ジェフ残留!
奇跡は起こりました。
札幌対鹿島の放送を観ていたんですが、後半30分頃までは他会場の情報でジェフ千葉はFC東京に0-2で負けていました。勝つことがジェフの最低限の条件でしたから、この段階でやっぱり駄目かぁ、とあきらめていたんですが、ほんの10分程度で同点から逆転に成功して、4-2で勝ちました。
前節15位、16位の磐田、東京ベルディとの勝点差が2だったので、後はこの2チームがともに負ければ、ジェフの残留、1チームしか負けなくても入れ替え戦で勝てばいいということになった。
しかし、磐田は大宮に、東京ベルディは川崎Fにともに負けたためジェフの15位が決まりました。残留です。よかった。
東京ベルディの降格は残念だし、歴史のある磐田もまだ安心できませんが、今日は素直に奇跡的なジェフ千葉のJ1残留を祝いたいと思います。
【得点経緯】
千葉 FC東京
0-1 カボレ(前39分)
0-2 長友 佑都(後8分)
1-2 新居 辰基(後29分)
2-2 谷澤 達也(後32分)
3-2 レイナウド(後35分)
4-2 谷澤 達也(後40分)
J2最終節・上位の結果
J2の最終節(第45節=試合数は各チームとも42)が先ほど終わりました。第1位(広島)と第2位(山形)は決まっていましたが、今日の試合で第3位つまりJ1第16位(下から3つ目)と入替戦を戦うチームが決定しました。ちなみに、今日は上位4チームとも勝っています。
順 位 チーム 勝点
第1位 広島 100
第2位 山形 78
第3位 仙台 70
第4位 C大阪 69
ということで、わずか勝点1の差でセレッソは来期もJ2で戦うことが決定しました。
さあ、これからJ1の残留の熾烈な戦いが始まります。わがジェフ千葉(対FC東京)のテレビ放送はありませんが、札幌対鹿島戦を観ながらジェフを応援したいと思っています。
ジェフのスタメンです。
GK 櫛野 亮
DF 坂本 將貴
DF 池田 昇平
DF 早川 知伸
DF 青木 良太
MF ミシェウ
MF 戸田 和幸
MF 工藤 浩平
MF 深井 正樹
FW レイナウド
FW 巻 誠一郎
第3部 ルクノーの悩み(1)
クイロンの長(おさ)ベオハンは自分の行いを十分に反省したみたいで、ボクたちに協力的だった。まぁ、説得役がマクシンとシン・ジーだったから、脅したりすかしたりしたのかもしれない。ベルガオンへのボクたちの移動許可も取ってくれたし、ジュリアの子どもについてもわかる範囲で調べてくれた。
5年前に子どもを引き受けたのは、内務第3部のマウンダという人だったということが、引受書のサインでわかった。また、ジュリアの子どもは男の子だった。
「なんか、そんな気がしていたの」と喜びを隠そうともせずにジュリアが言ってヒパ・ジーと顔を合わせた。
今度は、ヒパ・ジーが言った。
「兄サンハ、ジュリア、ホルス、マクシント 一緒ニ ベルガオンニ 行ッテ チョウダイ。ワタシハ、両親ヲ 安心サセル タメニ タヌールニ 帰リマス」
「要スルニ、3人ノ 護衛ヲ ヤレッテ コトダネ」これはシン・ジーだ。
「ソレダケデハ ナイワ。ナンテッタッテ 兄サンハ タヌールノ 王子 ナンダカラネ。困ッテイル 人タチヲ 助ケナイト イケナイノヨ」
特に問題はないとボクは言ったけれど、シン・ジーは全員が無事に戻るまでということで、カルワールの居住区にいたタヌール人の戦士20人をベオハンの屋敷に呼んだ。
ボクたちは移動トンネルのあるビルの地下に集まっていた。
「ジュリア、マタ 会イマショウ」と言いながら、ヒパ・ジーはタヌール人戦士1人とステージに上がった。
「ヒパ、私の子どもを見にきてちょうだい」
こうして、ヒパ・ジーはカルワールからタヌールへ、ボク、マクシン、シン・ジーそしてジュリアの4人はベルガオンに向けて出発することになった。
