パンクフロイドのブログ

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午後8時の訪問者 公式サイト

 

 

チラシより

診療時間をとっくに過ぎた午後8時に鳴ったドアベルに若き女医ジェニーは応じなかった。その翌日、診療所近くで身元不明の少女の遺体が見つかる。それは診療所のモニターに収められた少女だった。少女は誰なのか?何故死んだのか?ドアベルを押して何を伝えようとしていたのか?あふれかえる疑問の中、亡くなる直前の少女の足取りを探るうちにジェニーは危険に巻き込まれていく。彼女の名を知ろうと必死で少女のかけらを集めるジェニーが見つけ出す意外な死の真相とは――。

 

製作:ベルギー フランス

監督・脚本:ジャン=ピエール・ダルデンヌ リュック・ダルデンヌ

撮影:アラン・マルクーン

美術:イゴール・ガブリエル

出演:アデル・エネル オリヴィエ・ボノー ジェレミー・レニエ ルカ・ミネラ

    オリヴィエ・グルメ ファブリツィオ・ロンジォーネ

2017年4月8日公開

 

ジャンル的にはミステリーの範疇に属するのでしょうが、医者として、人間として、一人の女性の真摯な姿勢に胸打たれる内容となっています。小さな診療所で代診を行なっているジェニー(アデル・エネル)は、診療時間を過ぎて鳴ったドアベルに応じなかったため、翌日ベルを押した少女が遺体となって発見されたことにショックを受け、激しい後悔に苛まれます。

 

彼女が応じなかった理由は、研修医のジュリアン(オリヴィエ・ボノー)が診療中にとった態度に苛立ちを覚え、ドアベルに応じようとした彼に自分が上であることを誇示したかったためと、ジェニーが医療センターに迎えられるパーティーに遅れたくなかったこともあります。ジェニーに過失はないものの、少女の死は自分の責任と思い詰め、せめて少女の身許を突きとめ、墓を建てて遺族が現れるのを待とうとします。折しも、ジュリアンが医者の道を断念しようとしているのを知ると、これも自分のせいだと思い、彼の田舎まで出向いて説得にあたります。

 

とにかくジェニーは、傍から見て痛々しく思えるほど責任感の強い女性で、せっかく念願叶って医療センターの一員として勤められることができたにも関わらず、少女の身許が明らかになるまで診療所に留まって、彼女の手がかりを探そうとするのです。そして、ジェニーの捜査や医療現場を通して、不法就労の移民を含めたヨーロッパ社会の問題も自然に浮かび上がってきます。常に現場主義で、相手の心に寄り添い、問題を解決しようとするジェニーが愛おしくなってくる映画でした。

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シネマヴェーラ渋谷

抗争と流血 東映実録路線の時代 より

 

脱獄三部作に加え、「県警対組織暴力」「北陸代理戦争」

「実録外伝 大阪電撃作戦」「沖縄やくざ戦争」など

松方弘樹の出演作が揃えられているので

てっきり松方さんの追悼特集かと勘違いしていました(笑)。

 

暴力金脈

 

製作:東映

監督:中島貞夫

脚本:野上龍雄 笠原和夫

撮影:増田敏雄

美術:富田治郎

音楽:津島利章

出演:松方弘樹 梅宮辰夫 池玲子 丹波哲郎 若山富三郎 田中邦衛

        伊吹吾郎 室田日出男 川谷拓三 小沢栄太郎

1975年8月9日公開

 

中江宏(松方弘樹)は早朝5時に企業に出かけていき、総務部で整理券を貰い、始業時間の9時から順番に手当を頂く下っ端の総会屋です。ある日中江は、かつての大物総会屋・乃木万太郎(小沢栄太郎)と知り合い、その道の手ほどきを受けます。また、猫獲りの副業をしていたことが縁で、寺岡組の若い衆で、宏とは同郷の奥田寛次(梅宮辰夫)とも親しくなります。

 

乃木や奥田と知遇を得た中江は、関西の大物総会屋・神野(田中邦衛)と浪花相互銀行の株主総会の場で対決します。乃木はその時に受けた傷が元で入院し、全財産である株券を中江に託して死んでいきます。中江はライバルの神野と秘かに手を組み、奥田の手助けもあり、浪花相互銀行から頭取の不正融資をネタに3000万円を脅し取ることに成功します。

 

やがて中江は東京に進出すると、綜合商社・東商物産副社長の長尾(大滝秀治)から、東亜制作所の買収に一役買う話を持ちかけられます。東亜制作所の社内には、ワンマン社長・曽宮(若山富三郎)のやり方に反撥するグループがあり、中江は曽宮の不正の証拠を掴んだ上で、株主総会で弾劾するよう依頼されます。しかし、東亜制作所についている総会屋には、業界に名の知れた西島一光(丹波哲郎)がいました。

 

彼は暴力団・綿志会を背景に敢然たる勢力を持っています。中江は西島が主宰するパーティーに出席していたクラブのママ・上原アヤ(池玲子)に目をつけ、曽宮と愛人関係にあることを確認します。更にアヤの部屋に盗聴器を仕掛け、曽宮が異常な性癖を持っていることも知ります。一方、西島は中江が曽宮の身辺を嗅ぎまわっていることを知ると、綿志会を使って脅しにかかろうとします。

 

中江への脅しに対し、東京進出を目論む寺岡組は奥田を送り込み、中江の後押しをします。しかし、中江は総会屋の問題にやくざが絡むことを良しとせず、奥田にお引き取りを願いますが、奥田も一歩も引かぬ姿勢を見せます。やがて、中江はアヤと懇ろの関係になりますが、彼女は思わぬ事実を中江に告白します。

 

松方弘樹と総会屋の組合せでは、先日観た「広島仁義 人質奪回作戦」がありますが、あくまでやくざ世界の枠組の中で描かれています。これに対して本作は、総会屋の世界に特化しています。一介のチンピラ総会屋が、師と仰ぐ昔の大物総会屋の教えを乞い、同郷のやくざと手を組むことによってのし上がっていく物語で、最大の敵となる東京の大物総会屋との対決が見ものです。

 

東亜制作所の株主総会において事を荒立てぬように、二部上場の取引先40社を手土産に懐柔しようとする西島に対し、好条件を蹴って真っ向勝負しようとする中江の心意気に胸のすく思いがします。その一方で、辰ちゃんが“ニャンバーグ”の正体を知って吐き出すギャグや、若山先生とセーラー服姿の池玲子との禁断の父娘プレイで大いに笑わせてくれます。尤も、曽宮とアヤの本当の関係が明らかになると、シャレでは済まなくなるのですが・・・。

 

中江も奥田も集団就職で田舎から大阪に出てきたものの、仕事が上手くいかず道を外した共通点があり、仲間意識を持ちつつも、最終的に決裂していきます。中江はアヤの死後、株主総会で人として曽宮の情に訴えようとしますが、彼の願いは届かず、非情な組織の厚い壁を思い知らされます。

