井上友一郎。銀座二十四帖:昭和30年の銀座 | mizusumashi-tei みずすまし亭通信

映画 銀座二十四帖(1955)日活

 

井上友一郎が週刊朝日に連載した『銀座二十四帖(1955)』の切抜き帖を読みながら、同時並行的に Praim Video 配信の川島雄三監督による同名映画をみた。1950年代の銀座が舞台。ヒロインの京極和歌子は大連にいた少女のころ、自身の肖像画を描いてくれた青年に淡い思慕を寄せていて、肖像画に残されたサインG.Mを頼りに再会に期待を寄せている。

 

夫と別居し屈託を持て余しながら、再会への淡い期待を抱いた彼女が、その絵を銀座の画廊に託し展示し、通称花屋のコニイは折しも通りがかった画廊でその絵を怪訝な思いで見つめる。で、開幕する。和歌子はコニイなどさまざまな人々と邂逅し、のっぴきならない事件に巻き込まれていくのだった。

 

井上友一郎:銀座二十四帖(1955)週刊朝日/自装本

 

 

東郷青児 挿絵

 

連載後の「銀座二十四帖ノート」によると、作者は銀座の街そのものを主人公した作品を描きたかったようだが、紙面もあり果たせなかったとある。一方で、映画は銀座の風景・風俗をよく捉えていて、それだけでも見応えのある作品に仕上がっていて、展開も(書割りながら)原作よりは引き締まっている。

 

ヒロイン京極和歌子に月丘夢路、花屋コニイに三橋達也、和歌子の姪・仲町雪乃役北原三枝がチャキチャキの現代っ子を演じて好演している。そして、なにより活写された昭和30年の銀座(大阪・札幌)の街並を見ているだけで愉しい。取るに足らない内容の原作ながら、映像はこれからも生き残っていく。また、珍しい東郷青児による挿絵だったが、期待したほどではなかったかな。