◾︎◾︎夏休み短縮 教育現場の沈黙
吉田町教育改革プラン 教員に注意・追及
教育長「反対意見、混乱を招く」◾︎◾︎
◾︎◾︎夏休み短縮 教育現場の沈黙
吉田町教育改革プラン 教員に注意・追及
教育長「反対意見、混乱を招く」◾︎◾︎
吉田町のTCPトリビンスプランが発表されたのは6月19日。
それから3カ月。
今日、吉田町議会で特別委員会の設置が決まりました。
議員発議で最初の採決では6対6。
その後討議の末、7対5で特別委員会設置が決まりました。
賛成した議員は、八木栄議員、大石巌議員、増田剛士議員、山内均議員、三輪正邦議員、杉本幸正議員、山口一博議員。
反対した議員は、大塚邦子議員、三輪美由紀議員、遠藤孝子議員、蒔田昌代議員、河原崎曻司議員の5人です。
反対した議員の中で、河原崎議員以外は出前会議にさえ出席しませんでした。
特別委員会の構成は、委員長は八木栄議員、副委員長は大石巌議員、他、増田剛士議員、山内均議員、三輪正邦議員、杉本幸正議員の6名だそうです。
頑張って欲しいと思います。
町民の意見に耳を傾け、町民の代表者として行政をチェックするのが議員の仕事のはずです。
反対する議員には、行政の責任でこんなに混乱を招いているのに、そのチェック機能としての役割を放棄する姿勢には、驚きしかありません。
議会傍聴者が少なく、町民の監視が働かなかったことが原因でしょうか。
ちゃんと傍聴に行かなきゃなと反省です。
まずは今年すでに短くなってしまった夏休みの検証を、教育委員会がちゃんとやるように、データ開示を求めること。
そして、プラン策定までのプロセスの何が問題だったかを明らかにすること。
子ども、教員、保護者の三者が本当にWinWinWinになるように、特別委員会でチェックして行って欲しいと思います。
私たちも見守ります。
昨日、議会の求めに応じ教育委員会の説明がありました。
要点は、
・10月末に教育委員会の対応の方向性を示す。その後、総合教育会議で同意を求める。
・TCPプランの一部変更も視野に入れている。
・教員対象のアンケート公開に対して、公表を前提にしていない、検討する。
・中日新聞に現役教職員の意見が出た対応で即日校長会を開催したようだが、内容は?に対して、事実確認、保護者や子どもへの影響懸念、意見が出た時には町教委へ連絡の徹底。
・104件の意見有り。その内1/5が県外からの意見と思われる。また、年齢の記載は無いので、子どもの意見がどれ程あたったかは不明。
終了後の全員協議会では、今後どう進めるかで紛糾。
特別委員会開設7人、全員協議会5人。
結論は、議会最終日の9月22日、特別委員会開設の発議を出し、議決して決めるとのこと。
9月4日の、『教員から「ある機関に提出したものだけどネットに公開して」と頼まれました』の先生から、またメールが届きました。
心のこもった内容に、吉田町の子どもたちは幸せだなと感じました。
ここから☆☆☆
はじめに吉田中学校の新間先生の勇気ある行動に敬意を表したい。詳細は9月16日の中日新聞の記事を御覧になっていただきたいが、現職の教員が姿を晒し、氏名も素性も明らかにした上で町の教育施策に対して意見を述べるまでには大いなる葛藤があったに違いない。 現在、非常の多くの教員が吉田町の教育施策に対して正直な思いを語ることをためらっている。その状況から考えても、新間先生の勇気と覚悟は尊敬に値する。
それがどれほどの勇気と覚悟であるかを想像すれば、新間先生の口にする内容が単なる自己都合ではないことは明白だろう。新間先生が語っているのは「夏休みが減ってしまうと自分たちの自由な時間がなくなってしまう」などという次元の話ではないのだ。
新間先生の発する言葉の深層を理解するのと同時に、私たちは決して新間先生に独り相撲をとらせるようなことをしてはならない。私たち教員も覚悟せねばならない。少なくとも私は今、そう自分に言い聞かせている。
新間先生の語る内容は、多くの教員、いやほとんどすべての教員が心に秘めていることと同じである。
今さら繰り返すまでもないが、授業の日数すなわち児童・生徒の登校日数が増えれば、それに伴って私たちの業務は必ず増える。
私たちは前日に準備した授業をまるでシナリオを読むように再現しているわけではない。生身の児童・生徒と会話をし、個別対応を考え、相談に乗り、共感をし、アドバイスし、成長を見届けているのだ。そこにシナリオはない。
児童・生徒がひとたび登校すれば、個々の児童・生徒に全力で接する。その一つ一つの関わりは数日前から準備できるものではない。もはやそれが「業務」だという意識すらなく、当然のこととしてその一瞬一瞬の児童・生徒と向き合う。
前日に児童・生徒が4時間で下校し、午後に多くの授業準備ができたとしても、それは授業準備という作業の配置が整頓されたにすぎない。私たちが多くの時間を費やす『シナリオのない業務』は、日数に比例して増えるだけだ。 働くことそのものが嫌なわけではない。しかし、実際には負担増となるであろうこの施策を、町教委が「教員の働き方改革」「負担軽減」に結びつくものだと公言していることに感じるものは違和感のみである。
