佐々木邦:恋愛心理学 田中比左良 表紙絵写
ネット古書店で佐々木邦『恋愛心理学(1956)東方社』をつい買ってしまう。表紙絵を大好きな田中比左良が描いていて、これはやむを得ない。本著の初出をネット検索したが不明。すでに、太平洋出版社版の『佐々木邦傑作選集 第6巻(1951)』に収録されているので、これ以前の作品ということに。
主人公の三瀬君はK大学の助教授で心理学を専攻している。多摩川の釣りで知り合った歯医者の大場さんと意気投合、世話焼きの大場の奥さんから次々に見合い話を持ち込まれるが、心理学を専攻するものとして恋愛結婚にこだわりを示す。といった、ホームドラマな展開です。
佐々木邦:恋愛心理学(1956)東方社
佐々木邦と表紙絵を描いた田中比左良は戦前からのコンビですので馴染んでいます。田中の乱暴力が活かされた見事な表紙絵で、これについては以前にも紹介しました。
佐々木邦は慶應大学の教授として英語・英文学を教えたクリスチャンで、近代ユーモア文学の草分けとしてその発展に尽くした作家です。ただ、家庭的には不遇で子供たちは(確か)戦死に病死で、あげく妻に先立たれてしまった。ジャンルがユーモア系文学で軽くみられがちですが評価されてもいい作家ではあります。
現在のホームドラマは獅子文六と佐々木邦に負うところが大きいと思っているのですが、娯楽作品は身近にありすぎて、そのありがたみに気がつかないのかもしれませんね。