 

 

日本暴力列島 京阪神殺しの軍団

 

製作:東映

監督:山下耕作

脚本:松本功 野波静雄

撮影:山岸長樹

美術:富田治郎

音楽:八木正生

出演:小林旭 梅宮辰夫 伊吹吾郎 成田三樹夫 小泉洋子 中島ゆたか

         遠藤太津朗 鈴木康弘 金子信雄 安部徹 小松方正 室田日出男

1975年5月24日公開

 

昭和27年、大阪・阿部野の暴力団庄司組の客分だった花木勇(小林旭)は、数人の子分を従えて暴れまわっており、小競り合いをきっかけに、花木と同じ韓国人の金光幸司(梅宮辰夫)と知り合い兄弟分となります。当時、大阪は天誠会と日新連合会が張り合っていました。日新連合会系の仁田組と花木たちが事件をひき起こした事で、日新連合会々長の国友(金子信雄)は、庄司組を加盟させ、花木にけじめを取らせようとします。この決定に不満を持つ花木は庄司組と袂を分かち、庄司組を襲撃して組長(室田日出男)を殺します。自首した花木は5年の求刑を受け、その間金光が花木の留守を預かる事になりました。

 

3年後に花木は出所し、天誠会の大槻組々長(遠藤太津朗)の出迎えを受けます。その頃、仁田組をバックに新興の桜会が、花木組の縄張りに出没しており、大槻は花木を支援します。ある日、花木は石沢ケイコ(小泉洋子)と知り合います。ケイコは花木の忘れた傘を届けるため、彼のアパートを訪ねますが、花木を待ち伏せしていた桜会のチンピラたちに犯されてしまいます。そのことがきっかけとなり二人は結ばれます。花木は桜会を壊滅させた後、昭和31年に天誠会々長の盃を受け直系の若衆となります。

 

天誠会は花木組を先兵隊として全国各地に送り込み、昭和32年には天誠会の松原(成田三樹夫)をお目付け役にして、山陰・城崎に乗り込み三田一家の縄張りを荒しまわります。ところが抗争中に、花木のもとを訪れたケイコが巻き込まれ殺されます。城崎を制圧した花木は、昭和35年に岐阜・柳ヶ瀬に花木商事の看板を掲げ、地元の風間会に宣戦布告します。

 

風間会は、日新連合会に助けを乞い、天誠会と日新連合会の全面戦争に発展する気配を見せます。岐阜県警も目を光らせており、急遽、大槻、風間(安部徹)、国友の三者会談がもたれ、大垣を花木組に譲る事により天誠会は手を引く事で話がまとまります。花木は大槻から柳ヶ瀬を取ったら縄張りをまかせると約束されていただけに、不満に思いますがじっと堪えます。しかし、金光は納得が行かず、大槻に対して弓を引こうとしたため、大槻の派遣した殺し屋によって殺されてしまいます。

 

やくざ映画の中に日本社会と在日朝鮮人との問題を色濃く漂わせる一作です。花木と金光は当初対立関係にありましたが、花木が金光を輸血した際に、「おんどれの血が貰えるか!豚の血の方がましじゃ」と吠える金光に対し、「安心せぇ、ワレとオレとは同じ血や」と答えることで、自らの出自を明かしたため、同胞意識が芽生え二人の関係は一気に改善されます。

 

その一方で、花木の片腕となって働いていた日本人の西田(伊吹吾郎)は、在日の社会に受け入れられない疎外感を覚え、組で禁止されていたヤクに手を出します。最終的に彼は、自首する必要がないにも関わらず、自首することによって花木との訣別を決意します。その際に、苦渋に満ちた表情で了承する小林旭が印象的です。花木組は天誠会の斬り込み隊となって、自ら血を流し全国制覇への足掛かりを進めていきます。この花木と天誠会との関係も日本社会と在日との縮図を見るようで、日本人のやりたがらない仕事を引き受けることで、のし上がるしかない在日の哀しみの一端を象徴しているとも思えます。

 

実録路線の映画は殺伐としており、この映画も例外ではありません。それでも、山下耕作監督は美意識の溢れる場面を用意します。金光の女房(中島ゆたか)が洗濯物を干しているベランダから、金光が刺客に襲われる描写を俯瞰で捉えた後、白い布がはためく中で殺されていくシーンは、なぜかアンジェイ・ワイダの「灰とダイヤモンド」を連想してしまいます。白い布に在日の血が沁み込まれる描写は、山下耕作監督なりのメッセージと受け取ることができますが、その意味するものは各人各様でしょう。

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神保町シアター

女優は踊る 素敵な「ダンス」のある映画 より

 

 

製作:新東宝

監督:内田吐夢

脚本:灘千造

撮影:西垣六郎

美術:伊藤寿一

音楽:芥川也寸志

出演:小杉勇 野添ひとみ 津島恵子 宇津井健 多々良純 東野英治郎 加東大介 丹波哲郎

1955年6月19日公開

 

たそがれ酒場には労働者、学生、チンピラなど様々な階層が集まってきます。開店前から居座る梅田茂一郎(小杉勇)も常連客の一人で、彼は戦記物で名を成した画伯ですが、今はパチプロで生計を立てています。専属ピアニストの江藤釿也(小野比呂志)は、昔歌劇界の花形でしたが、愛弟子と妻に駆け落ちされた挙句、妻への刃傷沙汰を起し表舞台から消えていました。彼の伴奏で歌う健一(宮原卓也)は、才能がありながらも陽の目を見ずにいます。

 

小判鮫の異名を持つ汲島鉄夫(多々良純)は、酒場の客に取り入り、只酒をせしめているため、酒場の女性店員から蔑まされています。また、酒場で働く野口ユキ(野添ひとみ)は、地廻りの愚連隊・森本(丹波哲郎)から言い寄られています。森本は手下を引き連れ、今夜彼女の恋人の鱒見(宇津井健)と話をつけようとしていました。やがて鱒見が現れ、森本の手の甲をナイフで刺し、ユキから手を引くよう約束させた上で姿をくらまします。

 

鱒見は店を立ち去る際に、梅田に大阪へ高飛びすることを伝え、ユキへの伝言を託します。一方ユキは、妹から母親が倒れたことを知らされ、マネージャーの谷口(有馬是馬)に前借を頼み込みますが、谷口は規則違反だと言って渋ります。梅田は閉店までに自分が金を返すことを約束し、ユキの前借を認めさせます。

 

その頃、新日本歌劇団の中小路竜介(高田稔)が来店し、健一の唄に聴き惚れます。彼は健一に歌劇団への加入を勧めますが、江藤は何故か反対します。健一は将来の道と恩師の板挟みに苦悩します。やがて、酒場随一の出し物エミー・ローザ(津島恵子)の踊りが始まります。ところが客席にいた男が、突然彼女に斬りかかるのです。

