ぬうむ -175ページ目

クラブ・ワールド・カップ決勝

リガ・デ・キトとマンチェスター・ユナイテッドで世界最高野クラブ・チームを決める戦いが行われました。


大方の予想どおり(?)、キトは人数をかけて守り、カウンターまたはフリーキックからの得点を狙うのに対して、マンUは、しっかりボールを保持し、サイトからの攻撃に真ん中での早いパスまわしで相手ディフェンダーを翻弄しようとする。どちらもそれなりの持ち味を出しながら、0-0で前半を終え、後半に1点勝負の予感を残した。


後半に入ってすぐマンUのセンターバック(ヴィディッチ)が一発レッドで退場すると、キトの攻撃のリズムがよくなってくる。しかしながら、素早い攻撃でゴール前のロナウドからのパスを左サイドで受けたルーニーがシュートを決めマンUが先制。キトも攻撃をするが、結局タイム・アップ。マンUが優勝しました。


さて、この日本の12月の風物詩ともなった「クラブ・ワールド・カップ(前身はトヨタ・カップ)」も今年でいったん日本から離れてしまいます(2011年にまた戻ってくる)。クラブ・ワールド・カップ自体が何となくお祭りっぽく感じていたので、寂しいです。

クラブ・ワールド・カップ(3位決定戦)

これに勝てば、去年の浦和レッズに続いて世界で3位という「クラブ・ワールド・カップ」3位決定戦がガンバ大阪対パチューカで争われた。本当に世界で3位とか4位とかではないにしても、それはそれで世界レベルの大会で「3位」の称号は日本としては、これくらいしか狙えないのが実情なので、頑張ってもらいましょう。


パチューカは若干守備の選手の入替があって、4バックのスタート。G大阪はマンU戦と同じシステム。ボール保持率をテレビで盛んにいっていたけれど、パチューカ65%なんていう数字は大して意味をなさないような気がするほどG大阪優勢で試合が進み、29分にスルーパスに飛び出した山崎がシュートを決めてG大阪が先制。


後半は、どうも両チームとも疲れちゃったようで、特に負けているパチューカの攻撃が単調で人数もかけずに迫力のない、チョット面白くないゲーム展開で双方無得点。結局、1-0でG大阪が世界第3位のクラブ・チームになりました。おめでとう。


さあ、1時間後には、決勝が始まります。

第3部 ルクノーの悩み(5)

目 次 第1部 カトムスへの道(1)  2008年11月08日
           (2)  2008年11月09日
           (3)  2008年11月10日
          (2)  2008年11月16日
          (3)  2008年11月16日
          (4)  2008年11月24日
          (5)  2008年11月25日
          (6)  2008年11月30日
          (2)  2008年12月07日
          (3)  2008年12月13日
          (4)  2008年12月15日
          (6)  2008年12月23日
エピローグ            2008年12月24日

「そうか、本気で2人がそう思っているのならボクも反対しないよ」
「分かっていただけたようですな」ルクノーは軽くお辞儀をしてみせた。「それでは、これからわたくしはマクシンと今後のことについて話し合いをいたしますので、これで失礼いたします。お出口は、お入りになったところまで戻っていただいて、ケータイから『****』を発信していただければ、開きます。これから1時間以内に出ていただけないと屋敷内のスキャニングが始まりますので、ご注意ください」
「それって、もうマクシンやレイナと会えないってこと?」
「はい、ホルス様。マクシンは私の妻となりますので・・・」ここで、あのいつも無表情だったルクノーの口元がゆるみ、何とレイナを見ながらウインクをした。
(ひょっとしてレイナを連れて行けってこと?)声に出したくなかったので、脳内会話でマクシンに聞いてみた。
(ふぉふぉふぉっ、そうじゃよ、ホルス)


「じゃあ、4人でもう少し話をしない?」とボクが提案すると、
「そうですな。では、私の部屋でティータイムにいたしましょう。レイナ、貴重品を持ってわたくしの部屋にきなさい」ルクノーが答えてくれた。
「わかりました。5分後にはうかがえます」レイナはいったん自分のルームに戻った。


    ◇    ◇    ◇    ◇


医療科学班の最上階のスリナグの部屋では、スリナグとリアンの研究チームそしてジュリアとカウスが誰をイコロドに派遣するかについて話をしていた。会議テーブルから離れて、シン・ジーが一人手もち無沙汰にいすに座っていた。
「よし、ではリアンとチャンパー、タイ・ミアナ、ジュリアそしてカウスの計5人を軍事部の特別派遣隊に合流させる。それでいいな」とスリナグが決定したことを全員に確認した。チャンパーとタイ・ミアナはリアンのチームのメンバーで、優秀な若手である。


