小川充オフィシャルブログ -9ページ目

チャレンジとは?

2006年のK-1グランプリが先程終了しました。

セーム・シュルトが連覇して終わったのだけれど、

ジェロム・レ・バンナ、アーネスト・ホースト、

そしてピーター・アーツとの戦いと、

全てが歴史に残るような凄い試合ばかりで

見ている方としては本当に満喫出来ました。

そうした歴戦の猛者たちが背負った

K-1の歴史の重みを跳ね返すシュルトの強さは本物です。


で、ホーストはこの試合を最後に引退しました。

最後までボロボロになるまで戦い続けたホースト、

敗れたとは言え、まさに完全燃焼だったのではないでしょうか。


今年は多くの内外の有名スポーツ選手が引退しました。

金メダリストの荒川静香選手に始まり、

中田英寿選手、ジネディーヌ・ジダン、

新庄剛志選手、ミハエル・シューマッハ、

そして最近ではイアン・ソープの電撃引退と、

夫々に理由は様々だと思いますが、

でも皆、完全燃焼しての引退だと思います。


彼等のような一流中の一流スポーツ選手の場合

肉体的な限界というものもありますが、

それ以上に精神的なものが大きいのではないでしょうか。

肉体的にはまだまだイケるのにと

傍から見れば思うこともありますが、

でも精神的にチャレンジするものが無くなったら

本人としてはもう競技を続けられないのかも知れません。


中田選手も、イアン・ソープも

まだ続けることは肉体的には可能なのでしょう。

でも、サッカーにしても、水泳にしても

そこに自分がチャレンジすべきものが見出せなくなったと感じ、

引退したのではないでしょうか。


そして、彼らは新たにチャレンジすべきものを探す為に、

第2の人生に旅立ったわけです。

つまり、彼等は競技という戦いに疲れたから引退したのではなく、

新たな冒険を求めて引退したのです。

彼等にしてみれば、チャレンジする場所が

競技場から別の世界へと変わっただけのことなのかも知れません。

一流のアスリートだからこそ、

常にチャレンジし続けるのではないでしょうか。


冒険や挑戦をしている人は、

何もスポーツ界には限りません。

僕の身近なところにもいます。


昨日、沖野修也さんの1stソロ・アルバム

『UNITED LEGENDS』のプレリリース・パーティーが、

ユナイテッド・シネマ豊洲のラウンジ『Breathe』で行われました。

アルバム・ジャケットのスタイリングを担当した

スタイリストの祐真朋樹さんとのトーク・ショーもあって、

沖野さんならではの洒落たパーティーでした。


沖野さんの凄いところを挙げればキリが無いのですが、

僕が感じる一番凄いところとは

いつもチャレンジしているというところです。

音楽を作る上でも、DJをする上でも、

プロデュースをする上でも、

それ以外にも執筆活動やクラブの運営、

そして色々なイベントを仕掛けたりと、

まるでチャレンジすることを楽しんでいるかのようです。

この『Breathe』も沖野さんが音楽プロデュースをしているのですよ。


夫々に成功を収めているわけですが、

でもその成功を満足とはせず、

常に新しいこと、新しい世界を探そうと

日々努力している方だと思います。

で、そうした努力している姿を人に見せないところは、

イチローとか中田とか、

トップ・アスリートのそれに近いものがあるのではないでしょうか。

沖野さんと接していると、

僕も頑張ってチャレンジしなければと

いつも思うのです。


今回のソロ・アルバムは

まさにそうした沖野さんのチャレンジする精神、

その集大成だったのです。

沖野さんがこのアルバムでどういった冒険をしたのか、

それは僕の拙文によるライナーノートを読んで下さい。

沖野修也
UNITED LEGENDS

TOKYO CROSSOVER/JAZZ FESTIVAL 2006

約1ヶ月振り(?)の更新です。


とりあえず本業であるDMRの仕事が忙しくて、

また執筆・選曲の仕事もずっと休み無く入ってて、

そして新しい本の監修が始まったりと、

ついついブログを後回しにしてきてしまいました・・・。


最近では他の人のブログもあんまり見てなかったりと

何だか取り残され感が漂ってきてたのですが、

でも僕なんかよりずっと忙しくても

きちんと更新してる人もいるので、

忙しいということを言い訳にしててはいけないですよね。


で、今日は気を取り直して告知をさせて下さい。

もう街のフライヤーや色々なブログなどで

目にしている人も多いと思いますが、

TOKYO CROSSOVER/JAZZ FESTIVAL 2006です。



昨年に引き続き、今年も参加させていただきます。

こうしたニュー・ジャズ~クロスオーヴァー系のフェスティヴァルは

世界的に見てもあまり無いので、

毎年定例化してやっていくことはとても意義深いことだと思います。

そして、そうした輪に加わらせてもらうことは自分にとっても非常に光栄なことで

是非とも盛り上げていきたいですね。


これだけのビッグ・イべントだと、もう誰が主役でどれが目玉なんて無いのですが、