 

ある大衆酒場を舞台に、開店から閉店までの間に起きる人生模様を、哀歓を込めて描いたグランドホテル形式の群像劇です。常連客の老画家の数々の粋な振る舞いが、観る者を温かい気持ちにさせます。母親の入院費を工面せねばならないユキに金を用立ててあげ(マネージャーに金を返す方法がまた心憎い)、有名歌劇団の中小路が来店した際には、健一の歌に注目させるために、普段酒場に馴染みのないクラシック曲をリクエストします。終盤には健一を有名歌劇団に入団させるため、江藤の説得にあたり、小杉勇による万感胸に迫る芝居で涙を誘います。

 

酒場に集う客も個性豊かで、ユキに横恋慕するチンピラが意外にヘタレだったり、戦時中は鬼と謳われた元隊長(東野英治郎)が戦後は望まぬ職に就き不遇を囲っていたり、人生いろいろ。中でも多々良純は全編に亘り、隙あらば酒のおこぼれを頂戴しようと涙ぐましい努力をする姿が笑いを誘います。そして、喧騒と明るさのある酒場に、時折戦時中の暗い過去が、物語に翳を落としており、老画家がかつて従軍記者だった新聞記者(江川宇禮雄)に、従軍画家となったことへの忸怩たる思いを語る場面などは、内田吐夢自身の姿とも重ね合わせてしまいます。

 

94分の上映時間の中に、多数のエピソードを詰め込み、手際よく整理されているため、2時間半の濃密なドラマを観たような錯覚さえ起こします。臨場感のある酒場の雰囲気は最高で、実際にこのような酒場があったかどうかは抜きにして、専属歌手の歌が聴け、客が飛び入り参加で歌え、ストリップショーまがい(裸はなしよ)の踊りも見られる酒場ならば、私も飲みに行きたいですね。犬好きな方には人懐こくて可愛いワンちゃんにも注目ですぞ。

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サラエヴォの銃声 公式サイト

 

 

チラシより

“ホテル・ヨーロッパ”は、第一次世界大戦のきっかけとなったサラエヴォ事件から100年の記念式典を行うための準備に追われていた。ホテルに集うさまざまな人たち――仕事熱心な美しい受付主任、屋上で戦争と結果についてインタビューするジャーナリスト、100年前の暗殺者と同じ名を持つ謎の男、演説の練習をするVIP、ストライキを企てる従業員たちとそれを阻止しようとする支配人。人びとの思惑が絡み合い、次第に狂いだす運命の歯車。やがて高まる緊張は、一発の銃声によって破られる。

 

製作:フランス ボスニア・ヘルツェゴビナ

監督・脚本:ダニス・タノヴィッチ

原案:ベルナール=アンリ・レヴィ

撮影:エロル・ズブツェヴィッチ

美術・ミルナ・レア

音楽:ミルザ・タヒロヴィッチ

出演:ジャック・ウェバー スネジャナ・ヴィドヴィッチ イズディン・バイロヴィッチ

        ヴェドラナ・セクサン ムハマド・ジョヴィッチ

2017年3月25日公開

 

100年前に起きたサラエヴォ事件とボスニア紛争後の現代を巧妙に結びつけた群像劇です。タイトルにあるように、終盤に劇中で銃声が鳴り響き、ホテル内が混乱に陥ります。誰が誰に向けて銃を撃ったかは言わぬが花。その一方で、私はダニス・タノヴィッチ監督が仕掛けた罠にまんまと嵌り、一杯食わされました(笑)。どんな仕掛けかは映画を観てのお楽しみです。

 

銃弾が放たれるまでの様々な人間模様も見応えがあり、ボシュニャク人のジャーナリストがセルビア人の歴史学者にインタビューする際に、二人が繰り広げる激しい論争などは、ユーゴスラヴィア分裂後の民族間の対立の根深さが実感できます。この二人の喧嘩腰のやり取りを見ていると、相手の許しを得られない限り、和解はあり得ないと思わせられます。

 

それでも、互いの胸の裡を曝け出したことにより、二人の間に一瞬雪解けムードが漂うものの、女性ジャーナリストが隠し持っていたものが明らかになり、より相手への不信が高まります。そして、双方見解の異なる歴史認識を話し合いで解決するのは幻想に過ぎないと思い知らされます。

 

映画は限られた時間の中で、様々な出来事が同時進行で起きるため、よりサスペンスが高まっていきます。銃弾は偶発的に放たれますが、100年前の事件を想起させる効果的な使われ方をします。この一点だけでも本作が製作された意義はあったでしょう。

 

 

シネマート新宿

シネ・エスパニョーラ 2017 より

 

クリミナル・プラン 完全なる強奪計画

 

チラシより

プロの強盗ヴィクトルは、ギャングからデカい計画を持ちかけられる。スイス・クレジット銀行を襲い、3000万ユーロを奪おうというのだ。だが、アジトは警察特殊部隊の急襲を受け、一味は壊滅。ヴィクトルは、実は潜入捜査官だったのだ。すべては終わったはずだったが、ヴィクトルは何故かその計画のまま、銀行襲撃を決行しようとする・・・。

 

製作:スペイン

監督・脚本:イニャーキ・ドロンソロ

撮影:セルジ・ビラノバ・クラウディン

音楽:パスカル・ガイグネ

出演:アラン・ヘルナンデス ルイス・トサル ハビエル・グティエレス

2017年3月25日公開

 

主人公が3000万ユーロの強奪を計画する一味から信用されるまでの緊張感、予行演習におけるワクワク感など、序盤の段階で犯罪映画の醍醐味のある場面が続きますが、実は犯罪グループが一網打尽にされてから本番が始まる感じのドラマです。潜入捜査官のヴィクトルが強奪計画を引き継ごうとする真意は、映画を観てのお楽しみですが、イニャーキ・ドロンソロ監督は、若干いたずら心のある演出で観る者を翻弄させます。

 

例えば、グループのボスが寄越した女をなかなか抱かないのは、潜入捜査官の用心深さなのか、ストィックな性格なのか、同性愛者なのか、色々想像させた挙句、全く別の理由を用意したり、女に聞かせる寝物語が単なる昔話と思わせておいて現在に繋がる話だったりします。

 

他にも部屋にいる赤ん坊の泣き声でヴィクトルが目覚める場面も、まさか女が子供連れで抱かれに来ていたのかと、一瞬ギョッとせておいて、実はなぁ~んだというオチになって肩透かしを食らわせ、ラストにヴィクトルが「すまない」と声をかけた相手が、どちらの女なのか謎を残したまま終わらせるのも、作り手の意地の悪さが滲み出ています(笑)。

 

このように大きい驚きこそないものの、要所要所に小さなサプライズを差し挟んでくるため、退屈することはありません。クライマックスの銀行襲撃の場面も手に汗握り、しかも主人公にとって決して悪い結末になっていない点も巧みでした。