「チョット 待テ。僕ハ ジュリアノ 安全ヲ 確保スル タメニ ココニ 来タンダ。ジュリアガ 行クト 言ウノナラ、僕モ 一緒ダ」とシン・ジーが言った。
「いや、だめだ。研究者以外には行くことはできない」とスリナグ。
「デキナインジャ ナインダ。行カセルンダ」シン・ジーは少し大きな声で言った。
「脅してもだめだぞ。お前が行ってもこのチームの役には立たないんだ」ここまできっぱり言われると無理押しもできない。
「ジュリア、ソレデイイノカ?」
「ありがとう、シン。これから行くところは、あなたの力でどうにかなるというところではないと思うの。めどがたったら、私の息子探しの手伝いをしに来てくれる?」
「ウン ワカッタ。ウィルスドモヲ 蹴散ラシテ キテクレ」


装備や資材とともにスリナグと、シン・ジー、派遣チームの5人は、内務部本部ビルの敷地にある移動トンネルに向かった。
「シン、あなたは、ホルスとマクシンの手伝いをして。息子が見つかったら借りたドーム外ケータイで連絡するからね」
「ヨシ、ワカッタ。ホルスト 合流スル。コッチハ 任セロ」
装備を整えた5人は、イコロドの首都カンディに向かって移動を開始した。


    ◇    ◇    ◇    ◇


同じ敷地内の内務部本部ビルの会議室では、イコロド対策本部が急きょ拡大設置され、これまでに得た情報がすべて集中し膨大なデータベースを作り出していた。軍事部の特別派遣隊の活動状況もリアルに映像が送られてきた。医療科学班の16チームはすべて治療特効薬の開発を長時間続けている。


「ニゴーヒ、もしあなたが、医療科学班の研究者だったらイコロドに行きたいと思った?」オーラン=ガバドは、会議机の向かいにいた第2部長官に聞いた。
「ふーん。難しい問題ですね。自分が自信を持っているのだったら行ったかもしれませんね。けれど、私にはこういうのは性分とは言えません」
「そうね。研究者の道を歩んできたことのないものにはわからないわね」


そういっている間に、イコロドの首都カンディに着いた5人が特別派遣隊のリーダーとコンタクトを取っている映像が流れてきた。カンディの首都機能が入ったビルはウィルス汚染の被害にあう前にシャットアウトしているので、感染患者はいない。さっそく、500メートルほど離れた病院に向かうことになったらしい。


やがて、ビル出口に臨時で設けられたシャワー殺菌室を経て軍事部の特別派遣隊の10人と、リアンのチーム5人が20人乗り用の移動カプセルに乗って出発した。

オーラン=ガバドは、その画面を見ながら、ケータイでシン・ジーをコールした。
「オーラン=ガバドです、シン王子」
「ナンダ。ジュリアガ 出発シタノデ、コレカラ ルームニ 帰ルト コロダ」
「本部でジュリアたちの活動が見られますが、こちらにおいでになりますか?」
「ソウカ、ソレデハ ソチラニ 行キタイガ ドウヤッテ 行ケバ イインダ?」
「それでは、私の秘書官のティガディをそこまで向かわせますので、そこでお待ちください。5分もあれば伺えます」
「ヨシ、ココデ 待ッテイル」


    ◇    ◇    ◇    ◇


「ふーん。でも何でマクシンに一目ぼれなんてしたんだろうね?」とボクは素直にルクノーに聞いたんだ。だけど、マクシンはそう取らなかったみたいだ。
「ふん。どうせわしゃあ、年寄りで、品もなくて全然魅力なんてないって言いたいんじゃろうが」
マクシンのいつもの毒舌が聞けてちょっと安心した。しかし、ルクノーとマクシンって見た目や性格も全然違うのにこれでもナイス・カップルといえるんだろうか?

「わしも、一目ぼれなってぇのは信じておらなかったんじゃが、いまとなってはお互いに一目ぼれだったんかもしれんのう」マクシンはなんか他人事のように言っているけれど、紅茶(?)を飲みながら、ちらっとルクノーを見たりしている。


「レイナ、お前は地球に戻るのか?」マクシンが聞いた。
「そうですね、わたしはこの前の3日間特別に許されたときに久しぶりに地球に戻って、やっぱりここよりも地球がいいなって思ったんです。選べるのなら地球を選びます」とレイナが答える。
「そうじゃな。わしもカトムスの淡白な生活よりも活気のある地球のほうが好きじゃな」
「そうだよね。ここは犯罪がないかもしれないけれど、すごく楽しいことってないよね」とボクはカトムスに来てから感じていたことを言った。
「ふん。でもおまえさんはかなり冒険をしたじゃないか」
「確かにそうだけど、カトムスの生活って意味で言ったんだよ」


