「アメリカは」二つ存在している! 7-7 (最終)
第四章 米国の国際戦略
「アメリカは」二つ存在している! P.288〜
共和党系シンクタンクのヘリテージ財団は、二〇〇一年一月三日にブッシュ政権の指針となる「新大統領の優先課題」という報告書を公表し、その中で「クリントン政権の対中政策の過ちは、安全保障上の米国の国益よりも中国との経済関係に重点を置きすぎた点である。その結果、北東アジアの同盟国(日本)を犠牲にするような印象を与え、米国のアジアにおける国益を混乱させた」と民主党の媚中的外交方針を厳しく批判している。共和党が日本に要求するのは、例えば「イランが核開発を継続するならば、日本はイランとの油田契約を解除するべきだ」といった安全保障や世界秩序に基くものだけであり、それはつまり同盟国としての信義を日本にも求めるということである。経済的利益目的の対日圧力とは根本的に意味が違うのだ。日本を含めてイラク戦争を支持した同盟諸国を民主党は「強制され買収された連合」と呼んだが、これは図らずも民主党の考える同盟関係とは強制(圧力)か買収であるという本音を露呈していよう。一方、共和党政権はこれら同盟国に対して何度も「敬意と感謝」を表明しており、この差こそが軍人と商人の気質差でもある。そして軍人がまず第一に求めるもの、それは「強い友軍」の存在に他ならない。
アーミテージ国務副長官が中心となって作成した所謂『アーミテージ・レポート』では、「全アジアにおけるアメリカの国益は、日本の繁栄を通じてのみ増大する」「日米の防衛産業は戦略的提携関係を結び、アメリカは日本へ優先的に防衛関連技術を提供する」「米日関係は、バーダン・シェアリング(負担の共有)からパワー・シェアリング(力の共有)へと全身するべき」と説き、「日本は小切手外交をやめ、集団安全保障に明確に義務を負い、アメリカの対等な立場の同盟国として自立するべき」と結論づけている。『アーミテージ・レポート』の執筆者の一人が「もし日本がこの提案を受け入れないのなら、日本は一体何を欲するというのか」とも述べているぐらい、日本を信頼し高く評価した対日政策であり、これがそのままブッシュ政権の対日戦略となっているのだ。すなわち共和党は中共よりも日本をパートナーとすることを望み、中共に対しては強い警戒心を怠らないという、まさに民主党とは対極のアジア戦略を党是としている。
さて米政治思想の研究家として有名な副島隆彦氏は、「(外国に対する共和党の考え方は)自分のことや自分でやれ、自分の国は自分で守れ、自分の頭で考えろ、自分の力で生きろ(と言うものだ。)彼らは外国を支配しようという気がない人々である。そもそも共和党はそういう政党なのである。それに対して民主党系の政財界人ほど、実は世界各国に資産を持っている。この勢力の人々が国際的なビジネス(多国籍企業)を行い、自分たちが世界中に分散して保有している金融資産や石油その他の鉱物資源の利益を守るために米軍を外国に駐留させ、いざという時に使おうとする。この立場をグローバリズムと言う。このグローバリズムに対して共和党保守派は強く反対している。共和党はキレイごとだらけの『人権やヒューマニズム』を振り回す人々ではない。民主党支持者がグローバリストであるのに対して、共和党支持者は反グローバリストである。民主党と共和党系の人たちとは根本から違うのだ」と述べておられる。アメリカという国が丸ごとグローバリズムを推進して世界を管理下に置こうとしているのではない。グローバリズムと反グローバリズム(アイソレーショニズム)が思想的内戦を戦っているのがアメリカの実状なのだ。
しかし日本では反グローバリズムを唱える人々の多くは、保守・左翼を問わず反ブッシュを掲げイラク戦争に反対している。つまりグローバリズムの「正体」が見えていないのだ。反対を唱えるべき相手が誰か分からないままに反対を唱えている。信じ難い無知である。私は伝統的保守主義者であり反グローバリズムの立場に立つ。日本の主権自立を目指し、アメリカによる「管理」も拒否する。従って共和党政権を支持し、民主党を批判する。「アメリカの世界支配に反対」という立場ならば、反グローバリズムの共和党と手を組んで民主党のグローバリズム戦略を攻撃するべきなのに、多くの日本人は逆に味方を攻撃することで敵(グローバリスト)を応援している。