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シネマート新宿

シネ・エスパニョーラ2017 より

 

クローズド・バル 街角の狙撃手と8人の標的

 

チラシより

マドリードの交差点に店を構えるバル。いつものように常連たちで賑わう中、一発の銃声が喧騒を切り裂く。バルにいた客が店の外に出た途端、頭を撃ち抜かれたのだ。どこから狙われているかもわからない状況では外に逃げることも出来ない。客たちがパニックに陥る中、ふと外を見ると道に転がっていた死体と血痕が跡形もなく消えていた・・・。

 

製作:スペイン

監督:アレックス・デ・ラ・イグレシア

脚本:ホルヘ・ゲリカエチェバリア アレックス・デ・ラ・イグレシア

撮影:アンヘロ・アモロス

出演:ブランカ・スアレス マリオ・カサス ジェイム・オルドネス

2017年3月25日公開

 

『シネ・エスパニョーラ2017』の中で最も期待度の高かった一作。プロットだけでも面白そうな予感がしてきます。こちらも期待に胸膨らませて鑑賞すると・・・話が進むにつれ、当初思い描いていたものとかけ離れてきます。サスペンスという点では予想通りなのですが、物語の構造としては「哭声 コクソン」とも共通性があります。ゾンビや悪魔祓いまで取り込んだ「哭声 コクソン」ほど、針を振り切った描写はないものの、思い込みからくる疑心暗鬼の末に、とんでもない事態を引き起こす点では、似たようなところがあります。

 

電話も繋がりにくく、テレビのニュースも異常事態を取り上げないため、バルにいる人々は、バルの中で起きたことと、バルから見た光景だけで、判断せざるを得ない状況に追い込まれていきます。ひとつひとつの出来事を組み合わせて検証していくと、政府が命を脅かすほどのウィルスを広げさせないように、感染を断ち切るために感染者を秘かに抹殺しようとする推論に至りますが、あくまでも状況証拠だけをもとにした憶測に過ぎません。

 

冷静に考えれば、北朝鮮や中国のような独裁国家ならいざ知らず、民主主義国家では感染者を収容しようとせずに、いきなり射殺するのは考えにくいです。ところが情報が分断されると、人は悪い方へと考えがちになり、その結果普段では見られない狂気じみた行動を起こします。極限状況に置かれた人々は、エゴを剥き出しにし、途中からは感染者に触れた者と触れなかった者とに分かれ、触れた者の中でも血清を巡っての対立が起き、人間の醜悪さが露呈します。

 

アレックス・デ・ラ・イグレシア監督作では「スガラムルディの魔女」だけ観ており、本作も鬼才の名にふさわしい作品に仕上げています。オープニングからして拡大した寄生虫やウィルスをアート風に見せている上、悪趣味でブラックな笑いも所々織り交ぜています。また、狭い穴に体を通すために全身にオリーブオイルを塗りまくったり、ヒロインがオリーブオイルまみれの下着姿で下水道を徘徊したりと、気色悪い描写も多く出てきます。予想していた展開とは違う密室における人間ドラマでしたが、アクの強い演出と、韓国映画とはまた異なる、人間の嫌な部分を見せられる不快さが堪らず、十分満足できる作品でした。

 

 

ザ・レイジ 果てしなき怒り

 

チラシより

アンダルシアの暗黒街を牛耳るロマノの命令で、強盗計画に挑んだ3人の兄弟。だがヤマは失敗し、長兄のアントニオは死亡。次兄のロペスは兄弟を見捨てて逃亡し、弟のトロは逮捕されてしまう。5年後、足を洗うつもりでシャバに戻ったトロを、ロペスが訪ねてくる。ロペスは組織の金を横領し、娘のディアナを人質にとられ脅されていた・・・。

 

製作:スペイン

監督:キケ・マイーヨ

脚本:ラファエル・コボス フェルナンド・ナバーロ

撮影:アルナウ・バイス・コロメル

音楽:ジョー・クレプスカロ

出演:マリオ・カサス ルイス・トサル ホセ・サクリスタン

2017年3月25日公開

 

ダメ兄貴の後始末のために、弟がとんだ目に遭わされる受難劇です。組織から足を洗うつもりで引き受けた最後の仕事で、次兄のロペスが現場でもたつき、一度は置き去りにしたものの、長兄アントニオの頼みで引き返そうとした途端、事故を起こして長兄は死亡、末弟のトロは逮捕されムショ送りになります。模範囚として刑期も短縮され、出所を2ヶ月後に控えた時、またしてもロペスが足を引っ張ります。

 

ロペスは疫病神のような存在で、トロとしては縁を切りたいのですが、姪の命がかかっているとなれば、見捨てるわけにもいかず、再び手を汚す羽目になります。実はアントニオの死は単なる事故ではなく、組織のボスが仕組んだことが判明すると、トロは復讐のため暴走していきます。その一方で、ロクでなしと思われたロペスが、弟の行動と反比例するかのように、終盤に至ってトロと娘のディアナのためにする行為のひとつひとつが胸を打ちます。

 

細かい点を指摘すれば、トロ、ロペス、ディアナの3人の立ち寄り先は、組織にも予測しやすく先回りできそうなもの。またボスの不倫にしても、部下の女の車をバレそうな場所に駐車しておくのは不用心極まりないです。トロにしても、一番狙われやすい恋人をケアしようとしないのはいかにも不自然。逃亡中で直接会いに行くのは無理にしても、せめて電話連絡して、身辺を警戒させる描写があっても良かったのでは?

 

トロは服役しながらも、刑務所外で普通に働いており、午後10時までに刑務所に戻ることが義務付けられています。比較的自由に行動できる設定だからこそ、こうした物語も可能と言えます。これだけ、様々なゴタゴタを抱え、命に関わる危険に遭いながらも、刑務所の門限を忘れていなかったのが妙におかしかったです。

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ムーンライト 公式サイト

 

 

製作:アメリカ

監督・脚本:バリー・ジェンキンス

原案:タレル・アルパン・マクレイニー

撮影:ジェームズ・ラクストン

美術:ハンナ・ビークラ

音楽:ニコラス・ブリテル

出演:トレバンテ・ローズ アンドレ・ホランド ジャネール・モネイ アシュトン・サンダース

        ジャハール・ジェローム アレックス・ヒバート マハーシャラ・アリ ナオミ・ハリス

2017年3月31日公開

 

“リトル”と呼ばれるシャロン(アレックス・ヒバート)は、学校ではいじめられ、家庭でも麻薬常習者の母親(ナオミ・ハリス)から育児放棄を受けていました。ある日、いじめっ子たちに追いかけられたシャロンは、フアン(マハーシャラ・アリ)と出会い、内気だったシャロンも次第に彼に心を開くようになります。

 