    ◇    ◇    ◇    ◇


カンディの病院についた内務部のチームは、軍事部の協力のもとに約400ある治療用カプセルにフラバス感染による死者を安置した後、液状イオン化レジデスを注入して、弱電流を流したところだ。
「あと20分もすれば生体反応があちこちから起こるはずよ。コンソールから目を離さないで」リアンが全員に言う。軍事部のチームは、5人で生き返った人たちを一般治療ルームに移動してね。残った5人で新たな遺体をカプセルにセットして」


予想どおり、17分後に初めての生体反応が現れた。
「やったわ。こんなに早いなんて思わなかった。一般ルームに運んで。チャンパー、ジュリアと一緒に行って。タイ・ミアナ、あなたにはこれからたまってくるデータベースの解析をたのむわ。カウス、あなたは液状イオン化レジデスの状態を確保してね」
それぞれリアンに言われると実験の成功に喜ぶ暇もなくただちに持ち場に移った。


ここの病院には、事前に整備された一般ルームが35あり、それぞれに20のベッドがある。手前のルームに軍事部の2人、チャンパーと同行したジュリアは、患者が若い女性であることを確認した。治療用カプセルから出した段階ですでに自力でしっかり呼吸している。まだ意識は戻らないが、チャンパーの話では再生後1時間もすれば状態は安定し、意識も戻るはずだとのことだ。
「ああ、それに、彼らはフラバスの抗体ができてるから、再度かかる危険性がないよ。最高だね」とうきうきしながらジュリアや軍事部の2人に言った。


やがて、2体目と3体目が運ばれてきた。
「やあやあ、こりゃ大変だな。僕らだけじゃ手が足りなくなるよ」とチャンパーは言って、ケータイでリアンに連絡した。「リアン、この病院には1,000体以上の死体があると聞いている。50%生き返ったとしても、15人じゃとても対応できないよ。最低でも50人のスタッフが必要だよ」
リアンが答える。「そうね。今5体目に生体反応が現れたところ。オーラン=ガバドもここの様子は見ているはずよ。軍事部もね。スタッフの大幅増員が必要なのはわかっていると思うわ。ちょっと辛抱してよ」
「はいはい、わかったよ。ジュリアが言ってたけれど、ここの医療スタッフを最優先で再生したほうがいいんじゃない?」
「それはもうやってるわよ。でも生き返ったからってすぐには戦力にならないわよ。しばらくは覚悟しといてね」


    ◇    ◇    ◇    ◇


内務部本部ビルの会議室でこれらの様子を見ていたシン・ジーは、
「スゴイナ。神ノ 領域ヲ 冒シテ イルンジャ ナイカ?」と言った。
「ここは、タヌールや地球と違って『神』という概念はありません」オーラン=ガバドはそう答えた。


死体再生治療が始まって約1時間。
オーラン=ガバドは、ラフォルに今までの経過をまとめて報告させた。
「治療死体は、574体。198体がこの治療で再生しています。再生率でいうと33.4%ですな。まだ1時間ですから、この率は45%程度まで上がる可能性があります。再生後は、かなり速いスピードで生体反応も復活しています。最初に再生した10体については、フラバスによる身体的影響はまったくみられません。大成功ですな」
「よくやってくれました。結論が出るまでには、まだまだ時間がかかるでしょうが、素晴らしい成功です」


「しかし、少し問題がありましてな。10歳未満と110歳以上の再成率が極めて少ない。いずれも10%未満ですし、この首都カンディは発生源からかなり遠いため再生した者も死亡してから3~8日と比較的最近だと思われます」
「そうですか。第2次チームを派遣します。リアンのチームで残った7人のうち5人を派遣します。現在活動中の5人に1人ずつ付いて、5組に分かれます。各組は、イコロドの各中心都市に配置します。軍事部には200名の増員を依頼します。エタワ、あなたはナシク一族にこのことを報告してください。ニゴーヒ、あなたは軍事部に依頼してね」オーラン=ガバドがそういうと、2人の内務部長官とラフォルは「了解」と言ってそれぞれの業務を始めた。
「そうだ。リアンはジュリアと組ませてバランゴーダに送ってちょうだい」


    ◇    ◇    ◇    ◇


結局、マクシンを置いてボクとレイナはゆっくり歩きながらボクのルームに戻ってきた。
「ルクノーって、信頼できる人なの?」というボクの質問にレイナは答えた。
「規律正しくて他人にも自分にも厳しい人ね。ナシク一族だけれど、誰に対しても平等に扱ってくれるわ」
「じゃあ、やっぱりマクシンを置いてきてよかったのかな」
「うん。うそはつけない人だからその辺は心配ないと思うよ」


「ところで、君を地球に返す方法が思いつかないんだけど、どうしようか」
「結構頼りないよね、ホルス」とにこやかにレイナは言うが、ぐさっときた。
「ジュリアとシン・ジーという仲間がいるから、彼らに相談してみるよ」と言ってケータイでシンに連絡をした。

