mizusumashi-tei みずすまし亭通信

Do you like mysteries?

 

宮田昇『新編 戦後翻訳風雲録(2007)みすず書房』。宮田昇は早川ボケミス刊行に関わった人物。現在はミステリ全盛といってよく、一般小説でも多少ともミステリ仕立てになっていたりしてごく自然に作品に溶融している。

 

ただし戦後、それこそミステリ作品の出版を手がけた出版社の多くは倒産、もしくは廃業の苦渋を舐めている。まず、翻訳権が高額だったこと。ミステリを愛好する読者がわずかでマーケットが小さかった。江戸川乱歩などが手弁当で読者発掘に精をだしていたのはよく知られている。

 

宮田昇:新編 戦後翻訳風雲録(2007)みすず書房

 

戦後ということもあり、生活に困った詩人たちの多くが翻訳を手がけたこともあり、早川書店の創業者早川清の径行ぶり、詩人田村隆一の無頼など「ほんとかよ」で、その百鬼夜行ぶりが凄まじい。ここに翻訳裏面史が暴かれる。

 

田村隆一は結婚する相手もいないのに、二ヶ月後に結婚式を挙げるといって式場の手配までして、あちこちこちから祝金を集めて酒代に。あげく(誰でもいいと思ったらしく)友人の紹介で嫁をもらい離婚。田村は以後も結婚と離婚をくりかえす。

 

宮田をして「詩人と俗人とは、紙一重である」一見無頼をよそおいながら、俗な人間が少なくない。と語らせる。本書は『戦後「翻訳」風雲録—翻訳者が神々だった時代』の増補版で内容はかなり変更されているとのこと。

 

 

以前にも紹介したのだが、図書館でリサイクル本を頂戴したので改めて拾い読みしている。表紙カバーは手製した。

 

残 菊

 

マユミ