左翼がアメリカを一括りにして反米を唱えるのは、アメリカが資本主義大国でありソ連を解体せしめた仇敵であることから理解できなくもない。しかし一番奇妙にして不可解なのは、アメリカの「管理下」から日本の自立を主張する保守派が反ブッシュを唱えるという矛盾だ。櫻井よしこ氏いわく「日本人として注目するのは、どちらの政党が日本にとってより良い存在かという点につきる。答えは比較的見えやすい。共和党である。なんといっても同党は、日本に一番足りないもの、国家としての自立と責任を日本に期待しているからである。日本の自立を求めず、いつまでも支配下に置きたい民主党より遥かによい」と言う、この明白な現実をまったく理解していないのである。米メリーランド大学が世界の主要国で行った「米大統領選でどちらの候補に勝ってほしいか」という対外世論調査では、日本人の四十三%がケリー支持、二十二%がブッシュ支持であった。半数近くの日本人が結果的に自国を弱いままアメリカの「管理下」に置き留めようとする選択を行っているのだ。これはもう知的怠堕の極みと断ずるより他はない。
民主党が中共と手を組んだ一因は、十三億人の中共マーケットが国際ユダヤ資本を中心とする民主党系グローバリストにとって「宝の山」に写っているからである。他方中共にとってもアジア制覇の戦略上、アメリカに日本を切り捨てさせる必要がある。民主党と中共の利害は一致したのだ。なおアーミテージ国務副長官との会談を理由なく拒否し「ゴアが当選していればよかった」とダウナー豪外相に語った田中真紀子、米民主党要人と密接なパイプを持ちアメリカで「日本は米中等距離外交を採る」と吹いてまわり共和党を呆れさせた加藤紘一、その他いわゆる日本の中共シンパ政治家は例外なく共和党よりも民主党に近いというのが現実だ。民主党の反日史観と対中迎合に対して日本側の自虐史観と対中従属、そして軍事的・政治的に「弱い日本」の永続化といった政治理念が、民主党と日本の親中左派は一致しており、それは中共の基本戦略でもある。民主党勢力による「管理下」に日本を置き、中共の望む「日本封じ込め」が継続され、あげくには米国債棒引きを狙った経済クラッシュ(IMF管理)を仕掛けられていることを知ってか知らずか、日本の親中左派政治家にその歪んだ信条をもたらせているメンタリティは自虐史観である。つまり米民主党─中共及び台湾外省人─日本の親中左派、これらは同軸であるということだ。
一方それに対して共和党─台湾内省人─日本の保守派という形で連携するべきが本来の正しい対抗図式である。石原慎太郎氏は、「NOと言える日本」の影響で反米主義者のように誤解されている面もあるが、日本政界では有数の共和党人脈を持っておられる方である。日本の親中左派政治家が民主党と気脈を通じているのと同様に、保守は保守同士で相通じる感性があり、たとえ国は違っても思考的に一致する点が多いのだ。従って自民党が保守を称するのであれば、本来自民党は共和党と友党であるべきなのである。一九八三年に共和党と英保守党が中心となって約七十ヶ国の保守党を集めて結成したIDU(国際民主主義連合)という国際的政党ネットワークがあり、かつて自民党はこのIDUに加盟していたものの現在は脱退している。四年毎に開催されるIDU大会は、共和党のみならず世界中の保守政党と自民党がパイプを作れる場であるのに、自民党は代表団も派遣せず、しかも日本の中共属国化が進むにつれて反中姿勢の強いIDUを脱退するまでに至ってしまったのだ。自民党はもはや保守政党ではないのか。保守政党だというのであればIDU復帰を至急行うべきである。
なお詳しくは次章で述べるが、共和党は日本開戦当時の日本の立場に一定の理解を示している。共和党系シンクタンクに名を連ねるD・フィンケルシュタイン博士は元DIA(国防総省情報局)東アジア担当課長や米海軍分析研究所などを歴任したアジア通だが、その演説で「現在中共の過激なナショナリズムと軍拡は、世界の脅威である。かつての日本は、この厄介な中国問題を解決しようと武力まで行使して結局失敗した。(日本をそのような道へと追い詰めた)ルーズベルト政権をふくめて全ての当事国が失敗を犯したのだ。再び同じ過ちを犯してはならない」と述べている。これが共和党の代表的な認識であるといえよう。
