愛する祖国 日本
日章旗 一昔前まで、愛国という言葉は右翼的な発言として封じられて来た。
しかし、国を愛することに罪はない。むしろ、愛せない方が不自然である。
多民族共生は、国を愛する者同士が、お互いを尊重・尊敬し合ってこそ、
初めて、平和な共生が成り立つものである。
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米国二大政党の異なる対日関係史 4-4

本日本人が知らない「二つのアメリカ」の世界戦略 / 深田 匠
第四章 米国の国際戦略
米国二大政党の異なる対日関係史 P.310-314

 日露戦争後から共和党セオドア・ルーズベルト政権は世界各国との戦争を想定してプランを立案し、その中には対日戦争計画オレンジプランもふくまれていた。しかしこれは英国まで含めた主要国全てを対象(各国ごとに別のカラー名)にして立案された安保上のものであり、日本だけを想定して狙ったものではなかった。このオレンジプランを指して「アメリカは半世紀も前から対日戦争を計画していた」と評する意見もあるが、私はその説には賛同できない。同プランは議会で立法化されたり閣議で正式決定されたものではなく、安全保障とし軍部が研究を命じられたものであり、日本一国だけを対象にしてはおらず、いわば世界主要国と「米国がもし戦わば」といった防衛シュミレーションであることから、これは戦争が日常的であった当時の独立国としては自然な安保対策である。アメリカが対日戦争を計画したのはF・D・ルーズベルトの大統領就任以降であり、セオドア・ルーズベルトからフーバーへと至る時期にはそんな謀略は一切存在していない。

 それどころかセオドア・ルーズベルトの前任であったウィリアム・マッキンレー共和党大統領は「米英日が同盟して露独仏に対抗する」という構想を描いており、マッキンレーのブレインといわれたW・ラフィーバーは1898年3月にニューヨーク・トリビューン紙上で「(シナにおける)露独仏の支配は専制・無知・反動を意味するのに対し、日本の支配は自由・啓発・進歩を意味する」と述べて米英日の連携を訴えている。しかしキューバ及びフィリピンでの紛争の対処に追われたマッキンレーは、結局この米英日三国同盟構想に着手することなく1901年9月にアナーキストの凶弾に倒れ、この三国同盟は幻の構想に終わった。このマッキンレー構想は日本人にもあまり知られていないが、共和党が当時日英両国をパートナーとする三国同盟を考えていたこと、そして今日ブッシュ政権が「米英日三カ国で世界新秩序をつくる」と明言していること、この事実は共和党の国際戦略が一環した発想の下に一世紀以上継続されていることを裏付けている。

 このようにマッキンレーやセオドア・ルーズベルトなど共和党政権が続いている期間は、日米間の軋轢はほとんど生じなかったのであるが、理想主義リベラルと言われる民主党ウィルソン大統領あたりから日米間の不和が表面化し始めた。ウィルソンはかの悪名高き禁酒法や組合保護法・労働時間制限法を導入した左派であり、国際連盟創設を主唱した人物だが、実は強烈な黒人差別主義者でもあり、日本が提議した人種差別撤廃決議案を強引に却下した張本人である。それまで比較的友好的であった日米の歯車が逆回転し、深刻な日米関係の歪みと日本の孤立化を生んだのは1921年11月のワシントン会議ではないだろうか。ワシントン会議を主宰したのは「米国史上最も無能な大統領」と言われるハーディング共和党政権だが、同会議開催方針とその主目的である日英同盟破棄は、ハーディングの大統領就任(1921年3月)のその前にウィルソン民主党政権によって決められており、英国への根回しも完了していた。ポリシーのない金権政治家であったハーディングには、その既定路線を変更する意思も思想もなく、いくら共和党でもダメな人物も存在しているということだ。

 このワシントン会議において日本は、日英同盟を破棄させられ、軍艦比を米国5に対して日本3にさせられ、青島や膠州湾のシナへの返還、満州の日本権益を認めた「石井・ランシング協定」の破棄、その他屈辱的な条件を呑まされるに至った。ウィルソン政権が狙ったワシントン会議の主要な目的の一つは、中国や満州から日本を追い出してアメリカの権益を拡大することであり、一方、米国立公文書館の公文書ナンバー「JB355」には、民主党ルーズベルト政権が開戦を欲して日本を挑発し続けた目的の一つは「中国から日本を追い出して、将来の巨大な中国市場を独占的に確保するため」でもあると明記されている。何のことはない、クリントンを見ればよく分かるように、昔も今も民主党のアジア戦略はまったく変わっておらず、何の進歩もしていないのだ。

 一方おそらく確実であろうと推測できることは、もし大戦前の当時のアメリカが共和党政権であったら、シナの赤化やソ連の台頭を防ぐために日本の率直な対話は可能であり、石油禁輸もハルノートもなく従って日米開戦には至らなかったであろうということである。共和党が日本とは戦いたくないと願っていたことは確かなことだ。しかし現実にはルーズベルトの謀略で日本が真珠湾を攻撃してしまったために、共和党も戦争以外の手段はなくなってしまったのだ。自国領を攻撃された以上はもはや是非もない。「共和党員と民主党員、他国への不干渉主義と干渉主義の激しい論争も、今となっては無意味なものになった」(J・トーランド)のである。我々日本人はこの歴史的事実からどれだけの教訓を得たのか、いやそれ以前に、共和党が対日戦争に反対し続けた事実自体をどれだけの日本人が知っているのだろうか。我々は「アメリカは日本を戦争へと追い詰め、原爆を投下し、日本に対して幾つもの罪を犯した」というメンタリティを、「民主党は日本に対して幾つもの罪を犯した」という定義に置き換えるべきなのである。

 共和党系シンクタンクのフーバー研究所は、フーバー元大統領がその最晩年の1960年に「米国を共産主義から守るための研究所」として私財を投じて創設した機関である。1992年にこのフーバー研究所は、外交官J・マクマリーが1935年に記した「マクマリー・メモランダム」を出版している。このメモランダムはいわば「アメリカ(ルーズベルト政権)の対日対中政策への批判」といった内容で、例えば「日本人は、天然資源の乏しい小さな島にぎっしり密集して住んでいる。日本は、東アジアを除く全ての市場からかなり遠く離れているし、狭い海の向こうから二つの国、中国とロシアから過去に威嚇を受けてきた。日本人は、それを彼らの生存そのものの脅威だと、いつもみなさなければならないのである。日本にとって、原材料輸入と輸出市場としての中国が、産業構造を維持し、国民の生計を支えるために不可欠なのである」と述べて日本へ対して寛容であるように説き、一方で「我々の対中政策は、何年もの間、中国にゴマをする実験をやったあげく、突然に行き詰まってしまった。この事実は、日本と正常な関係を保つよう願っている善意のアメリカ国民たちの忠告に十分耳を傾けるべきだという、警告として立派に役立つであろう」とも述べ、結論として「日本には媚びもせず挑発もせず、公正と共感を持って対処しよう」と主張している。

 日米開戦に反対した共和党元大統領の名を冠したフーバー研究所が、60年近くも前の一外交官の手記を出版した真意は何であろうか。それはアメリカにとって、対日・対中戦略において二度と同じ失敗は繰り返さないという、共和党の意思が示されているものと私は考えている。この手記の出版に際してフーバー研究所は、その解説文として当時の国際状況を「中国はボルシェビキ(共産主義)と幼いナショナリズムの影響を受けて、狂乱のヒステリックな自己主張に駆り立てられていた」「仲間同士(日米)が傷つけ合ったのが実態」と付記しており、それは明らかに現在の中共を暗喩している。前出のジョージ・ケナンも、この「マクマリー・メモランダム」を絶賛しており、その講演の中で「これらの地域(シナ・朝鮮半島)から日本を駆逐した結果は、まさに賢明にして現実的な人々が終始我々に警告した通りの結果となった。今日我々はほとんど半世紀に渡って朝鮮及び満州方面で日本が直面し担ってきた問題を引き継いだのである」と述べ、防共と安全保障に基く当時の日本の立場はそのまま現在の米国の立場となったことを認めている。共和党の対日方針とは昔も今も、まさにこの60年前の「マクマリー・メモランダム」が提唱するごとく、「日本には媚びもせず挑発もせず、公正と共感を持って対処しよう」なのだ。

 前述のように、民主党F・D・ルーズベルトの叔父ではあっても共和党の大統領であったセオドア・ルーズベルトは、日露戦争で日本を支援して講和を斡旋し、東郷元師を尊重し、教育勅語や武士道精神を高く評価するなど、親日的なスタンスを示していた。そのセオドアの政治的遺伝子は、以降も共和党歴代大統領に受け継がれている。日系人強制収容に初めて公式謝罪したフォードも賠償したレーガンも共和党であり、占領憲法制定を初めて公式に日本の国会で謝罪したニクソンも当時アイゼンハワー共和党政権下の副大統領であった。この事実は、もしアメリカが原爆投下や東京裁判を謝罪するとすれば、それは共和党政権であるというジンクスを示唆している。ちなみに1983年5月27日、日本海海戦の戦勝記念日であるこの日に渡米した中曽根首相を、レーガン大統領は「軍艦行進曲」の演奏で迎えたが、ホワイトハウスで日本の軍歌が演奏されたのはこれが最初である。米大統領がドイツの首相をナチスの軍歌で迎えることは決してあり得ない。共和党の対日史観とは、「大東亜戦争肯定史観」とまではいかなくても、日本の自衛による立場を理解したる「大東亜戦争容認史観」といったところなのだ。

 20世紀の百年間、日米英三国同盟を夢見たマッキンレーに始まり、日露戦争講和を仲介したセオドア・ルーズベルトを経て、「日本はアジア防共の砦だ」と終生主張していたフーバー、そして「強い日本の復活」を待望する現ブッシュ政権に至るまで、共和党はいつも日本の立場に理解と共感を持って接してきた。その一方、ワシントン会議のレールを敷いたウィルソンに始まり、ソ連に操られて日本を追い詰めたルーズベルト、原爆を投下し東京裁判を強行したトルーマン、中共と結び対日経済戦争に狂奔したクリントンに至るまで、民主党は常に日本を敵視し警戒し抑えつけようとしてきた。これらの歴史が物語る真実は、この二大政党の対日観や共産主義に対する姿勢がまったく正反対であるということなのだ。そして、かつてGHQ内部で熾烈な路線対立を繰り広げたストロングジャパン派(共和党)とウィークジャパン派(民主党)が、今なおアメリカを二分して存在しているという現実を日本人は決して忘れてはならない。

 日米開戦前における日本政府の最大の失敗は、ルーズベルト政権の与党たる民主党だけを相手として共和党との交渉を考えもせず、つまりアメリカという国を一括りに見て「アメリカは二つ存在する」という視点を持たなかったことにある。私は小室直樹博士とお会いした時に、日米開戦に至る日本外交の最大の失敗は何かと質問したことがあるが、小室博士の答えは一言明確に「アメリカのもう一つの世論を研究せず、ルーズベルトやハルだけを相手にしたこと」であった。まさしくその通りである。

 そして現在においても、反米か親米かの二元論でアメリカに相対する人々は、この「歴史が教える教訓」に全く学んでいないのだ。右だろうが左だろうが、今も大半の日本人が「二つのアメリカ」の存在をおそらく知らない。反米か親米かの立場でしかアメリカを見ようとしない日本人は、現実の目ではなく、観念の目を通してアメリカを見ているのだ。それは日本が再び過ちを繰り返す最大の要因でもある。

以上




フラッシュ:軍艦行進曲

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米国二大政党の異なる対日関係史 4-3

本日本人が知らない「二つのアメリカ」の世界戦略 / 深田 匠
第四章 米国の国際戦略
米国二大政党の異なる対日関係史 P.305-310

 ルーズベルトからトルーマンへと至る当時の民主党がいかに多くの親ソ派マルクス主義者に支配されていたかについては、ルーズベルトの娘婿であるカーチス・B・ドールが『FDR:THE OTHER SIDE OF COIN』『EXPLOITED PRESIDENT』という2冊の著書で内部告発している。同書では、家族の食卓の場でルーズベルトが「私は決して宣戦なんかしない。私は戦争を創りだすのだ」と述べていた事実を明かし、「ルーズベルトは国際共産主義者のロボットだった。日本を開戦へと追い込んだのは全てソ連である」と断じている。ルーズベルトと民主党がその容共体質のために、ソ連に操られて日本へ謀略を仕向けたことも、こうしてルーズベルトの娘婿の告発や『VENONA』ファイルによって完全に立証されたのである。

 ルーズベルト政権で司法長官を努めていたF・マーフィー(後に最高裁判事)は、非米活動調査委員会で「共産主義者がルーズベルトとその夫人を操っていた」と証言しており、対日戦争はソ連のシナリオであったと認める報告書を提出している。米国保守の論客として高名なミシガン大学法学博士アン・コールターは、自著『リベラルたちの背信~アメリカを誤らせた民主党の60年』で「ルーズベルト政権はモスクワに金で雇われたスパイだらけだった。ホワイトハウス、国務省、戦争省(後の陸軍省)、戦略事務局(OSS)、財務省の戦略的に重要な地位をスターリンの手下が占めていた。(小略)この謀略のスケールの大きさと言ったら前代未聞だった。1940年代から50年代にかけて政府には何百人ものソ連のスパイが潜入していた。敵国に忠誠を尽くす民間人の軍勢にアメリカは侵略された。それは否定の余地がない事実だった」と述べ、「この国が必要としていたのは、ジョー・マッカーシーだった」と断じた。また1996年4月、民主党寄りでリベラル系メディアの代表格であるワシントン・ポスト紙でさえも「マッカーシーは正しかった。リベラルが目をそらせている間に共産主義者は浸透していった」という見出しで、「VENONA」ファイルを指して「反共主義の人々が批判したとおり、ルーズベルト、トルーマン両政権には、ソ連に直接又は間接に通謀していたおびただしい数の共産スパイと政治工作員がいた証拠である」と報じている。

 共和党の下院議員であったハミルトン・フィッシュは自著の中で、「ルーズベルトは民主主義者から民主主義左派・過激民主主義者を経て、社会主義者、そして共産主義支持者へと変貌していった」と述べており、真珠湾攻撃における米上下院議会の対日開戦支持について「我々はその時の支持全てを否定しなければならない。なぜならば、真珠湾攻撃の直前にルーズベルトが日本に対し戦争最後通牒(ハルノート)を送りつけていたことを、当時の国会議員は誰一人知らなかったからである」とも述べている。