9月13日の定例議会では、TCP トリビンス プランの検討の発端は、2016年4月の町長の指示であったという答弁があった。さらに、町長は「夏休みの問題は10年ぐらい前から関心があった」「(長期休業で)学力の低下が起きる」と説明した。
そこには「働き方改革」の色合いも「負担軽減」の気配も何もない。保護者からの要請もない。教員からの願いもない。
もともと町長が関心をもっていた学力向上のためのプロジェクトに、「働き方改革」という言葉を乗せただけだというのは、もう明白なのではないだろうか。しかもそれが、当事者自らの答弁の中に透けて見えているではないか。
トリビンスプランは、2月の総合教育会議によって原案が提示され、合意を得たとされている。その議事録に目を通したが、その内容は協議と呼べるものとは言えないと私は感じた。私には「忖度に満ちあふれた儀礼的な会議」にしか見えなかった。
私は教育委員の方たちのことはよく知らないが、2月の総合教育会議に参加した校長および教員のことはよく知っている。その教員の1人は、実際には総合教育会議の発言内容とは全く逆の意見をもっている。
総合教育会議で本心を言わなかったその教員に問題があるのか、本心を言えない総合教育会議に問題があるのか。
私はそこに参加した教員が本心を語らなかったとしてもそれを責めるべきではないと考えている。町長と教育長の同席する中で、両者の「御意向」に反する発言などできるわけがないからだ。
全国にも類を見ないこれほどの改革を行うならば、行政は総合教育会議での合意をすべてとせず、さらに広く町民からも教員からも声を集めるべきであるように思う。
議会における学校教育課長の「選挙で選ばれた町長が出席する総合教育会議で合意したことは民意の反映」という言葉は、構造上・通念上は間違いない。なのになぜこれほどまでに民意とのギャップが浮き彫りになってくるのだろうか。それは、総合教育会議がすでに町長の「御意向」に応える空間になってしまっていたことを意味するのではないだろうか。
総合教育会議は法的には「協議・調整の場」として位置づけられている。総合教育会議で合意形成されたからといって、なぜここまで頑なにそして粛々と推進する必要があるのだろうか。推測ではあるが、その背後にも「御意向」と「忖度」があるように思えてならない。
民意を問い、民意を反映する段階が不十分だったから、住民や教員がこれほどまでに混乱し、「報道で初めて知った」というコメントまでもが出てくるのだろう。
教員の声が聞こえないなどということが世間で語られ始めて町教委は7月にトリビンスプランに対する教員用のアンケートを実施した。アンケートの実施そのものが後手であることも気になるが、私の知る限りでは町教委によるアンケート作成が7月24日。学校配布が25日。回収が26日である。 本当に教員の声を集約したいと考えているのか、声を集約したという既成事実だけを手に入れたいのか、後者にしか思えないのは私だけではないはずだ。
教育長は「いろいろな意見を踏まえて、よりよいプランにしていく」とことあるごとに発言している。にも関わらず8月30日の出張教育委員会において住民側から要請された教育委員の出席を却下した。そこに矛盾はないのか。行政として決めたことを誰にも邪魔されずに進めたいという意思表示なのだろうか。
それは、教員に対して行ったアンケート調査の期間が極端に短かったことと同じ論理だ。残念なことに、教育長が自ら述べている「いろいろな意見を踏まえて、よりよいプランにしていく」ということに反する行為だ。後付けの説明や調査の重ね塗りばかりでは、「よりよいプラン」には絶対にならない。
私たち大人の合意形成が図られないことの本当の被害者は児童・生徒である。すでに多くのことが語られているので、ここで改めて掘り下げる必要はないが、夏季休業の中には、家族旅行やスポーツ少年団の活動、帰省、ホームステイ、ボランティア、中学校においてはそれに中体連の県大会や全国大会、体験入学などが複雑に絡む。
これらは「夏季休業ならではの活動」「夏季休業にふさわしい活動」として長い年月をかけて培われたものだ。例えエビデンスは乏しくとも習慣として深く根づいていることは確かだ。
町教委は各機関・グループと交渉をして児童・生徒への影響を少なくすることを試みているという。調整作業は無論必要であるが、後発であるトリビンスプランが深く根づいた習慣を押しのけて入り込むのに十分な理由を有しているかは慎重に吟味しなければならない。ましてや学校の授業日と他の活動が重複したために児童・生徒がその選択を強いられることや、スポーツなどの活動を選択した児童・生徒の授業が保障されなくなることは絶対に避けなければならない。