一方、対日貿易圧力の民主党イデオローグであるC・プレストウィッツや日本の社共両党を高く評価しているリベラル最左派のジョン・ダワーなど、現在のブッシュ政権の国際戦略を米国内で批判している勢力は、「日本は侵略戦争を十分に謝罪し従軍慰安婦などの被害者に賠償せよ」「日本が戦争責任をあいまいにするのは、米国が昭和天皇を罰しなかったからだ」などと主張している。アメリカの国内においても、反ブッシュを呼号する勢力は例外なく同時に反日主義(反日史観)でもあり、日本人が反ブッシュを唱えることは米国内の反日史観勢力に与することになる。従って日本で自虐史観を批判しつつ反ブッシュを唱える人々は、結果的に自虐史観を間接支援しているのと同義なのだ。
高名な文化人類学者シーラ・ジョンソンは、一九九六年の自著『アメリカ人の日本観』の中で「アメリカには二つの相反する日本観がある」として、「ペリー提督の部下は日本人を世界で最も礼儀正しい国民だと考えたが、ペリー自身は、日本人は嘘つきで逃げ口上ばかり言う偽善的な国民だと公言した」と述べ、この二つの対日観は「以後百年間変わっていない」と断じている。ペリーの対日観を継ぎ日本を嫌い「弱い日本」を望む勢力を代表するのが民主党、そしてペリーの部下の対日観を継ぎに日本に理解を示し「強い日本」を望む勢力の代表が共和党なのだ。この二つの対日観が百年間以上も両党によって引き継がれてきたことは、次章で述べる両党の対日関係史によって裏付けられる。グローバリズムの是非同様に、この二大対日観、異なる対日路線がアメリカに共存することを知りもせずに反米も親米も有ったものではないことに気付かぬ日本人が多すぎるのだ。
二〇〇一年三月に米ギャラップ社が行った米国民世論調査で「日本は防衛力を増強するべき」と回答したのは五十二%、残りの四十八%は「現状維持」又は「現状よりも削減するべき」であった。これは異なる対日観の二つの路線、すなわち「強い日本」を望む共和党支持層と「弱い日本」を望む民主党支持層が、米国世論をビッタリ二分していることを示すものである。二〇〇一年ブッシュ政権発足時の米上院議会では、百議席の内、共和党と民主党はそれぞれ五十議席ずつ有しており、その支持層の数がほぼ均衡していることはブッシュとゴアが争った大統領選挙の結果を見ても明らかであろう。イラク占領政策の失態でブッシュの支持率が低下したといっても、それでもおよそ半数が支持しているのは、「何があっても民主党は支持したくない」という確たる信念の共和党支持者が米国の半分を占めているからなのだ。ミシガン大学世論調査センターが発表した調査報告書には、「高等教育を受けた者はそれだけ共和党支持の比率が高くなり、教育程度が低ければそれだけ民主党支持の比率が高くなる。あるいは企業管理職などの社会的地位が高くなるほど共和党を支持しがちで、社会的地位が低くなるほど民主党の支持比率が増える」と述べられており、「ゴールが平等なのか、スタートラインの条件が平等なのか。富の配分なのか、自由競争原理なのか。どちらがより公正だと考えるかが両党その支持者を互いに相容れない深い立場の違いに対峙させている」と定義している。
米ブルッキングズ研究所のトーマス・マン上席研究員は、二〇〇四年四月に産経新聞のインタビューに答えて「(共和党と民主党には)内政・外交両面で政治上の大きな違いがある。二大政党は多くの点で見解が異なる。ブッシュ氏とケリー氏の主張は当然それを反映したものになり、減税、歳出、(小略)国防、国際機関(国連)の有効性、公共の哲学など、あらゆることで異なっている」と述べた上で、「米国は共和党と民主党の両党支持にほぼ等しく分裂している」とも指摘している。つまり政党も国民世論も価値観も対日外交方針も、アメリカという国は二つの完全に異なった路線がほぼ同比率で共存しており、親日的で規律志向の保守層(共和党支持)と嫌日で享楽志向のリベラル層(民主党支持)は、現在アメリカ国民を二分して拮抗しているということだ。すなわち「二つのアメリカ」が存在しているのだ。
アメリカという国を一括りに視てしまうのではなく、この「アメリカは二つ存在している」という視点こそ、日本人がアメリカを考えアメリカに接する上で決して忘れてはならない、大切なキーワードである。
「アメリカは」二つ存在している! P.288〜