「コッチハ ソレドコロジャ ナインダ。ジュリアガ イコロドニ 行ッテ イルンダ」
「えっ、イコロドってウィルスが蔓延しているんでしょ」
「ジュリアノ 理論ガ 元ニナッテ 完成シタ、死者再生ノ 治療チームノ 一員トシテ 派遣サレテ イルンダ」
「ええっ。死者が生き返るって、そんなぁ」ボクは変な声を出していたらしい。レイナには笑われ、シンには「倒レルナヨ」と言われてしまった。
「イマ、内務部ノ ビルデ、ジュリアタチノ 活動ヲ 見テイル。コッチヘ 来ナイカ?」
「いや。いまレイナが一緒なんだよ。マクシンは置いてきちゃったんだけれど、これからどうしたらいいかわからなくて連絡したんだ。そっちも大変みたいだね」
「ワカッタ。トリアエズ、一度 ソッチニ 行クカラ 待ッテ イテクレ」


    ◇    ◇    ◇    ◇


1時間ほど前に、ジュリアとリアンは軍事部の特別派遣隊員40人を引き連れてバランゴーダに到着した。やはりこの地区最大の病院を本拠として、設備もほぼ整ったところである。ケータイがコールを受けたことをジュリアに伝えた。


「ジュリア、わたしよ」
「ああ、オーラン=ガバドさんですね」
「そう。再生治療が進んでいるのはあなたのおかげよ」
「いいえ、リアンのチームが驚くほど優秀だからです。わたしは手伝っているんです」
「そんなことないわ。それよりね、あなたの子どもナザレスがバランゴーダにいるってことは前に言ったわね」
「はい、もちろん覚えています」
「そこから、1キロほどの寄宿舎にいるわ。と言っても生きているかどうかもわからないの・・・」
「本当ですか。会えるんですか?」
「もちろんよ。あなたは5名の特別派遣隊員と一緒にそっちに行ってちょうだい。地図はケータイに送ったわ。あなたにはあなたの子どもを捜して、必要があれば治療をするというのがわたしからの命令です」
「わかりました。ありがとうございます」


リアンにそのことを話すと、「こっちはわたしと特別派遣隊員で充分よ。頑張って探してきてね」と言われた。人選後20人乗りの移動カプセルで寄宿舎を目指した。


    ◇    ◇    ◇    ◇


内務部本部ビルの会議室。

オーラン=ガバドは、ジュリアにバランゴーダの寄宿舎行きを指図した後にラフォルに2回目の報告をさせた。
「再生治療が始まって約4時間経過しました。治療死体数は、3,611体。再生数1,086、率は30.1%に落ちました。10歳未満と110歳以上については相変わらず10%未満です。再生後の状態については検査上まったく支障のない健康体という状況です」
「再生率の下落理由は?推測でいいわ」
「では、推測で。病院のような場所以外の一般ビルでの死者が対象となったこと、つまりこういう自体そのものをまったく想定しておらず、結果早期の死亡をした・・・」
「死後何日からの死亡率が落ちているの?」
「まだ3,600ですから、統計としては不足ですが、8日を過ぎると極端に落ちます」


「再生率50%を超える可能性は?」
「ううむ、現段階では開発者が現場で医療行為に当たっておりますのでな」
「リアン・チームのこちらに残った2人を中心に、ムルタン・チームを再生治療率アップの研究にまわして」
「しかし、彼らもそろそろ体力の限界に来てますぞ」ラフォルにそう言われて、オーラン=ガバドは初めて彼らの連続勤務時間を知った。
「わかった。効率も落ちるわね。全チーム6人を10時間、4人を12時間交替の勤務体制にして」
「了解。あなたも少し休まれてはどうですかな?」


    ◇    ◇    ◇    ◇


ルームでボクがレイナにカトムスに来てからのことを話しているとシン・ジーが帰ってきた。
「彼女ガ レイナカ?」
「そうだよ、シン・ジー。レイナ、彼がシン・ジー王子だよ」
「ホルスを助けてくれたようでですね。ありがとう」
「イヤ、礼ナンカ イラナイ。タヌール人ハ 困ッテイル ヒトガ イルト 助ケルノハ 当タリ前 ナンダ」


「そうだ、ジュリアのことを話してくれない?子どもとは会えたの?」
「イヤ。シカシ、オーラン=ガバドノ 計ライデ イマ 子ドモガイル 施設ニ 向カッタ」
「全員助かりそうなの?」
「再生率ハ 30%台ノ 前半ダ。3分ノ2ハ 再生デキテ イナイ ヨウダ。アトハ、ウィルスノ 治療特効薬ノ 完成ヲ 待ツバカリ ダナ」


