ウクライナ戦争の報道を見て成語の戦国時代の“合従連衡”が頭に浮かび、いつの時代も人間とは変わらないものだと感じました。
 かつて西安市にある会社食堂で端午の節句(5月5日)に “粽子”(zong4zi)「ちまき」が出ました。中国人同僚が詩人“屈原””粽子“(zong4zi)の関係と由来を教えてくれ、“屈原”(qu1yuan2)は戦国時代(BC770~221年)の有名な詩人でした。その後の唐時代(AC618~907年)に入ると“春望”「国破れて山河あり」の“杜甫”(du4fu3)の“静夜思“「静かな月の世に思う」の“李白”が登場します。
私が学習発表会の時、李白の“静夜思”を演じ、中国へ赴任後ある家族の前で披露したところ大受けでした。
古代の詩人はどのように収入を得ていたのか気になります。官職に就くなど二足の草鞋を履いて生計を立てていたようです。唐時代に日本から派遣された留学生の「阿倍仲麻呂」(AC698~770)は、”科举”(高級国家公務員試験)に合格し、唐の政府高官にまで登りつめたモノ凄い優秀な日本人がいました。西安市の”庆兴公园”内にに顕彰碑が建てられています。
 “屈原”の時代は戦国時代、七雄の"秦・齐・楚・燕・赵・韩・魏”が戦っていました。その中でも秦と齐が二強で他の国は五弱でした。その時代の有名な成語に"合从连衡"(he2cong4lian2heng2)があります。当時の”楚”の国は、自国の独立を保持するために、合従策を取るか連衡策を取るか国を二分する激論がされていました。合従策とは、六か国が共同して秦と戦い秦の侵略を阻止するものです。今で言うロシアに対するNATOの軍事関係のようなものです。合従策を採用し六か国が協力して大国の秦と戦うとしても、秦が一カ国に集中攻撃して来た場合、その国が秦の大軍と全面的に戦わなければならない羽目になります。結局、連衡策を採用し、六カ国が個別に秦と同盟を結びました。連衡策とは六カ国がそれぞれ秦と友好関係を結び、秦の支配を回避する策です。しかし、隣国同士の関係が弱まって、隣国が攻めて来るのではないかという疑心暗鬼に陥り、これが秦の狙いでした。隣国同士の同盟関係は弱くなったタイミングで秦が攻め入り、秦が全国統一を果たしました。古代から現代まで、何度も合従連衡の繰り返しです。
 “屈原”は国のことを深く思う高官で、秦は信用できないと考え合従策を提案しましたが、連衡策を押すメンバーの陰謀により失脚させられてしまいました。5月5日、都を追われ途中で楚の都を振り返ると都に煙が立つの見て、屈原はいよいよ秦に攻め入られたかと絶望し、川に飛び込み死んでしまいました。村人は屈原の遺体が河に魚に食べられないように、魚の餌として蒸した米を葉っぱにくるんで川に投げ込みました。また河に住む竜を追い払うために、小舟を出してその上で太鼓や鐘を鳴らしました。その伝統が横浜ドラゴンレースや長崎ペーロン競漕に繋がっていきます。因みに中国の子供の日は旧暦5月5日、新暦6月1日となります。この日の中国のデパートでは、イベント会場に笹の葉っぱ、もち米と杏を無料で用意し、来場客はちまきを作っていました。日本ではちまきを食べる風習も廃れましたが、中国の一般家庭では今でもちまきを作ります。自分で作ったものよりお母さんが作ったちまきの方が美味しいと皆が一様に言うのには感銘します。子供の時に食べた懐かしい味、ほっとする安心の味を感じます。小さい時に経験した味は一生忘れないものです。
(写真:保定市万博デパート広場;ちまき作りのイベント)


 

 続けて日本人が間違いやすい発音を紹介しましょう。

◆◆◆ケース11 "eng・ong" “en”▶:悩ましい鼻音付母音 ◆◆◆

 "eng”"ong"も悩ましい単語です。“灯”(deng1) の"eng”(dong1)の "ong"の使い分けが難しいと思います。“eng”"e"は「エ」の口の形で「ァ」と「ォ」の曖昧な発音、"ng“は口を開いたままで鼻に抜ける鼻音です。他方"en”は「エン」(エァン)に近く、"n”は舌を口の天井に付けて鼻音を出さないようにします。漢字を日本語の音読みで「ん」で終われば、ピンインも"n“で終わります。例えば"天"てん」は“tian1”です。覚えておくと便利です。さて良く使う単語からイメージすると、中国語で頻出する単語“中国”(zhong1guo2)の“ong”です。真的(zhen1de)、“身体”(shen1ti3)などは比較的言い易く、既に身に付いていると思います。“eng”“身份(shen1fen4zheng4)の”eng“です。両方組み合わさる“疼痛(teng2tong4)の発音の使い分けはなかなか難しいです。