 またハミルトン・フィッシュは、同著で当時の共和党下院議員の90%が日本との戦争に反対していた事実を明らかにしており、ハルノートを指して「これによって日本には、自殺するか、降伏するか、さもなくば戦うかの選択しか残されてなかった」と強く批判し、「日本は天然資源はほとんど保有せず、また冷酷な隣国であるソビエトの脅威に直面していた。天皇は名誉と平和を重んじる人物で、戦争を避けようと努力していた。日本との間の悲惨な戦争は不必要であった。それは、お互い同士よりも共産主義者の脅威を怖れていた日米両国にとって悲劇的だった。我々は戦争から何も得るところがなかったばかりか、中国を共産主義者の手に奪われることになった」とも述べている。ちなみにフィッシュは戦時中も「米国の敵は日独ではなくソ連だ」と主張し続けていた為に、アメリカに潜入していた英国の対米プロパガンダ工作機関「イントレピッド」による中傷工作を受けて1944年に落選に至っているが、アメリカにとっての真の敵は日本ではなく共産主義であって対日開戦支持は否定されるべきであることを、共和党下院の大物が公に認めていたことを忘れてはならない。

 ルーズベルトの後継者である民主党のトルーマン大統領が日本へ計18発もの原爆投下を承認していた事実はワシントン・ポスト紙にスクープされているが、この決定を最初に下したのもルーズベルトである。小心かつ実務経験に乏しかったトルーマンは、ルーズベルトが決定していた方針に一切手を加えずに単にそのまま実行したのだ。ちなみに京都が空襲から除外されたのは「文化財の保護」なんかではなく、原爆投下の第一候補であった為に、破壊力データを正確に取るために温存されたに過ぎない。この原爆の日本への使用については、後に共和党大統領となるアイゼンハワーなどが猛反対しており、共和党支持者の米陸海軍の将軍たち(マッカーサーも含む)は全員が反対意見を具申している。アイゼンハワーに至ってはスチムソン陸軍長官に対し「米国が世界で最初にそんなに恐ろしく破壊的な新兵器を使用する国になるのを、私は見たくない」(1963年の回想録)と何度も激しく抗議していた。

 こうしてかねてより共和党の大物の面々が日本への原爆使用に反対していたこともあって、トルーマンは投下決定を共和党側には伏せたまま、1945年7月に先にスターリンに知らせた。共和党や共和党系と見なされていた将軍たちに原爆投下決定が伝えられたのは投下の2日前であり、これは「反対を怖れるあまり自国の議員よりも先にソ連に知らせた」と共和党側をさらに激怒させた。原爆投下についても米国の総意ではなく、賛否両論の2つの考え方がこの両党間で対立していたのだ。つまり、もし当時の大統領がトルーマンではなく共和党の大統領であったなら、おそらく原爆投下もなかったであろうということである。アイゼンハワーは、大統領在任中1955年1月にルーズベルトを強く批判して「私は非常に大きな間違いをしたある大統領の名前を挙げることができる」と述べ、ルーズベルトが対日謀略を重ねて日米開戦を導いたこと、日本へ不必要な原爆投下の決定を行ったこと、ヤルタ協定で東欧をソ連に売り飛ばしたことなどを挙げて非難している。

 ソ連のスパイであったアルジャー・ヒスが草案を作成したヤルタ協定は「ソ連の主張は日本の降伏後、異論なく完全に達成されることで合意した」と定めているが、1956年に共和党アイゼンハワー政権は「(ソ連による日本の北方領土占有を含む)ヤルタ協定はルーズベルト個人の文書であり、米国政府の公式文書ではなく無効である」との米国務省公式声明を発出した。ヤルタ協定が共和党政権によって完全に否定され無効とされたことで、ソ連の北方領土占有(ソ連はヤルタ協定を根拠に正当性を主張)は、一切の根拠を失った不法占拠であることが公式に確認されたのである。

 また日本の敗戦時に、ソ連はヤルタ協定を口実にして北海道まで占有しようと欲し、トルーマンも一旦それを内諾したものの共和党の猛烈な反対を受けて考え直し、渋々ソ連に断ったという記録が残っている。一般に「蒋介石が日本分割に反対した」というデマが流布されているが、蒋介石はカイロ会談で「九州がほしい」と要望しており、またアメリカに対してそれだけの影響力を持っていなかった。日本が米ソ中に分断統治されなかったのは、ひとえに共和党の反ソ派や知日派が「ソ連の日本占有は許さない」と強固に反対したおかげなのだ。それどころかフーバー元大統領に至っては、「日本はアジア防共の安定勢力であり、戦後も朝鮮と台湾の日本領有を認めるべきだ」と主張していたぐらいなのである。

 共和党大統領候補への野心を持っていたマッカーサーは、朝鮮戦争において中朝共産主義連合軍に対して原爆使用を主張し、トルーマンと激しく対立して解任されたが、1951年の米上院議会外交委員会において「日本の戦争は安全保障のためであった」と証言したのも共和党の基本認識に沿ってのものである。マッカーサー証言の内容は、前述のハミルトン・フィッシュの著した歴史観と完全に一致している。また、朝鮮戦争時には共和党議員の多くが「日本への原爆投下は誤りであり、朝鮮戦争でコミュニストに対して使用するべきである。さらに中朝軍を撃退して中国本土まで国連軍を侵攻させ、中共政権を打倒して国民党政権を復活させるべきである」との主旨を主張していた。共和党をバックにしてマッカーサーも同意見を声明しており、これもまた中共との平和を希求するトルーマンを激怒させ、解任理由の一つとなったのである。従ってもし当時アメリカが共和党政権であったならば、今頃は中国共産党政権は存在していないかも知れない。

 共和党の歴史認識、つまり共和党史観を代表する一例として、先の大戦のアメリカ中国線戦総司令官A・C・ウッディマイヤー大将の回想録を以下に引用しよう。「ルーズベルトは中立の公約に背き、日独伊同盟を逆手にとり、日本に無理難題を強要して追い詰め、真珠湾の米艦隊をオトリにして米国を欧州戦争へ裏口から参加させた。(小略)米英は戦闘には勝ったが、戦争目的において勝利者ではない。英国は広大な植民地を失って二流国に転落し、米国は膨大な戦死者を出しただけである。真の勝利者はソ連であり、戦争の混乱を利用して領土を拡大し、東欧を中心に衛生共産主義国を量産した。米国は敵を間違えたのだ。ドイツを倒したことで、ナチスドイツ以上に凶悪かつ好戦的なソ連の力を増大させ、その力は米国を苦しめている。また日本を倒したことで、中国全土を共産党の手に渡してしまった。やがて巨大な人口を抱える共産主義国がアジアでも米国の新たな敵として立ちふさがるであろう」。ロバート・A・タフト共和党上院議員の親友であったこのウェディマイヤー大将は、日本開戦に反対していた人物で、原爆投下にも反対し、戦後は『第二次大戦に勝者なし』と主張する回想録を発表している。そして実にこの見解こそが共和党史観のベースに存在しているのだ。

 ちなみにフーバー以前の時代に遡って鑑みるも、1895年に日本がいわゆる「三国干渉」を受け屈従を呑まされた時、民主党のケリーブランド大統領はそれに一切関わろうとはしなかったが、一方しかし共和党は「三国は日本のシナに対する勝利がもたらした合法的果実を否定する干渉を行った。日本は特権を求めず全ての国に平等な権利と機会を保証しようと試みた。一方、欧州列強は自国の利益のためだけにシナの領土を取り上げ、他の全ての国々に対する排他的権利を得る条約と(日本の)譲歩を獲得した」との声明を出し、とりわけロシアとドイツを強く非難している。

 また日露戦争の最中、1904年3月26日にホワイトハウスを訪れた金子堅太郎特使に対して共和党のセオドア・ルーズベルト大統領(F・D・ルーズベルトの叔父)は、中立表明をした筈のフランスがロシアに軍需品供与をしていることについて米国が抗議したことを伝え、重ねて「実はこの戦いが始まって以来、米国の陸海軍武官の中に同情を寄せる者が多く、甚だしきに至っては官を辞して日本軍に身を投じようという者さえいる。かく言うルーズベルトは日本の盟友である。今後の戦争で君の国を負けさせたくない。ぜひ君の国を勝たせたい、いや必ず君の国は勝つ」と語っている。そして金子特使から贈られた新渡戸稲造の『武士道(英文訳)』に深く感銘を受けたセオドア・ルーズベルトは、同書を30冊取り寄せ、5冊を5人の息子たちに与えて「この武士道をもって心得とせよ」と命じ、残り25部を主要閣僚や共和党幹部に配っている。(ちなみにブッシュはこのセオドア・ルーズベルトを尊敬し、その伝記を愛読している。)

次回へ続く

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米国二大政党の異なる対日関係史 4-2

本日本人が知らない「二つのアメリカ」の世界戦略 / 深田 匠
第四章 米国の国際戦略
米国二大政党の異なる対日関係史 P.300-305

 日米開戦前の米世論を代表する発言を幾つか紹介してみると、例えば大西洋無着陸横断飛行で国民的人気のあったC・リンドバーグは、1941年9月16日の共和党の演説大会で「もし世界大戦が起こるのならば、その責任はルーズベルトとチャーチルと国際ユダヤ資本にある。米国は英独講和を介し、日英独と組んでソ連と戦うべきである」とまで主張していた。また当時共和党に対して影響力の有った有名な保守系ジャーナリストのジョーン・B・レイは、シナに32年間も在住してシナ情勢をワシントンへ発信していた人物だが、このレイは「〝軍国主義日本が世界平和の脅威になる〟というのは、ソ連の宣伝であり、本当の軍国主義はソ連である。これまでアジアで果たしてきた日本の役割を忘れてはならない。シナやソ連に同情するあまり、日本を孤立化させて発展を阻害してはならない。日本こそアジア安定の礎であり、共産主義の防波堤だ」とベストセラーとなった自著で述べている。

 熱心な反共主義者にして反ルーズベルトを呼号していた新聞王W・ハーストも、1941年10月に自紙のニューヨーク・ジャーナル紙に「ワシントンはアジアで戦争が起こるか否かは日本にかかっていると言っているが、これは真実ではない。米国の政策如何によるものである。支那事変の発生以来、米国は負け犬に対する同情でシナを援護してきた。日本が米国に戦いを挑んでいると見るのは誤りである。世界で3番目の上顧客である日本との貿易を断絶したのはルーズベルト政権ではないか。日本は米国に何ら差し出がましいことをせずに脅威を与えていない。米国が日支両国との通称を正常に戻し、シナと日本のことは両国にまかせておけば、明日にも平和が来る」と自ら執筆し、ハースト系の各紙は同様の主張を何度も掲載していた。ルーズベルト政権が行ってきた排日政策や対日禁輸などの対日圧力は、米国世論の総意では決してなく、共和党支持層はそれに猛反対していたというのが当時の米国の国情だったのである。

 1941年における米ギャラップ社の米国世論調査では、「英国に味方して参戦せよ」が2.5%、「英国の配色が濃くなれば支援せよ」が14.7%で、この両方を合わせても「中立で英独相応に武器を売れ」の37.5%を下回っている。そして「絶対中立で武器も売るな」が29.9%、中には「ドイツに味方して参戦せよ」という回答さえも一定数存在していた.つまり明確に参戦を望んでいた米国民は実に2.5%しか存在しておらず、従ってフーバー以降も共和党政権候補は「不参戦」を公約し、本心では参戦したくてたまらなかったルーズベルトも表向きは「不参戦」を公約せざるを得なかったのだ.共和党のバンデンバーグ上院議員は「不参戦を議会で正式に議決せよ」とルーズベルトに要求し、アメリカの参戦を警戒するドイツもルーズベルトの様々な挑発絶対乗ってこなかった。そこでルーズベルトはドイツの同盟国であり満州権益でも目障りであった日本がアメリカを攻撃すれば、米国民を納得させる形で参戦できると考え、いわゆる「裏口参戦」の計画を進めたのである。アメリカから宣戦布告する「表口」ではなく「裏口」から戦争に入ろうという訳で、そのため日本から最初の一発を撃たせるべく様々な対日圧力を重ねる謀略をもって追い詰めたのだ.ルーズベルトは大統領就任後の初閣議で「対日戦争は1つの可能性だ」と発言していたぐらいであり、側近たちと連日「どうやれば日本側から開戦させられるか」を討議していた。

 20万部以上の膨大な公文書を調べた米ジャーナリストのロバート・B・スティネットは、「ルーズベルトが側近たちと示し合わせて(小略)アメリカを戦争に介入させ真珠湾及び太平洋地域の諸部隊を戦闘に叩きこむべく、明らかな戦闘行為を誘発する為に計画実施された権謀術数の限りを尽くした措置」を進め、「日本を挑発するためにルーズベルトに8つの手段が提案され、彼はこれらの手段を検討してすぐに実行に移し、8番目の手段が実行されると日本は反応してきた」と述べている.この8つの手段とは、米海軍情報部極東課長アーサー・マッカラムが作成した「対日戦争挑発項目A~H」のことであり、例えば項目Cは「蒋介石政権への可能なかぎりあらゆる手段を尽くした」(R・B・スティネット)のであり、日本は7番目の挑発まで耐えに耐えたのである。戦時中の1944年6月20日に、英リットルトン生産相が「米国が世界大戦に巻きこまれたというのは歴史の歪曲である.米国があまりにひどく日本を挑発したので、日本軍は真珠湾攻撃のやむなきに至ったのだ」と述べ、米国の抗議を受けて下院で陳謝しているが、米国の同盟国の閣僚が同情するぐらい日本への圧力は不当なものであった。

 米国の通信傍受責任者であったJ・ロシュフォート無線監視局長は1941年7月に「我々は彼ら(日本)の資金も燃料も断ち、日本をどんどん締めあげている。彼らには、この苦境から抜け出すには、もう戦争しか残されていないのが分かるだろう」と同局のミーディングで述べている.「日本の連合艦隊がハワイへ向けて発進」との報告を受けたルーズベルトは同年11月25日には「真空海域命令」(太平洋を横断する船舶の航路となる北太平洋から米国及び連合国の全船舶を引きあげを命じるもの)を発しており、この命令は日本の連合艦隊の南雲機動部隊が単冠湾を出航した1時間後に早くも発令されたものである.かくて同年11月27~28日にかけて、ルーズベルトはついに「米国は日本が先に明らかな戦争行為に訴えることを望んでいる」という直令を米軍首脳部に発し、一切の情報をハワイの指揮官キンメル大将に伏せるよう指示した。参戦したいあまりに自国将兵をわざと見殺しにしたルーズベルトの冷酷な策謀も、そして「対日戦争挑発項目A~H」の存在も、さらにはハルノートさえも、実は共和党側には一切秘密にされており、その秘密を知っているものは政権トップと民主党要人・軍情報部などごく一部だけでしかなかった。こうして日本はルーズベルトの謀略に導かれるままに、12月8日(米時間7日)に真珠湾に先制攻撃を加えることになる。