高校生になったシャロン(アシュトン・サンダース)は、相変わらず学校でも家庭でも自分の居場所を失っていました。ある日、同級生に罵られ酷いショックを受けたシャロンは、夜の浜辺に向かうと、偶然幼馴染のケヴィン(ジャハール・ジェローム)と会います。月明かりが輝く夜、密かにケヴィンに惹かれているシャロンに対し、ケヴィンも友人の思いを受け入れます。しかし、二人が暮らすコミュニティでは友情以上の感情を持つことが受け入れられず、その翌日、悪友にけしかけられたケヴィンは、シャロンに取り返しのつかぬことをしてしまいます。

 

二人が訣別に至る事件からシャロン(トレバンテ・ローズ)は大きく変わります。体を鍛えあげ、弱い自分を克服し、皮肉なことにフアンと同じ麻薬の売人になっていました。ある夜、突然ケヴィン(アンドレ・ホーランド)から連絡があります。 料理人となったケヴィンはダイナーで働いていて、シャロンに似た客がジュークボックスにかけた曲を聴き、ふとシャロンを思い出したと言います。突然の電話にシャロンは動揺を隠せないまま、翌日、ケヴィンと再会するのですが――。

 

そもそも本作を観ようとするきっかけになったのは、アカデミー賞3部門を受賞する以前に、「大竹まこと ゴールデンラジオ」の月1レギュラーのいとうせいこう氏の作品紹介をポッドキャストで聴いたことにあります。せいこう氏は4月15日から公開された「人生タクシー」でも、劇場に足を運びたくなる解説をされており、短い時間の中で映画の肝となる部分を捉えるのが上手くて、色々と参考になります。イラストレイターの和田誠氏も、その方面の才能に長けていますが、和田さんの場合は時々本編よりも面白い解説をするのが玉に疵(笑)。

 

「大竹まこと ゴールデンラジオ」出演時における いとうせいこう氏の「ムーンライト」紹介

 

 

物語は主人公の学童、高校生、成人の3つの時代で構成されており、主人公の成長に伴い、登場人物も(一部例外はあるが)別の俳優が演じています。描き出される内容はハードなのに、シャロンの性格同様に無駄口は叩かずに、抑制された演出で話を淡々と進めていきます。話の途中でいきなり、シャロンのことを気にかけていたフアンが、既に死んでいることが明らかになる場面もあり、ぶっきら棒と思えるほどの監督のスタイルも新鮮でした。

 

父親のいないシャロンはフアンと知り合ったことで、父性愛に触れることができましたが、同時にフアンが母親に麻薬を売っていた現実も突きつけられます。また、自身がゲイであったことからいじめに遭い、学校でも家庭でも自分の居場所を見つけることができず、出口なしの状態が続いていきます。幼なじみのケヴィンは、数少ない理解者の一人で、閉じ込めていたシャロンの性を開放させてくれます。

 

しかし、ケヴィンでさえも周囲の同調圧力に抗うことができず、最終的にシャロンが道を踏み外すきっかけを作ってしまうのが切ないです。二人が訣別した後の第三部は、和解が焦点となります。望まぬ道へ進んだシャロンと、紆余曲折を経て進むべき道を見つけたケヴィンは正に対照的。二人の再会がどのような反応を起こすかは、映画を観てのお楽しみですが、終わり間際にシャロンが放つ一言に、ケヴィンに対する変わらぬ想いが込められています。

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池袋 新文芸坐

追悼 松方弘樹 より

 

仁義と抗争

 

製作:東映

監督:松尾昭典

脚本:高田宏冶 松田寛夫

撮影:中島徹

美術:佐野義和

音楽:玉木宏樹

出演:松方弘樹 松本留美 中村敦夫 宍戸錠 長門裕之 小池朝雄

        桜木健一 近藤宏 深江章喜 あき竹城 内藤国雄

1977年8月27日公開

 

“ばば伝”の異名をもつ、殺し屋の海野伝吉(松方弘樹)は、久しぶりに大阪でホルモン焼屋を営む女房の節子(松本留美)のもとへ帰ってきました。ばば伝は大阪の森口組幹部から、杉山組組長(近藤宏)の暗殺依頼を受け、その準備にとりかかります。事態を重く見た警察の仲裁により、対立していた二つの組織は和解に至ったものの、暗殺中止を伝える前に、ばば伝は杉山組の組長を暗殺してしまいます。

 

杉山組二代目を継いだ関川勝也(宍戸錠)は敢えてばば伝に報復せず、彼を関東進出のための拠点となる、飯倉温泉へ鉄砲玉として送り込みます。飯倉温泉では、地元やくざの小笹組と山房組が対立していました。小笹組組長の笹本(小池朝雄)は、二代目を継がせる一人息子が頼りなく、娘婿の形原銀三(中村敦夫)を頼りにしています。

 

一方、山房組組長・金野(長門裕之)は、銀三を怖れ抗争を避けていました。ばば伝は金野に近づき、銀三殺しの話を持ちかけますが、桁違いの報酬の額にケチな金野は拒否をします。その頃、亭主のことを心配した節子が飯倉温泉にやって来て、芸者となってばば伝の身の回りの世話をします。また、舎弟の徳治(桜木健一)とかつての愛人はるみ(あき竹城)も夫婦となって、ばば伝夫妻の新居に転がり込みます。

 

やがて小笹組の縄張り内に、ばば伝が杉山組支部の看板をあげたため、銀三がばば伝を殺しに来ますが、二人の間に節子が入りその場は事なきを得ます。そんな折、金野が関東の組織のやくざに殺されます。山房組の跡目がいないため、ばば伝が山房組の縄張りを一時預かることになります。数日後、関川が手下を引き連れ、飯倉温泉を訪れます。関川は若頭の若松(志賀勝)にばば伝の後を引き継がせ、ばば伝に次の仕事先の新潟に行くよう命じますが、この地で骨を埋めようと決心したばば伝は、関川の命令を拒否します。

 

残念なことに、2本立ての2本とも経年劣化のためプリント状態が悪く、所々コマ飛びを起こしており、両作品とも通常90分の上映時間のところを、「仁義と抗争」は85分、「広島仁義 人質奪回作戦」に至っては80分に短縮されていました。どちらも面白い作品だっただけに、再度観る機会が訪れた際は、綺麗な状態で鑑賞したいです。

 

松方弘樹は依頼主がいつも死んでしまうジンクスを持った疫病神の殺し屋を演じており、脱獄三部作に通じる“懲りないバカ”キャラが嵌っています。また、「ビー・バップ・ハイスクール」の前川新吾のように女に節操がなく、あき竹城にまで手を出していたのには思わず笑ってしまいました。

 

ばば伝には度量の大きいカミさんがいて、傍目にはバカ亭主を掌で転がしているように映ります。亭主の女遊びを大目に見るのは勿論、若松から裸踊りを強要された際も、他の芸者衆に被害が及ばないようにし、ばば伝の暴走を抑えるために、自ら着物を脱ごうとするほど、いい女っぷりを見せます。松本留美の出演作を然程観ているわけではありませんが、彼女の代表作と言っていいほど、この映画にはなくてはならない存在。