◆◆◆ケース12 楼”(zhong1lou2)▶:地名の発音に注意 ◆◆◆

 発音が少々合ってなくても前後の文意から察してくれますが、困るのはタクシーで地名を告げる時です。固有名詞の地名は正確に告げる必要があります。西安滞在中、簡単な言葉で最も困った地名がありました。それは誰でも知っている街の中心部の(zhong1lou2)「鐘付き堂」です。何度タクシーに乗っても失敗、今でも緊張する地名です。"出租傅“も一生懸命聞こうとしますが通じなくて、地球の裏側に達するほど落ち込みました。楼”は有名観光地の会話なら頻出度も高く、ある程度察してくれても良さそうなものですが一向に通じません。紛らわしいピンインを無作為に出すと[]zheng1lou2“[]zhong1lou2”[] cheng1lou2”[]chong1lou2”などが言えます。言い方がなかなか難しいです。恐らく筆者の場合は城楼(cheng2lou2)「城壁の見張り台」に聞こえたかも知れません。これなら何箇所もあって何処へ行けば良いか分かりませんe

 

◆◆◆付録A▶:声調の重要性 ◆◆◆

 中国語には同音意義語がたくさんあります。子音に少々問題があっても声調が正しければ結構通じます。でも声調を間違えれば別物の漢字に変わってしまうので致命的です。ピンインは頭に入っているけど声調は曖昧でしっかり言えない人が多いことです。日本人は漢字を見ると分かるので、発音を簡単にやり過ごしてしまいます。中国滞在中、西欧人が綺麗な中国語を話すのを聞いて、度々驚かされたことがあります。中国語と英語の発音と文法が似ている利点もありますが、彼らは漢字の読み書きができません。耳に入る発音から中国語を覚えていくのです。残念ながらピンインを覚えるのに近道はありません。中国の幼稚園・小学校では、まずピンインから学びピンインを覚えたら漢字を勉強します。これがピンインを覚えるヒントになるかと思います。文章をピンインで書き下ろす練習を重ね、声も出すことも忘れずに、意識してピンインを覚えることを続けると曖昧さがなくなっていきます。

 

◆◆◆ 付録B ▶:間違いやすい声調の変化◆◆◆

 三声+三声と続く単語は、二声+三声に変わりますが、意識していない人も多いと思います。例を上げると “你好”(ni3hao3)[三声+三声→二声+三声] 、但し声調記号はそのままで変えません。”很好“(hen3hao3) [三声+三声→二声+三声]、”水果“(shui3guo3)などです。

 “一”(yi1)は単独で使う時は一声ですが、他の単語と続く時は“一样”(yi2yang4)”一年”(yi4nian2)のように声調が変化します。“不(bu4)も後続が四声の場合、“不要”(bu2yao4) “不去”(bu2qu4)などのように変わります。

 

◆◆◆付録C ▶:言葉の変遷 ◆◆◆

 スーパーでトイレットペーパーを買おうと“手在哪里?”と聞きましたが、筆者の発音が悪いこともあって通じません。この“手(shou3zhi3)はテキストで習いますが、今はどちらかと言うと(wei4sheng1zhi1)が一般に使われているようです。トイレの所”(ce4suo3)も今は耳にすることも少なくなりました。"洗手间”(xi3shou3jian1)または(wei4sheng1jian1)が広く使われています。言葉も時代の変遷とともに変化していくので注意しましょう。

 

 中国語には日本語に無い発音が沢山あります。中国語は色んな発音成分が合成されており、単純に日本語のローマ字読みの一文字を当て嵌めるのは無理があるように思います。発音が悪いと中国の人は聞く努力を要するので面倒臭がります。これまで三部に分けて日本人が間違いやすい発音について紹介しました。ほんの一部でまだ間違いやすい中国語があります。近年、中国語学習者も増え中国語教育の研究も広く行われ、発音の指導要領も変わって来ているように思います。以前の参考書はその発音以外にないような画一的な書き方、分かり難い説明が見受けられました。教育内容も日進月歩で進歩しており、教え方も多様になってきていますのでネット等で最新の教育情報に接してください。