トリビンスプランを推進するのであれば、町教委は、増加した授業日数の中でいかなる児童・生徒をも犠牲にしないという決意と計画を示し、同意を得ることを何よりも先に行うべきだ。
冒頭にも述べたが、自分の立場を晒して本心を語ってくださった新間先生が、不当な扱いをされるようなことがあってはならない。
新聞の記事からは、吉田中学校内の組合組織が新間先生をしっかりと支えている様子が感じ取れ、非常に心強い。しかし、それだけでは新間先生と吉田中学校職員の勇気に、多くの教員が甘えているにすぎない。
私たち教員は、自分にできる形でそれぞれの主張を世の中に発信してくべきだと思う。それは決して混乱を煽り、無駄な争いを起こすためでない。この大きな改革にしっかりと民意を流し込むためだ。
町民のグループも私たち教員に先んじて主張を始めてくれた。
彼らは、児童・生徒を混乱させるようなことが起きないように必死になっている。
そして彼らは、私たち教員の本当の気持ちを聞こうとしてくれている。
見ず知らずの私たちの本当の気持ちをだ。
だからこそ私たち教員は冷静かつ能動的に主張を始めることだ。
そうすることが、勇気を出して行動した人間を孤独にさせないために最も大切なことだからだ。
昨日はとても嬉しいことがありました。
朝から教員OBの方からも、
「吉中の先生が声を上げてくれたよ ! 」
って電話を頂きました。
教員関係者からこれまでも、『夏休み短縮は生徒の為にもならない』と聞くことが多かったものですから、だったらなぜそう言ってくれないのか、そんなに言えない事情があるのかと、複雑な思いだったからです。
吉田中学校は、以前とても荒れていたそうです。
それを、今の先生たちのご努力で、とてもいい状態になっていると聞いています。
今回の件で、きっと、教員同士の関係もいいのだろうなと思いました。
勇気をもって声を上げてくれた、新間先生。
それを支えるように、教職員組合の山崎先生も発言してくれています。
きっと、本当に良いプランになる議論がここから始まるのだと思います。
私たち保護者、町民も、それを支えて行けるよう頑張りたいと思います。
中日新聞 2017年9月16日
短縮されることについて批判する
吉田中学校教員の新間正信さん=牧之原市で
「夏休みは生徒が学校にいない分、定時で帰れて気兼ねなく有給休暇を取れる唯一の時期」と新間さんは話す。教員は夏休みも出勤し、日ごろの残務処理や各種教員研修などをこなす。それでも、休暇を取りやすい貴重な時期という。その上で「生徒が学校に来ると、生徒指導や質問対応など自然と仕事が生まれる。授業日数が増えれば忙しくなるはずだ」と言う。 二〇一八年度に小中学校の夏休みを十六日程度に大幅短縮する吉田町の取り組みに、地元の教員が疑問を投げ掛けている。町教育委員会の狙いは「授業日数を増やし、教員の一日の労働時間を短縮させる」だが、町内唯一の中学校で数学を担当する教員歴三十六年目の新間(しんま)正信さん(57)は「仕事はあふれており、出勤日数が増えれば労働時間の総計も増えるはずだ」と指摘する。
吉田町立の三小学校と吉田中学校の一八年度の夏休みは、八月のお盆周辺の十六日程度という。他は授業があり、中体連県大会と重なる時期もある。柔道部顧問の新間さんは「どちらを取るか教員からは強制できず生徒に二者択一を迫ることになる。そんな状況を、あえてつくる必要があるのか」と疑問視。「授業を休んだ生徒には補習授業をするべきだと思うが、結局は教員の仕事が増えるだけ」と語る。
吉田中では真夏に授業をする対策として全教室にエアコンが設置された。体育館にはなく、別の男性教員は「熱中症を考えると、体育の授業や集会などで体育館をどこまで使えるか」と不安視する。ある女性教員は夏休みが短縮されると、読書感想文や自由研究の宿題がなくなることを危ぶむ。「夏休みの宿題は時間をかけて取り組む力を育む。帳尻合わせで教育環境を変えないで」と訴える。
県教職員組合の山崎聡美・吉田中分会長(44)は「夏休みの短縮は生徒のためにもならない。組合の分会として町教委に反対の意思を示すために、何らかの行動を起こすことも検討している」と話す。
町教委の浅井啓言(ひろゆき)教育長は「これまでの説明会などで、教員からさまざまな意見を聴いている。こうした意見を踏まえながら関係機関と調整を図っており、よりよいプランになるように努めたい」と話した。
(佐野周平)
<吉田町小中学校の夏休み短縮> 2020年度から実施される新学習指導要領で授業時間数が増えることへの対応策として、吉田町教委が2月に打ち出した。教員の一日の労働時間短縮を図るため、授業日数を増やし、18年度の小中の授業日数を220日以上に。夏休みを16日程度にする。
本年度は移行措置として夏休みを4~6日短縮し、3小学校は23、24日間で中学校は29日間だった。本年度の小中の授業日数は210日で、県内公立小中学校で最多。