 

その一方で、宍戸錠が飯倉温泉街を足掛かりに、東京進出を目論む関西組織のイケ好かない組長を演じています。組長がばば伝に殺されたことにより、二代目にのし上がった男ですが、組長が暗殺されるのを察知しながら、敢えてばば伝の狙撃を見逃した経緯があり、宍戸の腹黒い役柄は新鮮でした。また、ヘタレキャラは織本順吉の十八番ですが、長門裕之はオリジュンとはまた違ったヘタレぶりを見せます。

 

小池朝雄は長門とは正反対の筋の通った老侠客を演じており、昔の任侠映画ならば嵐寛寿郎、月形龍之介、辰巳柳太郎の似合う古風な役柄でなかなか渋い味わいでした。ラストはこちらの予想していた結末と違っていましたが、ばば伝に依頼した人物は全て死に、ばば伝自身は生き残っているジンクスを考えれば極めて妥当な線と言えます。たまには、こうした終わり方もいいですね。

 

 

広島仁義 人質奪回作戦

 

製作:東映

監督:牧口雄二

脚本:松本功 大津一郎

撮影:赤塚滋

美術:富田治郎

音楽:渡辺岳夫

出演:松方弘樹 小林旭 中島ゆたか 室田日出男 地井武男

        夏八木勲 佐藤友美 三上真一郎 今井健二 遠藤多津朗

1976年12月4日公開

 

昭和43年春の広島において、関東同志会の広島進出に対し、県下の暴力団、津島組・大西組・酒木組は一致団結してこれを撃退しました。この事件で殺人を犯した大西組の幹部・神野弘志(松方弘樹)は、新妻の涼子(中島ゆたか)を残して8年の刑に服します。この事件の後、津島組と酒木組の間に内部抗争が起こり、酒木組は解散して、幹部の沖本(室田日出男)たちは広島所払いとなりました。

 

翌年、県下の暴力団は神和連合会として統一された後、昭和48年、神野の兄弟分の北条明光(小林旭)が神和連合会二代目会長に就任します。昭和51年、8年の刑を終えて神野は出所し、北条と再会した神野は、やくざの足を洗って堅気になることを伝えます。

 

ある日、神野は広島所払いになった沖本を訪ねます。沖本は旭経済研究所の総会屋をしており、神野に総会の仕事を勧めます。神野は沖本の熱心な勧めもあり、旭グループの顧問となり、またたく間に三十数社の総会をとりしきるまでに至ります。そんなある日、神野は旭グループの柏木(地井武男)から、東邦汽船が事故の損害賠償の積立金に見せかけて不正な貸付けを行ない、裏から利ざやをかせいでいる情報を持ちかけられます。

 

旭グループは早速、東京の東邦汽船の本社に出向くものの、東邦汽船には関東同志会の幹部、高安(遠藤多津朗)が絡んでいて、柏木の車に時限爆弾を仕掛けるなど脅しをかけて来ます。怯えた柏木は、神野に相談もなく、北条に助けを求めます。神野としてはやくざの力を借りずに、自分たちでこの始末をつけたいと思っていましたが、北条はやくざの絡んだ揉め事はやくざがかたをつけると譲らず、柏木の引き渡しを拒みます。

 

このことを耳にした沖本は、北条のもとを訪れて話し合おうとしますが、北条に会えぬまま神和連合会幹部の竹森(夏八木勲)に射殺されます。その頃、北条は関東同志会幹部と会談し、東邦汽船の不正貸付を公表しない事を条件に、会社側から5000万円を支払わせることで合意に達します。それから2日後、沖本の水死体が江田島沖合で発見されます。神野は沖本の死を知り、北条に会いに行くのですが・・・。

 

広島で義兄弟の盃を交わした3人が、諸般の事情で別々の道を歩み、やがて敵対していく物語です。やくざ者の対立の中にも友情の部分を加えていることによって、話が進むにつれより切なさが増してきます。斬った張ったの時代でないことは、神野にも十分理解できたからこそ、沖本の誘いに乗り一旦は総会屋の仕事に就いたのでしょう。

 

しかし、旭グループの柏木が関東同士会に命を狙われたことをきっかけに、再びやくざたちの抗争に巻き込まれて、北条と袂を分かつに至るまでが、避けようのない運命的なもののように思えてきます。終盤はかつての仲間を葬らねばならぬ北条の苦悩が滲み出ており、生き延びることによって罪を背負う男の哀しさが表れています。特にラスト近くのほんの気まぐれから、命拾いするエピソードには、悪運の強さと命の儚さが伝わってきます。

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この映画は2月に観たのに、記事にするのをうっかり忘れていました(笑)。

 

シネマヴェーラ渋谷

愛と哀しみの迷宮 メロドラマの深き谷を歩め より

 

 

製作:松竹

監督:前田陽一

脚本:野村芳太郎 吉田剛

原作:土屋隆夫

撮影:加藤正孝

美術:重田重盛

音楽:山本直純

出演:加賀まりこ 田辺昭知 谷幹一 山東昭子 牟田悌三 高橋とよ 左卜全 大泉滉

1967年10月26日公開

 

小吉(田辺昭知)は田舎の集落で郵便局の臨時の配達人をしながら燻った青春を送っていました。ある日、小吉は鬱憤を爆発させ、郵便物を川に捨ててしまいます。たまたま同じ郵便局に勤めるかね子(加賀まりこ)も近くにいて、小吉は隣村の近藤に騙されて自殺しようとしているかね子を目にして、彼女の自殺を引き留めます。

 

しかし、小吉も配達をサボって郵便物を捨てようとした現場をかね子に見られため、互いの秘密を知った二人は共犯関係になり急速に親しくなります。そんなとき、祭りの夜に近藤から呼び出しを受けたかね子は、持っていた劇薬を彼に飲ませ、近藤は車の運転中に崖から墜落して死んでしまいます。女癖の悪い近藤の死に対して誰も不審に思う者はいなく、交通事故死として処理されます。

 

ある日、郵便局長の多良(谷幹一)が、姪のかね子と部下の小吉の二人にそれぞれ縁談を持ち込んできます。皮肉なことに、かね子は大学出の青年に一目惚れし、小吉の相手もかねてから好きだったきぬ(勝又道子)だったため異存はありません。こうなると、かね子も小吉も互いに秘密を共有して肉体関係を持ったことを後悔するようになります。彼らは周囲に二人の関係がバレないように振る舞いつつ、相手を消すことを真剣に考え始めるのですが・・・。

 

ザ・スパイダースの人気にあやかって、メンバーの一人を主役に据えた映画を撮ったことは分かるのですが、マチャアキや井上順ではなく、なぜ田辺昭知?と思わぬでもありません。今でこそ小林麻美を妻にして、田辺エージェンシーの社長として辣腕を振るってはいるものの、映画公開当時はどちらかと言えば地味な存在。それでも主人公の垢抜けない感じが、田辺のイメージには似合っていました。