 続けて日本人が間違いやすい発音を紹介しましょう。

◆◆◆ケース9 "e"▶:色んな言い方を持つ短母音e ◆◆◆

 中国語で最も難しい短母音の"e"は、日本人を悩ます発音です。参考書には"e"は「エ」の口の形で、喉の奥から「オ」と発音すると書いてある本が多数存在します。でも中国当地で聞く“我的得”"de"は日本人には「ダ」に聞こえ「ァ」が入っているように聞こえます。三つの助詞の"的地"(de)を例に説明します。は的”(wo3de)、(kan4dedong3) 、努力工作(nu3li4degong1zuo4) の“de”です。動詞では得”(jue2de)もあります。これらの発音を何度聞いても「ダ」に聞こえます。中国の知人に確認すれば「ダ」に近いと言います。参考書通り“我的” “觉得” ”de“を「・・ド」と発音するのは違和感を持ちます。 近年 中国語研究も進み"e“の発音は前後の文字によって変わると言われています。更に詳しく説明しましょう。実はこの"e"は三種類の発音に分かれます。これは日本の参考書には出て来ません。中国で学ぶ発音テキストには三種類の発音が記載されています。

e〔ɣēεer〔ǣ(仮)の三種類です(〔 〕内は国際表音記号)。❶の"e"は以前は「エ」の口の形で「ォ」とされていましたが、研究では日本語の「エ」は舌の位置が前寄り、"e"の場合は舌が後ろ寄りであるとの異説が唱えられています。最近では口を左右に張って、舌を後ろへ引っ込めて喉の奥から「ゥ-(ァ)」と発音するのが近いと言われています。❷のē は日本語の「エ」とほぼ同じで、"ie・ei・ve"(vはuの上に点が二つ)の時の発音です。❸の"e"は「ァ」とも「エ」とも「ォ」ともつかない発音です。

例子〕❶俄(e2) 得(de1) 特(te4) 歌(ge1) 课(ke4) 者(zhe3) 车(che1)  社(she4) 

    ❷欸(ei1)  也(ye3)  月(yue4)    ❸儿(er2)  耳(er3)  二(er4

したがって(re4) の”e”は「-ァ」が近いとされています。中国で教師から"de"は「エ」の口の形で「オ」の発音ではなく、口をやや大きめに開いて発音する方が良いと指摘されました。具体的に述べると"de"は、実際には"du+a”と発音するのが近いですカタカナで書けば「ドゥ-(ア)」と言えば正しく聞こえるようです。冒頭で述べた “觉得”  (jue2de)は「ジュエダ」でなく「ジュエドゥ-(ァ)」の方が自然に聞こえます。

 

注意が必要なのは、"e"が付いても"-en""-eng"の発音に注意です。"e"自身は先に述べた喉の奥から「ゥ-(ァ)」と発音しますが、"-n""-ngが付くと"e"の発音が変化します。例を上げると人”(ren2)や"真“(zhen)は弱い「ァ」の混じった「エ」、“e+ng”の"冷”(leng3)や"正”(zheng1) "扔”(reng1)「ァ」や「ォ」の中間の曖昧音となります。"e"の一文字の場合は、例えば"娥”(e1)は喉の奥から「ゥ-ァ」と言います。

◆◆◆ケース10 “z・c・s”▶:日本人には難しい舌歯音の発音 ◆◆◆

 舌歯音とは上下の歯の間に舌先を入れ、舌を上の歯の裏面に付けて発音します。"z”は破擦の無気音、"c"は破擦の有気音、"s"は摩擦音です。破擦音とは破裂で始まり摩擦でおわり、日本語の「つ」と「ち」が該当します。摩擦音は息の通り道を狭くして発音、日本語のサ行カ行の発音です。

 特に無気音"z“と有気音"c”の使い分けが難しいです。"菜”(cai4)と"再“(zai4)を例に説明しましょう。"cai””c+ai”"c"は有気音です。上下の歯を軽く噛みあわせて、舌先を下の歯に当てゆっくり息を強く吐きながらが「ツ(z/c)」と発音する。 “zai””z+ai” 同様の要領ですが、ゆっくり息を吐きながら「ヅ(z/c)」(ヅと書する理由は後述)、続けて二重母音「ァ」「ィ」を発音「ヅァィ」と発音する。"c“の発音の息をそっと出せば"z”の無気音になりますが、日本人の場合は"z“は少し濁さないと難しいです。