 このルーズベルトの真珠湾謀略に関して、戦後すぐに議会で追求したのは共和党である。共和党は、ルーズベルト政権の対日謀略について査問するために調査委員会の設置を要求し、8つの調査員会を設けさせた。そして共和党系の調査委員は全て「ルーズベルトが開戦目的で不必要に日本に圧力をかけて追い詰めた。明らかに公約違反である」という結論を出し、逆に民主党系の調査委員は当然ながら全てルーズベルトを擁護する結論を出した。結果、日本にとっては残念なことながら当時の米議会は民主党が多数派であった為に、ルーズベルトは査問を免れた。さらにルーズベルトは「対日戦争挑発項目A~H」の存在を共和党に隠し通すために、腹心の部下5名からなるロバーツ調査員会を設けて「全責任は真珠湾防衛の任務を怠ったキンメル太平洋艦隊司令長官とショート陸軍司令官にある」と公表させ、この欺瞞にはリチャードソン元太平洋艦隊司令官が「これほど不当で不公平で嘘で塗り固められた文書を私はこれまで見たことがない」と抗議声明を出したぐらいである。

 共和党の調査は政府によって徹底的に妨害されたために、上下院合同調査委員会で共和党のO・ブルースター上院議員は「証拠文書が大量に破棄されたり提出が阻害され、政府が選んだ証人はまったくインチキの証言ばかりしている。ルーズベルトは国家に対して詐欺を行った犯罪者だ」と怒号しているが、これは後の1993年に米国立公文書館真珠湾課担当官R・デーンホフの「1945年~1946年の調査の前の段階で、海軍公文書記録から真珠湾攻撃に関する大量の記録が抜き取られ消失してる」との証言で裏付けられた。ルーズベルト死去の報を受けたマッカーサーが「嘘が通ると見てとれば、絶対に本当のことを言わない男が死んだ」と述べたように、嘘と陰謀に明け暮れたルーズベルトのあまりの卑劣さに、たとえ対日戦争の直後といえども共和党は憤慨してその謀略を強く追求したのである。なお、この共和党の主張は、C・A・ビーアドやJ・トーランド、C・タンシル等々といった米国レビジョニスト(歴史修正派)とその系譜を継ぐ歴史学者たちによって「ルーズベルトの真珠湾謀略」として今なお歴史の見直しが提起され続けている。ルーズベルトがここまで日本との戦争を望んだ理由は一体何のためであったのだろうか。「英国を助けるため」「満州から日本を追い出して権益を横取りするため」といった要素も確かにあるが、日本人があまりに気付いていない最大要素として「ソ連(共産主義)を助けるため」というものが存在している。ハルノートを執筆したハリー・D・ホワイト特別補佐官がソ連KGBの工作員であったことは前章で述べたが、元々左翼的体質にあった民主党はルーズベルトの登場によって完全なる「ソ連の傀儡政権」化していたのである。ルーズベルト政権以前の20世紀前半における米国では、ウィルソン政権を除けば全て共和党が政権与党となっており、マッキンレー、セオドア・ルーズベルト、タフト、ハーディング、クーリッジ、フーバーら共和党の歴代大統領は反共を政治的信条としていた。従って共和党政権下で鳴をひそめていたマルクス主義者は、マルクス主義的なニューディール政策を掲げるルーズベルトの大統領就任によってこぞって民主党に流れ込んだのだ。その中にはソ連を「心の祖国」と信じるようなソ連の工作員や協力者が多数混在していた。

 1928年に民主党大統領候補に指名されたこともあるアル・スミスは、ルーズベルトの前任のニューヨーク州知事であり、ルーズベルトを政界復帰させた立役者でもある。しかしこの民主党の大物スミスは、1936年1月に「ニューディールとはマルクスとレーニンのことである。問題は、ワシントンか、モスクワかの選択だ。我々はルーズベルトが民主党候補に再指名された場合、民主党を離脱する」という有名な演説を行い、結局ルーズベルトが再指名されると民主党内の反共(反ソ)の面々はスミスと共に離党するに至った。さらに民主党を支えてきたデュポンを始めレミントンやシンガーミシン、GMやモーガンなどの大企業・財閥もスミスと支持して反ルーズベルトに回ることとなった。かくして1936年以後の民主党には、ルーズベルトを支持する共産主義者と容共主義者しか残っていないという状況になってしまったのである。

 ルーズベルト政権下においては、公言をはばからない共産主義者であったヘンリー・ウォレス副大統領(後にトルーマンの対ソ対抗政策を批判して辞任し、極左ミニ政党「進歩党」を結成し大統領に出馬するも落選)や「スターリンの友人」として知られたハリー・ホプキンス商務長官(ルーズベルトとチャーチルの極秘会談内容をソ連に伝えていたことが後に発覚)、開戦前に国民党軍に爆撃機を提供していた大統領特別補佐官ロークリン・カリー(後に対ソ協力スパイの容疑告発を受けて南米に逃亡)など、その他ルーズベルトの周囲に集結していたマルクス主義者はあまりの多さにとても枚挙しきれないが、特筆するべきはアルジャー・ヒスの存在である。

 ルーズベルトの側近であった国務省高官アルジャー・ヒスは、ヤルタ協定の草案を作成し国連憲章を起草した人物だが、ソ連のスパイでマルクス主義者であることが1949年発覚し、スパイ及び偽証の罪で逮捕・起訴されている。結局スパイ罪は10年の時効が成立していたため、偽証罪で1950年に懲役5年の実刑判決を受けた。このヒスはルーズベルトやトルーマンの民主党政権における極秘書類のコピーをソ連GRU(ソ連軍参謀本部情報部)やMGB(KGBの前身)に流しており、ヒスの暗号名は「アリス」なるものであった。またヒスがモロトフらソ連指導者に対して「国連常備軍を創設して、その長官をソ連共産党の指名するロシア人にする」と密約していた事実は、当時全米のニュースでも報道されている。1945年にスパイ容疑でFBIに逮捕された元米国共産党幹部E・ベントレーは、民主党政権の中にソ連のスパイネットワークが2つ存在していることを供述しているが、つまりヒスやH・D・ホワイトはその中のメンバーであったのだ。

 1995年4月に米エモリー大学のH・クリア教授らがロシア公文書館でコミンテルンの膨大なファイルの中から民主党の対ソ協力者に関する重要文書を多数発見した。さらに翌年1996年3月に米NSA(国家安全保障局)が機密指定を解除したKGB暗号解読文「VENONA」ファイルによって、民主党ルーズベルト政権の中枢、ホワイトハウス、国務省、司法省、財務省、陸軍省、OSS(現CIA)等に300人以上のソ連のスパイ(共産主義者)が浸透していたことが明らかになった。ちなみに共和党内にソ連のスパイはほぼ皆無であった。なお、この「VENONA」ファイルにより、左翼お気に入りの〝冤罪被害者〟ローゼンバーグ夫妻が冤罪ではなく本当にスパイであり、原爆技術などをソ連NKVD(人民内務委員会秘密警察)工作員に渡していたことも立証されている。

 マッカーシズムと呼ばれたジョセフ・マッカーシー共和党上院議員によるレッドパージは、1950年から約4年間続いたが、あまりにも攻撃的であったために、反発した民主党や米リベラル層から激しく非難されてその影響力を失い、マッカーシーは、1957年48歳の若さで失意のうちに憤死している。しかしマッカーシーが正しかったことは「VENONA」ファイル等で完全に裏付けられた。対ソ封じ込め戦略を構築した米外交界の巨人ジョージ・ケナンは、その回想録の中で「1930年代末期に、米国の共産党員又はその手先が政府機関に浸透していたとの事実は、やがて登場する右派(マッカーシーなど)によるでっちあげなどではなかった」と述べ、当時の駐ソ大使館や共和党首脳が再三警告したのにルーズベルトは「まったく聞く耳を持たなかった」と嘆いている。ルーズベルトによる対日挑発は実はソ連による国際共産主義謀略の一環であったのだ。

次回へ続く

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米国二大政党の異なる対日関係史 4-1

 次のシリーズです。


本日本人が知らない「二つのアメリカ」の世界戦略 / 深田 匠
第四章 米国の国際戦略
米国二大政党の異なる対日関係史 P.294-300

 過去の歴史を鑑みるとABCD包囲網・石油禁輸・真珠湾謀略・原爆投下・東京裁判・占領憲法押しつけなど、これらは全て民主党政権下で行われている。1932年の大統領選挙で共和党のハーバート・C・フーバー大統領が民主党候補フランクリン・D・ルーズベルトに破れて以来、1953年にアイゼンハワーが共和党大統領に当選するまでの実に20年間に渡り、民主党が政権を握り続け共和党は野党となっていた。そして開戦を目的とする日本への圧力も、日米戦争も日本占領政策も、全て20年間の内に行われた。

 反共主義者であるフーバーはソ連の国家承認を拒み「日本はアジアにおける防共の砦」と常々口にしていたが、政権が交代すると1933年1月に発足間もないルーズベルト政権は共和党の反対を押しきってソ連を国家承認した。ルーズベルトが掲げた看板政策ニューディールとは「新しい巻き返し」の意味で、通貨管理や価格統制、労働者の最低賃金や最長労働時間の法的保証、、労働組合の拡大促進、高所得者層への大幅減税(所得税最高税率75%、相続税最高税率80%への引き上げ)、その他様々なマルクス主義的要素を採り得れたもので、当然ながら共和党は猛反発していた。米最高裁も価値統制や高所得者懲罰税制を違憲と判決したが、当時大不況下の米国ではニューディール政策をめぐって世論が二分化されていったのだ。そして「ニューディール支持=親ソ容共=民主党」と「ニューディール反対=反ソ反共=共和党」という二大勢力が対立する中で、前者は日本を敵視し後者は日本に理解を示すのだが、それはすなわちアジアの「防共の砦」に対する認識差に他ならなかった。

 日本占領時代については、朝鮮戦線をきっかけとして1950年頃からGHQ内部における両党の影響力逆転が起こったが、民主党が主導する占領前半期の間に東京裁判や憲法制定その他の「日本弱体化」占領政策が実行されてしまったのだ。GHQの民政局や民間情報教育局はニューディーラー(ルーズベルトのニューディール容共政策の支持者)と呼ばれる民主党左派で占められており、マルクス主義に憧れるニューディーラーたちは、階級闘争史観に基づいて「日本悪玉史観」を宣伝するウォー・ギルト・インフォメーション・プログラムを実施し、ニューティーラーのスミス民間情報教育局長らの執筆による『太平洋戦争史』の新聞連載や『真相はこうだ』『真相箱』なるラジオのプロパガンダ放送で日本国民の洗脳を図った。さらに財閥解体・農地解放・共産党員釈放・共産党系労組の結成促進などマルクス主義的政策を続々と行い、例えばGHQ民政局が「労働組合組織をつくるための準備委員会」の委員に選任した15人の日本人の内の実に13人が日本共産党員であったくらいで、これはもう容共というより正に共産主義化そのものであった。1988年に竹前栄治東京経済大教授の取材に対して元GHQ民政局長C・ケーディスは、「共産党議長の野坂参三さんとは、よく話をしました。彼は私のオフィスにやってきて、党の方針を話してくれましたし、私も彼らがどのような考えや政策を持っているかを知って大変ためになりました。と語り、野坂を首相にしたらどうかという会話があったことも告白している。

 米本国では反共の共和党の目が光っているためにアメリカを共産主義化できずフラストレーションを溜めたマルクス主義者たちは、こうして日本で念願の「マルクス主義の実験」を存分に始めたのである。マルクス主義では君主制を完全否定する。そこでワシントンの民主党親ソ派の指示で、ニューディーラーによる天皇訴追の画策に対してストップをかけたのが共和党であり、共和党員マッカーサーに対してそれを阻止するように指示したのだ。またマッカーサー自身も、「自分が戦争の全責任を負い、身はどうなっても良いから国民に食糧を配給してほしい」と言われた昭和天皇に感銘を受けており、側近に対して「天皇を処刑することは、イエス・キリストを十字架にかけることと同じだ」と述べたことが記録に残っている。伝統的保守主義者のマッカーサーもまた、英王室や日本の天皇を敬うメンタリティが根底にあったのであろう。それは歴代米大統領を見下すほどに尊大な性格のマッカーサーが、1957年に園田直代議士及び加瀬英明氏との会見で、「私が世界で最も尊敬する人物は(昭和)天皇陛下だ」と述べていることからも伺える。

 そもそもマッカーサーは当初は、真珠湾攻撃における宣戦布告の問題だけを取り上げる簡易軍事裁判を想定していた。もしそのような裁判であれば、怠務から日本政府の指示した宣戦布告手交時間を遅延させた当時の在米外交官だけが裁かれ、逆にいえば「不意打ち」という国際的な誤解もなくなっていたことであろう。なお共和党は「平和に対する罪というものは存在せず、捕虜虐待などの国際法違反のみに限定するべきだ」と主張していたが、「平和に対する罪」で日本という国家全体を断罪するように命じたのは当時の民主党政権であり、GHQの占領政策においてはニューディーラーである民政局のC・ホイットニー局長やケーディス局長らが、政治経済に疎いマッカーサーを巧妙にコントロールしていたのだ。従って共和党は今でも日本を「侵略者」とは考えず「先制攻撃をした国」だと捉えており、さすがに公言はしないものの東京裁判には懐疑的な立場を取っている。

 なお、このGHQニューディーラーの多くは、「日本で共産党の政権奪取の計画を米国政府職員として積極的に援助した」として、1950年代前半に米下院の非米活動調査委員会(HUAC)で査問にかけられ公職追放されている。一例だけ挙げると、戦犯のリストアップや共産党員の釈放を担当したGHQ調査情報部調査分析課長E・ノーマンは、「日本軍国主義の根絶」を呼号して日本軍人を片っ端から戦犯に指定していった人物だが、FBIから「ソ連のスパイ」として追求され、米上院司法委員会の再査問を控えた1957年4月に自殺している。つまり5千人以上の共産党員を釈放する一方で、反共の軍人・政治家・官僚・教師・その他合計20万9千9百人をことごとく公職追放したのはソ連の意図であったということだ。

 日本の現憲法は、1946年1月7日に米国の国務及び陸海軍の三省調整委員会(SWNCC)が作成しGHQに通達した「第228文書」(通称「改憲調令」)によって制定が指示されたものであるが、SWNCCの中心であった当時の米国務省は親ソ派マルキスト主義者の巣であり、憲法執筆者にはマルキストばかりを選んでいる。GHQ憲法の執筆者の一人である親ソ派ニューディーラーのゴードン女史は、憲法草案を作成するためにソ連憲法や社会主義的なワイマール憲法を参考にしたことを認め、自伝の中で「1918年に制定されたソビエト憲法は私を夢中にさせた。社会主義で目指すあらゆる理想が組み込まれていた」とマルクス主義への憧れを吐露してもいる。例えば日本国憲法のの第25条(生存権)や第27条(勤労の権利及び義務)は、ソ連のスターリン憲法を丸写しにした文面であり、資本主義国の憲法でこれほどマルクス主義的な要素を取り入れた内容のものは他に1つもない。さらにGHQ憲法草案に設けられていた第36条は「土地及び資源などを全て国有化し、不動産の私的所有は認めず、個人の現有不動産は国からの貸借とする」という趣旨の完全な共産主義条項となっており、これはさすがに日本側も「アカ条項」と呼んで抵抗し、マッカーサーも削除を命じたぐらいであった。このように現憲法は「日本弱体化」のみならず、ソ連に憧れたニューディーラーによって「日本の社会主義化(ソビエト化)を目的にして執筆されたものであり、前述のごとく日本が疑似社会主義国になったのも憲法の下では当然の結果である。

