きだみのる。気違い部落周遊紀行 | mizusumashi-tei みずすまし亭通信

映画 気違い部落(1957)松竹

 

奇書怪書とも謳われたきだみのる『気違い部落周遊紀行(1951)新潮文庫』は「山村の生活を観察記録風に叙しながら、都会文化が進展し生活様式に変化が生じても今なお原理的な、日本人の前論理的世界を澄明に活写している 冨山房百科文庫」として戦後評判になり、後に淡島千景伊藤雄之助主演で映画化された。

 

きだは、東京都南多摩郡恩方村(現:東京都八王子市)の廃寺に20年ほど籠もるように暮らし、雑誌『世界(1946年09-10)』に「気違い部落周游紀行」を発表、毎日出版文化賞を受賞したが、地元恩方村では「気違い」扱いへの反発が激しく寺からの立ち退きを迫られた wiki 

 

きだみのる:気違い部落周遊紀行(1951)新潮文庫

 

ビアズリー展広告による自作カバー

 

手元にあるのは当時本の第2刷で初版から2年弱経っている。後に映画化(1957)されることから爆発的に売れたとも思えないのだが。これは亡くなった叔母の、意外な蔵書にちょっと驚かされたが、本当にびっくりしたのは、きだみのるは岩波書店版『ファーブル昆虫記(1930-34)全20巻』の翻訳者(林達夫と共訳)だったこと。

 

子どもの頃から、岩波文庫新版の『ファーブル昆虫記』には親しんできたのに今まで気がつかなかった。『ファーブル』出版の経緯については、岡茂雄『本屋風情(1974)平凡社』に詳しく、ちょっとトラブルのあった本著を、岡が親交のあった岩波茂雄(岩波書店)を紹介した。本名山田吉彦で翻訳を、きだみのる名義で随筆ほか著作を発表していたンですね。

 

淡島千景、伊藤雄之助ともに大好きな俳優さんなので映画も拝見したいところです。