 その他、間違いやすい“z・c”の発音として“写作(xie3zuo4)と

"写(xie3cuo4)、"字典”(zi4dian3)と典”(ci2dian3)そして"阻断”(zu3duan4)があります。"euの発音も間違いやすく“各国”(ge4guo1)と"故国”(gu4guo2)、"哥哥”(ge1ge)と姑姑”(gu1gu)、色”(zhu2se4)と严肃(yan2su4)などがあります。

 母音が正しく言えるようになれば次は正しい声母の言い方です。声母とは単語の最初に来る子音のことです。前回に引き続きピンインのように聞こえない発音について紹介しましょう。

◆◆◆ケース5 “ta”と”da“▶:有気音と無気音の違い◆◆◆

 有気音“ta”は勢いよく息を吐くと参考書で習います。でも実際には、ローマ字読みして “她们” “她”(ta1)は「ター」“很大” (da4)を「ダ-」と言う人も少なくありません。私が日本語「タ」と発音すると中国語教師は“da”に聞こえると言いました。中国人の日本語学習者に筆記テストを行うと「タ・テ・ト」の発音が「ダ・デ・ド」と書く人が多いようです。中国語では”ta”“da”もどちらも清音で濁音ではありません。声の清濁でなく息の強さで聞き分けているようです。日本語の「タ」「ダ」は息が強く聞こえないので、中国人には無気音の”da”と聞こえます。

 参考書では有気音を発音する時は、口の前に垂らした紙が揺れるぐらいに息を出すと書いてあります。でも息だけ出せと言われても実際の会話では難しいと思います。色んな参考書が出ていますが、実践するにはどれも分かり難く説明不足に感じます。

 中国で教師から教わった有気音を言い易くするための工夫を紹介します。前回のプログで"iu""ui"は、中間に"o""e"が存在する三重母音で発音すると書きました。同じように"ta""po"も三重母音構造だと仮定した場合、便宜上その間に息と見做す"u"を挟んで言い易く工夫します。最初に息を出し、後から遅れて母音を発声する二段階発声です。"po"を発音する時は、「ポ」ではなくpu+o”、始めのpuは声を極めて小さくして息を出し、次に母音を大きく出します。無理矢理にカタカナで書くとしたら(プ)~オー」が近いです。一方、"ta"の場合も「タ」ではなくtu+a”、始めのtuは同様に声を小さくして息を大きく出す二段階発声とし、これも無理矢理にカタカナで書くとしたら(ッ)~アー」が比較的それらしく聞こえます。口の前に垂らした紙が揺れると思います。慣れてくれば、声を出さずに息を強く吐くだけにしていきましょう。同じ要領で (ta1pao3le)「彼は走った」 と(chi1bao3le)「お腹いっぱい」を言ってみましょう。

◆◆◆ケース6 "j・q・t"▶:舌面音と舌根音の違い◆◆◆

 中国語会話の中で"j ・ q・ t"で始まる単語はよく使います。筆者は”几点”(ji1dian3)  七点”(qi1dian3)  ”天气”(tian1qi4) ”今天”(jin1tian1)など良く似た発音を、日本語の「チ」で全部片付けていたので全然通じませんでした。これらの使い分けができれば、中国レベルも相当上がっています。"j・q"は舌先を下の歯の裏に当て、下の後部を口蓋部に押し付けて発音します。"q"の有気音は、舌と口蓋部のすき間から強く息を出します。"t"は舌の先を上の歯の裏から歯茎につけて発音します。"j・q"は有気音ですが、比較的発音はし易いと思います。

◆◆◆ケース7 "f"と"h”▶:唇歯音と舌根音の違い◆◆◆

 中国語教師の発音の"fu""hu"を何度聞いてもその違いが分かりませんでした。最も聞き分けが難しい発音です。ある日、同僚の“何”(he)さんを日本語で「ハー」さんで呼んでいた時、同僚から"h"の発音は喉の奥から出した方が良いよと指摘されて気付きました。