 一方、GHQ内部でこの民主党ニューディーラーと厳しく対立していたのが、反共主義者の共和党員であったチャールズ・A・ウィロビー情報部長であった。当時GHQの内部には二つの路線対立があり、国務省系のGS(民政局)は占領内政担当で民主党左派すなわちニューディーラーによって構成されており、国防総省系のGⅡ(情報治安局)は軍務担当で共和党員が中心になっていた。このGSとGⅡが激しく対立していたのである。民主党の影響下にあるGS(民政局)は日本をマルクス主義化する実験と併行して「ウィークジャパン(弱い日本)をつくる」と主張しており、一方GⅡのウィロビー少将はニューディーラーたちが日本を左翼国家へ改造しようとする「実験」に強く反対し、「不必要なまでの日本の弱体化は国際共産主義を利する」と考えてストロングジャパン政策を主張していた。対ソ戦略のためには「強い日本」を維持させねばならないというのが、ウィロビーら共和党反ソ派の持論だったのだ。

 ウィロビーは「共産主義分子の総司令部への浸透」という調査報告書を作成し、ゴートン女史を始めコーエン、ハドレー、ビッソンその他多くのGHQ民政局・民間情報教育局・労働課等の職員が後に査問を受けることになる証拠を収集した。またウィロビーは、民政局員のグランダンツェフとキーニーの2人については「KGBのメンバーであることが確認された」と国防総省に報告して逮捕を要求してさえいる。つまり米本国同様にGHQの中でも、反共と容共(及び共産主義者)との戦いが展開されていたのだ。ちなみにこの民主党のウィークジャパン戦略と共和党のストロングジャパン戦略は、日本の主権回復以後もアメリカ本国で伝統的に継承し、前章で述べたような今もなお両党のその姿勢は変わっていない。

 GHQ内でウィークジャパン政策の急先鋒となったのがマルクス主義者のケーディス民政局次長であり、ウィロビーら情報治安局の唱えるストロングジャパン政策を抑えこんで憲法制定や諸々の日本弱体化政策を強行し、一方ウィロビーは「GSはアカの巣だ」と公然と批判を続けた。このGHQ内部のGSとGⅡの対立はさながら民主党と共和党の代理抗争の様相にあったが、政権与党の民主党系GSが実権を握る状態が続いていた。しかしソ連の脅威が増すにつれてトルーマンがルーズベルト流容共路線からソ連対抗路線へと転向していき、ニューディーラーたちは疎んじられて段々と実権を失い始め、共和党は日本国内のレッドパージをGHQに要求して一部を実行させることに成功した。やがて1950年6月に朝鮮戦争が勃発し、米軍が中ソ軍と衝突したことを契機にさしものマッカーサーも目が醒めたのか、GHQの実権はGS民政局ニューディーラーたちからGⅡ情報治安局の反共軍人グループへと全面的に移行することになった。

 マッカーサーが戦争放棄を盛り込んだ憲法をつくらせたり、その一方で自らその憲法を否定する存在たる自衛隊(当時は警察予備隊)を創設させたり、また共産党員を釈放させたりレッドパージをしてみたりと、どう見ても一貫性のない矛盾する占領政策を行ってきたのは、ケーディスら民主党とウィロビーら共和党との綱引きがGHQ内部に存在していたことが、その理由の全てである。(なおマッカーサーは1950年5月に幣原衆院議長に対しヌケヌケと「日本は一切の武力を放棄すると言われたが、今日の世界情勢から見ると、それは何とも早すぎたような感じがする」と述べている。)

 ちなみにこのウィロビー(退役後は共和党系キリスト教団等を主宰)と親しかったのだが、反共主義者のローマ教皇使節代理であり靖國神社焼却に反対したビッテル神父だ。ビッテル神父の「靖國神社を焼いてはいけない」という主張をウィロビーらGⅡは支持し、自らも軍人であるマッカーサーもその意味を理解したのか、「焼却せよ」と主張していたケーディスら民政局に焼却禁止を命じた。靖國神社を守ってくれたのはビッテル1人ではなく、それを支持したウィロビーら共和党系の軍人たちのおかげでもあるのだ。

 東京裁判オランダ代表判事レーリンクは自著の中で、ウィロビーとの会話として「ウィロビーは私に、この裁判は史上最悪の偽善だと言いました。彼は私に、こういう種類の裁判が開かれたことで自分は息子に軍人になることを禁じるだろうとも言いました。彼は、日本が置かれたこのような状況下では、日本が戦ったようにアメリカも戦うだろうと述べました。(小略)日本には2つの選択肢しか有りませんでした。戦争をせずに石油備蓄が底をつくのを座視し、他国の情けにすがるだけの身分に甘んじるか、あるいは戦うかです。そんなふうに生存のための権利が脅かされれば、どんな国でも戦うだろうと彼(ウィロビー)は言いました」と記している。また同盟通信元編集局長の松本重治氏は、当時にマッカーサーの高等副官フェラーズ推奨(共和党員)に「戦争を始めたのは日米どちらか」と質問したところ、フェラーズが「ルーズベルトが戦争を仕組んだのだ」と怒号したことを紹介しておられる。このようにGHQ内部でも共和党系と民主党系は日本に対する方針や認識を異にしており、ときのアメリカの政権が民主党であったために、結果としてGHQの占領政策の大半はニューディーラーに主導されていったということである。私は前章で「アメリカは二つ存在している」と述べたが、本章では「GHQは2つ存在していた」ということも強調しておきたい。

 日米開戦に先立つ前の時期、共和党は日本よりもソ連を警戒しシナの共産化を怖れており、日米開戦には否定的な主張をしていた。当時、共和党のフーバー元大統領は「ソ連を助けて参戦することは、共産主義を世界に捲き広げることになる」と主張し、真珠湾攻撃に至るまでは共和党議員のほぼ全員が対日戦争に強く反対しており、「対日圧力を中止せよ」と民主党のルーズベルト大統領を批判していたのだ。大統領時代にフーバーは、満州事変に対して「日本に経済制裁を加えよ」という民主党やヘンリー・L・スチムソン国務長官(共和党員ながら容共・親中反日であったために、後のルーズベルト政権でも陸軍長官に起用)の主張を一蹴している。また1932年10月の閣議においてフーバーは、ソ連によるシナ赤化工作を警戒して「アメリカは日本と久しく深い友好関係にあったし、日本の立場をも友好的に見なければならない」という覚書を提出し、満州事変は日本の正当な治安維持措置であり日本は共産主義の防波堤だと力説している。共和党大統領予備選をフーバーと争ったロバート・A・タフトやA・バンデンバーグなども「不参戦」「対日圧力反対」を訴えており、従ってもし1932年の大統領選挙で共和党が勝利してフーバーが大統領であったならば、対日圧力もなく日米開戦に至らなかったことは確実だ。

 しかし残念なことに満州事変の翌年、1932年11月にルーズベルトが大統領に当選し、1933年3月の就任以降、1945年にルーズベルトが病死するまで3期連続してルーズベルトが大統領を努めることになり、民主党政権の親ソ反日傾向は日を追うごとに加速していった。正しい対日観を持っていた共和党の唯一の失敗は、ルーズベルト「不参戦」公約を信用した為に、ルーズベルト3選を賭けた大統領選挙において、共和党候補者W・ウィスキーが「参戦か不参戦か」を争点にしなかったことにある。もしルーズベルトが国民に嘘の公約をすることに抵抗を感じる人物であって「参戦」を公約していたならば、共和党が勝利していたことは確実であった。

次回へ続く
※忠実に引用していますが、漢数字をアラビア数字に変換しました。



 米国民主党は、日本の左翼と思想的にも連携しているので、保守陣営の立場からは明らかに政敵です。政権が米国民主党に移ると、左派の人材も必要となるので、自民党内に左派勢力が存在する理由でもあるでしょう。しかし、それではいつまで経っても、日本の真の独立が実現できません。米国のポチとなる理由はここに有るのです。そして、自民党が真の保守政党になりきれない理由でもあり、米国民主党が政権を取った場合に備えて、自民党内で左派が勢いづくのを批判する野党の保守政党が必ず必要となります。自民党は米国共和党と比べると、保守左派に位置すると考えるのが妥当だと思います。野党に真の保守政党が存在せず、外部からの批判を受けることがないことも原因でしょう。しかも、野党は極左翼勢力で占められ、今の日本の政治は、大きく左に傾いている状態ですので、超極右の政党が誕生しても足らないくらいです。米国民主党が政権を取った場合、日本への外交を失敗させ、米国内で米国民主党への批判が出るようにしなければならない時も来るでしょう。保守の方は、日本の将来の為に、維新政党・新風を応援してやってください。

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民主主義国際連盟を目指せ

 前回までの、“「アメリカは」二つ存在している!”の引用シリーズは、様々なリンクからのアクセスがあり、結構反響があったようである。この本は、序章から工エエェェ(´д`)ェェエエ工工と驚きがあるくらい、面白いので保守の人は必見です。次の引用シリーズも準備中ですが、全てを紹介するわけにもいかず、やはり、著者に印税収入を増やす協力をすると共に、次の執筆活動にも気合いが入るかも知れませんし、何より礼儀でもあります。これらを知っていると右往左往する事が激減し、真性保守対売国左翼の対決に向け、日本国を健全な国家を取り戻すため、ぜひ、購読をお勧めします。いや、読まなければならない本だと感じています。2,000円という価格は、あの重厚な内容からすると割安だと思います。

【ズルい思想性】
 左翼の人はよく、政治指導者は同盟国米国のために自衛隊員を殺す命令を下せるのか。と、訴えかける論調をたまに見かける。では、米国大統領は日本のために、米兵に殺す命令できるのか。という論理に到達することになる。さすが、超個人主義の自分勝手な言い種である。これを言い出したら、同盟国としての存在の意味がない。同盟国とは、相互補完の関係が望ましく、一方的に米国に守護の責任を押しつけることは、結局、いつまで経っても日本の真の独立が実現できない。米国の支配を批判するのであれば、自由主義を望むのであれば、日本の自衛隊は軍隊として格上げし、憲法9条を改正し、軍事活動の制限を普通の国家並みに緩和させる必要がある。これは、戦争のための準備ではない。護国のための準備である。世界第二位の経済力である日本を自国で守護できないのも、いつまで経っても他国から様々な戦後賠償を要求される要因なのである。日本が経済的に破綻するまで絞られ続けるだろう。中共は今や軍事大国化が進み、着々と日本を侵攻できる能力を蓄えつつある。中共はアジア覇権の実現、世界覇権の実現のためには、どうしても日本を叩き潰す必要があるのだ。お金や話し合いで解決できるなどと言う論理は、北朝鮮問題を見れば、いかに難しいか身に染みて経験している筈である。こちらが、武器を持たず平和に解決しようと提案しても、相手は弱みにつけ込み、ますます要求のハードルを上げ、問題解決に向け努力するなどという姿勢さえ見せることはない。それでは、どうやったら解決できるか。軍事力は、外交交渉をする上で後ろ盾となる。軍事力と政治力は一体なのだ。答えは、そこにある。

【安倍政権は憲法改正を強行しろ】
 在米ジャーナリストのマイケル・ヤナギ氏はSAPIO誌で「ワシントンにおいて、米国最後の知日派が全てブッシュ政権に集結しており、政権外にはもはや親中派しか残っていない」というインサイドレポートを発表している*¹。日本に自立と対等なパートナーとして望む最後の米国内勢力ということである。中共のロビイストが米国政界への浸食が進み、日本に残された時間は、もうわずかしかないのである。日本の将来を定める重要な時期に、慰安婦や何とか発言で躊躇している場合ではない。仮に、慰安婦決議が強行採決されたら、米国民主党に対し、原爆投下や東京大空襲などの大量虐殺の罪を日本人は責める事になるのである。そもそも、安倍政権に期待していたのは、ブレない政治姿勢を評価していたからである。今こそ、その国民の期待を一心に受け、左翼マスコミの戯言など耳をかさず、真の日本独立に向け、憲法の改正を望む。左翼勢力は、ソ連が崩壊した今、日本も憲法改正を行った場合、敗北感で心神喪失してしまうかも知れない。それ故に、あらゆる手段を用い、大声で反対するだろう。しかし、日本が真の戦後処理と、真の独立国家として完成させるには憲法9条の改正が必須なのだ。安倍首相は保身など考えず、政治生命を賭けてでも、憲法改正を着々と進めるべきである。

*¹ 日本人が知らない「二つのアメリカ」の世界戦略 P.319

【民主主義国際連盟を目指せ】
 オーストラリアとの安保宣言の話がある。日本は、これだけではなく、民主主義国との連携を深め、中共、北朝鮮、韓国、ロシアの策動を打ち砕く環境を構築することを急げ。できればイギリスとも安保を結ぶのが望ましい。そして、日米英豪同時に国連から脱退せよ。国連は予算の半分以上を喪失することになる。国連は、大幅な縮小となり、満足な機能さえしなくなる。つまり、事実上の解体である。そして、その新連盟に台湾も入れるのである。その連盟には、中共や、ロシア、北朝鮮、韓国は入れない。なぜなら、民主主義でないと入れないのだ。韓国は仮に入れたとしても北朝鮮との統一が先だ。まあ、そのあと、中共に飲み込まれるので、ほとんど可能性はないと思ってくれ。悪いな、泣きついても今度は許さないから。この話は戯言ではない。米国のウォールストリート・ジャーナル紙は「米国は国連を脱退し、日本などと共に新しい国際安全保障機関をつくるべき」と主張している。そして、米国共和党は、国連を煙たがっている。オーストラリアのハワード首相も日本を常任理事国に加えるべきだと言っていた。しかし、中共、ロシアの反対は永遠と続くだろう。もう国連に改革など期待できる筈もなく、時代遅れの組織となってしまった。ついでに、国連の集団保障など、何の役にも立たないじゃないか。国際政治の駆け引きを続けるだけで何の変化もない、そんな古い体質の国連の常任理事国になってどうすると言うのだ。新秩序の構築のために、日本は積極的に策動するべきである。もう、中共への朝貢外交など、国民はうんざりしているんだ。このぐらいスケールの大きいダイナミックな政治を日本は仕掛けるべきである。

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「アメリカは」二つ存在している! 7-7 (最終)

