Bjorn Andresen
彼はまだ眠っていた。穏やかな顔が、窓からの光でいっそう白く見えた。死んでいるようにも見える。天使のようにも見える。どうして同じ躰に、毎朝同じ心が戻ってくるのだろう?(森博嗣:ドーマの心臓)
萩尾望都原作 森博嗣:トーマの心臓(2009)メディアファクトリー
図書館で、森博嗣によるノベライズ作品『トーマの心臓』を見つけたときはちょっと驚いた。少し前に森博嗣と萩尾望都の世界の親和性に触れたことがあったからだ。原作を壊すことなく、橋本治『窯変源氏物語』みたいに萩尾望都の世界をたくみに再構築している。
原作では、確か英国ギムナジウムを舞台にしていたのでは? と思うが、森博嗣版ではは日本の設定。時代設定は曖昧だが、なんとなく戦前っぽくもある。が、少年たちの夢みる時代の話だと思えば、どこでも、いつでもいいような気がする。森博嗣の静的な文体がよく似合っている。
クローバー
『トーマの心臓』を読みながら、なんとはなしに夏目漱石の前期三部作を連想した。三四郎、それから、門。ひとりの少年が亡くなり、周縁の少年たちに波紋が広がっていく。なにほどの事件が起きるわけもないのだが、少年たちの心に寄せあう波紋は、ぶつかりあい、重なりしつつ不定形に形を変える。
ハルジョオン
高校生のころ、同じクラスの女子が『ポーの一族』を貸してくれて、初めて萩尾望都のことを知った。もともと、光瀬龍のファンだったこともあって、後に光瀬龍原作『百億の昼と千億の夜』を原作とした萩尾望都の同名作品は記憶に深い。『11人いる』などSF作品はいずれも面白かった。
そういえば、詩人鈴木志郎康による『萩尾望都マンガの魅力』という珍本があったのを思いだした。