全国知事会のHPに、新教育委員会制度について分かりやすいレポートがありましたので、全文転載させていただきます。
これを読むと、8月2日に川勝知事がおっしゃっていたことの意味がよく分かります。
急すぎると多くの町民が感じるTCPトリビンスプランの進め方等について、ポイントかなと思うところを赤字にしました。
文部科学省初等中等教育局初等中等教育企画課
地方教育行政専門官 石川仙太郎
平成26年6月13日、第186回国会において、「地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律(以下「改正法」という。)が成立し、同月20日に公布された。
改正法は、①首長による大綱の策定、②総合教育会議の設置、③教育長と教育委員長を一本化した新たな責任者(新教育長)の設置、④教育委員会のチェック機能の強化、⑤国の関与の見直しなどを盛り込んだものとなっている。以下、今回の改正に至る背景・経緯と改正法の概要について紹介することとする。
教育委員会制度は、戦後の導入以来、各地方公共団体における教育行政の担い手として重要な役割を果たしてきている。一方、教育委員会の必要性やその活性化に関する議論は、これまでもさまざまな形で行われてきた。平成11年には、教育における団体自治を強化する観点から、教育長の任命承認制度の廃止等が行われた。また、教育における住民自治を強化する観点から、平成13年には、教育委員の構成の多様化の担保や教育委員会議の公開原則の規定等が設けられ、平成16年には、学校運営協議会が制度化された。そして、平成19年には、いじめや未履修などの問題に対する教育委員会の対応をきっかけとして、教育行政の責任体制の明確化を図る観点から、保護者委員の任命の義務化、合議体としての教育委員会が教育長に委任できない事務の法定、教育委員会の点検・評価の義務化、国の関与の強化などの改正が行われている。
この間、地方分権や規制緩和といった政府の大きな政策課題の中で、教育委員会制度の廃止論や、教育委員会を設置するか否かを地方公共団体の判断に任せる選択制が議論されてきたが、19年改正は、教育委員会制度を維持しつつ、その責任体制の明確等を図るものとなった。
その後、大津市のいじめ自殺事件など、児童、生徒の生命・身体に係る重大かつ緊急の事態が生じたにも関わらず、教育委員会会議が速やかに招集されないなど、教育委員会による責任ある迅速で的確な対応がなされなかったことをきっかけとして、今回の改正の議論が始まった。しかしながら、これは、個々の教育委員会だけの問題だけに帰着させるべきものではなく、現行の教育委員会制度における、①教育委員長と教育長のどちらが責任者か分かりにくい、②非常勤の委員を中心とする教育委員会ではいじめ等の問題に対して必ずしも迅速に対応できていない、③地域の民意が十分に反映されていない、④地方教育行政に問題がある場合に、国が最終的に責任を果たせるようにする必要がある、といった課題が顕在化したものであることから、制度の抜本的な改革が不可欠となったものである。
まず、首相官邸に設置された教育再生実行会議において、いじめ問題に関する第一次提言に続き、教育委員会制度改革に関する議論を開始し、平成25年4月15日に「教育委員会制度等の在り方について」(第二次提言)をとりまとめた。この第二次提言では、主に以下の改革の方向性が示された。
第一に、教育行政の責任体制を明確にするため、首長が、議会同意を得て直接任免を行う教育長を責任者とする。
第二に、教育委員会の性格を改め、地域のあるべき姿や、基本方針について審議を行い、教育長に大きな方向性を示すとともに、教育長による事務の執行状況のチェックを行う。
その上で、教育委員会で審議すべき事項とその取扱、教育委員の任命方法、教育長の罷免要件等の詳細な制度設計については、中央教育審議会における専門的な審議に委ねることとされた。
教育再生実行会議の提言におけるポイントは、教育長を責任者とすることとする方向性が示されたこと、その一方で、教育委員会という機関の在り方が明確には位置付けられなかったことである。この点は、中央教育審議会における議論に委ねられた。
中央教育審議会における議論は、端的に言えば、教育行政の執行機関を、首長とするのか、あるいは引き続き教育委員会とするのか、が最大の焦点となった。すなわち、教育再生実行会議の「教育長を教育行政の責任者とする」という提言を実現するには、法律上、A案:教育行政の執行機関を首長とし、その補助機関(部下)として教育長を置く案と、B案:教育行政の執行機関を引き続き教育委員会とし、その補助機関(部下)として教育長を置く案という案の、主に2つの案が考えられた。
どちらの案においても、教育再生実行会議の「教育長を責任者とする」という提言を実現するため、補助機関である教育長に独立性を持たせるという点で共通ではあったが、教育行政の執行権限は誰が持つのか、言い換えれば、教育長は誰の指示に基づき教育行政を行うこととするのか、という観点で、A案とB案で決定的な違いがあった。
