小川洋子氏と 「アンネの日記完全版」「思い出のアンネ・フランク」
作家の小川洋子さんにはまっています。「博士の数学」は、ずっと前に読みましたが、最近の情報では藤井聡太君の愛読書だとか。ユノさんも読んだと言ってましたね。この本にはいたく感動しました。「みんなの図書室」という著書で彼女の薦める本を読んだりするにつれ、私の好きな本と一緒だったりすることが嬉しく、的確な表現と、静謐な文章にまさに心が響き合う感覚を覚えます。おそらく年齢がひとつしか違わないこともあり、特にエッセイが好きで、とてもしっくりくるし価値観などもぴったし。小川さんは、村上春樹についで、世界的にも人気のある作家だそうです。秋の紫綬褒章も受賞されて、嬉しい限りです。読んだのは、まだまだほんの一部ですが「みんなの図書室1・2」芥川賞受賞の「妊娠カレンダー」「深き心の底より」「祈りながら書く」「アンネフランクの記憶」アンネ・フランクの記憶 (角川文庫)Amazon(アマゾン)83〜3,136円小説家小川洋子を語るうえで、切っても切れない不可欠の要素が「アンネの日記」だと分かります。私も思春期に読んで多大な影響を受けたことを、思い出しました。かって私が読んだものは、アンネの父フランクが、周りの人たちに配慮して抜けた部分が多いとのこと。、ナチの恐ろしさや差別の悪どさは学んだと思いますが、10代の薄っぺらな私は、親愛なるキティへという書き出しを真似したりした記憶しか残っていません。その後アンネの意思を尊重して、完全版が出版されていたので、今、また読み返しましたが、本当に素晴らしい本ですね。アンネの日記 増補新訂版Amazon(アマゾン)947円本を開いたとたんに、涙が出ました。5歳のあどけない無邪気なアンネが笑っていて。この子がたった15歳までしか生きられなかった、残酷な運命に対して。いえ、だからって、決して暗く悲しい物語には全くなっていません。明るくウィットに富んだ崇高な精神で書かれた、13歳とは思えない才能豊かな文章です。彼女のりっぱなところは、隠れ家生活者たちの中で最年少であるにも関わらず、自分の運命を呪ったりせず、絶えず自分の幸運さに感謝し、もっと不幸な人たちを思いやっている姿です。過酷な隠れ家生活に、うつ状態だと告白しつつ、辛い時に毛布をかぶってしまわないで、そんな時こそ、雄雄しく天をあおぎみるのだと自らを鼓舞する姿には頭が下がります。文中に英国のエリザベス女王のことが出てきますが当時18歳です。そして今なおご健在であることがなんかすごいことのようです。筋から外れますが、何故女性の月経のことをアンネというのか?が気になっていました。日記を読み進めるうちに容易く理解ができました。私はわずらわしい月のものが大嫌いだったのですが、アンネは、大事に大事にに育てられたので、13歳ともなると、早くそれが訪れて欲しいと純粋にあこがれていたんです。彼女は小柄でやせっぽち、あまり丈夫な方ではなかったので訪れがゆっくりだったようです。そして初潮の様子が赤裸々に綴られ、不便な隠れ家生活で生理帯も買えないと嘆いています。始まってからは、やはり面倒なものと思うようになったようでした。鬱陶しいけれど、甘美な秘密を持っているような気がすると前向きな受け入れ方をしています。また思春期の女の子らしく体の変化、性への好奇心がたっぷりです。アンネは同じ隠れ家のペーターとも、堂々とそれについての会話をしていて、それはそれは素敵な会話なんです。現代ですら日本の中学生の男女だったらあんな会話するか疑問ですね。アンネは非常に発展的な女性であったことが伺えます。生理や女性の身体に関する描写は何度かあり、そんなことから、月のものを世間一般(日本だけでしょうか?)でアンネと可愛く呼ぶようになったんだと思いました。外国のラジオで戦時中の様子を記録しているものを、将来募集するという話を聞いたアンネは、それを目指しますし、将来は作家になりたい夢を抱いていました。アンネの筆は鋭く、隠れ家の住民たちを痛烈に批判し、思春期の女の子にありがちな母親に対しても、冷めた目で嫌悪しています。