共和党系シンクタンクのヘリテージ財団は、二〇〇一年一月三日にブッシュ政権の指針となる「新大統領の優先課題」という報告書を公表し、その中で「クリントン政権の対中政策の過ちは、安全保障上の米国の国益よりも中国との経済関係に重点を置きすぎた点である。その結果、北東アジアの同盟国(日本)を犠牲にするような印象を与え、米国のアジアにおける国益を混乱させた」と民主党の媚中的外交方針を厳しく批判している。共和党が日本に要求するのは、例えば「イランが核開発を継続するならば、日本はイランとの油田契約を解除するべきだ」といった安全保障や世界秩序に基くものだけであり、それはつまり同盟国としての信義を日本にも求めるということである。経済的利益目的の対日圧力とは根本的に意味が違うのだ。日本を含めてイラク戦争を支持した同盟諸国を民主党は「強制され買収された連合」と呼んだが、これは図らずも民主党の考える同盟関係とは強制(圧力)か買収であるという本音を露呈していよう。一方、共和党政権はこれら同盟国に対して何度も「敬意と感謝」を表明しており、この差こそが軍人と商人の気質差でもある。そして軍人がまず第一に求めるもの、それは「強い友軍」の存在に他ならない。
アーミテージ国務副長官が中心となって作成した所謂『アーミテージ・レポート』では、「全アジアにおけるアメリカの国益は、日本の繁栄を通じてのみ増大する」「日米の防衛産業は戦略的提携関係を結び、アメリカは日本へ優先的に防衛関連技術を提供する」「米日関係は、バーダン・シェアリング(負担の共有)からパワー・シェアリング(力の共有)へと全身するべき」と説き、「日本は小切手外交をやめ、集団安全保障に明確に義務を負い、アメリカの対等な立場の同盟国として自立するべき」と結論づけている。『アーミテージ・レポート』の執筆者の一人が「もし日本がこの提案を受け入れないのなら、日本は一体何を欲するというのか」とも述べているぐらい、日本を信頼し高く評価した対日政策であり、これがそのままブッシュ政権の対日戦略となっているのだ。すなわち共和党は中共よりも日本をパートナーとすることを望み、中共に対しては強い警戒心を怠らないという、まさに民主党とは対極のアジア戦略を党是としている。
さて米政治思想の研究家として有名な副島隆彦氏は、「(外国に対する共和党の考え方は)自分のことや自分でやれ、自分の国は自分で守れ、自分の頭で考えろ、自分の力で生きろ(と言うものだ。)彼らは外国を支配しようという気がない人々である。そもそも共和党はそういう政党なのである。それに対して民主党系の政財界人ほど、実は世界各国に資産を持っている。この勢力の人々が国際的なビジネス(多国籍企業)を行い、自分たちが世界中に分散して保有している金融資産や石油その他の鉱物資源の利益を守るために米軍を外国に駐留させ、いざという時に使おうとする。この立場をグローバリズムと言う。このグローバリズムに対して共和党保守派は強く反対している。共和党はキレイごとだらけの『人権やヒューマニズム』を振り回す人々ではない。民主党支持者がグローバリストであるのに対して、共和党支持者は反グローバリストである。民主党と共和党系の人たちとは根本から違うのだ」と述べておられる。アメリカという国が丸ごとグローバリズムを推進して世界を管理下に置こうとしているのではない。グローバリズムと反グローバリズム(アイソレーショニズム)が思想的内戦を戦っているのがアメリカの実状なのだ。
しかし日本では反グローバリズムを唱える人々の多くは、保守・左翼を問わず反ブッシュを掲げイラク戦争に反対している。つまりグローバリズムの「正体」が見えていないのだ。反対を唱えるべき相手が誰か分からないままに反対を唱えている。信じ難い無知である。私は伝統的保守主義者であり反グローバリズムの立場に立つ。日本の主権自立を目指し、アメリカによる「管理」も拒否する。従って共和党政権を支持し、民主党を批判する。「アメリカの世界支配に反対」という立場ならば、反グローバリズムの共和党と手を組んで民主党のグローバリズム戦略を攻撃するべきなのに、多くの日本人は逆に味方を攻撃することで敵(グローバリスト)を応援している。左翼がアメリカを一括りにして反米を唱えるのは、アメリカが資本主義大国でありソ連を解体せしめた仇敵であることから理解できなくもない。