第四章 米国の国際戦略
「アメリカは」二つ存在している!
 P.288〜

 共和党系シンクタンクのヘリテージ財団は、二〇〇一年一月三日にブッシュ政権の指針となる「新大統領の優先課題」という報告書を公表し、その中で「クリントン政権の対中政策の過ちは、安全保障上の米国の国益よりも中国との経済関係に重点を置きすぎた点である。その結果、北東アジアの同盟国(日本)を犠牲にするような印象を与え、米国のアジアにおける国益を混乱させた」と民主党の媚中的外交方針を厳しく批判している。共和党が日本に要求するのは、例えば「イランが核開発を継続するならば、日本はイランとの油田契約を解除するべきだ」といった安全保障や世界秩序に基くものだけであり、それはつまり同盟国としての信義を日本にも求めるということである。経済的利益目的の対日圧力とは根本的に意味が違うのだ。日本を含めてイラク戦争を支持した同盟諸国を民主党は「強制され買収された連合」と呼んだが、これは図らずも民主党の考える同盟関係とは強制(圧力)か買収であるという本音を露呈していよう。一方、共和党政権はこれら同盟国に対して何度も「敬意と感謝」を表明しており、この差こそが軍人と商人の気質差でもある。そして軍人がまず第一に求めるもの、それは「強い友軍」の存在に他ならない。

 アーミテージ国務副長官が中心となって作成した所謂『アーミテージ・レポート』では、「全アジアにおけるアメリカの国益は、日本の繁栄を通じてのみ増大する」「日米の防衛産業は戦略的提携関係を結び、アメリカは日本へ優先的に防衛関連技術を提供する」「米日関係は、バーダン・シェアリング(負担の共有)からパワー・シェアリング(力の共有)へと全身するべき」と説き、「日本は小切手外交をやめ、集団安全保障に明確に義務を負い、アメリカの対等な立場の同盟国として自立するべき」と結論づけている。『アーミテージ・レポート』の執筆者の一人が「もし日本がこの提案を受け入れないのなら、日本は一体何を欲するというのか」とも述べているぐらい、日本を信頼し高く評価した対日政策であり、これがそのままブッシュ政権の対日戦略となっているのだ。すなわち共和党は中共よりも日本をパートナーとすることを望み、中共に対しては強い警戒心を怠らないという、まさに民主党とは対極のアジア戦略を党是としている。

 さて米政治思想の研究家として有名な副島隆彦氏は、「(外国に対する共和党の考え方は)自分のことや自分でやれ、自分の国は自分で守れ、自分の頭で考えろ、自分の力で生きろ(と言うものだ。)彼らは外国を支配しようという気がない人々である。そもそも共和党はそういう政党なのである。それに対して民主党系の政財界人ほど、実は世界各国に資産を持っている。この勢力の人々が国際的なビジネス(多国籍企業)を行い、自分たちが世界中に分散して保有している金融資産や石油その他の鉱物資源の利益を守るために米軍を外国に駐留させ、いざという時に使おうとする。この立場をグローバリズムと言う。このグローバリズムに対して共和党保守派は強く反対している。共和党はキレイごとだらけの『人権やヒューマニズム』を振り回す人々ではない。民主党支持者がグローバリストであるのに対して、共和党支持者は反グローバリストである。民主党と共和党系の人たちとは根本から違うのだ」と述べておられる。アメリカという国が丸ごとグローバリズムを推進して世界を管理下に置こうとしているのではない。グローバリズムと反グローバリズム(アイソレーショニズム)が思想的内戦を戦っているのがアメリカの実状なのだ。

 しかし日本では反グローバリズムを唱える人々の多くは、保守・左翼を問わず反ブッシュを掲げイラク戦争に反対している。つまりグローバリズムの「正体」が見えていないのだ。反対を唱えるべき相手が誰か分からないままに反対を唱えている。信じ難い無知である。私は伝統的保守主義者であり反グローバリズムの立場に立つ。日本の主権自立を目指し、アメリカによる「管理」も拒否する。従って共和党政権を支持し、民主党を批判する。「アメリカの世界支配に反対」という立場ならば、反グローバリズムの共和党と手を組んで民主党のグローバリズム戦略を攻撃するべきなのに、多くの日本人は逆に味方を攻撃することで敵(グローバリスト)を応援している。左翼がアメリカを一括りにして反米を唱えるのは、アメリカが資本主義大国でありソ連を解体せしめた仇敵であることから理解できなくもない。しかし一番奇妙にして不可解なのは、アメリカの「管理下」から日本の自立を主張する保守派が反ブッシュを唱えるという矛盾だ。櫻井よしこ氏いわく「日本人として注目するのは、どちらの政党が日本にとってより良い存在かという点につきる。答えは比較的見えやすい。共和党である。なんといっても同党は、日本に一番足りないもの、国家としての自立と責任を日本に期待しているからである。日本の自立を求めず、いつまでも支配下に置きたい民主党より遥かによい」と言う、この明白な現実をまったく理解していないのである。米メリーランド大学が世界の主要国で行った「米大統領選でどちらの候補に勝ってほしいか」という対外世論調査では、日本人の四十三%がケリー支持、二十二%がブッシュ支持であった。半数近くの日本人が結果的に自国を弱いままアメリカの「管理下」に置き留めようとする選択を行っているのだ。これはもう知的怠堕の極みと断ずるより他はない。

 民主党が中共と手を組んだ一因は、十三億人の中共マーケットが国際ユダヤ資本を中心とする民主党系グローバリストにとって「宝の山」に写っているからである。他方中共にとってもアジア制覇の戦略上、アメリカに日本を切り捨てさせる必要がある。民主党と中共の利害は一致したのだ。なおアーミテージ国務副長官との会談を理由なく拒否し「ゴアが当選していればよかった」とダウナー豪外相に語った田中真紀子、米民主党要人と密接なパイプを持ちアメリカで「日本は米中等距離外交を採る」と吹いてまわり共和党を呆れさせた加藤紘一、その他いわゆる日本の中共シンパ政治家は例外なく共和党よりも民主党に近いというのが現実だ。民主党の反日史観と対中迎合に対して日本側の自虐史観と対中従属、そして軍事的・政治的に「弱い日本」の永続化といった政治理念が、民主党と日本の親中左派は一致しており、それは中共の基本戦略でもある。民主党勢力による「管理下」に日本を置き、中共の望む「日本封じ込め」が継続され、あげくには米国債棒引きを狙った経済クラッシュ(IMF管理)を仕掛けられていることを知ってか知らずか、日本の親中左派政治家にその歪んだ信条をもたらせているメンタリティは自虐史観である。つまり米民主党─中共及び台湾外省人─日本の親中左派、これらは同軸であるということだ。

 一方それに対して共和党─台湾内省人─日本の保守派という形で連携するべきが本来の正しい対抗図式である。石原慎太郎氏は、「NOと言える日本」の影響で反米主義者のように誤解されている面もあるが、日本政界では有数の共和党人脈を持っておられる方である。日本の親中左派政治家が民主党と気脈を通じているのと同様に、保守は保守同士で相通じる感性があり、たとえ国は違っても思考的に一致する点が多いのだ。従って自民党が保守を称するのであれば、本来自民党は共和党と友党であるべきなのである。一九八三年に共和党と英保守党が中心となって約七十ヶ国の保守党を集めて結成したIDU(国際民主主義連合)という国際的政党ネットワークがあり、かつて自民党はこのIDUに加盟していたものの現在は脱退している。四年毎に開催されるIDU大会は、共和党のみならず世界中の保守政党と自民党がパイプを作れる場であるのに、自民党は代表団も派遣せず、しかも日本の中共属国化が進むにつれて反中姿勢の強いIDUを脱退するまでに至ってしまったのだ。自民党はもはや保守政党ではないのか。保守政党だというのであればIDU復帰を至急行うべきである。

 なお詳しくは次章で述べるが、共和党は日本開戦当時の日本の立場に一定の理解を示している。共和党系シンクタンクに名を連ねるD・フィンケルシュタイン博士は元DIA(国防総省情報局)東アジア担当課長や米海軍分析研究所などを歴任したアジア通だが、その演説で「現在中共の過激なナショナリズムと軍拡は、世界の脅威である。かつての日本は、この厄介な中国問題を解決しようと武力まで行使して結局失敗した。(日本をそのような道へと追い詰めた)ルーズベルト政権をふくめて全ての当事国が失敗を犯したのだ。再び同じ過ちを犯してはならない」と述べている。これが共和党の代表的な認識であるといえよう。

 一方、対日貿易圧力の民主党イデオローグであるC・プレストウィッツや日本の社共両党を高く評価しているリベラル最左派のジョン・ダワーなど、現在のブッシュ政権の国際戦略を米国内で批判している勢力は、「日本は侵略戦争を十分に謝罪し従軍慰安婦などの被害者に賠償せよ」「日本が戦争責任をあいまいにするのは、米国が昭和天皇を罰しなかったからだ」などと主張している。アメリカの国内においても、反ブッシュを呼号する勢力は例外なく同時に反日主義(反日史観)でもあり、日本人が反ブッシュを唱えることは米国内の反日史観勢力に与することになる。従って日本で自虐史観を批判しつつ反ブッシュを唱える人々は、結果的に自虐史観を間接支援しているのと同義なのだ。

 高名な文化人類学者シーラ・ジョンソンは、一九九六年の自著『アメリカ人の日本観』の中で「アメリカには二つの相反する日本観がある」として、「ペリー提督の部下は日本人を世界で最も礼儀正しい国民だと考えたが、ペリー自身は、日本人は嘘つきで逃げ口上ばかり言う偽善的な国民だと公言した」と述べ、この二つの対日観は「以後百年間変わっていない」と断じている。ペリーの対日観を継ぎ日本を嫌い「弱い日本」を望む勢力を代表するのが民主党、そしてペリーの部下の対日観を継ぎに日本に理解を示し「強い日本」を望む勢力の代表が共和党なのだ。この二つの対日観が百年間以上も両党によって引き継がれてきたことは、次章で述べる両党の対日関係史によって裏付けられる。グローバリズムの是非同様に、この二大対日観、異なる対日路線がアメリカに共存することを知りもせずに反米も親米も有ったものではないことに気付かぬ日本人が多すぎるのだ。

 二〇〇一年三月に米ギャラップ社が行った米国民世論調査で「日本は防衛力を増強するべき」と回答したのは五十二%、残りの四十八%は「現状維持」又は「現状よりも削減するべき」であった。これは異なる対日観の二つの路線、すなわち「強い日本」を望む共和党支持層と「弱い日本」を望む民主党支持層が、米国世論をビッタリ二分していることを示すものである。二〇〇一年ブッシュ政権発足時の米上院議会では、百議席の内、共和党と民主党はそれぞれ五十議席ずつ有しており、その支持層の数がほぼ均衡していることはブッシュとゴアが争った大統領選挙の結果を見ても明らかであろう。イラク占領政策の失態でブッシュの支持率が低下したといっても、それでもおよそ半数が支持しているのは、「何があっても民主党は支持したくない」という確たる信念の共和党支持者が米国の半分を占めているからなのだ。ミシガン大学世論調査センターが発表した調査報告書には、「高等教育を受けた者はそれだけ共和党支持の比率が高くなり、教育程度が低ければそれだけ民主党支持の比率が高くなる。あるいは企業管理職などの社会的地位が高くなるほど共和党を支持しがちで、社会的地位が低くなるほど民主党の支持比率が増える」と述べられており、「ゴールが平等なのか、スタートラインの条件が平等なのか。富の配分なのか、自由競争原理なのか。どちらがより公正だと考えるかが両党その支持者を互いに相容れない深い立場の違いに対峙させている」と定義している。

 米ブルッキングズ研究所のトーマス・マン上席研究員は、二〇〇四年四月に産経新聞のインタビューに答えて「(共和党と民主党には)内政・外交両面で政治上の大きな違いがある。二大政党は多くの点で見解が異なる。ブッシュ氏とケリー氏の主張は当然それを反映したものになり、減税、歳出、(小略)国防、国際機関(国連)の有効性、公共の哲学など、あらゆることで異なっている」と述べた上で、「米国は共和党と民主党の両党支持にほぼ等しく分裂している」とも指摘している。つまり政党も国民世論も価値観も対日外交方針も、アメリカという国は二つの完全に異なった路線がほぼ同比率で共存しており、親日的で規律志向の保守層(共和党支持)と嫌日で享楽志向のリベラル層(民主党支持)は、現在アメリカ国民を二分して拮抗しているということだ。すなわち「二つのアメリカ」が存在しているのだ。

 アメリカという国を一括りに視てしまうのではなく、この「アメリカは二つ存在している」という視点こそ、日本人がアメリカを考えアメリカに接する上で決して忘れてはならない、大切なキーワードである。


以上

このエントリーの完全版を用意しました。
http://jpn.yamato.omiki.com/documents/two_america/4-1.html

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「アメリカは」二つ存在している! 7-6

第四章 米国の国際戦略
「アメリカは」二つ存在している!
 P.284〜

 一九九九年以降、民主党の牙城であるカリフォルニア州では、民主党の知事の下で講和条約を無視して日本企業へ戦時賠償を求める訴訟が二十八件も相次ぎ、カリフォルニア州地方裁判所は日本企業に賠償を命じた。これは一九九七年七月に、中共ロビーの意を受けたトム・ヘイデン民主党上院議員が提出して成立した所謂「ヘイデン法」に基くものであり、中共の在米反日プロパガンダ工作員と民主党親中派が仕組んだ日米離反工作の一貫であった。ヘイデン上院議員は一九六〇年代には、共産主義革命を呼号するSDS(民主社会学生同盟)という「アメリカの全学連」を創設したSDS初代議長であり、中共や北朝鮮へのシンパシィを宣伝している民主党最左派の一人である。さらに元々より民主党が圧倒的な勢力を誇るカリフォルニア州は反日傾向の強い州であり、日露戦争以後の排日移民法・日系人の土地保有禁止法・日系人学童排除法など、米国の排日運動は大半がカリフォルニア発であった。現在カリフォルニアには在米華僑グループが創立した「太平洋文化財団」という組織があり、さらに中共の国際的反日史観プロパガンダ組織「抗日戦争史実維護連合会」の本部もカリフォルニアであり、中共諜報機関と民主党親中派が協力して、これらの組織を米国の反日史観プロパガンダ拠点に仕上げている。

 このカリフォルニアの反日攻勢はヘイデン法にとどまらず、一九九九年十一月にはカリフォルニア州選出のファインスタイン民主党上院議員が、さらに翌年二〇〇〇年二月には同州選出のビルブレイ民主党下院議員が、それぞれ上下院に日本の戦争責任を追及する法案を提出するに至った。ファインスタインはこの法案の提出時に「日本軍が中国人捕虜に生物・化学兵器の人体実験をしていた証拠が米政府に保管されていないか調査している」という声明を出していたが、その直後に実にタイミングよく中共で七三一部隊の人体実験の証拠文書なるものが突如「発見」されて公表され、民主党系のリベラル諸紙で大きく報じられた。要するにファインスタインの声明と中共の証拠文書捏造は、絶妙の呼吸で連携していた共同謀議だったのである。

