1801年の朝鮮で発見された

海洋生物学書「チャサンオボ」

に記された

史実に基ずく人間ドラマ

 

映像と内容とも素晴らしい

出来栄えです。

 

 

【韓国上映】:2021年3/31~

【脚本】:キム・セキョム

【監督】:イ・ジュニク 

(なんと私の好きな

「朴烈と金子文子」)

 

【お薦め度】:★★★★★

 

【観たきっかけ】:

映画の宣伝が目に入らず、

いつどこで何が上映されるか?

把握できないでいる昨今。

友だちから中日新聞の夕刊木曜日に

映画の紹介が載っていると聞いて、

職場で取っているのを見てみました。

丁度この映画を見つけ、

すぐさま行ってきました。

Twitterを見ていたら、まさにその日が、青龍映画賞の日。

 

脚本賞・編集賞・音楽賞・撮影照明賞・

ソル・ギョングが

主演男優賞

 

と総なめにしたようなことが書いてあったので感動でした。

名古屋センチュリーホールの

劇場のスクリーンが

やけに大きくて、それが幸い!

これは絶対に大スクリーンで見るべき映画です。

モノクロなのに、すごい迫力で、美しい情景が映し出されます。

 

圧巻としか言いようがありません。

この映画は、海が主体となってどーんと迫ってきます。

監督さんが白を大切にしたとおっしゃるように、

波の飛沫の美しさが映えます。

 

【内容】

19世紀初頭、朝鮮の時代に重用されたチョン・ヤクチョン

王の死後、西教(キリスト教)信仰を弾圧され、

黒山島へ流刑される。

棄教してまで生き延びたヤクチョンだったが、

生きる気力を無くしていた。

漁師をしながら独学に励むチャンデとの出会いにより、

本来の好奇心が炸裂。生きる力を取り戻す。

海の生物の生態に長けているチャンデに、

教えを請い、魚図鑑を書こうとする。

 

学問なら最高峰のヤクチョン

 

西教を嫌うチャンデは断るが、

自力で本を読み進められない

ジレンマに陥り、ヤクチョンの提案を受け入れる。

↑イ・ジョンウンssiのシーンが笑えるのなんの。

えっまさか❓と驚いてしまいましたよ。

 

 

二人の熱い交流によって、チャンデの偏見が薄れ、

師弟関係が構築されていく様子が、面白くてすごく温かい。

笑いの要素はあちこちにちりばめられて楽しい。

島での生活は、魚もりっぱな脇役、

豊富に獲れて、胃袋も満たされて

幸福であった。

特大のタコ 思わず食べたいな~と。

 

 

魚の生態、知識を深く把握して捕るため、

漁師としての腕は最高!でありながら、

 

学問に勤しむチャンデ。

大変魅力的な青年であり、豊かな生き方をしている

ようにみえるが、

何故に学問に拘るのか?

ヤクチョンは問う。

 

 

チャンデが傾倒しているのは

ここでは性理学と訳されているが、

朱子学のことのようだ。

これ、「チョン・ドジョン」でもテーマの中心になっていて、

興味が高まってしまったので

儒学とどう違うか気になって調べてみました。

儒学とは孔子、孟子、老子たちによって深められた

五常(仁義礼智信)

五倫(父子・君臣・夫婦・長幼・朋友)を重んじ、

家族を中心とした父母兄妹をたいせつにすること。

儒教と同様。

 

朱子学は、朱熹が独自にアレンジし、

「大義名分論」が中心の新しい体系。

身分秩序に関して、自然や万物に上下関係、

尊卑があるように、

人間社会にも、差別があって然るべきという考え方。

王に忠誠を誓う臣下を尊んでいるのが顕著。

 

 

王への忠心一筋

その生き方を正しいと考えている。

 

 

 

チャンデの選んだ生き方は?

 

【テーマ】:

何が何でも生きることが大事

学ぶことが生きること

何が正しいのか?を

見極めるための学問

 

【気になる俳優さん】

「未生」で、お調子者のくせのある役だった
ピョン・ヨハンssi
私は断然、「六龍が飛ぶ」の渋~い黒装束の
ヨハンに魅かれる。

今回、小舟に乗り、波に揺れながら魚と格闘するシーン
が見事で、見とれてしまいました。
代役じゃなさげ、CGじゃないのにどうやって撮ったんだろう?
この超絶技巧の習得にもあっぱれです。
それはともかくとしても、この映画で彼は生まれ変わったようです。

 

ソル・ギョングssiは超ノワールな

「名もなき野良犬の輪舞」(2017年)

を観ましたが、イム・シワンとの演技があまりに

すごすぎて呆然となりました。

さっすがの大物俳優ですね。

 

 
なぜか、ソル・ギョングssiが
栗田貫一さんに似てると思うんだよね。

 

 

【ネタバレリーナ感想】

 

チャンデの脳には、朱子学が刷り込まれているため

庶子の自分が這い上がるためには、

両班である父親に

頼るしかないと考えている。

その力を借りて科挙を受験することができ

あこがれの官の仕事につくが、

 

海から離れるほどに幸せが遠のく。

自分を豊かにするための学問なのに、

あれほど魚の生態を見抜く鋭い能力や

語学力を身につけていながら

自分にはどうすることもできない。

現実の無慈悲な

身分制度の壁にぶち当たり

大きな挫折を味わう。

富める者が、貧しい者から

取れる限りの搾取をする。

現在も蔓延る普遍的な力関係の実態。

 

一方ヤクチョンは

人生経験豊富で、論語や儒学だけでなく、

キリスト教にも通じているため、

自分の頭で思考でき

何が正しいか

すべてを悟っている。

が時代が追い付いていない。

 

キリスト教にこだわらず、

命を守るために棄教を選択したのは

すごいことだと思う。

でもそれでいい、そうでなければと思う。

そんな自分を許したわけでは

ないために

当初は生きる気力を

無くしていたんだろうな。

しかしながら、

生きることが大事と

思わせてくれました。

 

しみじみと考えさせられる

いい映画でした。

 

つたない独り言の偏狭なブログへお越しいただき 

ありがとうございました。

 

※写真などをお借りしました