、家数2010軒、13380軒余



1792.5.16

七郎右衛門出火:西横堀…町数89町、家数2310軒、かまど数11184軒




私が読む限り、この本では、少なくとも、これら実際に起きた火事が登場すると思われます。


この一連の火事すべてが、物語の核心となっているのです。


ところで、大阪市の記録をみて、この時代に起きた火災は、これだけに止まらないことを知りました。

この時代では、


今、私達が住んでいる大阪の至るところで、毎年のように、阪神・淡路大震災のような悲惨な災害が起きていたのです。



大阪の先人は、この連続する絶望に対し、どのようにして乗り越えていったのか?


この本は、ジャーナリズムに満ち溢れた、究極のエンタテイメントだと思います。


私のジャーナリズム精神も掻き立てられたので。

まだ読まれていない方の邪魔にならない程度に、ちょっと読みたくなるような形で。

もう少し、この本を紹介できたらと思います。




大阪・北浜で働く弁護士のブログ  大阪・北浜で働く弁護士のブログ

大阪天満宮(1月3日ブログ「天満の天神さん 」)






【関連ブログ】

1月21日ブログ「銀二貫 ~序章~

2月3日ブログ「銀二貫 ~第1章「仇討ち買い」~

2月4日ブログ「銀二貫 ~第2章「商人の矜持」①~

2月6日ブログ「銀二貫 ~第2章「商人の矜持」②~

2月7日ブログ「銀二貫 ~第3章「真帆」~

2月10日ブログ「銀二貫 ~第4章「同月同日の大火」~

2月13日ブログ「銀二貫 ~第5章「再会」~

2月17日ブログ「銀二貫 ~ 第6章-第10章 ①~

2月17日ブログ「銀二貫 ~ 第6章-第10章 ②~

2月20日ブログ「銀二貫 ~最終章「銀二貫」~