個人的にはやはりKoopでしょうか。

あと初めて観るPirahnahead feat. DivinitiのDJとかも興味津々だし、

もちろんSleep WalkerやKyoto Jazz Massiveのライヴ・セットは外せないでしょう。

久し振りにJazzanovaのJurgenやKarmaのLarsに会えるのも楽しみです。


ちなみに各ステージのタイムスケジュールは公表出来ないのですが、

今回の自分のテーマは『スピリチュアル・ジャズ』です。

通常のクラブ・イベントではこうしたセットでやることはまず無くて、

それが出来るのもこうしたフェスティヴァルならではの計らいかも知れません。


以下、詳細です。


NISSAN MURANO presents TOKYO CROSSOVER/JAZZ FESTIVAL 2006
真の音楽ファンの為のビッグ・イベント、TOKYO CROSSOVER/JAZZ FESTIVALが今年も開催決定!
世界が注目するCROSSOVERとCLUB JAZZの最重要アーティスト達が、日本に、集結する!!!

12/8 (Fri) ageHa 22:00 START
Adv \ 4,000 with Flyer \ 4,000 Door \4,500

【LIVE】
KOOP [SWEDEN] (CLUB JAZZ)
FRANK McCOMB [USA] (R&B)
SLEEP WALKER feat. BEMBE SEGUE [UK] and YUKIMI NAGANO [SWEDEN] (CLUB JAZZ)
KYOTO JAZZ MASSIVE LIVE SET feat. VANESSA FREEMAN and TASITA D’MOUR [UK] (CROSSOVER)
MARK DE CLIVE-LOWE [UK] (CROSSOVER)
CRO-MAGNON (BAND SCHOOL)
and more...

【DJ】
JURGEN VON KNOBLAUCH(JAZZANOVA/Sonar Kollektiv) [GERMANY] (CROSSOVER)
PIRAHNAHEAD feat.DIVINITI [USA] (DETROIT/SOUL)
SHUYA OKINO(KYOTO JAZZ MASSIVE) (CROSSOVER) ?
RYOTA NOZAKI(JAZZTRONIK) (CROSSOVER)
YUKIHIRO FUKUTOMI(The Crossing) (CROSSOVER)
KARMA [GERMANY] (FUTURE/DOWNTEMPO)
DJ KAWASAKI (HOUSE/CROSSOVER)
SHACHO(SOIL&”PIMP”SESSIONS) (CLUB JAZZ)
MITSURU OGAWA(DMR) (JAZZ)
TSUYOSHI SATO(BLACK EDITION) (CROSSOVER)
TOMOYUKI TAJIRI(note native) (CROSSOVER)
BREAKTHROUGH[DJ JIN(RHYMESTER), DSK INVISIBLE(JAZZY SPORT/PHYSICAL SOUND
SPORT),MASAYA FANTASISTA(JAZZY SPORT/PHYSICAL SOUND SPORT)] (HIPHOP)
JOYRIDE(AYAKO NAKAMOTO,YU HOSHINO,ERIKA KATAGIRI,YUKARI BB) (HOUSE)
CHAMP(YOSUKE TOMINAGA,OIBON) (FUNKY JAZZY MUSIC)
em(TAKERU OTOGURO and more) (CROSSOVER)
MASATO KOMATSU(Slowly)
and more...

[主催] Village Again Association / Extra Freedom
[協賛] 日産自動車株式会社
[協力] Esquire Magazine Japan / InterFM / A&T INTERNATIONAL / The Room / ESUKEI
[お問い合わせ] ageHa /03-5534-2525 / Extra Freedom 03-3711-6451
www.tokyocrossoverjazzfestival.jp

[前売り]
お問い合わせ:キョードー東京 03-3498-9999
プレイガイド:
キョードー東京 03-3498-9999
チケットぴあ 0570-02-9999  Pコード:245-035
ローソンチケット 0570-08-4003 Lコード:34894
イープラス http://eee.eplus.co.jp
THE ROOM 03-3461-7167

※20歳未満の方のご入場をお断りしております。当日は全ての方にIDチェックを行いま
すので、顔写真付きの身分証明書を必ずお持ち下さい。
※当日はカメラ(携帯電話のカメラも含む。)での会場内の写真撮影を禁止しております。
携帯電話に付属している物を除くカメラの持ち込みは出来ませんのでご注意下さい。

