続けて日本人が間違いやすい発音を紹介しましょう。

◆◆◆ケース9 "e"▶:色んな言い方を持つ短母音e ◆◆◆

 中国語で最も難しい短母音の"e"は、日本人を悩ます発音です。参考書には"e"は「エ」の口の形で、喉の奥から「オ」と発音すると書いてある本が多数存在します。でも中国当地で聞く“我的得”"de"は日本人には「ダ」に聞こえ「ァ」が入っているように聞こえます。三つの助詞の"的地"(de)を例に説明します。は的”(wo3de)、(kan4dedong3) 、努力工作(nu3li4degong1zuo4) の“de”です。動詞では得”(jue2de)もあります。これらの発音を何度聞いても「ダ」に聞こえます。中国の知人に確認すれば「ダ」に近いと言います。参考書通り“我的” “觉得” ”de“を「・・ド」と発音するのは違和感を持ちます。 近年 中国語研究も進み"e“の発音は前後の文字によって変わると言われています。更に詳しく説明しましょう。実はこの"e"は三種類の発音に分かれます。これは日本の参考書には出て来ません。中国で学ぶ発音テキストには三種類の発音が記載されています。

e〔ɣēεer〔ǣ(仮)の三種類です(〔 〕内は国際表音記号)。❶の"e"は以前は「エ」の口の形で「ォ」とされていましたが、研究では日本語の「エ」は舌の位置が前寄り、"e"の場合は舌が後ろ寄りであるとの異説が唱えられています。最近では口を左右に張って、舌を後ろへ引っ込めて喉の奥から「ゥ-(ァ)」と発音するのが近いと言われています。❷のē は日本語の「エ」とほぼ同じで、"ie・ei・ve"(vはuの上に点が二つ)の時の発音です。❸の"e"は「ァ」とも「エ」とも「ォ」ともつかない発音です。

例子〕❶俄(e2) 得(de1) 特(te4) 歌(ge1) 课(ke4) 者(zhe3) 车(che1)  社(she4) 

    ❷欸(ei1)  也(ye3)  月(yue4)    ❸儿(er2)  耳(er3)  二(er4

したがって(re4) の”e”は「-ァ」が近いとされています。中国で教師から"de"は「エ」の口の形で「オ」の発音ではなく、口をやや大きめに開いて発音する方が良いと指摘されました。具体的に述べると"de"は、実際には"du+a”と発音するのが近いですカタカナで書けば「ドゥ-(ア)」と言えば正しく聞こえるようです。冒頭で述べた “觉得”  (jue2de)は「ジュエダ」でなく「ジュエドゥ-(ァ)」の方が自然に聞こえます。

 

注意が必要なのは、"e"が付いても"-en""-eng"の発音に注意です。"e"自身は先に述べた喉の奥から「ゥ-(ァ)」と発音しますが、"-n""-ngが付くと"e"の発音が変化します。例を上げると人”(ren2)や"真“(zhen)は弱い「ァ」の混じった「エ」、“e+ng”の"冷”(leng3)や"正”(zheng1) "扔”(reng1)「ァ」や「ォ」の中間の曖昧音となります。"e"の一文字の場合は、例えば"娥”(e1)は喉の奥から「ゥ-ァ」と言います。

◆◆◆ケース10 “z・c・s”▶:日本人には難しい舌歯音の発音 ◆◆◆

 舌歯音とは上下の歯の間に舌先を入れ、舌を上の歯の裏面に付けて発音します。"z”は破擦の無気音、"c"は破擦の有気音、"s"は摩擦音です。破擦音とは破裂で始まり摩擦でおわり、日本語の「つ」と「ち」が該当します。摩擦音は息の通り道を狭くして発音、日本語のサ行カ行の発音です。

 特に無気音"z“と有気音"c”の使い分けが難しいです。"菜”(cai4)と"再“(zai4)を例に説明しましょう。"cai””c+ai”"c"は有気音です。上下の歯を軽く噛みあわせて、舌先を下の歯に当てゆっくり息を強く吐きながらが「ツ(z/c)」と発音する。 “zai””z+ai” 同様の要領ですが、ゆっくり息を吐きながら「ヅ(z/c)」(ヅと書する理由は後述)、続けて二重母音「ァ」「ィ」を発音「ヅァィ」と発音する。"c“の発音の息をそっと出せば"z”の無気音になりますが、日本人の場合は"z“は少し濁さないと難しいです。

 その他、間違いやすい“z・c”の発音として“写作(xie3zuo4)と

"写(xie3cuo4)、"字典”(zi4dian3)と典”(ci2dian3)そして"阻断”(zu3duan4)があります。"euの発音も間違いやすく“各国”(ge4guo1)と"故国”(gu4guo2)、"哥哥”(ge1ge)と姑姑”(gu1gu)、色”(zhu2se4)と严肃(yan2su4)などがあります。