 

アイドル映画の一種と思って大して期待せずに観たのですが、これが結構面白かったです。原作は土屋隆夫の「変てこな葬列」。原作は未読で、お堅い社会派推理小説のイメージのある土屋作品にしては、ユーモアミステリーに近い味となっています。しかも、喜劇に長けている前田陽一監督が手がけているだけに、随所にクスッと笑える場面が用意されています。

 

序盤のうちは、小吉もかね子も近藤に振り回される気の毒な男女のように映りますが、近藤の死をきっかけに腹の探り合いが始まり、徐々に本性が露わになってきます。二人は互いの秘密を知っているだけに、一緒になれば一応カタはつくのですが、必ずしも好き合っているわけではありません。小吉とかね子が連れ込み宿で、郵便局長・多良と飲み屋の女将・おせん(山東昭子)の不倫カップルと鉢合わせをしてからは、一層恋人のように振る舞わなければならなくなり、話の展開が一気にヒートアップします。

 

折しも二人には縁談話が持ち込まれており、乗り気な多良の妻とは裏腹に、郵便局長の手を借りて、縁談を壊すしかなくなってきます。ところが、二人とも見合い相手を気に入ったため、今度は秘密を知る者の存在が邪魔になります。殺意が芽生えるにつれ、小悪魔キャラの加賀まりこも、表情が生き生きとしてより美しく見えてきます。互いに殺意を抱く二人が相手を殺そうと試みるも、その度に邪魔が入って目的を果たせません、観客への焦らし方も巧みですね。

 

腹に一物ある二人がどうなったかは言わぬが花ですが、話が一段落した後のエピローグも、浮気性の郵便局長が女房に姪との仲を疑われるとばっちりを喰う粋な演出。二人が決着に向けて取る行動は、ミステリーとして些か段取りが悪いのが玉に疵ですが、これだけ楽しませてくれれば御の字でしょう。余談になりますが、郵便局長と浮気する女将役の山東昭子が妙に艶っぽく、初めて彼女に女を感じました(笑)。また、映画の中にはザ・テンプターズの演奏シーンもあり、その演奏をザ・スパイダースのメンバーの田辺昭知が聴く構図が奇妙な感じでした。

 

濡れた逢びき 加賀が田辺に毒を飲ませようとする場面とザ・テンプターズの野外ライヴ

 

 

 

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家裁調査官の武藤は上司の陣内と共に、未成年者の棚岡佑真を東京少年鑑別所に引き渡しに行きます。佑真は無免許運転の上に、中年男性を轢いて死なせていました。その後、武藤は試験観察中の小山田俊の自宅を訪れ、部屋に引きこもっている彼から、ネットパトロール中に事件を起こしそうな書き込みを発見したことを知らされます。

 

一方佑真は、鑑別所の調査室での武藤からの質問にも「はい」としか返事をせず、武藤は途方に暮れます。佑真の両親は交通事故に巻き込まれて亡くなっており、武藤はそのことが原因になっていると考えました。だが、佑真が小学生だった頃にも、登校中に一緒にいた友達が事故に巻き込まれ亡くなった体験をしていることが判明すると、事態が動き出します。

 

佑真の友達を轢いた運転手も未成年者であり、更に陣内がその件を担当していたことを思い出します。武藤と陣内は、佑真と疎遠になっている友人の田村守の元を訪れ、彼も佑真同様、友人の突然の死を理不尽に思っていたことを知らされます。

 

そんな折、小山田俊のメールが武藤のスマホに届き、登校中の小学生が狙われる可能性のある警告を受け取ります。武藤は陣内を伴い埼玉まで出向き、小学校の通学路の見回りを始めます。すると、男が登校中の児童を襲おうとする現場に遭遇し、事故を未然に防ぎます。二人の活躍は写真こそ載らなかったものの、新聞にフルネームが掲載されたことで、SNSなどのネットを介して、陣内が関わったかつての少年たちが東京家庭裁判所を訪れます。

 

その中に佑真の友達を事故で死なせた若林もいました。彼は遺族に送金する一方、専門学校に通い救命士の資格を取り、人を救う仕事に就こうとしていました。しかし、若林は面接の際に、過去に起こした事故を正直に話すため、採用は見送られアルバイトで食いつないでいる状況でした。更に彼は、佑真の起こした事故が本来自分を標的にしたもので、加害者になったのは自分のせいではないかと、自責の念に駆られます。

 

武藤と陣内は、泥酔した若林を陣内の知り合いの永瀬の家まで送り介抱します。やがて若林が目覚めると、4人はアイスを買いに近くの店に行きます。その途中、永瀬に恨みを持つ男が刃物を持って現れます。武藤は目の見えない永瀬を守ろうとしますが、腹を刺されてしまいます。

 

伊坂幸太郎の小説はオフビート感たっぷりで、必ずへらず口を叩く人物が現れます。本書で言えば陣内がその人物に該当し、武藤との会話は掛け合い漫才に近いものがあります。陣内は連作短編集の「チルドレン」にも登場しており、彼のみならず、武藤、永瀬、永瀬の妻・優子も出ていて、迂闊にも読み終わるまでその事に気づきませんでした。伊坂作品には、時折別の小説に出ていた人物が不意に現れることが珍しくはないのですが、10年ほど昔に読んだ小説の人物すら忘れるくらいですから、己の記憶力の低下を痛いほど思い知らされます。

 

陣内の軽口が、結構重いテーマを含むこの小説の雰囲気を和らげています。大半は無駄口に終始しますが、時々人生の真理を突くような鋭い言葉も混じっています。たとえば、若林に復讐しようとした佑真に、陣内が麻雀に例えて彼が為すべきことを示唆する言葉。

 

「俺たちは見えない相手にずっと麻雀の勝負をしているようなもんだ。最初に十三枚の牌が配られて、それがどんなに悪くても、そいつで上がりを目指すしかない。運がいい奴はどんどんいい牌が来るだろうし、悪けりゃクズみたいなツモばっかりだ。ついてない、だとか、やってられるか、だとか言ってもな、途中でやめるわけにはいかねえんだ。どう考えても高得点にはならない場合もある。けどな、できるかぎり悪くない手を目指すほかないんだよ」

 

世の中には、白か黒か判断できない事例が山のようにあり、その葛藤は問題を起こした少年に現場で接する武藤や陣内には、人一倍痛感しています。だからこそ、小山田俊によって持ち込まれた佑真が殺してしまった被害者の情報が、佑真の過失に有利に働いたとしても、安易に利用することをしません。それは家裁調査官の矜持であり、佑真への深い思いやりでもあります。いつもながら、伊坂幸太郎の伏線の張り方と回収の仕方には舌を巻きつつ、読後はいい加減な男のように見えた陣内の優しさがじんわり沁みてきます。