A案については、教育行政の責任が、福祉やまちづくり等他の行政分野と同様に、首長に明確化されるというメリットがあるものの、首長が教育行政の執行機関となる点について、首長の影響力が強くなり過ぎるのではないかという懸念があった。一方、B案については、教育の政治的中立性、継続性・安定性が確保されるというメリットはあったものの、教育行政の執行機関が引き続き教育委員会とされることについて、現行制度の課題が解決できないのではないかという懸念があった。
中央教育審議会における議論では、主として首長、経済界、行政学者が首長への責任の一元化を求めてA案を、教育関係者、教育行政学者が教育の政治的中立性、継続性・安定性の観点からB案を主張し、答申においては、A案を改革案としつつも、B案を別案として示し、中央教育審議会答申としては異例ではあるが、ほぼ両論併記に近い答申がとりまとめられることとなった。
通常、文部科学省としては、中央教育審議会の答申を踏まえ、法改正作業に入るのであるが、中央教育審議会の答申では案が一本化されず、また、与党内にも様々な意見があったことから、これも異例ではあるが、自民党内に小委員会をつくって自民党案がまとめられ、その後に自民党と公明党とのワーキングチームをつくって与党協議が行われることとなった。
自民党の小委員会では、現行制度の歴史的沿革や趣旨に遡り、改正案において教育長を首長が任命することとするかという論点から議論を始めるなど、一つ一つの論点ごとに合意形成を図る丁寧な議論が行われた。そのような議論の結果として、教育の政治的中立性、継続性・安定性を確保しつつ、責任の明確化、民意の反映という教育委員会制度の課題を解決するための方策として、教育委員会を執行機関として残した上で、教育長を教育委員会の構成員とし、その代表者とすること、また民意を代表する首長との連携を強化するため、「総合教育施策会議」を設置すること等、今回の改正案につながる主要なポイントが提言された。
その後、自民党と公明党の間での与党協議が開始され、自民党案をベースとしつつ、合議体としての教育委員会の役割を重視する観点から、修正が加えられ、教育委員による教育長へのチェック機能を強化することが提言された。このような経過を経て、平成26年4月4日に改正法案が閣議決定された。
この改正法案は、国会審議でも大きな議論となった。特に、民主党と日本維新の会は、政府案に対し、教育委員会を廃止して、教育行政の執行機関を首長とする法案を共同で提出して、論戦が行われた。国会審議は、衆議院・参議院あわせて70時間以上に及び、平成26年6月13日に参議院本会議で賛成多数により可決成立し、同年6月20日に公布された。
現行制度においては、教育委員会の中に委員会の主宰者である委員長と事務の統括者である教育長が存在し、どちらが責任者かわかりにくいという課題があった。新制度では、両者を一本化した新たな責任者(新教育長)を置き、新教育長は、「教育委員会の会務を総理し、教育委員会を代表する」こととした(第13条第1項)。「教育委員会の会務を総理」するとは、改正前の地方教育行政の組織及び運営に関する法律(以下単に「現行法」という。)における委員長の職務である「教育委員会の会議を主宰」すること(現行法第12条第3項)並びに現行法における教育長の職務である「教育委員会の権限に属するすべての事務をつかさどる」こと(現行法第17条第1項)及び「事務局の事務を統括し、所属の職員を指揮監督する」こと(現行法第20条第1項)を意味するものである。これにより、教育行政の第一義的な責任者が新教育長であることが明確になる。
また、現行制度では首長はあくまでも教育委員を任命するにとどまり、委員長や教育長は教育委員会が委員の中から選ぶという制度であるため、任命責任があいまいになっているという課題があった。新制度では、首長が、教育長を議会の同意を得て直接任免することとした(第4条第1項)。これにより、首長の任命責任が明確化されることとなる。
さらに、現行制度では、教育長は教育委員としての任期の間在任し、委員でなくなったときはその職を失うとされ、事実上4年の任期となっていたが、新制度では任期が3年となった(第5条第1項)。これは、①首長の任期(4年)よりも1年短くすることで、首長の任期中少なくとも1回は自らが教育長を任命できること、②教育長の権限が大きくなることを踏まえ、委員よりも任期を短くすることで、委員によるチェック機能と議会同意によるチェック機能を強化できること、③計画性を持って一定の仕事を行うためには3年は必要と考えられたことによる。