 一方"f"の発音は上の歯を下唇に当てて発音します。口唇音"f"は歯と唇で発音し"h"は喉の奥から、発音すれば良いのです。地名から"h"の発音例を上げると、”河南”(he2nan2)や湖北”(hu2bei3)があります。"f"の発音例では、”福建”(fu2jian4)や”福州”(fu2zhou1)があります。"fu"“福”(fu2)を意味し中国では最も好まれる漢字です。"hu"は喉の奥から発音、"fu"は上の歯と下唇の間に息を通して発音です。日本語の「ふ」"hu""fu"でもない発音で代用できません。

◆◆◆ケース8 "eng・ong" “en”▶:悩ましい鼻音付母音 ◆◆◆

 "eng”"ong"も悩ましい単語です。“灯”(deng1) の"eng”(dong1)の "ong"の使い分けが難しいと思います。“eng”"e"「エ」の口の形で「ァ」「ォ」の曖昧な発音、"ng“は口を開いたままで鼻に抜ける鼻音です。他方"en”"n”は舌を口の天井に付けて鼻音を出さないようにします。漢字を日本語の音読みで「ん」であればピンインも"n“で終わります。例えば"天"てん」“tian1”です。さて良く使う単語からイメージすると、中国語で頻出する単語“中国”(zhong1guo2)の“ong”真的(zhen1de)の“en”が既に身に付いていると思います。“eng”“身份(shen1fen4zheng4)の”eng“です。両方組み合わさる“疼痛”(teng2tong4)の発音の使い分けはなかなか難しいです。(写真:歴代皇帝御筆の”福”)

 

 教室で“老が白板に書いたピンインを復唱し発音練習しています。中国語は発音が正しくないと通じないことが多々あります。中国へ赴任時、请给我看看菜(cai4dan1)の簡単な単語が通じず苦労しました。その他、(tang1)と糖”(tang3)を間違ったなどの失敗もありました。

 中国語の発音はピンインを使って覚えますが、ピンインの発音を把握してこそ正しい中国語が話せます。以下は中国滞在中、気付いたことです。

ケース1“啤酒”(pi2jiu3)▶:三重母音iouの発音

 レストランで“来啤酒”(ビールを下さい)と言います。赴任したての頃は“啤酒”のピンインは“pi2jiu3”をローマ字読みして「ピー・ジュウ」と言っていました。でも”服务员"啤酒?”と聞き直してきます。服务员の発音は、何度聞いても耳には「ピー・ジョウ」と聞こえるので、先生に質問したことがありました。

 “酒”(jiu3)は子音と韻母iuで構成。iuの発音はiouが結合した三重母音の”iou”と発音し、oの発音を間に入れます。でもピンインは、iuの二文字で書きます。このiu”研究”(yan2jiu1) “要求”(yao1qiu3)などもあり、これらも”iou“と発音します。ここで面白いのはiouとそのまま単独で使う時には、iyに変わってyouと書き、例えば”有“(you3)や”又“(you4)があります。

ケース2“退房” (tui4fang2)▶:三重母音ueiの発音

 もう一例紹介しましょう。中国滞在中、ホテルをチェックアウトする時、退房(tui4fang2)と言います。tui”をローマ字読みし「ツィファン」と言いましたが、”服务员の発音は何度聞いても間に「ェ」が入っているように聞こえます。“退”“tui4”は子音tに韻母uiが付き、発音はueiが結合した三重母音”uei”です。発音はu+eiやはり間にeの発音が入りますが、書く時はuiの二文字で書きます。

 他にもui(hui2tou2) 惠”(you1hui4)などがありueiと発音します。ueiを単独で使う時には、uwに変わってweiとなり、”未来“(wei4lai2)や”威力“(wei1li4)があります。三重母音は、iao iou uai ueiの4種類があり、三重母音をきちんと話せるようになればネーティブらしく聞こえます。

◆ケース3“日本”(ri4ben3)▶:短母音 ri zhi chi shiのiの発音

 筆者が中国へ赴任したての頃、“你从哪儿来了?”と聞かれ、“日本”(ri4ben3)と答えましたが通じずショックを受けました。ri”iは、アルファベットのiで示されますが、実際の音はiではありません。舌を反り上げてィを発音するこもり音です。その他 “知”(zhi1)、吃”(chi1)、”十”(shi2) などに使う“i”も同様です。

ケース4字”(han4zi4)▶:短母音zi ci siのiの発音

 字“(han4zi4)や典“(ci2dian3)、”意思“(yi4si)などに使われているiも、実際の発音はiではありません。zi,ci,siをローマ字読みの「ジ,チ,シ」と発音しないことは教室で学習したと思います。z,c,siを一緒に用いて下の先を歯茎に付けて発音します。

