続けて日本人が間違いやすい発音を紹介しましょう。

◆◆◆ケース11 "eng・ong" “en”▶:悩ましい鼻音付母音 ◆◆◆

 "eng”"ong"も悩ましい単語です。“灯”(deng1) の"eng”(dong1)の "ong"の使い分けが難しいと思います。“eng”"e"は「エ」の口の形で「ァ」と「ォ」の曖昧な発音、"ng“は口を開いたままで鼻に抜ける鼻音です。他方"en”は「エン」(エァン)に近く、"n”は舌を口の天井に付けて鼻音を出さないようにします。漢字を日本語の音読みで「ん」で終われば、ピンインも"n“で終わります。例えば"天"てん」は“tian1”です。覚えておくと便利です。さて良く使う単語からイメージすると、中国語で頻出する単語“中国”(zhong1guo2)の“ong”です。真的(zhen1de)、“身体”(shen1ti3)などは比較的言い易く、既に身に付いていると思います。“eng”“身份(shen1fen4zheng4)の”eng“です。両方組み合わさる“疼痛(teng2tong4)の発音の使い分けはなかなか難しいです。

◆◆◆ケース12 楼”(zhong1lou2)▶:地名の発音に注意 ◆◆◆

 発音が少々合ってなくても前後の文意から察してくれますが、困るのはタクシーで地名を告げる時です。固有名詞の地名は正確に告げる必要があります。西安滞在中、簡単な言葉で最も困った地名がありました。それは誰でも知っている街の中心部の(zhong1lou2)「鐘付き堂」です。何度タクシーに乗っても失敗、今でも緊張する地名です。"出租傅“も一生懸命聞こうとしますが通じなくて、地球の裏側に達するほど落ち込みました。楼”は有名観光地の会話なら頻出度も高く、ある程度察してくれても良さそうなものですが一向に通じません。紛らわしいピンインを無作為に出すと[]zheng1lou2“[]zhong1lou2”[] cheng1lou2”[]chong1lou2”などが言えます。言い方がなかなか難しいです。恐らく筆者の場合は城楼(cheng2lou2)「城壁の見張り台」に聞こえたかも知れません。これなら何箇所もあって何処へ行けば良いか分かりませんe

 

◆◆◆付録A▶:声調の重要性 ◆◆◆

 中国語には同音意義語がたくさんあります。子音に少々問題があっても声調が正しければ結構通じます。でも声調を間違えれば別物の漢字に変わってしまうので致命的です。ピンインは頭に入っているけど声調は曖昧でしっかり言えない人が多いことです。日本人は漢字を見ると分かるので、発音を簡単にやり過ごしてしまいます。中国滞在中、西欧人が綺麗な中国語を話すのを聞いて、度々驚かされたことがあります。中国語と英語の発音と文法が似ている利点もありますが、彼らは漢字の読み書きができません。耳に入る発音から中国語を覚えていくのです。残念ながらピンインを覚えるのに近道はありません。中国の幼稚園・小学校では、まずピンインから学びピンインを覚えたら漢字を勉強します。これがピンインを覚えるヒントになるかと思います。文章をピンインで書き下ろす練習を重ね、声も出すことも忘れずに、意識してピンインを覚えることを続けると曖昧さがなくなっていきます。

 

◆◆◆ 付録B ▶:間違いやすい声調の変化◆◆◆

 三声+三声と続く単語は、二声+三声に変わりますが、意識していない人も多いと思います。例を上げると “你好”(ni3hao3)[三声+三声→二声+三声] 、但し声調記号はそのままで変えません。”很好“(hen3hao3) [三声+三声→二声+三声]、”水果“(shui3guo3)などです。

 “一”(yi1)は単独で使う時は一声ですが、他の単語と続く時は“一样”(yi2yang4)”一年”(yi4nian2)のように声調が変化します。“不(bu4)も後続が四声の場合、“不要”(bu2yao4) “不去”(bu2qu4)などのように変わります。

 

◆◆◆付録C ▶:言葉の変遷 ◆◆◆

 スーパーでトイレットペーパーを買おうと“手在哪里?”と聞きましたが、筆者の発音が悪いこともあって通じません。この“手(shou3zhi3)はテキストで習いますが、今はどちらかと言うと(wei4sheng1zhi1)が一般に使われているようです。トイレの所”(ce4suo3)も今は耳にすることも少なくなりました。"洗手间”(xi3shou3jian1)または(wei4sheng1jian1)が広く使われています。言葉も時代の変遷とともに変化していくので注意しましょう。

 

 中国語には日本語に無い発音が沢山あります。中国語は色んな発音成分が合成されており、単純に日本語のローマ字読みの一文字を当て嵌めるのは無理があるように思います。発音が悪いと中国の人は聞く努力を要するので面倒臭がります。これまで三部に分けて日本人が間違いやすい発音について紹介しました。ほんの一部でまだ間違いやすい中国語があります。近年、中国語学習者も増え中国語教育の研究も広く行われ、発音の指導要領も変わって来ているように思います。以前の参考書はその発音以外にないような画一的な書き方、分かり難い説明が見受けられました。教育内容も日進月歩で進歩しており、教え方も多様になってきていますのでネット等で最新の教育情報に接してください。