森博嗣『喜嶋先生の静かな世界(2010)講談社』。理系の大学に進んだ橋場くんの、大学4年生から大学院博士課程を経て、助教授に至るまでを、一人称形式、全編モノローグで書かれた作品で、橋場くんの師にあたる喜嶋先生を中心に、大学のシステムや問題点なども含め淡々と語られる。
これといった起伏があるわけでもなく、橋場くんとその周縁が語られるだけで、これで作品ができるの? と、なんだか変に感心してしまう。
森博嗣:喜嶋先生の静かな世界(2010)講談社
これまで、森博嗣のミステリ作品を紹介してきましたが、こちらは、いわゆるオールド・スタイルな小説で、夏目漱石の『草枕』みたいなといってもいいのかな。やや理系変人の橋場くんと、彼を指導する大変人の喜嶋先生の「静かな世界」感が惻々と押し寄せてきて結構読ませてくれます。
ラストだけは、ややスパイスが効いた風で、ほぉ。と、口が半開きになりましたが「イカロスの墜落」じゃないですが、景色の片隅の小さな波紋のような静かな終わりかたがお洒落で。森博嗣。ほんとに面白い作家です。
花サボテン(エキノプシス・カクタス)
七福神(エケベリア・セクンダ)



