巨星落つ
なんてこった。8月30日に紹介したジェームズ・クラムリー氏が死去していたことを今日知った。
共同通信の記事が情報源になったが、わたしが知ったのはだいぶ遅れた。改めて氏の冥福を祈りたいと思います。
ジェームズ・クラムリー:
テキサス州生まれ。69年以降計11冊の小説を出版。78年の「さらば甘き口づけ」はハードボイルドの傑作とされている。本年9月16日、アメリカ、モンタナ州ミズーラの病院で腎臓と肺の疾患による合併症のため死去。68歳だった。
【わたしの紹介記事↓】
カタールに3-0で快勝
ワールドカップ(W杯)南アフリカ大会アジア最終予選の日本の3戦目は、今まで日本が勝ったことのないカタールが相手のアゥエーの試合だったが、前半19分田中達也、が先制した後も後半2分に玉田、同23分に闘莉王が点を加えて3-0で快勝したようです。さすがにテレビは見られなかったのですが、ニュースを見てホッとしています。
オーストラリアも予想通りバーレーンに勝ちました(1-0)。
次の予選は、2月11日ついにオーストラリアと行います。しかし、ホームなので勝っちゃいましょう。
登場人物と地名の整理
お読みいただいている方にお礼を申し上げると同時に、途中で名前が変わってしまったりするというとんでもないことをしているのに気がついて改めて今まで出てきた登場人物と、カトムス星の地名などを整理してみました。旅のおともにどうぞ。
【人の名】
ぬうむ=ホルス(主人公)
加賀美(小学校の同級生、男)
川本(小学校の同級生、女)
為我井=タメ子=レイナ(小学校の同級生、女。「空き地」管理役の一人)
真壁先生(小学校の担任、「空き地」管理役の一人)
山崎光一郎(町会議員、「空き地」管理役の一人)
真壁おばあちゃん=マクシン(元「空き地」管理役の一人、カトムス星特殊エリア、ジャファナ在住)
コスギ(ジャファナの長)
ジュリア(カトムス星第1種エリア、クイロンのパナイク生物研究所の研究員)
ライポル(同クイロンに住むジュリアの定められた相手)
アキン(パナイク生物研究所のリーダー、ジュリアの上司)
カウス(パナイク生物研究所の研究員、ジュリアの同僚)
ベオハン(クイロンの長)
ヒパ・ジー(タヌール人、ベオハンのペットだった)
バルサク(カトムス星特殊エリア、カルワールの長)
ライシンズ(カルワールの長の部下)
【地名(カトムス星)】
特殊エリア(3つ) ジャファナ←→地球
カルワール←→タヌール星
第1種エリア(3つ)クイロン(パナイクが首都、ナルマダ川、シャードル村など)
第2種エリア(3つ)
第3種エリア(1つ)ベルガオン
第2部 クイロンの虎(3)
今度は、気を失わなかった。まばゆい光に包まれた後は、体が宙に浮かぶ感じがして、めちゃくちゃな色彩空間を抜け出した瞬間、足が地面に着いた感じでころびそうになった。
「ねえ、マクシン。カルワールに着いたの?」
(しゃべったらだめじゃ。不便かもしれんが、声に出したらいかん。誰が聞いているかわからんじゃろ)
(わかった。そうするよ)
(ここはカルワールじゃろう)
カルワール側の移動トンネルは、ジャファナと同じように部屋の中で、いろいろな機械類と4人の技術者に囲まれていた。それに、技術者以外にも5人いた。ただ、彼らはみんな頭が動物・・・、そう猫みたいだ。顔や裾から出ている手の甲にも黒っぽい毛が生えている。ボクは少し驚いたが、これがこのエリアの人の標準なのだろう。
ステージを降りると、ドアから同じような感じの5人がやってきた。先頭にいるのがリーダーのようだ。そのリーダーらしき者が言った。
「わたしは、カルワールの長(おさ)バルサクに命じられて迎えにきたライシンズだ。まず、二人の身分を確認させてもらう」
マクシンはすかさずボクに伝えた。(相手が手を出したらケータイを渡すんじゃぞ)
ライシンズの横にいた男(?)がボクとマクシンに向かって手を出してきたので、コスギからもらったケータイを渡した。その男は自分のケータイとボクとマクシンの赤いケータイを重ねて指で何か操作をした。青い光がつき、その男はライシンズに向かって、
「連絡を受けた2名に間違いありません」と報告した。
「よかろう」ライシンズがそう言うと、男はケータイを返してくれ、他の3人とコメを運びにステージに上がった。
「ちょっと取り込んでいてな、十分なもてなしはできそうにないが、長の家に招待するから外で待っていてくれないか?」
「ありがたいことですな。それでは外で待っております」マクシンは丁寧に挨拶した。ボクたちは、ライシンズが指差したドアから外に出た。
建物のあるすぐ外は都会の様相だが、周りの建物は小規模で、高さもせいぜい2階くらいだろう。ここの空気はボクには生々しい感じがして合わない。でも、これは好き嫌いの問題だから我慢するしかない。外には先ほどの猫頭の人が数人歩いていた。みんな落ち着きなくきょろきょろしているように見えた。
(ねぇ、あれがここの人たちなの?)