そう言えば

すっかり説明するのを忘れていました。

僕のプロフィール欄の著書の下にあるこのバナーのこと。


これはUSENで選曲をやっている番組のバナーで、

クリックすれば番組のHPに飛べます。

この番組はかれこれ1年半ほどやっていて、

今は月に4時間分のミックスを作っています。


普段は新譜を中心に紹介しているのですが、

今月はスピリチュアル・ジャズ特集。

本でも取り上げたスピリチュアル・ジャズの定番どころを中心に、

後半は現代のスピリチュアル・ジャズということで

スリープ・ウォーカーや2 Banks Of 4などを紹介しています。


USENを聴くには専用チューナーとアンテナが必要なので

誰もが気軽にエア・チェック出来るものではないのですが、

もし加入している人がいたら聴いてみて下さい。

HPではトラック・リストもチェック出来ますよ。


それとついでに諸々の告知を。

まず、来年からスタートする東芝EMIのブルーノート企画『ESSENTIAL BLUE』。

4名のDJが交替でブルーノートのコンピ、アーティストのベスト盤を組んでいく企画で、

そのトップ・バッターをやります。


1月にコンピを発表するのですが、こちらは既に選曲済。

ホレス・シルヴァー、マッコイ・タイナー、ハービー・ハンコック、ウェイン・ショーター、

ドナルド・バード、ブルー・ミッチェル、チコ・ハミルトン、スタンリー・タレンタイン、

ジーン・ハリス、アンドリュー・ヒル、ジャック・ウィルソン、カーティス・フラーなどを選曲してます。

若いクラブ・ジャズ・ファン向けの企画ですが、

大人が聴いても楽しめるシックでエレガントなラインを押さえてます。

でも、ありきたりのブルーノート名盤って感じではなく、

僕なりのひねりと言うか味付けも加えています。


それから2月はアーティストのベスト盤ということで、

以前もちらっと話しましたが

デューク・ピアソンとボビー・ハッチャーソンをやります。

2人共リリース量は多く、

僕も持っていない盤があるので、

現在、全ての音源を取り寄せている最中。

その内、進行があればまた紹介するかも知れません。


その他、ライナーノートや雑誌の仕事も幾つかありますが、

一つビッグ・ニュースが。

『Jazz Next Standard』、『スピリチュアル・ジャズ』に続く第3弾の本が決まりました。

リットーミュージックさんとも打ち合わせを済ませ、

大体の概要は決まってきました。

これから執筆陣を固めていくところです。

テーマは、ひょっとして予想していた人もいるかも知れませんが、

『ハード・バップ & モード』です。

今回はアメリカ盤はもちろんですが、

ヨーロッパ盤の比重がかなり増えることになり、

国や地域毎に紹介していく予定です。

来年夏頃の発刊に向けて、

これから忙しくなりそう。

David Axelrod 『Live at Royal Festival Hall』

先程、Blue Note東京から帰ってきたところです。

Roy Ayers & Lonnie Liston Smithの公演があったのです。

2人の顔合わせでの東京公演は何と17年振りだそうで、

そうした意味では歴史的な公演だったのかも知れません。


ただ、自分が思い描いていたのとはちょっと異なり、

いい意味ではエンターテイメントとして楽しいステージでしたが、

それ以上でもなく、それ以下でもなかった。

Lonnieの「Expansions」は勿論、

Royの「Can't You See Me ?」~「Running Away」~「Evolution」メドレー

アンコールは「Everybody Loves The Sunshine」で締めと、

有名曲のオンパレード。

こうした曲が演奏されることは嬉しいことには違いないのですが、

でも当然それらが吹き込まれた時代とは違う演奏。


何か全体に軽いと言うか、

レコードで聴いた「Expansions」の大気圏を突き抜けていくような緊迫感、

「Running Away」の黒光りするようなファンクネスというものは、

残念ながら今日のステージにはありませんでした。

(まあ、それを期待する方が今は的外れなのかも知れませんが)


全体の構成はRoy Ayersのバンドによる演奏で、

ドラマーは面白かったけど(パーカッション奏者的な演奏だった)