今回の改正では、新教育長が教育委員会の代表者となり、その権限が他の教育委員と比較して大きくなる。一方で、新教育長は、執行機関である教育委員会の補助機関ではなく、教育委員会の構成員であり、代表者であることから、教育委員会による教育長への指揮監督権は法律上規定されていないが、教育委員会は引き続き合議体の執行機関であるため、教育長は教育委員会の意思決定に基づき事務をつかさどる立場にあることに変わりはなく、教育委員の役割は重要である。そこで、教育委員による教育長のチェック機能を強化する観点から、教育委員定数の1/3以上からの会議の招集の請求(第14条第2項)や、教育長が委任された事務の管理・執行状況の報告義務(第25条第3項)に関する規定が新設された。
また、教育委員会会議の透明化や住民によるチェックの観点から、会議の議事録の作成・公表を努力義務とした(第14条第9項)。努力義務にとどめたのは、小規模な地方公共団体における事務負担を考慮したものであり、原則として、会議の議事録を作成し、ホームページ等を活用して公表することが強く求められる。
これらにより、権限が大きい教育長へのチェックが適切に果たされるとともに、教育委員会の審議の活性化が図られると考えている。
現行制度においても、首長は教育委員の任命や予算の編成・執行、条例提出権等、教育行政に関する権限を持っているが、首長から独立した行政委員会である教育委員会が教育に関する執行権限を有しているために、教育について関与することは遠慮する傾向があったほか、教育委員会の側も、首長の意見を聴く機会を十分に設けていないという現状があった。
このため、首長と教育委員会が、十分な意思疎通を図り、地域の教育課題やあるべき姿を共有して、より一層民意を反映した教育行政を推進するため、首長と教育委員会が協議を行う場として、全ての地方公共団体に総合教育会議を設けることとした。
総合教育会議は、審議会や決定機関ではなく、首長と教育委員会という対等な執行機関同士の協議・調整の場であり、首長と教育委員会は、総合教育会議で協議・調整し、合意した方針の下に、それぞれが所管する事務を執行することとなる。
また、総合教育会議における協議・調整事項は、①教育行政の大綱の策定、②教育の条件整備など重点的に講ずべき施策、③児童、生徒等の生命・身体の保護等の緊急の場合に講ずべき措置、としているが(第1条の4第1項)、教育委員会制度を設けた趣旨に鑑み、個別の教科書採択、個別の教職員人事等、特に政治的中立性の要請が高い事項については協議題とするべきではないと解されている。一方、教科書採択の方針、教職員の人事の基準については、予算等の首長の権限に関わらない事項であるが、自由な意見交換として協議を行うことは考えられる。
なお、総合教育会議は、あくまで協議の場であり、教育委員会の執行権限は従来どおり変わっていないため、首長が一方的に教育政策を決定し、実行できるということではなく、調整のついていない事項の執行については、第21条(現行法第23条)及び第22条(現行法第24条)に定められた執行権限に基づき、教育委員会及び首長それぞれが判断することとなる。
首長と教育委員会との連携を強化し、首長が教育行政に連帯して責任を果たせる体制を構築するため、首長は、当該地方公共団体の教育、学術及び文化の振興に関する総合的な施策の大綱を策定することとしている(第1条の3第1項)。これにより、地域住民の意向の一層の反映と地方公共団体における教育、学術及び文化の振興に関する施策の総合的な推進を図ることとしている。
大綱は、地方公共団体の教育、学術及び文化の振興に関する総合的な施策について、その目標や施策の根本となる方針を定めるものであり、詳細な施策について策定することを求めているものではない。大綱の主たる記載事項は、各地方公共団体の判断に委ねられているものであるが、主として、学校の耐震化、学校の統廃合、少人数教育の推進、総合的な放課後対策、幼稚園・保育所・認定こども園を通じた幼児教育・保育の充実等、予算や条例等の首長の有する権限に係る事項についての目標や根本となる方針が考えられる。また、大綱が対象とする期間については、法律では定められていないが、首長の任期が4年であることや、国の教育振興基本計画の対象期間が五年であることに鑑み、4年~5年程度を想定している。
大綱の策定権は首長にあるが、教育行政に混乱を生じることがないようにするため、総合教育会議において、教育委員会と十分に協議・調整を尽くすことが求められる。首長が、調整がついた事項を大綱に記載したときは、首長及び教育委員会の双方に当該事項を尊重する義務が生じ(第1条の4第8項)、策定した大綱の下、それぞれ所管する事務を執行していくことになる。一方、首長が教育委員会と調整がついていない事項を大綱に記載したとしても、教育委員会は当該事項を尊重する義務を負うものではなく、第21条(現行法第23条)に定められた教育に関する事務の執行権限に基づき、教育委員会が判断することになる。
