「アメリカは」二つ存在している! 7-5 | 愛する祖国 日本

「アメリカは」二つ存在している! 7-5

第四章 米国の国際戦略
「アメリカは」二つ存在している!
 P.279〜

 なお経済面では、日本人が強く警戒するべき民主党のある狙いだけは、留意しておく必要がある。これはM&Aを手広く手がける大物経済人から聞いた話だが、民主党とユダヤ資本は日本の保有する米国債(三百数十兆円相当)の事実上の棒引きを狙って、日本経済クラッシュを仕掛ける可能性が高いとのことだ。つまり日本を完全に経済的に破綻させてIMF管理下に置き、タダ同然で放出された米国債を買い取ってしまえば、アメリカが負う世界一の対外債務は消失し、「双児の赤字」の片方はなくなる。韓国はすでにこの経済クラッシュを仕掛けられてIMF管理下で米国債を手放すこととなり、韓国大手企業の大半は底値で買い漁られてすでにユダヤ資本になっている。クリントンは韓国に引き続いて日本もそこまで追い込む腹づもりであったが、韓国とはケタが違う日本経済の底力がそれを阻んだということだ。クリントンの対日経済戦争の背景には日本から米国債を取り上げる狙いがあったという、その指摘が当たっているのであれば、共和党政権の間は鳴りをひそめていても再び民主党政権となれば、おそらく日本経済クラッシュを目指した対日経済戦争が再開されることであろう。この情報を教えてくれた経済人は「もしケリー、ヒラリーと民主党政権が二代続けば、日本はもう終わりでしょう」と危惧しておられた。

 実はこの指摘を裏付けるかのように、二〇〇一年九月五日、訪米中の柳沢金融相はケーラーIMF専務理事に対し、日本がIMFの記入審査を受け入れることを表明している。共和党ブッシュ政権が反IMFの立場であることを知らないのか、柳沢金融相は安易にも民主党=ユダヤ金融資本の従来の対日経済戦争シナリオ通りに、日本経済をIMFの管理下に入れるドアを開けてしまったのである。つまり「ブッシュ政権には国際金融資本と直接つながる閣僚がスタッフがほとんどいません。(小略)小泉首相は、アメリカの国益を第一とするアメリカと、国際金融資本の利益を第一とするアメリカの、二つのアメリカの区別がついていません:(藤井厳喜拓殖大客員教授)という小泉政権の米国政情認識のアバウトさが、民主党が仕掛けた罠に日本を自ら追い落としているのだ。せっかくフェアな対日政策を採る共和党政権(リンゼー補佐官などは日本によるアジア円通貨圏構築を望むコメントを出しているぐらい!)の折に、何故このような愚かな行動を自ら取るのであろうか。共和党が望んでいるのは、日本がIMFの管理下に入ることなんかではなく、日本が国家として自立して米国と共に戦える国軍を持つことなのである。

 ともあれクリントン政権はこのように、すべてからく安保より経済、つまり「力より金」で国際戦略を立て中共に媚びて日本を叩き続け、結果的に中共の軍事超大国化を招くこととなった。また北朝鮮を甘やかした結果、一九九四年の米朝核合意を反故にされ、それでも対北外交の破綻を認めずに毎年五十万トンの重油を与え続けたこの北朝鮮への政治姿勢も両党では全く正反対の位置にある。一九九四年七月に金日成が死亡した際、米政界ではどのようなコメントを出すかで両党が対立し、共和党は「金日成は朝鮮戦争の戦犯にして凶悪非道な独裁者であり、米国が哀悼の意を表すべき相手ではない」と大統領名での談話を公表し、共和党を「幾多の国際テロの張本人を米国民を代表して悼むとは何たる非常識」(ラムズフェルド)と激怒させた。またクリントン政権が独断で北朝鮮に約束した「軽水炉二基プレゼント」「年間五十万トンの重油の十年間無償援助」について、共和党は一切その財政支出を認めないと上下院で決議したが、クリントンは「日本及び韓国に負担させる」と言い張ってこれを強行している。

