田中比左良。東方社版のユーモア系叢書 | mizusumashi-tei みずすまし亭通信

お嬢さん乾杯 の原節子

 

近代におけるユーモア小説のパイオニア佐々木邦『勝ち運負け運(1956)東方社』をネット購入した。内容はたわいのないもので紹介するまでもないのだが、戦後出版された東方社のユーモア小説、ライトノベルの一群は、特に田中比左良の装釘もあいまってつい反応ししまう。

 

佐々木邦:勝ち運負け運(1956)東方社

 

佐々木邦:おてんば娘日記(1955)東方社

佐々木邦:曇のち晴(1956)東方社   

 

佐々木邦:青春アルバム(1956)東方社

 

掲載本の表紙絵はいずれも田中比左良で、ユーモア系の佐々木邦や中野実、鹿島孝二らの装釘を手がけている。田中比左良は戦前の昭和10年ころが画業のピークで、さすがに戦時中はこうしたややお色気タッチの需要がなかったのは残念の一言に尽きる。

 

戦後はいち早く挿絵界に復帰したが、小野佐世男らの台頭もあって昭和30年以降はフェードアウトしていく。この東方社版のユーモア叢書などは田中比左良の最後の花道を飾った作品群です。

 

佐々木邦:地に爪痕を残すもの(昭24)講談社

 

中野実:花嫁選手 同志社(S23)田中比左良装幀

中野実:結婚三銃士・花嫁選手 裏表紙     

佐々木邦:世路第一歩・求婚時代(1935)アトリエ社

小野佐世男 装釘

 

ということで、佐々木邦&中野実と田中比左良のコンビによる作品群の虫干しです。蔵書はまだあるはずなのですが、探しだして並べるというのも(結構ありそうで)怖いような。イラストは戦後の映画『お嬢さん乾杯(1948)』の原節子を。敗戦を引きづりながら映画も小説も暗い作品は敬遠されました。