(わしも実物を観たのは初めてじゃが、カルワールとクヌール星の行き来は結構頻繁じゃから、カトムス人であっても長年の経過であのように変化したんじゃろう。わしらが地球人に近づいたのと同じようなもんじゃな)
(そうか、やっぱり。ところでボクは何もしゃべれなくてもいいのかなぁ)
(ぬうむ、いや、ここではお前の名前は『ホルス』じゃ。お前は60歳のジャファナ・エリア出身ということになっとる。若返り手術をしたが、失敗して口がきけなくなった、とういうことになっておるんじゃ。ふぉっふぉっふぉっ)
◇ ◇ ◇ ◇
翌日ジュリアは、定刻11時にはパナイク生物研究所の自分のブースにいた。カウスと40本の紅色クリカエデの苗木を研究ブースに設置し、実験の準備を始めたが、もうそんなことはどうでもよかった。シャードル村で見つけたタヌールの子どもヒパ・ジーのことが気になってしょうがなかった。
四足で立ち上がってジュリアに向かって歩き出したタヌール人は、結局体が弱っていて途中でまた倒れてしまった。このままにしておいては死んでしまうと思ったジュリアは後先のことを考えずに抱いて、移動カプセルまで戻った。荷物スペースに毛布があったので二重に敷きその上にやさしくタヌール人を寝かせた。
なぜ信用しているカウスにも言わなかったのかジュリアにもわからなかったが、結局昨日採集を終えて居住ビルの前で止めてもらったカプセルから怪しまれずに毛布ごとタヌールの子どもをルームに運び込んだ。ライフソナーと生活維持ロボットには異生物として認識されたが、こんなことがすべて報告されるわけではない。壁から出てきたベッドに寝かすと、目がさめたようだ。一瞬敵意を見せたが、水とお菓子をくれたヒトだとわかったのだろう、表情が和らいだように見えた。
ジュリアはやさしく声をかけた。
「私はジュリアよ。あなたの名前を教えて」
しかし、相手には通じていないようだ。この子に持ち物はないようなので、ケータイもないだろう。しかし、身振りが通じたのか、
「ワタシハ、タヌール ノ ヒパ・ジー デス。助ケテクレテ アダガトウ」という。
ジュリアは、ヒパ・ジーの言葉を理解できているということを伝えるために大きくゆっくりうなずいた。
「ワタシノ 言葉 ワカルノ?」
もう一度ジュリアはうなずき、自分のケータイを見せた。
「デモ ワタシハ ケータイガ ナイカラ アナタノ言葉ハ ワカラナイ・・・」
ジュリアは、壁面表示モジュールの一部に、翻訳ソフトを使いタヌール語で表示できるようにした。
「わたしはジュリアよ。ヒパ・ジーの言葉はわかるわ。それより体は大丈夫なの?」
「ハイ。オカゲサマデ ダイブヨクナリマシタ。デモ マダ オナカガ スイテイマス」
思わずジュリアの顔が大きくほころんだ。
「もう大丈夫ね。ここにはあなたも食べられるものがたくさんあるわよ。動物タンパクがあるものでも出しましょう」
ジュリアは続いて天井に顔を向けて話した。
「ねぇ、オクサン。動物タンパクがたくさんある食べ物を作って」
「了解しました。夕食にはちょっと遅くてお勧めではありませんが、準備します」
「それと、C定食もね」
「それはお勧めできません。この時間だとF定食が・・・」
「いいから作って」
「了解しました」機械はヒトに逆らえないのだ。
5分後にはテーブルにふたつのトレイが出てきた。
今はヒパ・ジーもすっかり体調を戻してルームで帰りを待っているだろうと思うとジュリアは仕事もなかなか進まない。ついに体調が悪いと言って早退することにした。アキンは不審そうな顔をしたが、いやいやながらも認めてくれた。
◇ ◇ ◇ ◇
カルワールの長バルサクの家に案内されたボクたちは、かなり待たされたが、待ち時間はマクシンからカルワールとタヌールのことを教えてもらった。タヌール星の支配者であるタヌール人は、好戦的でプライドが高い。地球よりも文明は進んでいるが、どちらかというと肉体派のようだ。15歳と25歳を迎えた日に体形が大きく変わり、大人へと変化するのも特徴らしい。
(ここからクイロンに行くんでしょ?ベオハンへの貢ぎ物はタヌール人っていうこと?)
