田中比左良:マダム探偵帖。主婦之友 昭和11年3月号 | mizusumashi-tei みずすまし亭通信

田中比左良:マダム探偵帖(1936.03)主婦之友

 

 

主婦之友(1936.03)表紙

 

雑誌『主婦之友(昭和11年3月号)』を入手。中野実&田中比左良挿絵『マダム探偵帖』の掲載誌で蒐集している。戦前のライトノベルでどーということのない作品なのだが、どーしても揃えたい。こーした戦前の雑誌蒐めは案外に難しく、ピンポイントで欲しい雑誌はなかなか見つからない。高額雑誌は買えない。

 

主婦之友(1936.03)目次

 

表紙絵は松田富喬。目次の挿絵は記名がさないが宮本三郎じゃないかな。主婦之友の挿絵は昭和10年ころを基点に、ユーモア&エロス系の田中比左良からリアリズム系の宮本三郎への転換が始まる。戦時の影が少しずつ濃くなってきて、婦人雑誌は「銃後の備えとしての女性の心構え」みたいな雰囲気になっていく。

 

 

諏訪根自子と薩摩治郎八夫人・千代子

 

戦時局が増すなかで、生活(文化)面では戦前における爛熟期を迎えていて、その両者が奇妙にせめぎあっている。諏訪根自子はドイツに留学した天才ヴァイオリニスト。バロン薩摩こと薩摩治郎八はパリで日本文化のパトロンぶりを発揮した名物男。藤田嗣治を語る上で欠かせない人物で、写真はその夫人である。

 

10年ぶりにパリから帰国した千代子は結核で40歳で亡くなる。一方、戦争で無一文になった薩摩治郎八だったが、懇意のストリッパーに毎日バラを贈りつづけ結婚する。その後、病に倒れた治郎八をその女性が親身に養った。詳しくは、治郎八をモデルにした獅子文六『但馬太郎治伝(講談社文芸文庫)』を勧める。

 

古い雑誌は出版された時代の缶詰みたいなもの。あちこちの記事を拾い読みしていると興味が尽きることがない。