◇ ◇ ◇ ◇
カトムスでは、すべての決定権がナシク一族にあるとしても、それは最終決定なのであり、細かいことについては3つの部門のそれぞれのレベルで対処している。カトムス星内のことについては「内務部」、カトムス星以外のことについては「外務部」、そして場所に関係なく争いに関しては「軍事部」が担当している。それぞれの責任者は「3役」と呼ばれ、ナシク一族の長の家族に次いで、この星では権威のある存在である。
オーラン=ガバドは、内務部責任者としてナシク一族から信頼が厚い。一族の中でも最高権威者であるイツァム・ナーが若かったころに、直接内務に関する指導を受け、ナシク一族以外では初めての「3役」となった。そのオーラン=ガバドは今も少し迷っていた。
昨日、第1種エリア、クイロンの長(おさ)からオーラン=ガバドに直接連絡があり、クイロン在住者1名、ジャファナ在住者2名そしてタヌールの成人1名の30日間の短期滞在を許可して欲しいということだった。前例にはないことがだ、エリアの長からのたってのお願いでもあり、短期ということもあって許可を出したが、どこかに引っかかるものがあった。
「考えすぎかもしれない。心配だったら、第3部長官のエタワに立ち会ってもらえばいい」さらに考えて、結論を出した。「やっぱり、わたしが見に行こう」予定を確認すると、あと20分後に第32ターミナルに着く。
「ティガディ、10分後に移動ターミナルに行くから、準備をしておいて」とケータイで秘書に伝える。
「ボス。ですが、ワッディナー統括副長との会議が1時間後にミネイラ会堂で予定されております」
「そんなに長くかからないわよ」
15分後、オーラン=ガバドは、秘書のティガディと内務部ビルから移動シャトルを降り、ターミナルビルのK棟の入り口を入った。ティガディが事前に連絡していたので、所長のほか2名の白のスーツ、つまり研究者が待っていた。第32ターミナルを見下ろす監視室に入ると、すでにトンネルの受け入れ準備は完了していた。
「4人の経歴をちょうだい」とオーラン=ガバドが所長に向かって言うと、若い研究者がコンソールを操作して、壁面モジュールに4人のケータイから事前に送られてきたデータを表示した。
ティガディが気づく前にオーラン=ガバドも気がついていた。
「シン・ジーはタヌールの王子ですね。一体どうして非公式にここに来たんでしょう?」
「そうね。クイロンのジュリアは、5日前に要治療対象者に指定されているのね。彼女とシン・ジーが知り合った翌日に指定が取り消されているのも面白いわ」
そうこうしているうちに、移動開始までカウントダウンが始まったので監視室にいる全員が色の濃いサングラスをかけた。
◇ ◇ ◇ ◇
極彩色に彩られたトンネルを高速で飛んでいくという感覚にもう慣れたかもしれない。まったく違和感なくベルガオンに着いた。やはり部屋の中だが、ここはとても広くて1辺20メートルのステージがわずか20センチくらいしか高くなっていない。壁のコンソールに向かって10人はいると思われるの白い色のスーツを着た技術者がいた。それに混ざって、4人ほどグリーンのスーツの人もいる。
グリーンのスーツの1人が話しかけてきた。
「ようこそ、ベルガオンへ。まずは確認のためケータイをお借りします」いつもの決まりのようで、ボクたちはその男にケータイを渡して、手続きが終わると返してもらった。
「ベルガオンは初めてのようなので、ルームに着いたらモジュールの32チャンネルをご覧ください。旅行者にとっていろいろ便利な情報がまとめてあります」
「おぉ、さすがベルガオンじゃのう。では、早速ルームに向かうことにしますじゃ」とマクシン。
「では、ルームまでご案内しましょう」
(ねぇマクシン、レイナのことを聞かないの?)