 笑い話を紹介しましょう。中国語を勉強して中国に初めて来た日本人が、中国人の名字には李さんや王さん、張さんが多いと聞いていたが、「ハンズ」さんが多いとは知らなかったと言いました。“你是什么名字?”(ming2zi?)と聞いたつもりが、“你是什么民族?”(min2zu2)と誤解され、相手から返って来た答えが全員族”(han4zu2)だったそうです(笑)。“i”“u”の発音を混同し、文法も間違っており“是”でなく“叫”を使うべきでした。

 挨拶で良く用いられる“你好”(ni3hao3)の“i”は、日本語の「イ」に近いですが、口に指3本が入るぐらい両側に開けます。ここでもiを単独で使う時は“yi”と書く決まりがあります。

 母音は日本語では5個ですが、中国語では何と10個の母音があり、中国人は10個の母音を聞き分けています。母音を正しく発音しないと相手は分かりません。

         (写真:今年9月15日 浙江省宇波市に上陸した台風12号による道路の冠水状況)

 

 大阪でもようやく秋風が吹くようになってきました。中国の長江流域では、今年の夏は猛暑と水不足に見舞われ甚大な被害が出ています。“中央电视台”13chの報道によると、今年の梅雨は短く高温の日が続き、河南,山西,甘肃,山东省では広域で大規模な干ばつが発生しました。例年、これらの地域は梅雨時の豪雨により各地で洪水、浸水などの被害が出ますが、今年は一転全く雨が降らない干ばつに襲われています。長江はチベット高原から上海市の東シナ海へ注ぎ、途中に山峡ダムを擁する全長6300kmの世界第3位の大河です。流域面積は何と180万k㎡、分かり易く言えば正方形の一辺が1,340kmに相当する広大な面積になります。7月から長江流域の降水量は、地域に応じて40~80%減、平均50%減少しました。この影響で湖や川が干上がり、重慶市では古代の仏像が川底から現れたり、江西省では普段は湖の中にある寺院を干上がった湖底を歩いて訪ねたりしています。

 深刻な干ばつ地域は、河南省の平顶山、河北省の廊坊市,保定市,唐山市,西安市に集中しており、被害地域は国家面積の半分を占めます。長江流域の重慶市では気温が40℃を越える60年振りの記録的猛暑となり、大規模な山火事が数カ所で発生、街の高層ビル越しに赤々と燃えている山々がテレビ画面に映し出されました。1500人以上が避難する騒ぎになっています。

 四川省では農作物の被害以外に、水力発電所の水位低下に伴い発電能力が制限されています。電力不足により工場操業停止が相次ぎ深刻な問題になっています。四川省は日系の自動車メーカー関連が多く進出していますが、操業停止を余儀なくされ、部品調達に支障が発生、車の納期遅延に影響していることは日本でも報道されています。省都の成都市ではネオンや街灯の消灯、地下鉄の照明の間引き、エスカレーターも停止されました。気温40℃を越える重慶市では多くの市民が涼を求めてクーラーの効いた地下鉄駅で過ごしています。中国では人が集まると直ぐにポーカーゲームが始まります。駅のあちこちで車座になって市民が楽しんでいます。市内では新型コロナウイルスがまだ蔓延していますが、やはり暑いので殆どの人がマスクを外しています。

 筆者が滞在した保定市は河北新聞によると、40年振りに干ばつが発生しました。農地186万亩の95%が干ばつの被害を受け、5万人が飲料水不足、水不足で8000頭の家畜が死亡した模様です。畑のトウモロコシの背丈は例年2m以上に育ちますが、今年は1mにしか育たず実も小さく落花生の実入りも悪く売り物になりません。インターネット上で「干ばつは太陽光発電のせいだ」と根拠のないデマを流布する者が出て来ました。公安当局はインターネット上の情報は真実と誤りの両方があり、盲目的に信用しないようにと注意を促しています。(出典:8月25日放映のCCTV13chより-畑の作物が全滅-)

 

 

 保定滞在中、急に咳が止まらなくなり、河北大学付属病院へ診察を受けにに行ったことがあります。非常に立派な病院で、廊下には古代の名医の紹介パネルが展示されて興味深く見ていました。