現行法第50条は、平成19年改正において、いじめによる自殺等の事案において、教育委員会の対応が不適切な場合に、文部科学大臣が教育委員会に対して是正の指示ができるよう設けられた。
しかしながら、大津市におけるいじめによる自殺事案の際に、「児童、生徒等の生命又は身体の保護のため」という現行法の要件については、当該児童、生徒等が自殺してしまった後の再発防止のためには発動できないのではないかと疑義が生じた。
このため、事件発生後においても同種の事件の再発防止のために指示ができることを明確にするため改正したものである。つまり、今回の改正は、あくまで要件の「明確化」のための改正であり、要件を追加して国の関与を強化するものではない。
改正法は一部の規定を除き、平成27年4月1日から施行することとされている(改正法附則第1条)。
一方、改正法の施行の際現に在職する教育長は、その教育委員会の委員としての任期中に限り、なお従前の例により在職するものとしている(改正法附則第2条第1項)。また、この場合において、現行法第2章等の関係規定は、なおその効力を有することとしている(同条第2項)。
現行法では、教育長職は、教育委員としての任期中(4年間)在任するものとされており(現行法第16条第2項)、また、教育長は、教育委員会の実務の責任者として、4年間を通じて施策を計画的に構想、実施していることが通例であることから、一律に制度移行を行うと現場に混乱が生じるおそれがあると考えられたため、施行日において、在任中の教育長については、その教育委員としての任期が満了するまで、現行制度の教育長として在職するものとし、徐々に新制度に移行していくこととしたものである。これにより、旧制度から新制度への教育の継続性・安定性の確保を図ることとしている。
今回の改正によって、都道府県知事の教育行政における役割がより一層重要となった。新教育長の任命、大綱の策定、総合教育会議の開催といった改正法に基づく事務だけでなく、従来からの教育委員の任命や予算の編成など様々な場面で、教育委員会に対してより一層のご支援をいただくことを期待している。
昨日の議会のポイントはここだと思います。
『
八木議員
「プラン策定過程で保護者や教員の意見を聞かず、会議で話し合った形跡もない。民意を反映していないのでは」
栗林芳樹・学校教育課長
「選挙で選ばれた町長が出席する総合教育会議で合意したことは民意の反映。その後町民から意見も聞いている」
』
プランの提案は田村町長から2016年4月にされたということも、大きなポイントだと思います。
2015年4月に教育委員会制度が変わり、首長の権限が大きくなりました。
中央教育審議会における議論では、その制度改革により、
『教育行政の責任が、福祉やまちづくり等他の行政分野と同様に、首長に明確化されるというメリットがあるものの、首長が教育行政の執行機関となる点について、首長の影響力が強くなり過ぎるのではないかという懸念があった。』
と言う事で、
『中央教育審議会における議論では、主として首長、経済界、行政学者が首長への責任の一元化を求めてA案を、教育関係者、教育行政学者が教育の政治的中立性、継続性・安定性の観点からB案を主張し、答申においては、A案を改革案としつつも、B案を別案として示し、中央教育審議会答申としては異例ではあるが、ほぼ両論併記に近い答申がとりまとめられることとなった。』
とあります。
B案を主張した教育関係者、教育行政学者からの意見が是非聞きたい。
平成27年02月 新たな教育委員会制度について(全国知事会HPより)
http://www.nga.gr.jp/data/report/report26/150213.html
以下、報道をまとめました。
朝日新聞記事ーーーー
「夏休みは子の学力下がる」 吉田町長が議会で経緯説明
朝日新聞 2017年9月14日朝刊
吉田町の田村典彦町長は13日の町議会で、夏休みを16日程度に短縮することを含む町の教育改革案「TCPトリビンスプラン」を発案した経緯について問われ、「4~6月に学力が上がってきて、7、8月に低下する。長期の夏休みは学力に最大のマイナス効果」と発言した。大石巌議員の質問に答えた。
田村町長は「10年ぐらい前から夏休みに関心を持ってきた」とし、「明治政府が海軍兵学校や陸軍士官学校に合わせて、学年を4月始まりとした。世界は9月始まりが標準で夏休みは学年の終わりにあり、問題はない。日本の夏休みはガラパゴス。あらゆる問題は夏休みが学年の途中に設定されたことで起きている」と持論を展開した。
この日は5人の議員が同プランについて質問。プランは昨年4月の町の総合教育会議で田村町長が提案。教育委員会が原案を作り、今年2月23日の総合教育会議で全会一致で合意した。八木栄議員が「プラン策定過程で保護者や教員の意見を聞かず、会議で話し合った形跡もない。民意を反映していないのでは」とただすと、栗林芳樹・学校教育課長は「選挙で選ばれた町長が出席する総合教育会議で合意したことは民意の反映。その後町民から意見も聞いている」と答えた。