(わしらは観光者じゃ。落ち着いてからまずわしらで調べようじゃないか。わからないときに聞けばいい)
やり取りを見ていたオーラン=ガバドは言った。
「とにかく、今ここでわたしが出ていっても仕方ないわね。様子を見ることにしましょう。ティガディ、あの4人に監視をつけておいて」
「はい、それではさっそく手配します」とティガディはケータイで内務第3部の補佐官に連絡をした。
◇ ◇ ◇ ◇
ルームにたどり着くと、4人で集まってさっそくジュリアの子どもとレイナのことを表示モジュールの検索で調べたけれど、どちらもわからなかった。
(やっぱり、聞いてみるしかないね。役所みたいなところはあるの?)今ではボクもすっかり無声会話に慣れていた。
「ここには内務部、外務部、軍事部の3つがあるんだけれど、内務部が担当していると思うわ。ベルガオンのことは第1部で、特殊エリアについては第4部が担当してるわ」とジュリアが32チャンネルの内務部案内を見ながら言った。
(よし。じぁあ、第1部から当たってみよう)
「若いもんはせっかちでいかんのう。ここまで来たんじゃ、ちっとは少し落ち着かんか」とはマクシンだ。
(わかったよ、マクシン。じゃあ、今日はご飯にして映画でも観ながら過ごそうか)
「映画、わたし地球の映画を見たことがあるわよ」とジュリア。
(へぇ、どんな映画?)
「わたし、生物学者だから、地球の生物に関する記録映画を観たわ。そこで初めて地球人の親子の愛情を知ったのよ。私たちも多分持っているはずだけれど、長い時間産むだけの生活を続けてきていて、そういう感覚が鈍くなってきていたのね」
(ふーん、そんなものかなぁ。ボクは男だし、まだ子どもがいないからよくわからないけれど、親子の愛情って、動物でも人間でも自然に備わっていて、なくなることなんてないと思っていたよ)
「ソウダナ、ワレワレ タヌールデモ 親子家族ガ 一緒ニ イルコトハ 普通ダシナ」
「ねぇ、男と女も愛情ができるんでしょう?」ジュリアが聞いてきた。
(うん。好きになっちゃうことはあるよ)
「じゃあ、ホルスはレイナを愛しているの?」
(ううむ。そこまでは・・・。とにかく、小さいときから12年ぶりにあってほとんど1日しか話していないからね)
「そうじゃな。1回や2回話しただけでは本当に愛しているかどうかはわからんな」
(お互いの考え方を受け入れられたり、信頼できたりするところから始まるのかもしれないね)
「ふうん」
その日の夜は、遅くまでそんな話が続いた。
◇ ◇ ◇ ◇
「ワッディナー統括副長、わたしはその案にはとても承諾できません。評議会にかけても軍事部以外の承認は得られないと思います」オーラン=ガバドは、軍事部の本部がある敷地内のミネイラ会堂16階の密室会議室でたった2人で非公式な会談を行なっていた。
「しかし、オーラン。イコロドをこのままにしておくと他にも影響するんじゃないかね。少なくともその可能性はあるだろう」とワッディナーは軍事部に所属し、地位的にはオーラン=ガバドの下位にあるが、ナシク一族であることで対等以上に接している。
「あさって、緊急首脳会議が開かれます。ナシクはもちろん外務部も含めた上でこの重要な件にどういう対処をするのか議論すべきでしょう。」
会議室を出るとティガディが近寄り、
「20分後にニゴーヒ長官が執務ルームでお話したいことがあるそうです」と移動カプセルに向かいながら言った。ニゴーヒは第1種および第2種エリアを担当する内務第2部長官であり、オーラン=ガバドと同じく、非ナシク一族で、女であるという共通点もあり、日頃から親しくしている。
「わたっかわ。すぐにでもあうと伝えておいて」
執務ルームの入り口にはすでにニゴーヒが待っていた。
「イコロドの状況はどう?」まず、オーラン=ガバドが言った。
「はい、変化はありません。今までに生存が確認されていたビル内の避難者は、今のところ全員無事です」とニゴーヒが答える。「しかし、今日はそのことではなく、クイロンで少しおかしな動きがあったので報告に来ました」