 クリントン時代のこの錯乱したカリフォルニア州の反日策動の、その背景に中共ロビーと民主党親中派が暗躍していることを熟知していた共和党は、ブッシュ政権誕生後すぐに「サンフランシスコ講和条約にて全て解決済み」と声明してカリフォルニア州を抑えにかかった。その結果、二〇〇三年一月二十一日にサンフランシスコ連邦高裁は「ヘイデン法は違憲」との判断を下し、同二月六日カリフォルニア州上級裁も同州地方判決を棄却、同十月六日に米最高裁がサンフランシスコ高裁の判決を支持して原告控訴を棄却し、本訴は判決確定するに至っている。日本離反工作を警戒するブッシュ政権であったからこそカリフォルニアの反日策動を抑えたものの、もし民主党政権であったならば「ヘイデン法」の悪禍は全米に波及していたことであろう。

 さて読者氏は映画には、純粋な娯楽作品と政治的プロパガンダを含有する作品の二種類が存在することをご存知だろうか。かつて日本でも若松孝二・大島渚・山本薩夫らが新左翼映画をつくっていたが、例えば「独裁者」で反ナチス・プロパガンダを行ったチャップリンは共産主義者でもあったことから、冷戦下の米国は一九五二年の米出国以後二十年間もチャップリンに再入国ビザを与えなかった。反ブッシュのドキュメンタリーで物議を醸しているマイケル・ムーアも熱心なマルクス主義者である。私は映画史の研究も行っているが、政治性のある大作映画の製作背景を調べるといろいろと興味深い事実が判明する。クリントン政権下の米国で制作された反日プロパガンダ映画の一つとして、日本軍を一方的に悪役として描いた『パールハーバー』がある。日本の大本営がそこらの土手に置いた水槽にオモチャの船を浮かべて米国攻撃の作戦会議を行い、その脇にはフンドシ一丁の兵が並び、あげくには機密会議の筈なのに土手で子供たちが凧揚げをしているという、日本をとことん馬鹿にした屈辱映画だ。この映画の悪質な点は、実際には軍事施設しか攻撃しなかった日本軍が病院爆破をしているという捏造シーンを加えることで、アメリカによる日本への大空襲(民間人大量虐殺)を正当化していることである。実はこの作品の製作には、クリントンの指示で米海軍や国防総省から「PR費用」の名目で多額の製作資金が提供されている。その資金提供の背景にはカリフォルニアの訴訟と同様に、これまた中共ロビーの要請と献金が有り、この映画はアメリカ国民の反日感情を煽る日米離反工作目的に製作されたものなのである。

 フランク・キャプラやジョン・フォードに端を発して、アメリカでは従来より政党が映画を政治的プロパガンダに用いる伝統がある。ハリウッドの大半はユダヤ資本であり、ハリウッド大手映画会社役員の約六十%がユダヤ人であることから、映画産業は民主党の牙城となっており、「ハリウッドの共和党員は、C・イーストウッド、C・ヘストン、、M・J・フォックス、A・シュワルツヘッガーの四人組しかいない」と揶揄するジョークが有るぐらいなのだ。従って必然的に民主党がこのプロパガンダ手法を多用する傾向にある。例えば一九九六年の大統領選挙前にクリントンが協力して製作された『アメリカン・プレジデント』はハンサムな民主党大統領を主人公とするラブストーリーで、登場する共和党大統領候補は醜男で陰険な悪役として描かれていた。また同時期には民主党左派のオリバー・ストーンが民主党支持者の俳優を集めて『ニクソン』を監督し、共和党大統領であったニクソンをケネディ・コンプレックスに悩む卑屈で嫌味な人物として描き、怒ったニクソンの遺族が告訴している。これらの作品に共通していることは民主党系のユダヤ金融資本の資金が製作費に流れているということだ。中共が反日プロパガンダ映画を量産しているのは公知のことだが、ついに同盟国たる米国の民主党政権までもが反日プロパガンダ映画製作に資金提供したという意味で、この『パールハーバー』は一つの分岐点となる。日本ではTVのインタビューでこの映画の感想を聞かれて「感動した」だのとコメントしていた馬鹿な若者たちがいたが、まさに日本人の無知と愚かさを象徴するものである。(なお共和党政権下で『ラスト・サムライ』が製作され共和党系諸紙がこの映画を絶賛していたことにも注目しておきたい。)

 現在、中共は前述の在米「抗日戦争史実維護連合会」を中心として、全米で日本悪玉史観を喧伝するセミナーやシンポジウム、パネル展、書籍発行、エセドキュメンタリー製作などを大々的に展開しており、民主党がそれを全面的に支援している。中共が「日本の侵略・戦争犯罪」を米国民に宣伝する業務を委託契約している大手PRコンサルタント企業ヒル・アンド・ノートン社は、民主党と目されるユダヤ資本企業である。また中共は前述のように闇献金を民主党要人にバラまく一方で、江沢民は訪米時にクリントンへの手みやげとしてボーイング五十機の購入を行っている。ロッキード社が共和党よりなのに対してボーイング社は民主党よりといわれており、ボーイング社は中共に媚びるために台湾の呂秀蓮副総統の工場見学を拒否したぐらいである。こうして赤字転落していたボーイング社は大喜びで民主党に多額を献金し、クリントンは一層対中マーケットに幻惑されていったのだ。この反日の中共と嫌日の民主党との蜜月は、まさに大東亜戦争前夜の日米中の関係を想起させ、すなわち冷戦終結によって民主党は原点回帰したともいえよう。ひたすら中朝の機嫌をとり続けたクリントン、そしてクリントン路線の継承を唱えるケリーの目には、むしろ北朝鮮よりも日本の方がエネミー(敵)として写っているのではないだろうか。

 とにかく日本を目の敵にして中共に媚びた民主党のクリントンに比べて、ブッシュは共和党の本流に位置する人物なので日本に対するスタンスについても正反対である。例えばクリントン政権ではアメリカのみを守るNMD(米本土ミサイル防衛)と同盟国をカバーするTMD(戦域ミサイル防衛)を区別していたのだが、二〇〇一年七月にブッシュ政権は「同盟国の安全保障はアメリカの安全保障である」と宣言してBMD(弾道ミサイル防衛)として一つの計画に統合した。英国などにはミサイル攻撃を受ける差し迫った危機はなく、つまりブッシュは日本のためにNMDとTMDを統合したとも言える。ここにもブッシュの対日観が現れている。

 アメリカの歴代政権で日本核武装を支持又は容認する姿勢を表明したのは、ニクソン政権と現ブッシュ政権のみであり、ともに共和党政権だ。ニクソンは対ソ戦略上の必要と再選へ向けた人気回復目的から米中和解を行ったが、それによって中共から日本を護る安全保障力が低下した代償として、日本核武装を認める信義を示した。ブッシュ政権については詳しくは後述するが、やはり北朝鮮情勢に鑑み同盟国の信義としての日本核武装支持である。共和党のスタンスに比べて、逆に民主党は「いかに日本の軍事力拡大を抑えこむか」を一貫して優先してきた。安保よりも経済優先の民主党にすれば、日本が軍事力を拡大して国際社会での政治力を増大させることは、日本が再び経済的にもアメリカの脅威になることにつながると考えているのだ。つまり分かりやすく例えれば、共和党は軍人であり、民主党は商人である。商人は損か得かで判断するが、軍人は敵か味方をハッキリと区別して経済的な損得勘定では動かない。

 ところで日本は偏向マスコミのせいで共和党に対して「戦争屋」のようなタカ派イメージを持つ日本人もいるが、歴史的に鑑みると第二次大戦に参戦したルーズベルトもベトナム戦争に介入したケネディも民主党であり、二十世紀に米国が参戦又は関与した戦争は、一九九一年の湾岸戦争と今回のアフガニスタン及びイラクを除く他のほとんどが民主党政権下で決定されている。どちらがタカでもハトでもなく、共和党が国家戦略的な戦争を行うのに対して、民主党はムードに流されて結果的に戦争を行ってしまうという、その差があるだけなのだ。例えばクリントンは一九九三年~二〇〇一年一月に渡る八年の在任期間中に、紛争対処のために計七十六回米軍を出動させているが、その全てに置いて失敗している。民主党はユダヤ資本と組んでいることから経済戦争には強いが、本物の戦争については明確な信念や戦略を持たずにその場しのぎの対応を重ねることが多いのだ。

 また民主党が容共主義ゆえに国際戦略に失敗が多いことに対して、共和党はその反共主義の強さゆえに安易な妥協をしないという差もある。レーガンは米国史上初めて核軍縮を行った大統領でもあるが、それはソ連と同時に行われたものであり、この核軍縮会談でゴルバチョフがSDI計画放棄を交換条件に持ち出したところ、レーガンは毅然と席を立っている。このレーガンの強い意志を悟ったゴルバチョフは、結局交換条件を付けずに米ソ同時核軍縮に応じたのである。それに対して民主党カーター政権は、ソ連に対して「善意」と「和解」を呼びかけて米国自ら一方的な軍縮を行った。しかしその結果、「弱いアメリカ」をなめたソ連は、アフガニスタン侵攻を手始めにベトナム、アンゴラ、エチオピア、ソマリア、ニカラグアなど世界中で軍事的かつ政治的な覇権を求めて紛争を引き起こすに至っている。クリントンの甘やかしが中共の軍事大国化を招き、さらに北朝鮮を増長させて核開発を加速させたことと同じパターンである。


次回へ続く
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「アメリカは」二つ存在している! 7-5

第四章 米国の国際戦略
「アメリカは」二つ存在している!
 P.279〜

 なお経済面では、日本人が強く警戒するべき民主党のある狙いだけは、留意しておく必要がある。これはM&Aを手広く手がける大物経済人から聞いた話だが、民主党とユダヤ資本は日本の保有する米国債(三百数十兆円相当)の事実上の棒引きを狙って、日本経済クラッシュを仕掛ける可能性が高いとのことだ。つまり日本を完全に経済的に破綻させてIMF管理下に置き、タダ同然で放出された米国債を買い取ってしまえば、アメリカが負う世界一の対外債務は消失し、「双児の赤字」の片方はなくなる。韓国はすでにこの経済クラッシュを仕掛けられてIMF管理下で米国債を手放すこととなり、韓国大手企業の大半は底値で買い漁られてすでにユダヤ資本になっている。クリントンは韓国に引き続いて日本もそこまで追い込む腹づもりであったが、韓国とはケタが違う日本経済の底力がそれを阻んだということだ。クリントンの対日経済戦争の背景には日本から米国債を取り上げる狙いがあったという、その指摘が当たっているのであれば、共和党政権の間は鳴りをひそめていても再び民主党政権となれば、おそらく日本経済クラッシュを目指した対日経済戦争が再開されることであろう。この情報を教えてくれた経済人は「もしケリー、ヒラリーと民主党政権が二代続けば、日本はもう終わりでしょう」と危惧しておられた。

 実はこの指摘を裏付けるかのように、二〇〇一年九月五日、訪米中の柳沢金融相はケーラーIMF専務理事に対し、日本がIMFの記入審査を受け入れることを表明している。共和党ブッシュ政権が反IMFの立場であることを知らないのか、柳沢金融相は安易にも民主党=ユダヤ金融資本の従来の対日経済戦争シナリオ通りに、日本経済をIMFの管理下に入れるドアを開けてしまったのである。つまり「ブッシュ政権には国際金融資本と直接つながる閣僚がスタッフがほとんどいません。(小略)小泉首相は、アメリカの国益を第一とするアメリカと、国際金融資本の利益を第一とするアメリカの、二つのアメリカの区別がついていません:(藤井厳喜拓殖大客員教授)という小泉政権の米国政情認識のアバウトさが、民主党が仕掛けた罠に日本を自ら追い落としているのだ。せっかくフェアな対日政策を採る共和党政権(リンゼー補佐官などは日本によるアジア円通貨圏構築を望むコメントを出しているぐらい!)の折に、何故このような愚かな行動を自ら取るのであろうか。共和党が望んでいるのは、日本がIMFの管理下に入ることなんかではなく、日本が国家として自立して米国と共に戦える国軍を持つことなのである。

 ともあれクリントン政権はこのように、すべてからく安保より経済、つまり「力より金」で国際戦略を立て中共に媚びて日本を叩き続け、結果的に中共の軍事超大国化を招くこととなった。また北朝鮮を甘やかした結果、一九九四年の米朝核合意を反故にされ、それでも対北外交の破綻を認めずに毎年五十万トンの重油を与え続けたこの北朝鮮への政治姿勢も両党では全く正反対の位置にある。一九九四年七月に金日成が死亡した際、米政界ではどのようなコメントを出すかで両党が対立し、共和党は「金日成は朝鮮戦争の戦犯にして凶悪非道な独裁者であり、米国が哀悼の意を表すべき相手ではない」と大統領名での談話を公表し、共和党を「幾多の国際テロの張本人を米国民を代表して悼むとは何たる非常識」(ラムズフェルド)と激怒させた。またクリントン政権が独断で北朝鮮に約束した「軽水炉二基プレゼント」「年間五十万トンの重油の十年間無償援助」について、共和党は一切その財政支出を認めないと上下院で決議したが、クリントンは「日本及び韓国に負担させる」と言い張ってこれを強行している。

 このクリントンの対北交渉について共和党のリチャード・アーミテージ(現・国務副長官)は当時「もし、きちんとした外交のエキスパートを備えた共和党政権ならば(小略)米国は北朝鮮に圧力をかけただろう」「日米ともに指導者が悪すぎる」と率直にコメントしていたが、当時の日本の「悪すぎる」指導者とは細川・羽田・村山の各政権である。クリントンは一九九五年北朝鮮への経済制裁を全面解除しようとしたものの、議会共和党の抵抗によって僅かな範囲にとどまった。しかし二〇〇〇年六月には、北朝鮮のカラ約束にすぎない長距離ミサイル発射実験凍結合意と引き換えに、クリントンは対北経済制裁の事実上全面解除を強行した。これに対して共和党は「今や米国は、地球上で最も抑圧的な共産主義政府の支持者になろうとしている」(ヘルムズ上院議員)と猛反発し、同年七月二十七日に共和党コックス下院議員らが下院に提出した「クリントンはゴアによる北朝鮮への援助が金正日の百万人軍隊を支える」というタイトルの報告書では、クリントン政権の対北認識も政策も「単に危惧というだけでなく狂っている」と断じ、「金正日の百万人軍隊がプルトニウムで武装するのを支援するという真に狂った政策を即時中止せよ」と要求している。議会への公式報告書にMADやCRAZYという単語が散りばめられたコックス・レポートは、共和党の激しい憤りを如実に示すものである。