その中で日本では馴染みがありませんが、歴史上最も古い医者“扁鵲”(bian3que4)が紹介されていました。扁鵲は漢時代をさらに遡る春秋戦国時代(BC770~221年)の名医です。山東省出身で彼が考案し誰でも知っている診察法が今でも残っています。それは「脈診法」です。脈診法とは、人差し指・中指・薬指を患者の脈拍に触れ、病気の性質を判断することです。私たちは脈診で何が分かるのだろうと思いますが、今のようにX線、CTやMRTなど医療機器のない時代では重要な診察法でした。中医では、脈のパターンは28種類あり、脈で判断するポイントは三つと記されています。「脈の速さ」「脈の強さ」「脈の深さ」です。例えば風邪の引き始めの脈は浅く、指で押した時に脈が浅い表面で感じられるものです。一般に朝夕の脈はゆっくり落ち着いていますが、ストレスを抱えている場合はせわしなくなり、脈が不規則に打っていた場合、脳梗塞の前兆を示すようです。

 中医の原型はBC1000~700年に成立、BC200年の漢時代には人体の構造や病気の仕組み、鍼灸治療や健康法をまとめた黄帝内(huan2di4nei4jing4)が編纂されています。“黄帝”の名前が付くのは、皇帝と医者との問答形式で書かれたためです。これが中国最古の医学書で、現代においても中医の医師・漢方薬剤師・鍼灸師にとっては重要な古典医学書です。因みに薬局で売られている栄養ドリンク「黄帝液」の名は、ここから引用されているようです。

 中医の中で一般的な治療となっているのは灸”(zhen1jiu3)です。人体の特定のツボを押すと内蔵が良くなることを見付け「針」で刺激することを見出しました。また人々が焚火にあたって暖をとっていた時、患部を温めると症状が改善したことから「灸」が編み出されました。

 中医では身体を構成する三要素は「気・血・水」で成り立っていると考えます。気とは自立神経・内分泌系・臓器などをつかさどるエネルギーです。気・血・水の集中しているところがツボとなり、鍼灸はそれらの澱みを解消するものらしいです。よく「病は気から」と言う言葉を耳にしますが、免疫力は朗らかな生き生きとした気持ちで高くなり、心配事や不安、ストレスを感じると低下することが医学的に証明されています。

 話しは一転日本に移りますが、この頃は弥生時代、100以上の小国に分かれて「我こそが大将なり」とドンパチ戦いに明け暮れ竪穴式住居に住んでいた頃、中国では薬物治療・鍼灸治療が実用化されており、非常に文明が進んだ先進国でした。中医が日本に伝わってきたのは、遣唐使以前の古墳時代(AC400年頃)、漢字を使い始めたのと同時期です。朝鮮半島を経由してやって来た渡来人は、文字・暦学・医学・儒教・仏教・政治制度等の文化や技術を伝え日本の発展に大きく寄与しました。(写真:河北大学付属病院と脈診法)

 

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 中国では日本であまりお目に掛らない野菜が色々あります。その中でも印象に残る野菜は、パクチー」です。中国語では香菜(xiang1cai4)と言い原産国は地中海沿岸の国のようです。今では日本でもパクチーブームが起きているようですが、パクチーの特徴として香菜と言う名が示す通り、何と言ってもあの独特の香りです。あの香りで好き嫌いが分かれると思います。私が最初に食べた時は「ドクダミ草」のような香りで思わず顔が歪みました。別名「カメムシソウ」とも言うらしいです。それほど好きでもなかったのですが、今はあの臭いも気にならなくなりました。

 日本では刻んだネギをラーメンに入れたり、みそ汁に入れたりします。中国でも香菜も火鍋などの薬味として使うことが一般的です。しゃぶしゃぶのタレとして、色んな香辛料をミックスしたゴマダレに刻んだパクチーをふんだんに盛り、羊肉を漬けて食べると最高に美味しいです。中国ホテルの朝食では、パクチー100%のサラダも出ます。

生では少し抵抗がある方には、香菜炒蛋”(香菜の卵とじ炒め)を紹介しましょう。使う材料は、香菜、卵 、味付けとして塩、油、胡椒、調味料、みりんなどです。香菜をきれいに洗い根を残し、みじん切りにしておきます。 卵をほぐし、適量の塩、みりん胡椒、調味料を入れてよくかき混ぜます。細かく切った香菜と卵、少し水を加えてさらに混ぜます。 フライパンに適量の油を入れ、熱したら先ほどのかき混ぜた卵を入れて焼きます。ひっくり返しても焼き、卵が固まり状に固まってくれば出来上がりです。 卵に火が通ればすぐ火を止め、香菜は生を保つのがポイントです。決して長く炒めないでください。