不幸にさいなまれている母に対して、こんな考えを書いています。「どんな不幸の中にもつねに美しいものが残っていることを発見しました。それを探す気になりさえすれば、それだけ多くの美しいもの、多くの幸福が見つかり、ひとは心の調和を取り戻すでしょう。そして幸福な人は誰でも他の人まで幸福にしてくれます。それだけの勇気と信念を持つ人は、けっして不幸に押しつぶされたりはしないのです。」なんて大人な助言でしょうか。大好きだよ。そしてその日は突然やってきます。当然ぷっつりと日記は途絶えるのですが、内容的には全く自然で、違和感の無いきれいな終結です。アンネの死はとても耐えがたいけれど、日記を読むことでアンネはずっと私たちの中に確かに生き続けていることが感じられるのです。感動した私はさらに、隠れ家の人たちを支え続けたミープ・ヒースの「思い出のアンネ・フランク」も読みました。思い出のアンネ・フランク (文春文庫)Amazon(アマゾン)360〜5,258円こうして日記が世に出ることになった功労者です。日記は物凄い機転と努力と忍耐と崇高な精神によって守られた宝物でした。ミープの生い立ちから、フランク氏との出会い、就職したいきさつなどアンネの知らない部分まで興味深く知ることができます。本を開くたびに、現在の場所からすーっとオランダのアムステルダム、プリンセンフラハト263番地に自分が飛んで行ったような錯覚で読み進めることができました。フランク氏が何故、オランダに来たのか?そこで事業をしているのかが分かります。また、アンネの日記の出来事の裏付けがしるされてあり、内容が充実しています。この本も、暗く重いというよりも、歴史の事実として受け止めるべきことであり、ユダヤ人をかくまった気高い人間たちの強い意思と信念と善良な心がひしひしと伝わってきます。またミープは機知に富んでユーモアもあふれていますから、楽しく読めます。当然アンネの日記には記されていない、連行される様子が白日の下に晒される場面は、衝撃としかいえません。その後のオランダは、飢餓の冬といわれる、最も困窮した悲惨な日々を過ごして5月4日に終戦を迎えます。そしてヒットラーは早々と自殺してしまう。私は2013年にドイツへ旅行した時に、ニュルンベルクの裁判所で戦争に加担した人たちを展示してある資料を見てきました。多くの人が自殺でした。また、ダッハウというユダヤ人収容所も見学しました。夏休みで世界中から多くの観光客が来ていました。胸が痛くてつらい場所ですが、これからも永遠に忘れないよう心に刻むことがアンネの死に報いることですね。あまりの感動にうち震え、どうしても書き留めておきたくなりました。お越しいただきありがとうございました。1月30日追記終戦後、地下に潜っていた人たちが出てくることができたり、収容所からも生きて戻った人たちがいます。何故、アンネたちは密告されてしまったのか?悔しくてなりません。誰が密告したんだ?の疑惑を抑えられませんよね。そんな声が多く上がって、ずっと捜査は続いていました。当時は、倉庫番のファン・マットーが誰から見ても信用のおけない人物なので、容疑者として尋問を受けました。その時、彼はミープのことを酷く冒涜する発言をしています。とんでもない人物だと分かりますから、こいつが犯人だと思うのですが、ミープとフランク氏は、絶対に違うと言い切りました。彼らが違うというのだからそうなんだろうと思いました。それに本当に密告していたら、悪口をいう事でさらに疑われるから言ういうわけないだろうと思うのです。でもでは一体だれが?私の心にはずっと引っかかっていました。そしたら、何という事でしょう。2022年1月17日のyahooニュースで、真犯人が特定されたと!!やはり、フランク氏たちの言う通り、マット―ではなく、ユダヤ人公証人だったひとが、自分の家族を守るために、彼らをチクったのでした。真実が明るみに出て、すごくスッキリしたとともに、こうして私がこの本たちを読み終えた直後にこうなったことに偶然の驚きを感じています。そして、いつもミープのこの言葉が押し寄せるのです。「でも私たちはアンネの命を救うことができませんでした。」