 二〇〇一年一月、ブッシュ政権発足直後にウォルフォウィッツ国防副長官は「我々はもはやこれらの邪悪な勢力(北朝鮮・イラク・イラン)と共存していくことはできない。これまでクリントン政権はこの勢力をいわば必要悪と考えてきた節がある。しかしこれらは不必要な悪だ」と述べ、その共和党の信念は翌二〇〇二年一月ブッシュの「悪の枢軸」演説へと結実するに至った。この「悪の枢軸」演説について、北朝鮮脱北難民の人道支援で有名なN・フォラツェン意思は「私が話した全ての脱北者たちがブッシュ大統領の言葉に喜びを表していた。彼らは、自分たちが耐えてきた地獄を外の世界が理解してくれたという想いを抱いた。レーガンのソ連「悪の帝国」演説と同様に、ブッシュの「悪の枢軸」演説はやがて金正日の残酷な崩壊を導き出す希望に満ちている」と高く評価し、一方で同演説を批判した民主党そして日欧の反米勢力に対して「自ら恥じるべきだ」と断じている。

 なお六ヶ国協議について「アメリカは北朝鮮問題を中国に丸投げした」と言う人もいるが、本来共和党が日米韓朝四ヶ国協議を想定していたものを、そこにわざわざ「中国を加えてくれ」と頼み込んだのは日本なのだ。また「アメリカが柔軟姿勢に転じた」と批判する強固派もいるが、それをアメリカに要請したのは日本であり、「今や日本は真の最重要同盟国だ。強固な日米関係を維持する目的で日本の声を立てた」(アーミテージ国務副長官)ということなのである。アメリカはもはやクリントン時代の対朝スタンスを一変させており、中朝に媚びているのは相変わらず日本だけなのだ。

 ブッシュは「暴政の下で生きる人々に対し、私は常に同情の念を抱く」とコメントして、二〇〇一年に三十四万トン、二〇〇二年に十五万五千トンの穀物を北朝鮮に援助しているが、これは交戦中のアフガニスタンでも空中から地元民に食料パックを投下し続けたことと同じく、ブッシュのヒューマニズムに由来する。それに対してクリントン政権は一九九六年一月に北朝鮮に二百万ドルの資金援助を与えたのを手始めに、同年八百二十万ドル、一九九七年は、五千七百ドル、共和党の抵抗で金を出せなくなってからは一九九八年に穀物五十万トン、一九九九年は穀物六十万トンとジャガイモ種子一千トン、二〇〇〇年は穀物三十万トンという膨大な援助を与え続けた。要するにアメリカ流の「太陽政策」を行ったということだ。なおケリーは「核問題は米朝直接交渉で解決するべき」と主張し「私が大統領に当選したらクリントン政権の解決方法を復活させる」と述べているが、そうなると日本は再び重油や軽水炉のコスト負担を押しつけられるのであろうか。

 このような民主党政権の北朝鮮や中共に対する外交姿勢を鑑みると、クリントンが河野洋平や加藤紘一とオーバーラップしてくるが、実は元々親中嫌日傾向にあった民主党はクリントン時代に完全に中共に取り込まれてしまったということだ。そして中共の日米離反戦略そのままに、中共と手を組んで日本封じ込めに動き出している。勿論そのカギとなっているのは「歴史観」なのだ。例えば一九九六年末に、中共ロビーの要請を受けたクリントン政権は、歴史的事実の検証もせずに、単なるホラ話に過ぎない「慰安婦強制連行」の関係者とされる方々、そして過剰な歪曲捏造がなされている「七三一部隊」(共産党員森村誠一と「赤旗」記者が共著で出したニセ写真だらけの偽書が発端!)の関係者の方々に対して、米国への入国ビザを差し止めると言う発表を行った。この関係者とされる日本人は主に八十~九十代の方々でビザ差止に実質的な意味はなく、この発表は民主党が中共の反日史観を全面的に受け入れたことを日本及び世界に対して表明したるものに他ならない。

 翌一九九七年二月にクリントンは「二十一世紀に備える」という大統領一般教書を発表しているが、この一般教書では中共の重要性を強調して米中友好を訴え、朝鮮半島や東南アジア諸国にまで細かく言及しているものの日本にはまったく言及していない。民主党の〝米国の二十一世紀のビジョン〟の中には、日本は含まれていなかったのだ。これについて日本の外務省は「日米両国間に懸案の問題がないため」だと能天気なコメントを行ったが、もし本気でそう考えていたのなら阿呆にも程がある。この一般教書が示すものは、ついに民主党は中共と手を組み日本を切り捨てたと言う事であり、それを裏付ける行動として翌一九九八年六月にクリントンは、中共の要請どおりに、中共を訪問して日本を素通りするという悪名高い「ジャパン・パッシング」を行ったのだ。このときクリントンは実に九日間も中共に滞在しているが、米国歴代大統領でこんなに長く外国に滞在した例は過去に一度もない。そしてこの滞在時に江沢民は、「歴史カード」をさらに効果的に用いて米世論を反日に誘導せしめるように、クリントンを懐柔したのである。

 このクリントンの訪中の前年、一九九七年十月に訪米した江沢民は最初にわざわざ真珠湾に立ち寄り、出迎えに駆けつけたクリントンと肩を並べて「我々は共に日本と戦った戦友だ」と気勢をあげていたが、翌年訪中したクリントンも江沢民主催の晩餐会で「米中両国はかつて日本と戦った同盟国だった」とスピーチしている。もしブッシュならば絶対に口にしないようなこのクリントンのスピーチには、親中嫌日の伝統を持つ民主党のホンネが露呈している。一方、二〇〇二年五月に訪米した胡錦濤もまず真珠湾に立ち寄るというパフォーマンスを行ったが、ブッシュはこれに冷淡に対応しワシントンから動こうとせずに胡錦濤を迎えている。詳しくは次章で述べるが、日本と戦争に反対していた共和党、そして日米戦当時の政権与党であった民主党、この両党の対日歴史観には大きな隔たりがあり、民主党の歴史認識は中共と相通じるものなのだ。


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「アメリカは」二つ存在している! 7-4

第四章 米国の国際戦略
「アメリカは」二つ存在している!
 P.275〜

 さて両党の違いは中共や台湾へのスタンスのみならず、対外経済政策においても際立った差を示している。一九九八年七月、ロシアの金融危機に際してクリントンは、日本政府に「ロシアに十五億ドルの援助をせよ」と要求し、北方領土問題もあって対露援助を渋る日本に「日本を守ってやっているのは米国だということを忘れるな」と恫喝した。日本に対露援助を要求したその目的は、日本の金融支援で時間をかせいで暴落前にアメリカ金融資本を引き上げ、暴落の損失を日本だけに押しつけることにあった。この対日姿勢こそ民主党政権が日本をどのように位置づけているかを如実に示すものである。

 ちなみに一九九七年のアジア金融危機を仕組んでASEAN経済を潰してその台頭を阻止したのも、クリントン政権であり、その「共犯者」はジョージ・ソロスである。しかし共和党は、クリントンやルービン財務長官そしてソロスを猛烈に批判し、当時テキサス州知事であったブッシュも「IMFと世界銀行は間違っている」と明言している。共和党系シンクタンクのヘリテージ財団は一九九五年に世界銀行不要論を提唱しており、反マルクス主義の思想が強い共和党は民主党よりも自由主義経済志向の度合いが高く、アメリカの都合だけで他国に金融危機を仕組むのは自由競争原理に反するとという考えなのだ。ちなみにブッシュ政権の財務次官に就任したJ・テイラーも、一九九八年にテレビインタビューで「IMFは廃止されるべき」と述べているが、共和党からみれば、民主党の支持基盤たるユダヤ金融資本が儲けるための道具でしかないIMFなんて不要だということだ。つまりブッシュはバーチャル金融経済のグローバル化にたいしても「宣戦布告」したのである。そのためブッシュに再三批判されてきたソロスは「打倒ブッシュ」を宣言して民主党ケリー候補への資金援助を行っている。ソロスはクリントン同様にかつて「日本は(経済戦争の)交戦相手だ」と述べたこともある人物で、クリントン政権の経済面でのジャパン・バッシングを操作した黒幕でもある。

 この民主党政権時代に比べると、共和党ブッシュ政権に交替してからの米国が、日本に対して強圧的な経済圧力をかけたことが一度でもあったであろうか。ブッシュ父にしても日本のマスコミに「セールスマン」と皮肉られたが、高圧的な姿勢を示したことはない。現に米国の狂牛病発生に伴う輸入停止についても、ブッシュ政権は輸入再開を頼んでも圧力をかけてはいない。北朝鮮からの防衛や被拉致日本人奪還への協力といったカードを使って日本に輸入再開のバーター交渉することは可能であり、クリントンならばそうしたであろうが、ブッシュはそれをしない。それは「経済と安保は別だ」という共和党の信念、そして他国への交渉・外圧を嫌うアイソレーショニズム(反グローバリズム)の党是に基づく。つまり、経済などで日米の関係が悪化するのは、ほとんど民主党政権の時なのだ。

 クリントン政権のミッキ・カンター通商代表は「これまでタダで日本を守ってやった分の報酬を請求しようではないか」と演説したことがある人物だが、このカンターとクリントンとルービン財務長官の協議により「日本に外交圧力をかけて貿易赤字を減らすための指令塔」という位置付けでNEC(ナショナル・エコノミック・カウンシル)が創設されている。しかし共和党はこのNECの創設にも強く反対しており、その急先鋒の一人がブッシュだった。また一九八八年に民主党のゲッパート下院議員がいわゆる「ゲッパート修正法案」を提出し、日本を標的としての「対米輸出が米国からの輸出の五十五%を超える国に対しては二十五%の課徴関税をかける」という法案を当時議会多数派の民主党の強行採決で導入しているが、クリントン政権が頻繁に発動した包括貿易法「スーパー三〇一条」は同ゲッパート法案を具現化したものである。一方ブッシュ政権は二〇〇二年にこの「スーパー三〇一条」は期限切れだと声明し、日本に対してこのような外圧を加えない旨を対日方針の基本に位置付けた。日本経済に薄陽が射しこみ始めたのは、ひとえに共和党政権発足に由来する要素が大きい。

 しかし現在、ジョン・ケリーはその政策表明演説の中でこの「スーパー三〇一条の復活」を唱え、「日本は為替相場を不当操作しており、市場も閉鎖的」だとして、「もし当選すれば、現在の(日米)二国間貿易協定全てを百二十日間凍結して見直し、真に米国の利益に役立つ協定だけを更新する」と宣言している。つまりケリーは再び「米国の敵(エネミー)は日本だ」と対日経済戦争再開を予告しているのである。「ケリー議員の日本への言及が経済面での非難に限られている点は、ブッシュ政権が対テロ戦争やイラク復興での日本の協力に謝辞を述べ続けるのときわめて対照的となった。(小略)日本に対しこうした経済や貿易だけをみて、しかも協力者というよりは対抗者、競争者とみなし、厳しい非難や批判を浴びせるのは、一九九三年に登場したクリントン政権の姿勢とも酷似している。その一方、ケリー陣営は日本との同盟関係の現在や将来のあり方にはなにも言及せず、目前の経済関係だけをみて、安保などの協調面は論じていない」(産経新聞)ということである。ケリーは「ブッシュ政権は日本を甘やかしており、日本が自国通貨の相場を不当に操作して低く保っているのは放置している。私は日本を甘やかさない」とも演説で述べており、このように民主党は過去もずっと日本を力で抑えつけてきたし、これからも日本を力で抑えつけようとしているのだ。この民主党の手法について、ブッシュ政権の経済担当大統領補佐官であるR・リンゼーは「アジア太平洋地域の関係は、クリントン政権のジャパン・パッシング政策によって根底から阻害された。クリントン時代の米日関係は、外圧という一語に集約される。そうした外圧手法による依存が米日間に混乱をもたらし、両国関係改善に不可欠な創造的志向を阻んできた。外圧に代わる米日相互の協力と尊重の政策が必要不可欠だ」とクリントン政権を非難している。共和党と民主党がそれぞれ対日方針の中心に何を据えているのか、ブッシュやレーガン、そしてクリントンやケリーの対日政策を並べてみれば、その違いは歴然としている。

 アメリカに投資された日本の金融資産を円高で溶かしてしまうシナリオを作成したのもIIE(国際経済研究所)という民主党系のシンクタンクである。IIEはユダヤ系財界人らが民主党政権を通じて世界の為替と金融システムを監視し対抗策を練るために創設されたものだが、その第一の標的は日本に他ならなかった。クリントン政権のルービン財務長官は、橋本政権に対して日本金融市場開放、いわゆる「金融ビッグバン」を強固に要求し、その結果として山一證券はメリルリンチに、東邦生命はGEキャピタルに、長銀はゴールドマンサックスの仲介によってリップルウッド・ホールディングに、それぞれ米資本の手中に陥ちた。ちなみに長銀の不良債権処理によってリップルウッド・ホールディングには日本の国費から約八兆円が投入され、その内の約三兆二百億円は国民負担となっていて戻ってこないのだが、リップルウッド・ホールディングは長銀の営業権を僅か十億円で買い、さらに第三者割当増資の一千二百億円を加えて加えて合計一千二百十億円の金で長銀をその手中に収めている。日本国民が自腹を切らされた三兆二百億円(赤ん坊まで含めて日本国民全員が一人あたり二万円弱の負担)を含め八兆円もの国費を注ぎこんだ長銀は、その百分の一近くの二束三文の金で米資本になってしまったのだ。しかもクリントン政権の圧力で「旧長銀から継承した貸出資金の実質価値が三年以内に二割減少した場合は、日本国が薄価で買い取る」という信じ難い不平等な契約まで結ばれている。こんな条件で経営が失敗することは有り得ず、長銀を新生銀行として上場させることでリップルウッドは巨額の利益を手にしている。つまり日本国、日本企業、そして日本国民はとことん骨までしゃぶり尽くされたということだ。

 このルービンは元々ゴールドマンサックスの会長であり、財務長官退任後はリップルウッド・ホールディングの役員に就任している。またそもそもルービンが財務長官に就任したのか、一九九二年の大統領選でゴールドマンサックスが民主党陣営の莫大な資金提供を取りまとめした見返りからだ。ゴールドマンサックスは長銀で儲けた金を中共の企業(半導体メーカーのSMIC、平安保険)に投資している。つまり日本人の税金が結局そのまま中共資本に化けたのだが、これを仲介したのもルービンだ。つまり現在も日本企業を食い荒らしている外資の正体なるものは、民主党と太いパイプを持つユダヤ資本だということである。