「オ前ト レイナハ 地球ニ 帰ルノカ?」
「うん。レイナも地球のほうがいいって言ってるし、ボクも帰りたいんだけど、ジュリアや君のことが心配だし、第一どうやったら地球に帰れるかわからないんだ」
「オマエニ 心配サレル ヨウニ ナルトハナ。ジュリアモ 僕ガ イルカギリ 心配ハ ナイ。内務部ナラ 僕ノ 頼ミヲ 聞イテ クレソウダ。オーラン=ガバド二デモ 頼ンデ ミルカ」
「いや、やっぱりジュリアが帰ってくるまでいるよ。レイナはどうする?」
「そうね、わたしもホルスの友達が活躍しているところを見てみたいわ」

「ナラ 決マリ ダナ。3人デ 内務部ニ 行コウ」

レイナがどうなるかはわからなかったが、シン・ジーがいれば何とかなるだろうと思ってボクたち3人は内務部本部に向かった。


    ◇    ◇    ◇    ◇


バランゴーダの寄宿舎に着いたジュリアたちは捜索を開始した。オフィス内のデータを見るとここには3歳から8歳までの子どもが300人居住している。最後の記録では、全員が自分の部屋にいることになっていたので、さっそくナザレスの部屋を探しに向かった。


ドアは簡単に開いた。しかし、ベッドに横たわる子どもを目にしたジュリアは部屋の中に入ることができなかった。
「ジュリア、どうしました?」特別派遣隊員が聞く。
「いいえ、何でもないの。ナザレスだと確認できたら、バランゴーダの病院に運んでくれる。あと生きている子どもたちがいるかどうかも確認が必要よ。わたしはしばらくこの部屋にいるわ」


派遣隊員がナザレスの遺体を運びだし、その他の隊員も施設の各部屋で調査を開始するとようやくジュリアはナザレスの部屋に入り、ベッドに腰掛けた。

G大阪対マンU

クラブ ・ワールド・カップの準決勝は、G大阪とマンチェスター・ユナイテッドでまず争われましたが、結果は5-3(前半2-0)というゴールシーンの多いゲームで大方の予想どおりマンUが勝ちました。ロナウドは先発したんですけど、ルーニーは後半途中からの出場(それでも2点取った)でした。


で、そのルーニーが入ってからはG大阪もよく点を取ってかなり見ている人は楽しめたと思う。ここまでやってくれるとセンターバックとフォワードに大きい選手がいるとかなりいい戦いになるかと思う人もいるんでしょうが、やっぱりそうそう簡単にマンUと互角に戦うというレベルにまでは行かないでしょうね。


とにかく、今日は見ていて楽しいゲームでした。


ちなみに、5位決定戦は、アデレードがアルアハリに1-0で勝っています。

第3部 ルクノーの悩み(4)

目 次 第1部 カトムスへの道(1)  2008年11月08日
           (2)  2008年11月09日
           (3)  2008年11月10日
          (2)  2008年11月16日
          (3)  2008年11月16日
          (4)  2008年11月24日
          (5)  2008年11月25日
          (6)  2008年11月30日
          (2)  2008年12月07日
          (3)  2008年12月13日
          (5)  2008年12月20日
          (6)  2008年12月23日
エピローグ            2008年12月24日

「ジュリア、心配していたぞ」うしろから声をかけられてジュリアはびっくりした。振り返ると、パナイク生物研究所のカウスが笑顔で立っていた。
「カウス、どうしたの?」
「アキンから紅色クリカエデの再生についてここに大至急行くようにって言われたんだ。たくさんの紅色クリカエデと同僚も来ているぞ」
「そうだったの。事情は聞いている?」
「ああ、リアンからいま聞いてきたところだよ。イコロドの新型ウィルスと君の推論の概略だけどね」


そこで、ジュリアはカウスを研究室に連れて行き、「じゃあ、準備ができたらここに紅色クリカエデを20本入れてくれる?」
「着いたばっかりだというのに、結構人使いがあらいなぁ。まぁ、ここではリアンと君にしたがうように言われているからね」
「ごめんなさい。少し休んでからにする?」
「いやいいんだよ、全然疲れていないし。それより早く実験をしよう。多くの人の命がかかわっているんだからな」


    ◇    ◇    ◇    ◇


イコロドに関する緊急首脳会議に出席するメンバーは、イツァム・ナーとその4人の子供たち、内務部、外務部および軍事部からそれぞれ5人ずつの計20名である。定刻の11時になると、全員が参加していることを確かめ、イツァム・ナーの長男チャクが議長となって会議が始まった。


まず、内務第2部のニゴーヒがイコロドの現状について報告した。その後今後について検討されることになるが、オーラン=ガバドは、軍事部の急進的な考えを聞くのがいやだった。しかし、議事はそこまで進んだ。