「なんなの?レポートでは出せないこと?」
「ええ、今の段階では。というのも、昨日タヌールの成人約20名がカルワールから移動してきましたが、長のベオハンや別回線で警護隊長のトルニスに聞いても別に異常がないというのです。過去にこれだけのタヌール人の成人が第1種エリア以降に来たことは国王の公式訪問以外にありません」
「ベオハンは移動の理由を言った?」
「はい。単なる観光で、全員カルワールのタヌール人居住区の者なので特に問題はないといっています」
「ちょっと気になるわね。わたしからも聞いてみましょう。ティガディ、ベオハンへ非探知回線で繋いでちょうだい」
しばらくしてティガディがOKサインを出した。オーラン=ガバドは立体モジュールが出るのを確かめて言った。
「ベオハン、昨日の許可を出した観光客は無事に着いたわ」
「これは、責任者みずからご報告いただけるとは、恐縮です」
「ねぇ、ベオハン。あの4人の本当の目的はなんなの?ごまかしてもだめよ」
いっしゅん、言葉に詰まったもののベオハンは答えた。
「じ、実は、ホルスというジャファナの者は同郷のレイナという者を、クイロンのジュリアという者は、5年前に産んだ子どもを探しにそちらに向かいました。マクシンとシン・ジーはそれぞれの同伴者ということです」
「なんてことなの。子どもなんかに何の用があるっていうのかしら?」
「それはわかりません」
「ジャファナは地球との窓口ね。ホルスとマクシンには身体的な検査をしたの?」
「いいえ。今回の観光者のうちジュリアを除いた3名についてはケータイの記録だけです」
「わかったわ」
回線を切ろうとするとベオハンが付け加えた。
「あの者たちは決して悪いことはしません。人を探しているだけで・・・」
「わかったわ。少し様子を見るわ」
ブログネタ:最近買った「冬物」教えて

http://www.felissimo.co.jp/sunnyclouds/collection/v8/cfm/products_detail001.cfm?GCD=338068&GWK=3639
(申し込んだときには、色を選べたと思ったんですがね・・・)
とにかく、これを買ったので出かけることが苦にならなくなった、今は。
第2部 クイロンの虎(6)
ボクが起きたのは、カトムス標準時間の9時。早めにベオハンの屋敷に行って、中の案内をしてもらっている最中に2人で移動トンネルのあるビルに忍び込もうという考えだ。大きなバッグがひとつなくなって身軽になったボクと相変わらず大荷物のマクシンは、トン・ジーを連れて10時前にベオハンの屋敷に着いた。
「悪いがのう、ネクルトを呼んでくれんかのう」とマクシンが門のところにいた黒っぽいスーツのカトムス人に言った。2~3分後中から出てきたのは、他の人だった。
「今ネクルトは休憩中だから、わたしが要件を聞こう」
「そうですかい。この子を今日中に慣れさせるために、また少しお屋敷の中で過ごしたいと思っとるんじゃがのう」
「そうか。それでは、案内する隊員を呼ぶから少しここで待っていてくれ」
「分かりましたわ」
さらに、5分程待たされてやっと門が開いたと思ったら、黒っぽいスーツの人が3人も出てきた。
(マクシン、ちょっと多すぎない?)
(やむを得んじゃろう。とにかくすきを見て実行じゃ)
ボクたちが庭に案内されたそのときに、マクシンの命令でトン・ジーが奥の方に走りだした。
すかさず、マクシンが案内した3人に言う。
「お願いじゃ、あの子を捕まえとくれ」
2人は、走って追いかけて行ったが、一人残っている。その後ろからマクシンはバッグから取り出したピストルのようなものを警護隊員に向けて引き金をひいた。光線が出て、警備隊員は声もあげずに倒れた。ボクまでびっくりした。
(なんてことをするんだ!マヒ電磁波で充分だったんじゃないの?)