 加えてクリントンは米国に進出した日本企業を徹底的に叩くために、その任期内に様々な「いじめ」を行っている。その実例を少し紹介しよう。一九九六年、クリントン政権下の政府機関であるEEOC(雇用機会均等委員会)は、米国三菱自動車に対してセクハラ賠償訴訟を起こした。EEOCは同社の女性従業員に対して「訴訟すれば一人最高三十万ドル、総額二億ドルの金が得られる」とPRして被害者を「募集」しており、日本の左翼団体が韓国でやった慰安婦募集と何やら酷似した手口だが、このように最初から同社を叩くために捏造されたセクハラ訴訟だったのである。しかしアメリカにも正直な善意の人々はやはり存在する訳で、同社従業員の半分に相当する約二千五百人の社員が「我が社にセクハラは存在しない」と主張してEEOCへ大々的な抗議デモを行った。ちなみにこの時、日本の外務省や通産省は何をしたのだろうか。実は何もしなかったのだ。それどころかセクハラ問題は左翼の得意分野だとばかりに、朝日新聞は「セクハラは実在した」と決めつける報道を行っている。自国企業を助けようともしない日本政府、そして逆にバッシングに回る日本のマスコミに愛想をつかした米国三菱自動車は、二億ドルもの供託を回避するために泣く泣く三千四百万ドルを支払う和解に応じざるを得なくなった。ところがこれに味をしめたEEOCは、なんとその三ヵ月後に今度は「三菱の採用試験に落ちた者の中に腰痛や喘息の患者がいたことは採用差別だ」と訴えて、同社からさらに三百万ドルの和解金を取り上げている。

 また同じ一九九六年には、米司法省が米国旭化学を「部品の一部が中国で組み立てられているのに、組み立ては香港だと表示している」との理由で告訴した。しかし米連邦取引委員会規定では「部品の七十五%以上が組み立てられた国を又は地域を表示して可」と定められており、同社は七十五%以上を香港で組み立てていることから、米司法省の主張は完全な言いがかりでしかない。この件においても日本政府は指をくわえて座視し、旭化学は二千万ドルの和解金を払わされた。このようなクリントン政権による在米日本企業弾圧は枚挙するとキリがないが、一九九九年にはなんと呆れ果てたことに、米国東芝が「ノートパソコンに欠陥がないという証明が完全にできない」という理由で実に十一億ドルもの和解金を払わされている。同裁判では「欠陥がある」という証明は一切不要とされ、米国東芝だけが「欠陥のない証明」を要求された。しかし欠陥を見つけるのは簡単でも、まったく欠陥のない場合それを「証明」するような方法は存在しない。その結果、全米の同製品ユーザーが誰も欠陥を訴えていないにも関わらず、同社はそれまでに米国で売り上げられたノートパソコンの利益を全て投じても足りない和解金額を払わさせられたのである。

 ちなみにクリントン政権末期には、民主党知事の下にカリフォルニア州大気支局が、米国トヨタ自動車に対してでっちあげの計測値を口実に規則違反(しかも事後法による規制値!)だと言いがかりをつけて、二百二十万代のリコールを命じた。トヨタ側が「違反はない」としてリコルを拒むと、今度は米司法省がトヨタ史上空前の七百億ドル(約七兆円強!)もの損害賠償を起こしたのである。(なおブッシュ政権下においては、在米日本企業にこのような圧力が加えられたことは一切なく、二〇〇四年に米国トヨタ自動車は米国進出以来初めての販売数百万台突破を達成したことを付記しておく。)このように民主党政権下では在米日本企業は標的にされて理不尽な「いじめ」を受け、それまで米国で上げた利益を軒並み吐き出させられ、クリントンの「米国の敵は日本」という対日経済戦争の餌食となってきたのである。


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「アメリカは」二つ存在している! 7-3

第四章 米国の国際戦略
「アメリカは」二つ存在している!
 P.270〜

 民主党大統領候補のジョン・ケリー上院議員もその例外ではなく、一九九六年に中共人民解放軍傘下の「中国航天国際公司」役員の劉朝英(人民解放軍の現役軍人)が米国の中国人実業家ジョニー・チャンに三十万ドルを託し、チャンはこの金をケリーに闇献金している。中共のヒモ付きとなったケリーは、人民解放軍系企業の米国証券市場上場に便宜をはかるなどの中共のエージェントとしての役割を果たしたが、一九九八年ジョニー・チャンがケリー及びクリントンへの不正献金で逮捕され有罪確定となると「金はチャンに返した」と言い張った。自らも後ろめたいクリントン政権が当局に圧力をかけてケリーは訴追を免れたが、もし共和党政権下での発覚であれば逮捕されていた可能性もある。

 この不正献金を自著でスクープしたのは米上院外交委員会元主席W・C・トリプレットだが、クリントンら民主党首脳が中共から一千万ドル以上の闇献金を受け取った行為は、アメリカでは「国家反逆罪」に該当する。しかしFBIが報告したこのクリントンの「国家反逆罪」について、クリントン政権の司法長官は捜査の打ち切りを命じ、米国民の目をそらすカモフラージュとして、ルインスキー裁判偽証事件を前面に押し出して捜査を命じた。当時「なぜ米国司法長官は自らの政権の大統領を偽証で訴追させたのか」と不思議に感じていた方もおられるであろうが、その背景にはこういう事実が存在していたのだ。また共和党もアメリカの名誉に鑑みて「アメリカ大統領が中共からワイロを受け取っていたなどということは、民主党の問題のみならずアメリカ国家の恥だ」と考え、敢えて執拗な追求は控えている。橋本元首相の中共スパイ愛人問題で、西村真悟代議士が批判はしても敢えて執拗な追求を控えられたが、それと同じような想いが共和党にもあったのであろう。

 ちなみにクリントン政権下のバーガー安全保障担当補佐官は元々は中国ビジネス専門のロビイストであり、ペリー国防長官(第一期)は現在北朝鮮ビジネスのロビイストになっており、コーエン国防長官(第二期)にいたっては中共との貿易コンサルタント会社の経営者でもあった。このコーエン元国防長官は二〇〇三年一月に日本の国防筋に対して「北朝鮮の核兵器保有を日本は容認できないか」と打診してきた人物である。そして勿論のことクリントン自身も退任後は複数の中共企業の顧問を務め、たっぷり顧問報酬を受け取っている。このように中朝利権につながる人物たちがアメリカの安保・国防政策を指揮していたのがクリントン民主党政権であった。この中共マネーの民主党汚染について近頃、共和党ギングリッチ前下院議長は「クリントン政権に関していえば、あの連中は本当に恥知らずな連中というしかない。本当に腐敗した人間たちだった。しかし現ブッシュ政権に関していえば、正直な人間だ。ブッシュは約束を守る。彼は日米同盟の信頼関係を壊すようなことは、絶対にやらない。ブッシュは日本を裏切ったりしない」と日本人記者のインタビューに答えている。

 現在アメリカには、約一万五千人の中国人のロビイストが存在しており、その大半は民主党と太いパイプがある。一例を挙げると、アメリカにおいて政治や経済などの分野で成功し社会的影響力を持つ在米華僑約百人が、一九九〇年に「百人委員会」というロビー組織を結成した。そのメンバーは現在は五百名近い人数に膨らんでいるが、主要メンバーとしては、中国系で初めて州知事になったワシントン州知事ギャラリー・ロック、コロンビア・トライスタ・ピクチャーズ社長のクリス・リー、カリフォルニア大学バークレー校前総長のチャン・R・ティエンなどが名を連ねている。このような中共のロビー組織は大小合わせて全米に無数に存在しているが、一方日本はマトモなロビー組織を持っておらずロビー活動も何も行っていない。なお共和党に対するロビー活動は台湾のロビイストの方が活発なのだが、民主党は伝統的に嫌日傾向と中共よりのスタンスが強く、ヒルズ元通商代表、ヘイグ元国務長官、民主党上院議会の有力者ダイアン・ファインスタインなどは今や完全に中共のエージェントとなっている。

 これらの多くの中共ロビー団体に加えて、現在「米中通商ビジネス評議会」(グリーンバーグAIG保険会長)と「米中通商ビジネス連合」(GM、モービルエクソン等が中心)という二つの圧力団体が、中国市場の参入のために中共重視の政策を取るように民主党を動かしている。さらにクリントン時代に中共は人民解放軍のフロント企業を全米に二千社以上設立し、その各社を通じて地元の民主党議員の懐柔を進めており、ブッシュ政権下でDIA(国防総省情報局)がこれを警戒するレポートを発表している。つまり中共と民主党はもはや切っても切れない「裏のつながり」を構築しており、民主党の本音は「中共十三億人のマーケットをユダヤ資本で独占したい、日本の防衛なんかのためにアメリカが血を流すのはまっぴら御免」といったところなのだ。クリントン政権で国防次官補を務めたジョセフ・ナイは、二〇〇三年九月に朝日新聞で同紙論説主幹と対談し、「私は米中の敵対を信じてきませんでした」「日本に憲法改正の必要はない。むしろ危険です。中国や韓国など近隣諸国に不安を抱かせますから」と述べているが、中共に批判的な産経や読売ではなく中共シンパの朝日で対談するところが、中共と手を組んで対日封じ込めを推進する民主党要人らしい選択である。

 民主党の方針を知るために分かりやすいのは、クリントン政権下における民主党系シンクタンク群のレポートであろう。それらのレポートでは「中国が国際秩序に対する脅威だと主張している保守派の見方は単純すぎる。中国は柔軟性があり、アメリカは中国に的確に友好的にコミットしていくべきである」「もし日本が本気で再軍備を行ったら、二〇二〇年〜二〇三〇年までには軍事大国化して、アメリカが唯一の軍事的強国ではなくなってしまうリスクがある。日本の軍事的自立は抑えるべきである」「日本は中国や東南アジアに対して、ドイツを見習って徹底した謝罪を行い、従軍慰安婦その他の戦後賠償を実行するべきである」等々といった趣旨の文言が並んでいる。つまり中共は勿論のこと、日本の左翼が読んだら大喜びしそうな内容に満ちているのだ。

 クリントンは就任後の記者会見で国際経済競争力について述べる中で、世界中のプレスを前に「米国の敵(エネミー)は日本だ」と発言した。アメリカ大統領の口からエネミーという言葉が日本に対して用いられるのは、講和条約発効以来これが初めてである。その言葉どおりクリントンは日本を「防衛タダ乗り」だと非難して、貿易輸入の数値目標を強固に日本に押し付けたが、この時期クリントンの命令でCIAは通産省の電信電話を盗聴していた。これはもうとても同盟国とは呼べない関係だ。一方、一九九五年九月に沖縄で米兵の小学生暴行事件が起こった際、日本の左翼は大々的な反米デモを展開したが、このデモを見た共和党は怒るどころか逆に「クリントン政権は貿易戦争をしかけて反米感情を煽り日米同盟をぶち壊している。民主党は現在の対日政策を転換せよ」と議会で激しく追求している。これは金よりも安全保障を優先させる共和党らしい政治反応である。

 同一九九五年、台湾の李登輝総統のワシントン訪問の査証発行をクリントンは拒否した。日本の外務省じゃないが中共に対して遠慮したのだ。これに対して共和党のギングリッチ下院議長を始め共和党議員の多くが「台湾関係法の趣旨に反する」とクリントンを激しく非難し追求したために、結局クリントンは拒否を撤回して渋々ながら査証を出している。クリントン政権は下院では少数であり、議会は共和党が制していたため、クリントンは逆らえなかったのである。また一九九六年に中共が台湾海峡へミサイルを発射した時にも、当初クリントンはいかなる軍事的アクションを起こすことも拒否した。しかし共和党が空母急派を強く要求し、共和党のC・コックス下院議員が中心となって民主党の一部を説得し、超党派でクリントンを強く責め立てた。下院で多数派であった共和党は「空母を派遣しないならば、下院で大統領の問責決議を行う」と主張し、中共に媚びたいクリントンも淡々ながら空母派遣を命じたのである。共和党と民主党のスタンスをよく知らない台湾人の場合、クリントンに感謝している人もいるようだが、それは大間違いということだ。民主党に台湾防衛の意思は希薄なのだ。

 それに対してブッシュは一九九九年十一月十九日の外交演説で「台湾の自衛力強化を支援する。アメリカは中共の武力侵攻を許さないという、台湾の人々との約束を守る。民主主義体制をとる台湾に北京政府が自分たちのルールを強制する権利はない」と述べており、実際に台湾への軍事協力も増加している。ブッシュ政権は台湾空軍に対して中距離空対空ミサイルAIMー120(アムラーム)の提供を決定しており、共同で実射試射演習を行う計画であることを台湾各紙が報じている。またブッシュは台湾のWHO加盟を支持する法案にも署名しており、中共はこれを「台湾独立へ向けた策謀をブッシュと陳水扁が表裏となって進めている」と批難しているのだ。

 ブッシュが中共に対して「台湾独立を支持しない」と発言を行ったのは、「中共が現在台湾海峡に配備している四百五十基のミサイルを撤去するのであれば」という前提が付随しており、イラクゲリラの抗戦や北朝鮮が片付いていない段階で、万一中共が台湾攻撃に至るとアメリカの手に負えなくなるために予防線を張ったわけである。つまり「イラクと北朝鮮が先だから、台湾問題ではとりあえず中共をなだめて時間稼ぎしておこう」ということなのだ。クリントンが一九九八年に中共に迎合して「三つのNO」(台湾独立不支持、「二つの中国」政策不支持、台湾国連加盟不支持)を安易に口にしてしまったこととは、その根本において全く違うのである。

 パウエル国務長官は「台湾はプロブレムではない。台湾はサクセスストーリーだ」と述べており、共和党のこの基本的スタンスは決して変わらない。だまし合いこそが国際外交であり、その時の状況に応じて表明するコメント内容も「政治的に」変化する。田中真紀子じゃあるまいし、馬鹿正直にホンネを話していればそれは外交ではない。李登輝も元総統も「(台湾独立を支持しないという)ブッシュ発言は戦術にすぎない。戦略的にみれば、長期的に中共は米国の敵に必ずなる。戦略と戦術とは往々にして異なることがある。つまり九・一一テロそしてイラク戦以降、共和党が米中デタントを進めたように見えるのも、敢くまでも戦術であり、アルカーイだ、イラク、北朝鮮との対決を優先するために、中共が安保理などでやたらアメリカに反対しないようにおとなしくしていてもらおうというリップサービスなのだ。

 二〇〇一年五月二十一日、ブッシュは陳水扁台湾総統の訪米を即諾しており、陳水扁は共和党首脳との会談を行っている。さらにその二日後の五月二十三日、中共のチベット支配から満五十周年となるこの日に、ブッシュはダライ・ラマと公式会見を行った。陳水扁とダライ・ラマという中共が最も敵視する人物がワシントンを公式に訪れたことについて、江沢民は「民主党政権ならば、こんなことにならなかった」と側近に対して激しくブッシュを罵ったとのことである。中共からの献金をたっぷり受け取っているゴアが大統領だったならば、台湾やチベットの元首と会うことはなかったであろうということだ。



一言:米下院で民主党が過半数を獲得したので情勢が変わってきている。

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