軍事部統括副長ワッディナーが表示モジュールを使いながら説明する。
「この前代未聞の大災厄に対して、現状で医学的な解決のめどが立たない以上ドーム内を高熱処理するしかありません」
高熱処理というのは、ドームの内部に超白熱爆弾で一瞬のうちに焼き払ってしまおうという最悪の手段だ。周りがざわめかないのは、ワッディナーが出席者に前もって個別に自分の意見に賛成するよう話を持っていっているからだろう。


「他にこの問題を解決する方法を提案できるものはいないか?」議長のチャクがうながす。


誰も意見を言おうとしない。仕方ないか、とオーラン=ガバドは発言があるという意思をあらわす、ボタンを押した。
「オーラン、何かいい案が出たのかね?」
「はい議長。医療科学班の研究によりウィルスの原因がつきとめられました。第1次感染を防ぐ方法を提案します」
「そうか。君のところの医療科学班は優秀だからな。説明してくれ」
「はい議長。詳しい説明が必要であれば、医療科学班の責任者を控えさせておりますので呼び出したいと思います」
「いや、まず君の口からわかりやすい端的な説明を受けたい。必要であれば専門家を呼んでもらう」
「わかりました。それではわたしから説明させていただきます」


    ◇    ◇    ◇    ◇


緊急首脳会議が始まったころホルスとマクシンは三たびイツァム・ナーの屋敷の前に来ていた。今回もルクノーは先に待っていてくれた。

「お待ちしておりましたぞ、マクシン」とルクノー。
「わかったわい。それで、レイナはどこにいるんじゃ?」マクシンが応じる。
「そうですな。レイナのことはお約束でしたから、お話いたしましょう。現在メイドとして、イツァム・ナー様のご次男クルカン様の元で働いております」
「そうか、やっぱりここにいたんじゃな。で、どうしてここに呼んでくれんのじゃ?」
「はあ。そのようなお約束はいたしました覚えはございませんが。それに、ここから出すにはクルカン様の許可が必要です」
「なんじゃと。それじゃあ、わしらが入って会えばいいんじゃな」
「とんでもございません。長の一族の許可がないかたは一切お屋敷に入ることはできません」
「何いっとるんじゃ、この石頭。まるで会えんといっとるようなもんじゃないか」
「おっしゃるとおりでございます」平然とルクノーは答える。

「ふざけるんじゃない!このとんちき。おまえさんが門を開けてくれりゃ入れるじゃろうが」
「物理的にはおっしゃるとおりでございます」
「じゃったらさっさと門を開けんかい」
「ふーん。困りましたな」


「では、こういたしましょう。マクシン様は今後このお屋敷にわたしの付き人として生活していただくことを条件にお二人をお屋敷の中に、レイナのルームにご案内いたします」
「はあぁ?」これにはボクも驚いた。きっとマクシンのことだからすごい勢いで「バカにするな!」とか言うんだろうと思っていたが、マクシンはマクシンで顔を赤くして何にも言えない状態だ。


    ◇    ◇    ◇    ◇


オーラン=ガバドは立ち上がって言った。「新型ウィルス、フラバスはアマノキの種子が発生源だとほぼ確定されました。これは寒冷地帯独自の植物で、摂氏20度を超えると活動を停止し、28度を超えると枯れます。したがって、第1次感染を防ぐためにイコロドの気温を3日間28度に設定します」


軍事部統括副長ワッディナーが口を出す。「しかし、人体に寄生したウィルスは、平均体温32度で活動しているじゃないか。それでも感染するのだから、その程度気温をあげても死滅はしないだろう」
「だから、第1次感染の防止策と申し上げたのです」オーラン=ガバドもひかない。「ワッディナー統括副長がおっしゃる人体感染していまだに活動しているウィルスに対しては、現在医療科学班が有効と思える特効薬を開発中です。また、同時にあまり時間がたっていない死体が再生する方法も研究中です」
「なんだと、死者が生き返るというのか」ワッディナーがバカにしたように云い捨てる。
「その通りです」


「では、医療科学班の責任者を呼んでもらおうか」と議長のチャク。
「はい、ただいま」オーラン=ガバドがケータイを操作すると、10秒後には医療科学班責任者であるラフォルが会議室に入ってきた。オーラン=ガバドが発言を続けた。

「皆さん、医療科学班責任者のラフォルです。いま概略をご説明したとおり、フラバスの発生源と第1次感染を防御し、治療特効薬の開発および死者の再生について詳しく説明いたします」


ラフォルの説明が終わるとまず、ワッディナーが発言した。
「なんだ結局、時間延ばしで成功しない可能性の高い話じゃないか」
外務部責任者のジャイプルも「この星全体がウィルスに汚染される可能性もあるんじゃないか?」と聞く。
ラフォルは「他のエリアで感染する恐れはありません。移動トンネルに入る前に防護服を着用するなど完全殺菌を施しております」とそれに答えた。
オーラン=ガバドも付け加える。
「時間延ばしとのことですが、多くの人命がかかっております。すでに2億人以上が犠牲になっており、さらにそれを上回る犠牲を強いるやり方はあまりにも非情というものではないでしょうか?」