(こいつら警護隊が着ているスーツにはケータイのマヒ電磁波なんかじゃ効かんのじゃよ。死んじゃいないから、安心せい)
それを聞いてほっとしたボクは、「よし、じゃあ、あのドアに行こう」と言って、走りだした。ドアに辿り着くと、後からマクシンが追いついた。合いカギを渡されたんで試してみた。なんと、いとも簡単に開いた。
が、しかし。ドアの向こうには先ほど出てきた警護隊の人を先頭に他にも5~6人の警護隊員がピストルを構えてボクたちを待ち受けていた。
◇ ◇ ◇ ◇
ジュリアとヒパ・ジーは、予定どおり12時になると生物研究所の学生寮の裏手から目立たないところを通りながらベオハンの屋敷目指して出発した。
13時。ほぼ予定通り移動トンネルのあるビルの裏手に着いた。
「じゃあ行くわよ。しっかりわたしにつかまっていてね」とジュリアが言うとヒパ・ジーもうなずいてジュリアの探索スーツの中に潜り込んできた。ジュリアが腰のスイッチをオンにすると、ジェット・フライヤーが静かに振動し始めた。ベルトに付いた2本のレバーを操作すると、ゆっくり体が浮き始めた。(これなら楽勝)と思ったジュリアは、さらにレバーを操作してビルの屋上にいとも簡単に着陸した。
ジェット・フライヤーは屋上の影に隠し、建物の中に入るドアを探した。これも簡単に見つかったが、鍵がかかっている。鍵穴がないタイプなので、採取用のナイフを鍵穴に差し込むような強引なことはできない。ジュリアは、パラライザ・ガンをポケットから取り出して、ドアのノブ周辺に向けて引き金を引いた。
(強電磁システムのドアだったらこれで開くはず)ノブを握りゆっくり力を入れると、思ったとおりドアが開いた。2つ目の障害もクリアした。ヒパ・ジーが先頭に立って階段を忍び足で降り、1階まで来たが、地下に下りる階段が見つからない。
あまり動き廻りたくなかったので、1階のドアが見える物陰で、しばらく様子を見ることにした。1~2分あたりの様子をうかがっていると、ヒパ・ジーの体がびくっと動いた。ジュリアは心配そうに見つめたが、さらに2~3回痙攣のような動きをするとヒパ・ジーは床に横たわって目を閉じた。
あまりにヒパ・ジーのことが頭を占領していたので、ジュリアはいつの間にか警護隊に取り囲まれていたことに気がつかなかった。
◇ ◇ ◇ ◇
ボクとマクシンが監禁されたのは移動トンネルのあるビルの2階の1室だった。周りの色がグレイで、家具といえばテーブル1つとイスが4つの窓もない部屋に通されて2時間も経っただろうか。ドアが開けられて、草色のスーツを着たカトムス人の女の人とその人に抱かれて子どもの虎、多分タヌール人の子どもが入ってきた。シン・ジーかと思ったが、ベストを着ていないし、もっと小さいので別人だということはわかった。警護隊員は、2人を中に入れるとドアを閉めて何やら鍵をかけたようだ。
マクシンがカトムス人に話しかけた。そのときは、ボクのケータイも取り上げられていたんで、カトムス語はまったくわからなかったけれど、マクシンが通訳してくれた。
「お前さんは、どうしてその子と一緒にこんなところに入れられたんじゃね?」
聞かれた女性は、タヌール人を見つめていて最初は気がつかなかったようだ。びっくりして声のあった方に顔を向けると、
「この子はただタヌールに帰りたいだけなんです。どうか帰してあげてください」という。
「いやいや、勘違いするんじゃない。わしらも捕まっておってな、同類っちゅうわけじゃよ。ふぉっふぉっふぉっ」
「マクシン、笑っている場合じゃないだろう」とボク。
「そうでしたか、あなたたちも捕まったんですか。ひょっとしてあなたたちは、特殊エリアの人ではないですか?」
「そうじゃよ。わしゃ、ジャファナのマクシン、この男はホルスじゃ。ホルスは、わけあってタヌール語を話せんし、今は聞くこともできん状態じゃ」
「わたしは、パナイク研究所のジュリアです。この子はヒパ・ジーという名前です」
「そのヒパ・ジーという子は、ひょっとしてシン・ジーの妹かのう?」
「えっ、ジーと名乗るタヌール人を知っているんですか?多分それはこの子のお兄さんです」
「うん。確かに妹を探してここに来たと言っておったし、妹を感じるとも言っておったぞ」
「よかった。迎えに来てくれたっていうのは本当だったんですね。それで、今どこにいますか?」
「実は、昨晩別行動をしようと言って別れたきりなんじゃよ」
2人がそんな話をしていると、ジュリアの腕に抱かれたヒパ・ジーが目を覚ました。
ジュリアの腕から床に降りたヒパ・ジーは、僕をじっと見つめていた。
(アナタハ 誰?)シン・ジーのときと同じダイレクト脳内会話話だ。
(君はヒパ・ジーって言うんだね。ボクはホルス。シン・ジーと昨日まで一緒だったんだよ。君は妹だよね)
(エエ、ソウデス。兄ハ 今ドコニ イマスカ?)