(そういうことじゃな。15歳以下ならタヌール人もかわいいペットのようなもんじゃからな)
(でも、そういう人身売買みたいなことをしてもいいのかなぁ)
(なら地球に帰るか?)
(いや、せっかくここまで来たんだから、レイナに会うまでは帰るつもりはないけれど、もっと簡単な方法はないかなって思っただけだよ)
(ふん。安心しなさい。いくらベオハンでも15歳を過ぎたからといって殺したりしないんじゃ。カルワールに戻すだけじゃよ。食べるものも毎日与えられるし、温暖な気候の中で子供時代を過ごせるんじゃからそれはそれで幸せっちゅうもんじゃろ)
(そうかぁ、それならいいだけどね)
先ほどのライシンズが現れて、大広間に案内された。2~30人くらいの人がいる。緑のスーツを着た少し大柄な男の前につれてこられた。
「バルサク様、ジャファナからの転住者2名です」ライシンズはその男(?)に向かって言った。
「ライシンズ、下がっていいぞ」
「ようこそカルワールへ。話はコスギから聞いとるよ。わたしの部屋で話そう」と言うとバルサクは、奥の部屋に向かって行った。ボクたちも後を追った。
「コスギからは、お前たち2人がクイロンに行くまで面倒を見てくれと言われているが、わたしにできることはあまりないぞ」と通された部屋のいすに座るとバルサクはさっそく話した。
「はい、バルサク様。クイロンに行くためにひとつお願いがあります」といやに神妙なマクシン。
「実は、若いタヌール人を1人お借りできれば、と考えているのです」
バルサクはしばらく考え込んだあとに言った。「ベオハンへの貢ぎ物だな。しかし、ここには15歳未満のタヌール人はいないぞ。・・・いや待て」と言うとケータイを出して、操作した。バルサクはケータイの表面を上に向けると小さな人型をしたホログラム映像が浮かび上がった。
「はい、バルサク様。お呼びでございますか?」とホロ映像が応える。
「ライシンズ、昨日違法にここに来たタヌール人は見つかったか?」
「いいえ、ただ今捜索中です」
「そうか。今日ジャファナから来た2人が興味を持っているようだ。お前たちはこの2人に協力してやれ」
「ですが、あの2人はカルワールやタヌールについてあまり知らないのではないですか」
「それは、大丈夫だ。とにかく、捜査状況はわたしと2人にも逐次報告しなさい。それとくれぐれも捕まえるときは丁重に扱うことを忘れるな」
「はい、わかりました」そこでホロ映像は消えた。
「そういうことだ。手掛かりがあれば、ライシンズから連絡が来るはずだ。今日は、町でも見物して疲れたらこの建物の2階の客間を開けておいたから、そこで寝なさい。そうだ、タヌール人街区に行くときには気をつけなさい。彼らは興味深い存在かもしれないが、けんかっ早いからな」
ボクたちは荷物も預けずに、さっそく街に出た。それは、ちょっとした旅行気分だったからかもしれない。
◇ ◇ ◇ ◇
ルームに戻ると、ベッドの下からヒパ・ジーが出てきた。
「オカエリ ナサイ」
壁面表示モジュールをケータイで操作してからジュリアは言った。
「どう?もう元気になった?」
「ダイジョウブ モウ元気ニ ナリマシタ」
「じぁあ、聞くけれど、あなたはどうしてクイロンにいるの?しかも、シャードル村なんてところに?」
「タヌールニ イタトキニ トルニス トイウ 男ニ サラワレテ クイロン二 連レテコラレマシタ。1週間前ニ抜ケ出シテ、アソコマデタドリ着イタンデスガ、モウ動ケナクナッテ・・・」
「なんてこと!ベオハンの動物愛好癖は本当だったのね。ひょっとして、少し前の打撲傷はベオハンにつけられたの?」
「ソウデス。言ウコトヲ キカナイト 杖デ ナグラレマシタ。反抗的ナ 態度ヲシテモ ナグラレマシタ。家ニ 帰リタイ・・・」