チャクが言う。「非ナシクから非情という言葉を聞くとはな」

「申し訳ありませんでした。しかし、人はこのカトムスの貴重な資源であります。是非2日程度のご猶予をいただきたいと思います」


ここで、いままで静かに聴いていたイツァム・ナーがゆっくり立ち上がり、議長席に向かって歩き出した。その場にいた全員が彼の動きを緊張して見つめている。
「オーラン、2日で解決できる可能性は?」静かだが、よく通る声で聞く。
「はい、80%と考えております」
「それは、おまえが考えているということだな?」
「はい。おっしゃるとおりです」部下の能力を信じていますから、と付け加えようと思ったが、イツァム・ナーに理由を説明することは無駄であることはわかっているのでやめた。
「よし、わかった。2日待つ。それまでに薬の開発をしろ。気温操作については直ちに行なえ」イツァム・ナーの言葉に逆らうものはいない。軍事部もしたがわざるを得ない。2日間の猶予を与えられたが、もし、それまでに解決しなければ内務部首脳陣は全員交替となるだろう。もちろん、開発できなければ軍事部の案が直ちに執行されるだろう。オーラン=ガバドは責任の重大さをひしひしと感じたが、自分の組織の研究者たちを信じるしかなかっった。


    ◇    ◇    ◇    ◇


マクシンは顔を赤くしている。怒り出すと思ったが、何もしゃべらない。
(ねぇ、マクシン、いったいどうしちゃったの?)
・・・返事がない。
「どういたしましょうかな」とルクノー。
(マクシン、こんな条件受け入れることないよ。)

しばらくしてからやっとマクシンが口を開いた。「わかったわい」
(ええっ。どうしたの?そこまでしなくてもいいよ)
(いや、いいんじゃ。おまえのためだけじゃないんだ)
(どういうこと?)ボクとマクシンの脳内会話をルクノーが破った。
「そうですか。よかった」
「ふん。じゃあ早速レイナに会わせなさい」とすかさずマクシンが言う。
「はい、約束ですから。わたしについてきてください」とルクノーは、門の方向に向かって歩きだした。ボクたちも後についていくと、門の横の壁の一部に自動的に人が立って入るのに丁度いいくらいの穴が開いた。ルクノーの後について中に入ると、そこは太陽が降り注ぐみごとな庭園だった。こまかく見れば、地球の植物と違うから見慣れないものばかりだけれど、緑も花も美しかった。


庭を横切って、2階建てくらいのビルの前に来た。立ち止まってルクノーが言う。
「いま、レイナはこの中のルームにいます。呼びますか?それとも入っていきますか?」これはボクに向かって聞いている。「あぁ、そうでした。昨日、日本語の翻訳ソフトのダウンロードをしてありますから、日本語でお話ください」
「うん、わかった。そうだな、呼んでもらえるかな」
「かしこまりました」とルクノーは言って、ケータイを取り出しなにやら操作した。「あと少しで出てまいります」
やっとレイナに会えるんだ。


    ◇    ◇    ◇    ◇


緊急首脳会議が終わってから12時間後。


「ジュリア、やったな」とカウスは大きな声で言った。
「まだ死体で実験をしていないにしても、これなら一定範囲の死者なら再生できるわ」とリアンも実験の成果を認めた。考えれば、もう50時間も連続していろいろな実験を行なってきた。結局、人の組織の酵素のうち紅色クリカエデが持つトリイ酵素に元素構成上最も近いものを対象に集中的に実験を繰り返したのがよかった。理論上そして人に近い動物実験の結果、100%とは言えないが、液状イオン化レジデスに死体をつけ、気温27度を保つこと、そして酵素を刺激するために弱電流を流すことによってiPS細胞の再生に成功した。


チームリーダーのリアンは、「実際の死体で試したいところだけれど」と希望をもらした。「ウィルスで死んだ人はイコロド以外にいないし、他の理由で死んだ人を生き返らそうとしても規則があってできないわ。本番にかけるしかないわね」
「ええ。スリナグに連絡してイコロドに派遣隊を出してもらえるといいんですが・・・」とジュリアが言う。
「そうね、派遣隊は軍事部から選抜されていて何らかの対応をしているけれど、私たちも行った方がよさそうね」
「研究者が必要ですから、わたしも行きます」ジュリアは言った。その目を見れば迷いがないことはわかるだろう。
「ダメよ。まだ特効薬ができていないんだから。今の段階では、報告とわたしのチームの派遣の準備をうながすことしかできないわよ」とリアンが言う。