みんなケータイを取り上げられているので、今度はボクがヒパ・ジーの言っていることを通訳をする番だ。
◇ ◇ ◇ ◇
ボクとマクシンの通訳で4人はいろいろな話をした。シン・ジーがなんとタヌール王家の後継者であること、シン・ジーはひょっとすると先ほど第1成人を迎えたんでヒパ・ジーに影響を与えたのかもしれないこと、ジュリアが、5年前に産んで今はどこにいるのかわからない子どもを探し出すことを決心したことを聞いて、ボクたちの目的についても話した。ヒパ・ジーの体調は、今は全く問題がないとのことだ。
マクシンがよりかかっていた壁の面全体がいきなり大きなスクリーンになって鮮烈にカトムス人の顔が映った。さっきの警備隊の先頭に立っていた人だ。
「諸君、私はクイロン警備隊長のトルニスだ。いきなり久しぶりの犯罪者が4人もこのわたしの常駐している屋敷内で見つかるとは実に驚きだ。現在処分を長(おさ)のベオハン様と協議中である。覚悟して待っておれ」
ジュリアが画面に向かって言った言葉もマクシンが通訳してくれた。
「この子、ヒパ・ジーはタヌール王家の子です。私たちを解放しないと問題は大きくなりますよ。ナシク一族からも咎められますよ」懸命に言っているが、
「はははっ。そこにいる4人が一言も言わなければ、誰にもわからんよ」
「おい、トルニスとか言ったな。お前は、カトムス人の風上にもおけんヤツじゃな。今すぐわれらを自由にせんと天罰が下るぞ」とはマクシン。
「天罰か。あり得ん」と言い切ると、画面はいきなり消えてただの壁に戻った。
「こりゃあまずいことになったのう」と珍しく弱気なマクシン。
「大丈夫だよ、多分」ボクの言う言葉にはまったく説得力がなかった。けれど、ヒパ・ジーは意外にもこう言った。
(ハイ、大丈夫 デス。部屋ノ 奥ニ 行クヨウニ 皆サンニ 言ッテ クダサイ)
◇ ◇ ◇ ◇
ガターンという音ともにドアが倒れた。
その向こう側に立っていたのは成人のタヌール人だった。2本足で立っていたが、ボクと同じくらいしか身長がない。その顔にはなんとなく見覚えがあった。それにあのベスト。そう、成人になったシン・ジーだ。
両手にカトムス警護隊員の足を持って引きずりながら入ってきた。
(ヒパ 元気ダッタカ?)
(兄サン。助ケニ 来テクレテ アリガトウ)
マクシンにもわかったようで、通訳するとうなずいて見せたが、まだ驚いているようだ。
(シン・ジー、ありがとう。でも、警護隊がまたすぐにこっちに来るんじゃないかなぁ)
(ホルス、隣ノ 部屋ニ ミンナノ 持チ物ガ アルカラ、マズ ソレヲ 持ッテ 行ケ。ソシテ、相手ガ 来ル前ニ コッチカラ 出向イテ ヤルンダ)
(よし、そうしよう!)
