ある教員から、ネットに公開して下さいと頼まれました。
先生たちにも声を上げて欲しい。
学校現場で教員の人権がこんなにも踏みにじられている(三者面談 TCP Triwins Planに関する Q&Aマニュアル)ということを、今まで知りませんでした。
メッセージで情報を頂ければ、このブログで代理で公開します。
 
 
 
 1 高等学校体験入学の件
 
 先日の出張教育委員会において、「吉田町だけ夏休みを減らすことへの対応として、どのような機関やグループと交渉しているのですか」という質問が住民側から投げかけられました。それについて町教委は「(現在夏季休業中に行われている)高校一日体験入学については県教委、各高校と交渉中。体験入学を午後にすることは可能。吉田中学校の生徒が多く参加する高等学校にについては吉田中学校の生徒のためだけに体験入学を開設することも可能(と聞いている)。」と答弁したそうです。
 その答弁を聞いて、通常の中学校教員は喜ばしいとは感じません。むしろ「町の教育施策のためだけに、町立ではない高等学校の負担増やしてしまって良いのか」と困惑するのが当たり前です。
 なぜなら、一方で「教員の多忙化解消」「働き方改革」を強調しておきながら、高等学校の教員を間違いなく多忙にしているからです。
 このTCP Triwins プラン(以下TCPプラン)にはこれ以外にも多くの矛盾点があり、「多忙化を解消したい」という願いが本当にあるのかどうか疑問視されています。
 このプランは平成23年の「広報よしだ」が発行された時点で、すでに町長の腹の中にあったものです。時に乗じて「働き方改革」という「思いやりめいたもの」を後づけしただけなのです。ですから私たち教員には到底納得できる由もないのです。
 
   
 2  TCPプランの教員に対する説明の件
 
 出張教育委員会において教員に対する説明は 2月15日 2月28日 4月のPTA総会 6月28日 7月26日以降 に行ってきたということですが、いずれも説明は一方的で、「もう決まったことだから」というものであったそうです。
 「報道で知った」というのはいささか大げさな部分もありますが、「あれ、(前から言ってたあのことは)もう決まっちゃったの?決定なの?」という感覚はありました。つまり、協議をしたり意見交換をしたりした記憶は全くないということです。
 町教委側は「(一般の教員とではなく)校長を通して協議を重ねてきた」と説明をすると思いますが、校長ですら町教委からの提案に対しての反対は許されない状況にあると思われますので、事実上は決定事項をただ知らされただけという表現と変わりないと思います。
 
 私たちは「静岡県」に採用された県の教員です。もちろん町や市への赴任が決まった際にはそこの市町に対する宣誓を行いますが、県採用の教員であることは間違いありません。つまり、どの教員も吉田町への赴任が命じられることはあるわけです。
 町教委が「教員に対する説明はした」と強く主張するのであれば、少なくとも「吉田町との交流の多い地区(牧之原市、川根本町、御前崎市、菊川市、掛川市、島田市、藤枝市、焼津市)に現在勤務している教員にも同様の説明をし、理解を求めておく必要があるのだと思います。
 