しかし一番奇妙にして不可解なのは、アメリカの「管理下」から日本の自立を主張する保守派が反ブッシュを唱えるという矛盾だ。櫻井よしこ氏いわく「日本人として注目するのは、どちらの政党が日本にとってより良い存在かという点につきる。答えは比較的見えやすい。共和党である。なんといっても同党は、日本に一番足りないもの、国家としての自立と責任を日本に期待しているからである。日本の自立を求めず、いつまでも支配下に置きたい民主党より遥かによい」と言う、この明白な現実をまったく理解していないのである。米メリーランド大学が世界の主要国で行った「米大統領選でどちらの候補に勝ってほしいか」という対外世論調査では、日本人の四十三%がケリー支持、二十二%がブッシュ支持であった。半数近くの日本人が結果的に自国を弱いままアメリカの「管理下」に置き留めようとする選択を行っているのだ。これはもう知的怠堕の極みと断ずるより他はない。
民主党が中共と手を組んだ一因は、十三億人の中共マーケットが国際ユダヤ資本を中心とする民主党系グローバリストにとって「宝の山」に写っているからである。他方中共にとってもアジア制覇の戦略上、アメリカに日本を切り捨てさせる必要がある。民主党と中共の利害は一致したのだ。なおアーミテージ国務副長官との会談を理由なく拒否し「ゴアが当選していればよかった」とダウナー豪外相に語った田中真紀子、米民主党要人と密接なパイプを持ちアメリカで「日本は米中等距離外交を採る」と吹いてまわり共和党を呆れさせた加藤紘一、その他いわゆる日本の中共シンパ政治家は例外なく共和党よりも民主党に近いというのが現実だ。民主党の反日史観と対中迎合に対して日本側の自虐史観と対中従属、そして軍事的・政治的に「弱い日本」の永続化といった政治理念が、民主党と日本の親中左派は一致しており、それは中共の基本戦略でもある。民主党勢力による「管理下」に日本を置き、中共の望む「日本封じ込め」が継続され、あげくには米国債棒引きを狙った経済クラッシュ(IMF管理)を仕掛けられていることを知ってか知らずか、日本の親中左派政治家にその歪んだ信条をもたらせているメンタリティは自虐史観である。つまり米民主党─中共及び台湾外省人─日本の親中左派、これらは同軸であるということだ。
一方それに対して共和党─台湾内省人─日本の保守派という形で連携するべきが本来の正しい対抗図式である。石原慎太郎氏は、「NOと言える日本」の影響で反米主義者のように誤解されている面もあるが、日本政界では有数の共和党人脈を持っておられる方である。日本の親中左派政治家が民主党と気脈を通じているのと同様に、保守は保守同士で相通じる感性があり、たとえ国は違っても思考的に一致する点が多いのだ。従って自民党が保守を称するのであれば、本来自民党は共和党と友党であるべきなのである。一九八三年に共和党と英保守党が中心となって約七十ヶ国の保守党を集めて結成したIDU(国際民主主義連合)という国際的政党ネットワークがあり、かつて自民党はこのIDUに加盟していたものの現在は脱退している。四年毎に開催されるIDU大会は、共和党のみならず世界中の保守政党と自民党がパイプを作れる場であるのに、自民党は代表団も派遣せず、しかも日本の中共属国化が進むにつれて反中姿勢の強いIDUを脱退するまでに至ってしまったのだ。自民党はもはや保守政党ではないのか。保守政党だというのであればIDU復帰を至急行うべきである。
なお詳しくは次章で述べるが、共和党は日本開戦当時の日本の立場に一定の理解を示している。共和党系シンクタンクに名を連ねるD・フィンケルシュタイン博士は元DIA(国防総省情報局)東アジア担当課長や米海軍分析研究所などを歴任したアジア通だが、その演説で「現在中共の過激なナショナリズムと軍拡は、世界の脅威である。かつての日本は、この厄介な中国問題を解決しようと武力まで行使して結局失敗した。(日本をそのような道へと追い詰めた)ルーズベルト政権をふくめて全ての当事国が失敗を犯したのだ。再び同じ過ちを犯してはならない」と述べている。これが共和党の代表的な認識であるといえよう。