(2017年9月14日 朝日新聞静岡版)
静岡新聞記事______________
吉田町議会 夏休み短縮巡り議論
“ニュース|静岡朝日テレビ”
http://www.satv.co.jp/0100news/?CategoryId=shizuoka&id=0
子どもの学力向上や教員の多忙化解消などのため、来年度から夏休みを16日程度に短縮する教育改革案を打ち出している吉田町で、町議会9月定例会が始まった。きょうは登壇した6人中5人の議員が、夏休み短縮に関して質問した。町民の反応についてどう感じているかを問われた田村典彦町長は、「教育について町民が真剣に考えるきっかけを与えた。町民だけでなく、教育全体の問題で国から注目を浴びている」と話した。また別の議員からは、当事者の教員からはどのような意見が出ているのかという質問があり、教育委員会の担当者は「夏休みは16日あれば十分」という賛成意見や、「これによって負担が軽減されるとは思えない」などの反対意見があったと答弁した。また教育長は、夏休みの短縮は原案のままでなく、先月までに集約した保護者らの意見を元に、修正した上で進める考えを強調した。
吉田町教育改革で質問集中 (静岡県)
吉田町の教育改革は、夏休みの短縮などで論議を呼び、13日に開かれた吉田町議会の一般質問では、教育改革関連に質問が集中している。吉田町議会は13日から一般質問が始まり、初日には質問に立つ6人のうち5人が、町が2018年度から本格的に進めようとしている教育改革について質問する。議場には多くの町民などが傍聴席を埋め、関心の高さを見せている。吉田町は、教員の多忙解消と子どもの学力向上などをめざし、授業日数を平準化して220日以上確保する教育改革を2018年度から本格的に実施する方針を改めて示した。また、連続休暇の短縮化について、具体的には夏休みや冬休みなど、どこをどれだけ短くするなどは今後の検討課題だと説明した。 [ 9/13 12:28 静岡第一テレビ]
吉田町の教育改革”夏休み短縮”町議会で論戦
SBS 20170913
昨日、二つの報道がありました。
今までこのブログでは触れてきませんでしたが、吉田町では8月に役場の職員による殺人未遂事件がありました。子ども未来課の職員が、児童扶養手当の手続きを巡るトラブルで、町民に刃物で重傷を負わせたという事件です。
昨日は、その職員が起訴されたというニュースがありました。
夏休み短縮問題は、学童保育の問題とセットなので、全く関係無い問題ではありません。
この事件には不明な点が多すぎる為、今後の調べを待ちたいと思います。
そして、もう一つのニュースは、ツイッターで女子高生がデマを流したというものでした。
最初にこの記事を見たのは、オンラインニュースでした。
思わずツイッターで「吉田町長」と検索せずにはいられませんでした。
最初に湧いた感情は、「子ども相手になんて大人げない」というものでした。
でも、大人げないのは町?報道?
何度も読み返したのですが腑に落ちない部分がいくつもあったのと、中日新聞しか報じていないので、今日、中日新聞記者と吉田町役場の両方に電話で確認しました。
知りたかったことは以下のようなことです。
・中日新聞はどのようにしてこの情報を知ったのか?
・町幹部は「再発防止のためにも何らかの対応を求める必要がある」と話しているとあるが、女子高生に求めるのか?何らかの対応とはなんなのか?
どちらも丁寧に答えて下さいました。
・中日新聞には一般の人からツイッターについての情報提供があり、町とは別に調査して高校と個人を特定したとのこと。
・町は「町幹部」が誰かを特定できていない。弁護士には相談したが、ネットで誤情報が流れた時の一般的な対応を相談しただけで、高校へは確認の連絡も入れていない。中日新聞に町が情報提供したというようなことは無い。逆にこの記事については抗議を申し入れた。
私からは、「デマを流すのは良くないですが、子ども達は動揺していると思います。ご配慮願います。」とお願いしました。
正直、動揺したのは子ども達だけではないと思います。
この記事を読んで、私が持ったような疑問を多くの人が持ち、その疑問は不安に繋がり、自由に発言する空気は壊れていくと思うのです。
なので確認することにしたのです。
電話に出てくれたのは、出張教育委員会にも来ていた方でした。
今後も子ども達の為にこの活動を継続していくつもりなので、よろしくお願いします、こちらこそ、と和やかに電話を切りました。
この件で、ネットリテラシー、情報リテラシーと共に、顔の見える関係でのコミュニケーションについて、いろいろと考えさせられました。
これ以上、不必要な不信感を募らせたくない。
町にとって、子ども達にとって、何がいいのかと考え議論していく環境を作りたい。
事実確認を都度しながら、合意形成のプロセスを慎重に歩みたいと思います。