「そう、大変だったのね。何とかしてあげたいわ。でも、特殊エリアにあなたを連れて行けるかしら」
「イイエ。助ケテ モラッタウエニ コレ以上 ゴ迷惑ハ カケラレナイワ」
「ちょっと考えてみるわ。ところであなたの歳はいくつなの?」
「ハイ ワタシハ 12歳デス。ソレト アナタト 同ジ 女デス」
壁面表示モジュールを見ながらの会話ではあったが、2人はお互いに心を打ち明けて話すことができた。
◇ ◇ ◇ ◇
ボクたちは示し合わせたわけでもないのに、自然とタヌール人街区に来ていた。地球と違って、ある程度自由にタヌール人はカトムスに来られるようだ。この街区の入り口には門番みたいな人が立っていたが、指示されたディスプレイの横にケータイを当てるとゲートが開き、思ったよりも簡単に中に入れた。
すぐ近くに商店街らしきものがあったが、ボクたちは通貨を持っていなかったので、何も買えない。タヌール人同士の日常品を売っているらしいので、そもそもボクたちには必要がないものだが。ある店の中に入ったとたんボクは、タヌール人とカルワールのカトムス人の違いがはっきりわかった。2足で立っているのは同じだが、存在自体が力強く、虎のようだ。また、タヌール人の成人はスーツを着ておらず、ベストのようなものしか着ていない。そのため黒と黄色の縞模様もはっきり見えた。
「オヤ、珍シイ 客ダナ。ドコノ エリアカラ 来タンダ?」
「はあ。ジャファナから来たばかりじゃよ。ちょっと覗いてみようと思ってな」マクシンは答えた。
「ココニ オ前タチガ 興味ヲ ヒクモン ナンテ ナイゾ。他ニ 行キナ」今までは、椅子に座っていたらしい。急に立ち上がると、2メートル位の巨大な男で、ものすごい迫力だ。
「ほいほい。わかったよ」ここはおとなしく引き下がった。タヌール人って結構付き合いにくいのかな。
店を出るとマクシンが言った。
「やっぱりわしらだけではさっきバルサクが言っていた若いタヌール人を見つけるのは難しそうだのう」
(まぁ、協力してくれるみたいだから少し待とうよ。それに、もしここの人たちが何か知っていても、ボクたちには絶対教えてくれそうにないよ)
「そうじゃな。バルサクの家に帰るとするか」
(いや、このタヌール人街区の廻りをぐるっと見て行こうよ)
ゲートを出るときもすんなりいった。ボクたちは、ゲートの案内を読んだ、と言ってもケータイに翻訳させたんだけれど。この街区は、高さ3メートルの壁に囲まれていて、ゲートが2か所。周囲は約4キロある。マクシンは渋々ながらボクにしたがってくれた。大きな荷物を持って4キロも歩くのはつらいのかもしれない。
「自走カートを借りてくればよたったわい」
しばらく塀沿いに歩いているうちに、ボクは誰かに見つめられていることに気がついた。足を止め、ゆっくりあたりを見回す。
(どうしたんじゃ、ぬうむ)
(誰かがボクを見ているんだ)
20メートルほど向こうの2階建ての家の屋根に猫のような動物がいることに気がついた。猫というよりも小さな虎だ。僕を見つめている。頭の中に声が聞こえてきた。
(オマエハ ダレダ?)
※今回は、フリー素材を扱っているサイト(http://www.iriko34.com/)から絵を1枚入れてみました。
その後の神社のイチョウ
この辺では、今日が多分イチョウの紅(黄)葉を見るのに最高だった
かもしれません。
とても綺麗で、風が吹くとはらはら黄色い木の葉が舞う情景は写真
には撮れなくても(^^;)、心に残るものでした。
で、ブログネタには、イチョウと答えておきます。もみじの鮮烈な赤を
見ると宗旨替えする可能性もありますが。