中国語学習者にとって、ピンインの習得はなかなか大変です。特に声調に関しては、まるで海岸で宝石を拾うように、ひたすら一個ずつ暗記していることでしょう。でも何かしら「指針」や「法則性」が分かれば、学習の手助けになるはずです。
引き続き今回も脳内の音の処理に基づいて、声調の分類と使い分けについてお話します。以下に述べる内容は、主に述語に使われる品詞を対象にしたもので、単語の4割を占め、別の複雑な分類体系をもつ名詞には当て嵌まりません。しかし地図を持たずに山登りするより、何か手がかりがあれば少しは楽になります。このヒントを参考に声調をグループ化し、そのイメージを創るなどして、自分に合った習得の仕方を工夫してください。
▶第一声は言語音として認識(左脳)
⇒「高くて平らな音」明瞭且つ正確に伝えたい用語
漢代(BC206~AC220年)に儀式や祭典にこの声音が使われ始めました。高く平らな音は、左脳で優先的に処理されます。この声調は音の高さが一定で、明瞭かつ安定した印象を与えます。日本語では「はい」「こんにちは」の声音が感覚的にこれに近いです。中国語の第一声は、日常生活や自然現象に関連する動/形容詞や名詞に多く使われます。これは、基本的な情報や事象を明確に表現するのに適しているからです。また音が正確に伝わるため、知識や感情に関連する抽象的な概念を表す単語にも用いられます。
・動詞や名詞:说[shuo1], 听[ting1], 开[kai1], 吃[chi1],天[tian1], 身[shen1]
・明確性の表現:高[gao1], 新[xin1], 清[qing1], 多[duo1],轻[qing1], 深[shen1]
・抽象的な概念:思[si1], 知[zhi1], 真[zhen1], 安[an1], 心[xin1]
▶第二声は感情音として認識(右脳)⇒「急に上がる音」疑問・感情、原因や状態の継続
唐代(AC618年~907年)に詩歌において感情の強調に使われ始めました。急に上がる音は、右脳の感情処理領域が強く反応します。この上昇する音は、感情や疑問、原因や状態の継続を表現するのに効果的です。日本語では「本当に!?」「すごい!」などの興奮や驚きの表現がこれに近いです。第二声は、感情的な表現や疑問詞、状態やその継続を表す品詞、抽象的な概念や原因を示す単語によく使われます。
・感情:烦[fan2], 愉[yu2](喜ぶ), 忙[mang2], 急[ji2],瞒[man2] (隠す)
・疑問:何[he2], 谁[shei2], 吗[ma2](どんな),什么[shen2me](なに)
・原因:因[yin2] (による), 由[you2](から) , 为[wei2]
・継続:连[lian2], 从[cong2], 于[yu2], 临[lin2](の際に)・状態の表現:来[lai2], 明[ming2], 长[chang2], 没[mei2],
难[nan2], 白[bai2]
・抽象的な概念:缘[yuan2], 条[tiao2] (条件),
情[qing2] (状況), 人[ren2]
▶第三声は言語音として認識(左脳)⇒「下げて上がる音」動作・状態変化、強調・確認
石器時代から残る古い声音で、後世にその半分以上が第一声・第二声へと分化しました。音を一旦下げてから上がる声は、左脳の言語処理領域で処理され、意味の理解に重要な役割を果たします。日本語にはこの声調はありません。中国語では「醒(xing3,起きる)」「老(lao3,老いる)」などの変化を表す動/形容詞、また強調や確認のニュアンスを持たせるのに効果的です。人称代名詞や自己や他者を指す単語、関係を表す抽象的な単語にも使われます。
・動作の変化: 醒[xing3], 起[qi3], 走[zou3], 买[mai3],找[zhao3], 有[you3]
・状態の変化: 老[lao3], 改[gai3], 远[yuan3], 晚[wan3],美[mei3], 稳[wen3]
・程度の強調:想[xiang3], 很[hen3], 挺[ting3],首[shou3](第一), 尽[jin3](全力)
・確認の表現:好吗?[hao 3ma], 懂吗?[dong3 ma?],怎么?[zen3 me?]
・人称代名詞: 我[wo3], 你[ni3] ※他・她・它は石器時代以降の新造語で第一声が定着
・抽象的な単語: 者 [zhe3], 所[suo3], 然[ran3] (しかるに)
▶第四声は感情音として認識(右脳)⇒「力強く急に下げる音」命令・強い感情や意志
明代(1368年~1644年)に確立され、軍事命令として使われていた第四声が広まりました。音が急に下がる声は、右脳の感情処理領域が強く反応します。演劇や演説では、強調効果がよく知られて、日本語の例としては「止まれ」「やれ」「行け」「出ろ」などの命令語がこれに当たります。第四声は、強い感情や意志を素早く伝えたいときに特に有効で、命令形や感情を表す動詞によく使われます。「你看 (ni3 kan4, ほら見ろ!)」「很大 (hen3 da4, 大きい!)」など、意味をさらに力強く強調させたい重要単語に使われます。
・命令:快[(kuai4], 看[(kan4], 干[gan4],放[fang4],记[ji4], 却[que4](退却)
・意志:断[duan4], 做[zuo4], 借[jie4], 去[qu4],要[yao4], 命[ming4]
・感情:怕[pa4], 怒[nu4], 恨[hen4], 骂[ma4],爱[ai4], 大[da4]
・強調:必[bi4], 最[zui4], 定[ding4], 对[dui4],差[cha4], 累[lei4]