一方、対日貿易圧力の民主党イデオローグであるC・プレストウィッツや日本の社共両党を高く評価しているリベラル最左派のジョン・ダワーなど、現在のブッシュ政権の国際戦略を米国内で批判している勢力は、「日本は侵略戦争を十分に謝罪し従軍慰安婦などの被害者に賠償せよ」「日本が戦争責任をあいまいにするのは、米国が昭和天皇を罰しなかったからだ」などと主張している。アメリカの国内においても、反ブッシュを呼号する勢力は例外なく同時に反日主義(反日史観)でもあり、日本人が反ブッシュを唱えることは米国内の反日史観勢力に与することになる。従って日本で自虐史観を批判しつつ反ブッシュを唱える人々は、結果的に自虐史観を間接支援しているのと同義なのだ。
高名な文化人類学者シーラ・ジョンソンは、一九九六年の自著『アメリカ人の日本観』の中で「アメリカには二つの相反する日本観がある」として、「ペリー提督の部下は日本人を世界で最も礼儀正しい国民だと考えたが、ペリー自身は、日本人は嘘つきで逃げ口上ばかり言う偽善的な国民だと公言した」と述べ、この二つの対日観は「以後百年間変わっていない」と断じている。ペリーの対日観を継ぎ日本を嫌い「弱い日本」を望む勢力を代表するのが民主党、そしてペリーの部下の対日観を継ぎに日本に理解を示し「強い日本」を望む勢力の代表が共和党なのだ。この二つの対日観が百年間以上も両党によって引き継がれてきたことは、次章で述べる両党の対日関係史によって裏付けられる。グローバリズムの是非同様に、この二大対日観、異なる対日路線がアメリカに共存することを知りもせずに反米も親米も有ったものではないことに気付かぬ日本人が多すぎるのだ。
二〇〇一年三月に米ギャラップ社が行った米国民世論調査で「日本は防衛力を増強するべき」と回答したのは五十二%、残りの四十八%は「現状維持」又は「現状よりも削減するべき」であった。これは異なる対日観の二つの路線、すなわち「強い日本」を望む共和党支持層と「弱い日本」を望む民主党支持層が、米国世論をビッタリ二分していることを示すものである。二〇〇一年ブッシュ政権発足時の米上院議会では、百議席の内、共和党と民主党はそれぞれ五十議席ずつ有しており、その支持層の数がほぼ均衡していることはブッシュとゴアが争った大統領選挙の結果を見ても明らかであろう。イラク占領政策の失態でブッシュの支持率が低下したといっても、それでもおよそ半数が支持しているのは、「何があっても民主党は支持したくない」という確たる信念の共和党支持者が米国の半分を占めているからなのだ。ミシガン大学世論調査センターが発表した調査報告書には、「高等教育を受けた者はそれだけ共和党支持の比率が高くなり、教育程度が低ければそれだけ民主党支持の比率が高くなる。あるいは企業管理職などの社会的地位が高くなるほど共和党を支持しがちで、社会的地位が低くなるほど民主党の支持比率が増える」と述べられており、「ゴールが平等なのか、スタートラインの条件が平等なのか。富の配分なのか、自由競争原理なのか。どちらがより公正だと考えるかが両党その支持者を互いに相容れない深い立場の違いに対峙させている」と定義している。
米ブルッキングズ研究所のトーマス・マン上席研究員は、二〇〇四年四月に産経新聞のインタビューに答えて「(共和党と民主党には)内政・外交両面で政治上の大きな違いがある。二大政党は多くの点で見解が異なる。ブッシュ氏とケリー氏の主張は当然それを反映したものになり、減税、歳出、(小略)国防、国際機関(国連)の有効性、公共の哲学など、あらゆることで異なっている」と述べた上で、「米国は共和党と民主党の両党支持にほぼ等しく分裂している」とも指摘している。つまり政党も国民世論も価値観も対日外交方針も、アメリカという国は二つの完全に異なった路線がほぼ同比率で共存しており、親日的で規律志向の保守層(共和党支持)と嫌日で享楽志向のリベラル層(民主党支持)は、現在アメリカ国民を二分して拮抗しているということだ。すなわち「二つのアメリカ」が存在しているのだ。
アメリカという国を一括りに視てしまうのではなく、この「アメリカは二つ存在している」という視点こそ、日本人がアメリカを考えアメリカに接する上で決して忘れてはならない、大切なキーワードである。
以上
このエントリーの完全版を用意しました。
http://jpn.yamato.omiki.com/documents/two_america/4-1.html
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