 

 

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SING シング 公式サイト

 

 

チラシより

取り壊し寸前の劇場支配人バスター(コアラ)は、かつての栄光を取り戻すため人生最大の歌のオーディションを開催する。主要候補は6名。極度のアガリ症のシャイなティーンエイジャーのミーナ(ゾウ)、ギャングファミリーを抜け出し歌手を夢見るジョニー(ゴリラ)、我が道を貫くパンクロックなティーンエイジャーのアッシュ(ヤマアラシ)、25匹の子ブタ達の育児に追われる主婦のロジータ(ブタ)、貪欲で高慢な自己チューのマイク(ハツカネズミ)、常にパーティー気分の陽気なグンター(ブタ)。人生を変えるチャンスを掴むため、彼らはオーディションに参加する!劇中ではレディー・ガガの「バッド・ロマンス」やザ・ビートルズの「ゴールデン・スランバー」など誰もが聴いたことがある65曲以上ものヒットソングが映画を彩る!

 

製作:アメリカ

監督・脚本:ガース・ジェニングス

出演(吹替え):内村光良 長澤まさみ 大橋卓弥 斎藤司 山寺宏一 坂本真綾

                    田中真弓 宮野真守 谷山紀章 水樹奈々 大地真央 MISIA

2017年3月17日公開

 

思っていたよりもシナリオが良く練られていて、心を鷲掴みされる描写が多いです。参加者の面々が、自分の実人生を投影するかのように歌に思いを込める演出は、井筒和幸監督の「のど自慢」を彷彿とさせ、自らを変えることによって、現状を打破しようとする姿には、多くの共感も得られるでしょう。また、一人一人が抱えていた問題も(マイクの場合は微妙ですが)歌うことで自己を開放させ、それぞれ納得の行く解決となっています。高慢なマイクにしても、己の実力を過信し他の参加者を見下していましたが、ミーナの歌を聴き、上には上がいることを悟った表情で、一応合点の行く着地をさせています。

 

一方、バスターは父親から劇場を譲られた形で支配人となっており、彼の友人エディも裕福な家庭で甘やかされています。二人とも苦労知らずの人生を送ってきましたが、どん底まで落ちることによって見事な再生を果たしています。バスターはナナに資金繰りを頼もうと、プレビューの際に斬新な演出をして、彼女を驚かすものの、所詮は付け刃で文字通り水泡に帰します。それでも泥水をすするほどの経験をしたことで、ボロボロの劇場でも演者の熱意によって、人の心を動かせることを、身をもって証明します。

 

相棒のエディもバスターの洗車の手伝いをする場面など、二人の友情が上っ面ではなかったことが分かり泣けてきます。劇中では小道具の三日月が何度も登場しており、終盤にはミーナの声量によって本物の月が劇場から顔を出す鮮やかな演出を見せます。作り物が本物になる感動的なシーンで、どん底の挫折を味わったからこそ、本物が手に入れられる比喩でもあり、「ラ・ラ・ランド」には見られなかった視点です。

 

今回吹替版で観たのですが、観る前は日本語の歌の部分を一番懸念していました。しかし、その懸念は杞憂に終わりました。歌は本職も混じっており、歌詞もこなれていて、然程違和感なく聴けたのはありがたかったです。物語の出来が良かっただけに、こうなると字幕版とも比較したくなりますが、時間の兼ね合いがなぁ・・・。自らを変え再出発しようとする人はもちろん、新年度を迎えるにあたって新たな一歩を踏み出そうとしている人には、心に響く一作と思います。

 

 

レゴバットマン ザ・ムービー 公式サイト

 

 

チラシより

悪いヤツらから街を守るレゴバットマンは、みんなの人気者!基地もマシーンも、ぜんぶレゴ。だがその正体は、とんでも“かまってちゃん”な、こまったちゃんヒーローだった!!仲間?「そんなのカンケイねー!」でも家に帰ると、いつもひとりボッチ。そんなある日、元気すぎる新入りがやってくる!パンツ一丁の“パンいち”ボーイ、ロビンのせいでバットマンのペースはガタガタに。おまけに世界をのっとろうと、ジョーカーが悪の軍団をめざめさせてしまった!キングコング、「あの」怪獣、ハリポタの「あの人」まで!あらゆるワルがおしよせて、世界が終わってしまう!?そんな中、ついにふたりが力をあわせて立ちあがる――レゴワールドの運命は!

 

製作:アメリカ

監督:クリス・マッケイ

原案:セス・グラハム=スミス

脚本:セス・グラハム=スミス クリス:マッケーナ エリック・ソマーズ

         ジャレッド・スターン ジョン・ウィッテントン

美術:グラント・フレックルトン

音楽:ローン・バルフェ

出演(吹替え):山寺宏一 子安武人 小島よしお 沢城みゆき オカリナ ゆいP

2017年4月1日公開

 

レゴブロックによるキャラクターが活躍する映画は、3年ほど前に「レゴ(R)ムービー」を観ており(そう言えばバットマンも出ていたっけ・・・)、結構面白かった記憶があります。本作はバットマンシリーズからのキャラクターのみならず、様々な映画、コミックの悪役キャラを登場させ、随分と賑やかな内容となっています。

 

勧善懲悪の物語には主役を輝かせる悪役が必要不可欠ですが、この映画ではその関係性を変わった形にして掘下げています。ブルース・ウェインが筋金入りのナルシストだったり、敵役のジョーカーが中二病のようなこじらせ方をしていたりと、物語を妙な方向に導いているのが何ともおかしいです。もうひとつはバットマンの存在意義に関わる点を突いており、常に自分一人で解決しようとする彼に、サポートだけではなく、一緒に戦う仲間は必要なのか?という問題提起にも言及しています。

 

本作のバットマンは、クリストファー・ノーラン監督の「バットマン」シリーズを念頭に置いた上で、キャラクター作りがされており、彼がいかに自意識を捨てて、仲間と協力することにより、一匹狼の殻を破ってひとつのファミリーを形成するかに焦点が絞られてゆきます。個人的にはノーラン版の陰気なバットマンが好みなので、相棒のロビンはともかく、集団で行動するのは本作のような特殊な作品に留めてほしいのですが・・・。

 

物語自体はテンポが良い反面、展開が早くやや一本調子な点や、都合の良過ぎる話の進め方も見受けられます。総体的にマニアックで大人向けの印象が強いですね。スーパーマンにライバル心を燃やし、パスワードを「アイアンマンのバカ」にしているなど、DCコミックやマーベルコミックをネタにしたギャグがちょいちょい挟み込まれ笑いを誘います。1960年代にリアルタイムでテレビドラマの「バットマン」を見ていた世代には、ブルース・ウェインの執事・アルフレッドが、60年代のバットマンのコスチュームに変身するところがツボでした。

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