 
 3 土曜学習(公設学習塾)の件
 
 吉田町は平成26年度から「土曜学習」を実施しています。
 現職の教員も駆り出されるため、組合の方でも抗議してくれていました。
 もともと私たち教員は、「学校5日制」には「教員の休日を増やす」という意味以上に「学校ではない場所で、学校にはない学びの場を提供する」という意味があるととらえていますので、土曜日に子どもが「学校に来て」、「先生から」、「国語や算数の」勉強を教わるというスタイルが全くイメージとかみ合わなかったのです。
 吉田町の土曜学習も「先生が教える」という部分が「ボランティアのお兄さんが教える」に変われば、ずいぶんとらえ方が変わります。もちろん学ぶ内容も、「国語や算数を」ではないものに変わればさらに理想的ですが。
 そのようなことを求めて組合が抗議したようですが、その時も吉田町はそれを無視して、実施にこぎつけました。
 当時は全国学力・学習状況調査の小学校国語Aの最下位問題が大きく取り上げられてきましたので、町教委としてはそこに対する策を打ちたかったのだと思います。
 「土曜学習」は平成28年度から「公設学習塾」と名前を変えました。
 しかし、実際にはそこには半強制的に教員がかつぎ出されています。
 子どもに勉強を教えるのが嫌なわけではありません。でも、私たちの考える「家庭や地域の人と学ぶための土曜日」とはイメージが異なりすぎるので多くの教員が違和感を感じ、講師を引き受けるのをためらっています。
 先日も中央小学校では、「公設学習塾」の講師の受け手が見つからなかったのか、町教委との間に入った職員が奔走して、引き受け手となる教員をさがしていたと聞きました。
 これが「教員の多忙化解消」「働き方改革」を追求する町の姿なのかと矛盾を感じざるをえません。
 
*発足当時の土曜学習も現在の公設学習塾も教員だけが教えているわけではありません。しかし教員が多く含まれていることは事実です。
 
 
 4 学力に対する考え方の件 
 
 3の内容にも関連しますが、吉田町教委は「学力」というものに対するものの考え方において、教員と深い溝があります。
 教室で見ればわかるのですが本当にいるのです、どんなに何度も教えても何も理解できない子どもが。
 でも、その子どもたちは決してダメな子ではないのです。算数はできなくても、漢字を覚えられなくても、その子なりの味のようなものをもっているのです。その味のようなものを磨いていくことが、生きるための力をつけることで、それも広い意味での学力(能力)だととらえる教員は非常に多いと思います。
 だから教員は点数が大きく取り沙汰されるのをとても恐れます。それがあまりにも加熱することは「勉強ができない子はダメな子だ」と価値づけけてしまうのと同じことだからです。
 全国学力・学習状況調査が始まった時から、県ごとのランキングが出たり、市町や学校が他の市町や学校の点数を意識したりするようになりました。
 教員はそれを冷ややかに見つつも、行政からの要求には応えなければならないという責任感を背負い、強いジレンマを感じてきました。
 その影響が色濃く出たのも吉田町でした。最下位問題以来、吉田町では各小中学校の平均正答率をインターネット上で公表するようになりました。
 小6、中3の担当教員は(前年度に小5、中2を教えた教員も)プレッシャーを感じ、「このたった一つの調査の結果が『学力』ではない。これで人間の価値が推し量られるものではない。」と自分に言い聞かせつつも、所属する学校の児童・生徒や同僚、校長に余計な心配をかけるのはいけないことだという考えから、いつの間にか「全国学力・学習状況調査のための練習」をやったり、調査を意識した内容を授業で扱ったりするようになってきました。
 
 (他の学校でも実施していたかもしれませんが、)住吉小学校では、今年度も全国学力・学習状況調査の前に放課後の時間を使って調査対策として過去問などを児童にやらせたそうです。
 そうなってくると、もはやそれは「純粋な学力」ではなく、大人の都合に巻き込まれた子ども達による点取り競争になるわけです。住吉小学校の教員に問題があるのではなく、たった一つの調査の取り扱いをそこまで高めてしまった当時の川勝知事や、それに反応するかのようにこの問題を取り上げた町教委の施策に問題があったということだと解釈されます。
 仮にも住吉小学校は、未来の学校夢プロジェクトで働き方改革の先行研究をしている学校のはずです。
 本来ならば、放課後に時間をとって調査対策を実施するなどということは、多忙化の要因に他ならないのですから、町教委が歯止めをかけなければならないはずです。施策も答弁も矛盾だらけです。
 
 学校とはそういう場所なのです。
 いろいろな人の思いや意向に応えるためにいつも必死で、自主的に際限なく仕事を増やしていく流れの中にあるのです。
 そのような部分にメスを入れず、授業の日数を多くしただけで「労働時間が平準化」されるなんて何もわかっていないとしか言いようがありません。