銀二貫 ~第2章「商人の矜持」①~ | 北浜・西天満で働く弁護士のブログ

銀二貫 ~第2章「商人の矜持」①~

1月21日ブログ「銀二貫 ~序章~

2月1日ブログ「銀二貫 ~序章②~

2月3日ブログ「銀二貫 ~第1章「仇討ち買い」~


【あらすじ】

大阪天満の寒天屋問屋の主・和助は、仇討ちで父を亡くした鶴乃輔を銀二貫で救う。大火で焼失した天満宮再建のための大金だった。引きとられ松吉と改めた少年は、商人の厳しい躾と生活に耐えていく。(以下、省略)

(「高田郁(かおる)著/銀二貫/株式会社幻冬舎発行/2010年8月発行」裏表紙より。)


青色部分が第2章のあらすじ。

第2章は「商人の矜持(きょうじ/きんじ)」


本章は、起承転結の「承」の部分。しかし、大阪で法律事務所を経営する弁護士、私にとっては、最も考えさせられた章。


大阪の弁護士の全て、そして大阪人の多くが、この章を読んだら、あの事件を連想されると思います。



船場吉兆の偽装事件

「賞味期限切れ」に「産地偽装」、「無許可製造販売」と、2007~2008年に続出した一連の食品偽装問題に端を発し、最後には廃業に追い込まれた、「船場吉兆」の事件です。



 文化功労者の故湯木定一氏が創業した「吉兆」を子どもたちにのれん分けした吉兆グループの1つである「船場吉兆」。高級料亭としてのブランド力で、夕方ともなれば運転手付きの高級車がずらりと並ぶ光景が当たり前のように繰り返されていた。ところが裏では、売れ残った賞味期限切れ洋菓子類の表示ラベルの貼り直しをやり、牛肉やブロイラーを「但馬牛」「地鶏」などとグレードアップして偽造表示し、酒税法違反の梅酒を製造販売した。

 さらに客が食べ残した料理は、揚げ直したり、焼き直し、洗い直し、盛り直して別の客に出していたことも明らかになった。(省略)

 しかも一連の偽装をすべて「パート女性」や「仕入先」の責任にして逃れようとした。

(「週刊 大阪日日新聞 2011vol.248」3面より)




話は銀二貫へ。


和助が、松吉が、善次郎が、梅吉が偽装をしたわけではありませんが。


和助の松吉に対して掛けた一言は、深く考えさせるものでした。



「なあ、松吉」

和助が、松吉の方へにじみ寄り、その顔を覗き込んだ。

「商人が何よりも大事にせなあかんのは、他人さんの自分に対する信用とは違う。暖簾に対する信用なんや。奉公人が己の信用を守るために実を通して暖簾に傷がつくのんと、己の信用は無うなっても、暖簾に対する信用が揺るがんのと、どっちが商人として真っ当か、よう考えてみ」

(「高田郁(かおる)著/銀二貫/株式会社幻冬舎発行/2010年8月発行」61頁より。)




暖簾/のれん

この言葉が大阪人ではない私にとって、容易には理解できず。


企業・組織(家族にも当てはまるかも。)において、

暖簾/のれん」って、一体何なのか?

暖簾/のれん」は、従業員の信用を上回るもの?

従業員の尊厳・価値観を犠牲にしてでも、「暖簾/のれん」を守らなければいけない場合があるのか?


私は、大阪生まれでない以上、大阪人には決してなり得ない。


しかし、私は大阪の地で法律事務所を経営する以上、

大阪商人にならなければならない。大阪商人の矜持を持たなければならない。

それは可能なことである。


本当の大阪商人のいう「暖簾/のれん」について、興味が湧いてきました。




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