ボクたちは、隣の部屋――これもシンがドアを蹴飛ばして開けた――で自分のバッグを取り、マクシンとジュリアはそれぞれが持ってきていたパラライザ・ガンを、ボクはジュリアから杖をもらって武器にした。シンは、ヒパ用にオレンジ色のベストを渡していた。ヒパがそれを着るとそのポケットからオレンジ色のケータイを出した。少しの時間それを操作するとどうやらカトムス語の翻訳ソフトをダウンロードしたらしく、ジュリアと2~3言話してにっこりし合った。ついでに、マクシンは地球のそれも日本語の翻訳ソフトもジュリアのケータイにセットアップした。
シンの言うように、屋敷内に長と警護隊長のトルニスがいると思われたので、即断でジュリアは空から様子を伝え、残った4人は敷地内通路が安全であればそこから屋敷に乗り込むことにした。
ジュリアからGOサインが出るとボクたちは一気に屋敷の玄関に向かった。とは言うものの、シンが圧倒的な早さだった。
◇ ◇ ◇ ◇
ボクとマクシン、ヒパ・ジーが玄関に入ったときにシン・ジーから連絡があった。
(長ト 思ワレル 者ガ 1階ノ正面ノ 広イ部屋ニ 警護隊員3名ト 一緒ニ イル。僕ハ 2階ニ 上ガッテ 様子ヲ 見テカラ 行ク)
(わかった。まず最初にボクたちから話してみるよ)
その部屋のドアを開けると、シン・ジーが言ったとおり警護隊長トルニスと2人の警護隊員、それにやけに派手な色のスーツを着た70歳くらいと思える男のカトムス人がいた。
トルニスは驚いた様子でボクたちに言った。
「どうやってあの部屋を出たんだ。お前たちにあのドアを開けることはできないはずだ」
「何いっとるんじゃ。人は見かけによらんもんじゃよ」とここでも、ボクたちの代弁者マクシンがパラライザ・ガンを長と思える人に向けて言った。
「どっちにしても、年寄りのジャファナ人2人と子どものタヌール人1人じゃ我々警備隊員1人にもかなわんじゃろう。おとなしく降参しろ」とトルニスは味方に合図を送りながら言った。すると2人の部下は左右に開いて少しずつボクたちとの間合いを詰めてきた。ボクたちもマクシンは左に、ヒパは右に離れていった。残った僕が一番強そうなトルニスを相手にしなくちゃいけないの?そうこう思っている間にさらに間合いが近くなってきた。そのとき、
「ちょっと待て」とマクシン。
「なんだ、降参する気になったか?」
「いや違うのお。一戦交えるんじゃったら、ルールを決めんといかんと思ってな」
「なっ、なんなんだそれは?」
「おい、そこの老人」と長らしきものに向かってマクシンは言う。「あんた悪いが、ゆっくり1,2,3と言っとくれ。開戦の合図をしてくれんかのう」
「わっ、わかった」指名された者は少し疑問に思ったらしいが、その役を引き受けた。
「では行くぞ。いーち」と言った瞬間、マクシンのパラライザ・ガンから光線が出て見事に警備隊員を一人倒した。なんてことだ。続いてヒパの前の唖然と突っ立っていた警備隊員にも見事命中させて倒した。
トルニスは泡を食ったように言った。
「3で始めるんじゃないのか!」
「いーや、違うぞ。わしゃ、はなっから1で始めて、3で終わらせようと思っとったんじゃ」とまったく平気な顔をしてマクシンが言う。「おいそこの老人、まだ2も聞こえんぞ」と老人に向かって言った瞬間だった。今度はトルニスの反撃だ。右手を振ると鞭のようなものが伸びて、マクシンのパラライザ・ガンを一瞬のうちにたたき落とした。ボクもその瞬間を見逃さないつもりで杖を構えて飛び込んで行ったが、難なくかわされてしまった。ボクに向かって右手を上げたときに、その手首をつかんだのがシン・ジーだった。成人のタヌール人が相手ではいくら警護隊長でも降参するしかなかった。ふう、助かった。
シンはボクを見て言った「オ前ハ 戦イニ 向イテ ナイナ」。そう、そのとおりだ。
ジュリアも部屋の入り口でボクたちの珍活劇を見ていたらしい。ニコニコしている。
さあ、5人そろったから、あとは隅で丸くなっているベオハンと話をつけるだけだ。