    ◇    ◇    ◇    ◇


オーラン=ガバドは内務部本部ビルの会議室で前回と同じく第2部長官のニゴーヒ、第3部長官のエタワそして医療科学班責任者ラフォルと打ち合わせを行っていた。イコロドの気温を28度にする了解を得て直ちにそれが実行され、すでに第1次感染の危険性が極めて低くなったと現地の軍事部に所属する特別派遣隊からの連絡ももらっていた。

次いで、スリナグから死体の再生が可能な段階になったので「治療」をイコロドで行いたいと連絡を受けた。


「軍事部の特別派遣隊ではきないことなの?」とオーラン=ガバドが聞く。
「まぁ、できるといえば、できるんでしょうが、理論に基づいた実験をしていないので、応用がきかないでしょう。できれば、こちらからリアンのチーム10人を送りたいんですが・・・」とスリナグが答える。
「リアンのチームは貴重な存在よ。もしものことがあると困るから、人数を5人にしてちょうだい」
「そうですな。実は、ジュリアとシン・ジーも行きたいといっているのですが」
「この治療にその2人は必要ないでしょう」
「いや、人体再生自体はリアンのチームの成果ですが、ベースになったのはジュリアの持論ですから、本人もぜひ行きたいといっているんですよ」
「わかったわ。ジュリアだけならしたかないわね。シン・ジーは絶対だめよ」
「では、そのように伝えましょう。人選は任せてもらっていいですかな?」
「あなたに任せるわ。あと、ワッディナー統括副長にはわたしから連絡をするわ」

「ところで、第2次感染を防ぐ、あるいは感染したウィルスをなくす特効薬の開発は進んでいるの?」


    ◇    ◇    ◇    ◇


そのビルの出入り口に人影が見えた。レイナだ、ボクは直感した。
「レイナ」と思わず呼びかけた。
「あっ?ぬうむ?」とレイナは少し戸惑いながら言った。
「ああそうだよ。ここではホルスっていう名前なんだけど、間違いなくボクだよ」
「信じられないわ。ここまで来るなんて」
「みんなの助けがあってここまで来られたよ」
「みんなって?あら、真鍋先生のお母さんが助けてくれたの?」とマクシンに向かって聞いた。
「いや。今はここにはおらんが、他の人にも助けられたんじゃ」マクシンが答えた。


「それでは、再会の喜びはおふたりでしばらく味わってもらうことにして、わたくしとマクシンはわたくしのルームへまいりましょう」とルクノーが言った。
(マクシン、3人でジャファナに行く方法はないの?)
「それは無理でございますな、ホルス様」えぇ、脳内会話がルクノーには筒抜けだったんだ。
「ルクノー、ボクたちは地球で育ったんだ。あなたの言いたいこともわかるけれど、ボクたちの住んでいた世界ではこんなに自由のない生活じぁあだめなんだよ」ボクは抵抗した。
「ここはカトムスでございますからな。『郷に入っては郷にしたがえ』ということわざがあるのではないですかな?」
「けれど、郷から出る自由だってあるんだ」
「あなた様のお住まいの地域ではそうでしょうが、自由のない地域も多いのでは?」ルクノーは地球のことにかなり詳しいようだ。
「そうかもしれないけれど、それは決していいことじゃないんだ」


「しかし、どちらにいたしましても、あなたさまの要望はここでは実現不可能でございます。レイナとお会いになることができただけでも幸運だったと思っていただかなくては・・・」

「マクシン、マクシンはボクたちとジャファナか地球に戻りたいでしょう?」ボクは矛先を変えてみた。
「そうじゃのう。今考えると、レイナと会えただけでも上出来じゃったと思っとるんじゃよ。しかも、こんなわしを必要じゃと言ってくれるもの好きにも会えたことじゃし」
「えええっ。マクシンは、ここでルクノーのメイドとして不自由な暮らしをしてもいいっていうの?」
「いや、そういうわけじゃないんじゃよ。実はな、ホルス、お前には言っていなかったが、ルクノーから結婚してくれって言われとったんじゃよ」そ、そ、そんな!
「そんな話聞いてないよ。だいたいが、昨日会ったばっかりじゃない」
「ホルス様、地球では『一目ぼれ』というらしいですな。わたしが初めてマクシンに会ったときに感じた心の揺れ具合はマクシンに恋をしてしまった、という結論に達したんでしてな」そ、そんなバカみたいな、とは言わなかったが、ボクのそういう気持ちを察したらしく、マクシンが言った。
「まぁ、そういうわけでな。わしは、ルクノーともう一度新しい人生を始めてみる気になったんじゃよ。ここではメイドじゃなくて、配偶者じゃからそれなりの地位も、もちろんジャファナへだけでなく他のエリアへの行き来も全く自由になるんじゃよ」


なんだか、マクシンもルクノーも本気らしい。こんなことをだれが予想しただろうか?