 このクリントンの対北交渉について共和党のリチャード・アーミテージ(現・国務副長官)は当時「もし、きちんとした外交のエキスパートを備えた共和党政権ならば(小略)米国は北朝鮮に圧力をかけただろう」「日米ともに指導者が悪すぎる」と率直にコメントしていたが、当時の日本の「悪すぎる」指導者とは細川・羽田・村山の各政権である。クリントンは一九九五年北朝鮮への経済制裁を全面解除しようとしたものの、議会共和党の抵抗によって僅かな範囲にとどまった。しかし二〇〇〇年六月には、北朝鮮のカラ約束にすぎない長距離ミサイル発射実験凍結合意と引き換えに、クリントンは対北経済制裁の事実上全面解除を強行した。これに対して共和党は「今や米国は、地球上で最も抑圧的な共産主義政府の支持者になろうとしている」(ヘルムズ上院議員)と猛反発し、同年七月二十七日に共和党コックス下院議員らが下院に提出した「クリントンはゴアによる北朝鮮への援助が金正日の百万人軍隊を支える」というタイトルの報告書では、クリントン政権の対北認識も政策も「単に危惧というだけでなく狂っている」と断じ、「金正日の百万人軍隊がプルトニウムで武装するのを支援するという真に狂った政策を即時中止せよ」と要求している。議会への公式報告書にMADやCRAZYという単語が散りばめられたコックス・レポートは、共和党の激しい憤りを如実に示すものである。

 二〇〇一年一月、ブッシュ政権発足直後にウォルフォウィッツ国防副長官は「我々はもはやこれらの邪悪な勢力(北朝鮮・イラク・イラン)と共存していくことはできない。これまでクリントン政権はこの勢力をいわば必要悪と考えてきた節がある。しかしこれらは不必要な悪だ」と述べ、その共和党の信念は翌二〇〇二年一月ブッシュの「悪の枢軸」演説へと結実するに至った。この「悪の枢軸」演説について、北朝鮮脱北難民の人道支援で有名なN・フォラツェン意思は「私が話した全ての脱北者たちがブッシュ大統領の言葉に喜びを表していた。彼らは、自分たちが耐えてきた地獄を外の世界が理解してくれたという想いを抱いた。レーガンのソ連「悪の帝国」演説と同様に、ブッシュの「悪の枢軸」演説はやがて金正日の残酷な崩壊を導き出す希望に満ちている」と高く評価し、一方で同演説を批判した民主党そして日欧の反米勢力に対して「自ら恥じるべきだ」と断じている。

 なお六ヶ国協議について「アメリカは北朝鮮問題を中国に丸投げした」と言う人もいるが、本来共和党が日米韓朝四ヶ国協議を想定していたものを、そこにわざわざ「中国を加えてくれ」と頼み込んだのは日本なのだ。また「アメリカが柔軟姿勢に転じた」と批判する強固派もいるが、それをアメリカに要請したのは日本であり、「今や日本は真の最重要同盟国だ。強固な日米関係を維持する目的で日本の声を立てた」(アーミテージ国務副長官)ということなのである。アメリカはもはやクリントン時代の対朝スタンスを一変させており、中朝に媚びているのは相変わらず日本だけなのだ。

