ぼくのエリ 200歳の少女
2008年/スウェーデン/115分
監督:トーマス・アルフレッドソン
出演:カーレ・ヘーデブラント、リーナ・レアンデション、ペール・ラグナー、他
おすすめ度(5点中) → 4.1点
<あらすじ>
12歳の少年オスカーは、ストックホルム郊外の集合住宅で母親と2人暮らし。
学校では同級生のイジメに合っているが、
ただただ復讐を夢想して耐え忍ぶ毎日を過ごしていた。
ある晩、彼はひとりの少女と出会う。
彼女の名前はエリ。
オスカーの家の隣に引っ越してきたばかりの少女だ。
最初は距離をおいていたが
同い年ということもあり、次第に言葉を交わすようになる2人。
大人びていて、どこか謎めいたエリに
オスカーはどんどん心惹かれていくのだった。
その頃、町では恐ろしい殺人事件が連続して起こっていた。
オスカーはそんななかで、
エリが少女のまま何年も生き続けているヴァンパイアだという
衝撃の事実を知るのだった……。
<感想>
静謐な描写が美しい映画です。
カメラワークが面白く、
徹底してひきの画で撮っているかと思えば
目元、口元だけのアップなんかも効果的に使っていて
この作品の持つ緊張感がとてもよく伝わってきます。
この映画は何て言えばいいんでしょう。
初恋チックなメロドラマ性が前面にくるのかと思っていたら
そうじゃないんですね。
生き残るための残酷なまでにドライな処世術が描かれています。
エリは生き残るために人を殺します。
そんな彼女の生き方は、いじめられっ子のオスカーの道しるべになりますね。
生きるために必要なこと、他者を理解すること、本当に大切な人を守るためには…。
エリは生きてきた年月もあるのでしょう。さすがに達観しています。
※ここからネタバレあります!
でもこのドラマは残酷ですよ。本当に。
オスカーが最後に選んだ道っていうのは、
エリのパパさんだった人と同じ道でもあるわけですよね。
つまり、最後はエリのために自分の命を捧げることも必要になってくる。
オスカーは映画の最後でエリに命を助けてもらっているから、
エリのために命を尽くすのは必定であると考えることもできますね。
しかしオスカーはエリに逢わなければ、
勇気を奮い起こすこともなく、いじめられ続けていて、
いじめっこのコリン(←名前あんま覚えてない)に反発することもなければ
コリンのお兄ちゃんにプールで殺されかけることもなかったでしょう。
いやいや、しかし、しかしだよ。
そのいじめられっぱなしの状態そのものが“死”と考えるならば
オスカーはエリに逢った時点で命をもらっていることにもなる。
それほどまでに、この映画は
人間ひいてはヴァンパイアをふくめた“いきもの”の
“尊厳”を扱っている映画だと言えます。
うーん……。
そして、エリのパパさんを、オスカーの将来像として捉えると
前半がとてもドラマティックです。
パパさんはエリとオスカーの交流をどう思っていたのでしょう。
嫉妬もあるでしょうが、人生の終焉を感じていたのは確実ですよね。
生きていくのって残酷だな~。
う~ん……。
そして、あととても気になるのが、
エリが何回も言っていた「わたしは女の子じゃない」というセリフ。
それは女の子じゃなくて、ヴァンパイアだよ という意味なのか
それとも、そもそも女じゃないと言っているのか。
そう考えちゃうと、これはとても“含み”がある言葉に思えてくるんですよね~。
肝心なところで痛恨のボカシが入っていて、真実は分かりません。
長いこと書いちゃいましたが、おすすめ映画です。
僕はとても好きですよ。
孤独なオスカー