教室で“老师”が白板に書いたピンインを復唱し発音練習しています。中国語は発音が正しくないと通じないことが多々あります。中国へ赴任時、“请给我看看菜单”の”菜单”(cai4dan1)の簡単な単語が通じず苦労しました。その他、”汤”(tang1)と”糖”(tang3)を間違ったなどの失敗もありました。
中国語の発音はピンインを使って覚えますが、ピンインの発音を把握してこそ正しい中国語が話せます。以下は中国滞在中、気付いたことです。
◆ケース1“啤酒”(pi2jiu3)▶:三重母音iouの発音
レストランで“来啤酒”(ビールを下さい)と言います。赴任したての頃は“啤酒”のピンインは“pi2jiu3”をローマ字読みして「ピー・ジュウ」と言っていました。でも”服务员"が”啤酒吗?”と聞き直してきます。服务员の発音は、何度聞いても耳には「ピー・ジョウ」と聞こえるので、先生に質問したことがありました。
“酒”(jiu3)は子音jと韻母iuで構成。iuの発音はiとouが結合した三重母音の”iou”と発音し、oの発音を間に入れます。でもピンインは、iuの二文字で書きます。このiuは”研究”(yan2jiu1) “要求”(yao1qiu3)などもあり、これらも”iou“と発音します。ここで面白いのはiouとそのまま単独で使う時には、iがyに変わってyouと書き、例えば”有“(you3)や”又“(you4)があります。
◆ケース2“退房” (tui4fang2)▶:三重母音ueiの発音
もう一例紹介しましょう。中国滞在中、ホテルをチェックアウトする時、“退房”(tui4fang2)と言います。“tui”をローマ字読みし「ツィファン」と言いましたが、”服务员“の発音は何度聞いても間に「ェ」が入っているように聞こえます。“退”の“tui4”は子音tに韻母uiが付き、発音はuとeiが結合した三重母音”uei”です。発音はu+eiやはり間にeの発音が入りますが、書く時はuiの二文字で書きます。
他にもuiは”回头”(hui2tou2) “优惠”(you1hui4)などがありueiと発音します。ueiを単独で使う時には、uがwに変わってweiとなり、”未来“(wei4lai2)や”威力“(wei1li4)があります。三重母音は、iao iou uai ueiの4種類があり、三重母音をきちんと話せるようになればネーティブらしく聞こえます。
◆ケース3“日本”(ri4ben3)▶:短母音 ri zhi chi shiのiの発音
筆者が中国へ赴任したての頃、“你从哪儿来了?”と聞かれ、“日本”(ri4ben3)と答えましたが通じずショックを受けました。“ri”のiは、アルファベットのiで示されますが、実際の音はiではありません。舌を反り上げてィを発音するこもり音です。その他 “知”(zhi1)、”吃”(chi1)、”十”(shi2) などに使う“i”も同様です。
◆ケース4“汉字”(han4zi4)▶:短母音zi ci siのiの発音
“汉字“(han4zi4)や”词典“(ci2dian3)、”意思“(yi4si)などに使われているiも、実際の発音はiではありません。zi,ci,siをローマ字読みの「ジ,チ,シ」と発音しないことは教室で学習したと思います。z,c,sとiを一緒に用いて下の先を歯茎に付けて発音します。
笑い話を紹介しましょう。中国語を勉強して中国に初めて来た日本人が、中国人の名字には李さんや王さん、張さんが多いと聞いていたが、「ハンズ」さんが多いとは知らなかったと言いました。“你是什么名字?”(ming2zi?)と聞いたつもりが、“你是什么民族?”(min2zu2)と誤解され、相手から返って来た答えが全員“汉族”(han4zu2)だったそうです(笑)。“i”と“u”の発音を混同し、文法も間違っており“是”でなく“叫”を使うべきでした。
挨拶で良く用いられる“你好”(ni3hao3)の“i”は、日本語の「イ」に近いですが、口に指3本が入るぐらい両側に開けます。ここでもiを単独で使う時は“yi”と書く決まりがあります。
母音は日本語では5個ですが、中国語では何と10個の母音があり、中国人は10個の母音を聞き分けています。母音を正しく発音しないと相手は分かりません。
(写真:今年9月15日 浙江省宇波市に上陸した台風12号による道路の冠水状況)