 ブッシュは「暴政の下で生きる人々に対し、私は常に同情の念を抱く」とコメントして、二〇〇一年に三十四万トン、二〇〇二年に十五万五千トンの穀物を北朝鮮に援助しているが、これは交戦中のアフガニスタンでも空中から地元民に食料パックを投下し続けたことと同じく、ブッシュのヒューマニズムに由来する。それに対してクリントン政権は一九九六年一月に北朝鮮に二百万ドルの資金援助を与えたのを手始めに、同年八百二十万ドル、一九九七年は、五千七百ドル、共和党の抵抗で金を出せなくなってからは一九九八年に穀物五十万トン、一九九九年は穀物六十万トンとジャガイモ種子一千トン、二〇〇〇年は穀物三十万トンという膨大な援助を与え続けた。要するにアメリカ流の「太陽政策」を行ったということだ。なおケリーは「核問題は米朝直接交渉で解決するべき」と主張し「私が大統領に当選したらクリントン政権の解決方法を復活させる」と述べているが、そうなると日本は再び重油や軽水炉のコスト負担を押しつけられるのであろうか。

 このような民主党政権の北朝鮮や中共に対する外交姿勢を鑑みると、クリントンが河野洋平や加藤紘一とオーバーラップしてくるが、実は元々親中嫌日傾向にあった民主党はクリントン時代に完全に中共に取り込まれてしまったということだ。そして中共の日米離反戦略そのままに、中共と手を組んで日本封じ込めに動き出している。勿論そのカギとなっているのは「歴史観」なのだ。例えば一九九六年末に、中共ロビーの要請を受けたクリントン政権は、歴史的事実の検証もせずに、単なるホラ話に過ぎない「慰安婦強制連行」の関係者とされる方々、そして過剰な歪曲捏造がなされている「七三一部隊」(共産党員森村誠一と「赤旗」記者が共著で出したニセ写真だらけの偽書が発端!)の関係者の方々に対して、米国への入国ビザを差し止めると言う発表を行った。この関係者とされる日本人は主に八十~九十代の方々でビザ差止に実質的な意味はなく、この発表は民主党が中共の反日史観を全面的に受け入れたことを日本及び世界に対して表明したるものに他ならない。

 翌一九九七年二月にクリントンは「二十一世紀に備える」という大統領一般教書を発表しているが、この一般教書では中共の重要性を強調して米中友好を訴え、朝鮮半島や東南アジア諸国にまで細かく言及しているものの日本にはまったく言及していない。民主党の〝米国の二十一世紀のビジョン〟の中には、日本は含まれていなかったのだ。これについて日本の外務省は「日米両国間に懸案の問題がないため」だと能天気なコメントを行ったが、もし本気でそう考えていたのなら阿呆にも程がある。この一般教書が示すものは、ついに民主党は中共と手を組み日本を切り捨てたと言う事であり、それを裏付ける行動として翌一九九八年六月にクリントンは、中共の要請どおりに、中共を訪問して日本を素通りするという悪名高い「ジャパン・パッシング」を行ったのだ。このときクリントンは実に九日間も中共に滞在しているが、米国歴代大統領でこんなに長く外国に滞在した例は過去に一度もない。そしてこの滞在時に江沢民は、「歴史カード」をさらに効果的に用いて米世論を反日に誘導せしめるように、クリントンを懐柔したのである。

 このクリントンの訪中の前年、一九九七年十月に訪米した江沢民は最初にわざわざ真珠湾に立ち寄り、出迎えに駆けつけたクリントンと肩を並べて「我々は共に日本と戦った戦友だ」と気勢をあげていたが、翌年訪中したクリントンも江沢民主催の晩餐会で「米中両国はかつて日本と戦った同盟国だった」とスピーチしている。もしブッシュならば絶対に口にしないようなこのクリントンのスピーチには、親中嫌日の伝統を持つ民主党のホンネが露呈している。一方、二〇〇二年五月に訪米した胡錦濤もまず真珠湾に立ち寄るというパフォーマンスを行ったが、ブッシュはこれに冷淡に対応しワシントンから動こうとせずに胡錦濤を迎えている。詳しくは次章で述べるが、日本と戦争に反対していた共和党、そして日米戦当時の政権与党であった民主党、この両党の対日歴史観には大きな隔たりがあり、民主党の歴史認識は中共と相通じるものなのだ。


次回へ続く
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