 もう一つ香菜を使った中国のサラダ“香菜拌牛肉”(香菜と牛肉のマリネ)を紹介しましょう。中国では夏に合う“凉菜”(前菜)として一般的な料理です。暑い時期に、スパイスの効いた牛肉と香菜の香りで口の中に爽快になり家族には好評と思います。まず牛肉を薄くスライスし、ワイン・オイスターソース・澱粉・食塩他で30分ぐらい漬け込みます。次に香菜の束をぶつ切り、刻んだニンニク・生姜・唐辛子もみじん切りにカットしておきます。鍋に十分に油を入れ、漬け込んだ牛肉を炒めます。火を止めてから先ほどカットしておいた材料他を入れて余熱でよく混ぜ合わせます。牛肉の旨さとピリッとした辛さ、そして香菜のアクセント感が効いて暑気払いにピッタリのマリネです。筆者は何度も食べても飽きることはありませんでした。簡単ですから皆さんも是非お試し下さい。

(写真左;香菜だけのサラダ、写真中;香菜炒蛋、写真右:香菜拌牛肉)

 全国の“高考”(大学入試)が先月、終わりました。西安大学の教員が今年の試験情況、公開された作文の問題を知らせてくれました。西安市は大学が多く、唐・隋の遺跡以外に大学の街として有名です。今年の高考は6月7日から8日の二日間に分けて実施され、西安市の受験生は323,058人、全市に13の試験区、79カ所の試験会場と2,206カ所の試験教室が設けられました。ネットで当地の報道を見ると、西安市教育局が今年から受験生1人ずつの連絡先台帳を作成し、何かあった時に連絡できるようにしたようです。今年も再びコロナ状況下での試験となり、29カ所の予備の会場、さらにコロナ感染の疑似対応者用の5カ所の隔離会場、さらには胸科医院の中に試験会場を設ける念の入れようです。試験に関わる4万人のスタッフは、接種を済ませ2週間前には健康管理アプリへ登録しておかなければなりません。WeChatサイトからは、天気予報など入試に関わる色んな情報を流します。

   当地のテレビニュースでは、街にはたくさんの交通警官が出動し、試験会場前では交通規制を敷き、路地を走行する車を幹線道路へ追い出しています。警官は、「警笛鳴らすな!」のカードを持ち、その場。その時々の規制を行っています。例えば、交差点で大急ぎで試験会場に向かう学生を見掛ければ、すぐに車を止めて学生の通行を優先させます。パトカーを待機させ、学生が受験会場を間違っても、直ぐに指定の受験会場に送り届けます。駅前では「緑高考」のステッカーを貼った受験生優先のタクシーが待機し、受験生を会場まで送り届けます。試験会場周辺では、車の警笛を禁止、道路工事の停止、周辺の工場の操業停止など、静かな環境が確保できるように事前に政府の通達、巡回が行われるなど街全体に緊張感が漂っています。一部の受験会場では身分証や受験票を忘れた受験生が出ましたが、交通警察が受験会場の入場証明を発行します。会場の入口では、カンニング防止のため、金属探知機による物々しい身体チェックが行われ、道路では電波監視車が盗聴機器からの異常電波を監視するなどしています。

 さて全国版作文問題のA巻とB巻の内、B巻の作文問題を紹介しましょう。あなたはどのように書きますか?

 

<試題問題>『二つのオリンピックが行われた街、輝く世界。二つのオリンピックは、中国のスポーツの新たな発展レベルと総合的国力の飛躍的な発展を示しました。あなたは幼い子供から能力がある青年への飛躍を目の当たりにしました。その経験から、あなたはスポーツの栄光と国家の強さを感じることができました。未来に進み、民族振興の春の潮流に溶け込むでしょう。卓越は終わりがなく飛躍も止まりません。下表記の材料を組み合わせて、跨越,再跨越(乗り越える、再び乗り越える)を主題として、あなたの気持ちや考えを体現しなさい。』

<作文への要求>小項目を選択し、意図を決め文体を明確にし、自分で表題を決めなさい。他人の論文を模倣しないこと。他人の作文をカンニングしないこと。個人情報を開示しないこと。800語以上。