デジタル・シンセのチープな音色がちょっと耳についてしまいました。

ジャズ・バンドというより、ソウルかファンクのバンドという印象。

そこにLonnieがゲスト的に顔を出すという感じで、

正直言って彼の出番が少なかった。

彼のアコースティック・ピアノの演奏は良かっただけに、

もうちょっとLonnieをガッツリ聴きたいなと思ったのでした。


それと比較するのも何なんですが、

今日はBlue Noteに行く前、

David AxelrodのDVD『Live at Royal Festival Hall』を観ました。



それは自分が思い描いていたAxelrodの荘厳な世界が、

そのまま映像となったような素晴らしいコンサートでした。


ロンドンのロイヤル・フェスティバル・ホールを舞台に

総勢26名のロイヤル・フィルハーモニック・オーケストラを

Axerlodが指揮したもので、

まるで天本英世演じるところの仮面ライダーの死神博士を思わせる

Axelrodの風貌がまず大迫力。


彼の作品は非常に好きなのですが、

ブレイクビーツという概念を考える上で

本当に重要な作曲家の1人で、

そしてオーケストレーションを

ポピュラー音楽にうまく取り込んだアレンジャーでもあります。


このライヴ映像では

彼の一挙手一投足に呼応し、

管楽器が不穏な唸り声を上げ、

弦楽器がすすり泣く。

ダイナミックなブレイクビーツを叩き出すドラムに

時に勇壮な、時に物悲しい旋律を奏でるヴァイオリン隊。

虚空を切り裂くような幻想的なフルートに

天上から地上への福音をもたらすようなフレンチホルン。


クラシックをベースとしたオーケストラに

ジャズ・ロックの演奏が融合されたもので、

今までレコードでしか聴いたことのなかった

「Holly Thursday」、「Song Of Innocence」、

「The Human Abstract」、「Urizen」といった名曲の数々が、

忠実に再現されていました。


この音色は、どの楽器とどの楽器が組み合わさって出ているのだろう、

と単純にレコードを聴いて思うことがあるのですが、

こうしたオーケストラの演奏を観ると、それがすぐに分かります。

オーケストラは役割分担がはっきりしていて、

チームワークが求められるものなのです。

そして、それを束ねるのが指揮者。


オーケストラの演奏はごまかしでは通用しません。

そして、それだからこそ楽器の純粋な音を聴くことが出来ます。

このDVDはそうした演奏を追うだけのシンプルな作りで、

そこにはショーマンシップされたものとかは一切無いのですが、

僕にとっては演奏の真剣さ、質の高さだけで充分にドラマとなっていました。


サンプリング・ソースとして有名なAxelrodの作品ですが、

彼自身はマシーンやエレクトロニクスに頼らない、

生身の人間の演奏に敬意を払う作曲家。

彼の作品は人間としての尊厳を説いているように思えるのです。


このDVDは、11/24にナウオンメディア から発売になります。

情報と言う名の暴力

休み明けの仕事で一番辛いこと、

それはメール・チェックです。

国内・海外から大体一日に200通くらいのメールが来ていて、

社内メールも含めると、

連休明けの朝にはおよそ500通くらいのメールに目を通すことになります。

それで大体、半日は潰れてしまうのです。


そうした自分を相手としたメール、

そうではない不特定多数の人に送られたメールの中で、

本当に自分にとって重要なもの、関わりのあるものは

10分の1くらいでしょうか。

スパム・メールも本当に多くて、

それを削除するだけでもうんざりなのです。


もちろん、こうした情報は

仕事をしていく上で無くてはならないものです。

メール・チェックを怠ったばかりに

ビジネス・チャンスを逃しては話になりません。


ただ、時々このあまりにも多い情報に、

自分が飲み込まれていくような感覚を覚えることも事実です。


自分が宛先になったメールは仕方ないとして、

そうではない不特定多数に向けられたメール、

時にそれらには相手のことを考えない

暴力的なものを感じることさえあります。

それはたまに役立つ情報を提供してくれることもあるのですが、

乱暴に言えば大体はパッと見てゴミ箱に捨てる、

そんなものばかりなのです。


ただ、こうしたメール攻勢にいつもさらされていると、

それが自分にとって有用か無用か、

短い時間の中で判断する情報処理能力も

知らず知らずの内に養われていっていることは、

実感として感じます。

災い転じて福となすという言葉がありますが、

そう考えるようにしています。


今の時代、情報は有り余るほどあります。

大切なのは自分に必要なもの、

そうでないものを選別する能力です。

それと、自分が欲しいと思う情報が

どこを探せば出てくるのか、

そうした嗅覚や引出しを数多く持つことです。

沢山の情報の中から、

的確に短時間で欲しい情報を引き出すこと

これが重要なポイントなのです。


これを逆の立場に立って考えれば、

不特定多数の人にやみくもに宣伝したり

情報提供を行って興味を抱かせること、

これがいかに非効率的で

また相手のことを研究しない愚かな行為か

分かるかもしれません。


今はマスを相手にする時代ではありません。

ピンポイントで必要な人に情報を送り、

モノやサービスを提供する時代なのです。


今日は何だかビジネス論的な話になりましたが、

メールというのは電話と違って

自分の都合で一方的に流すものなので、

より相手の立場に立って送る

そんな気遣いも必要ではないかなと思うのです。

これからのDJスタイルとは?

先週金曜、南青山のEVERで初来日DJをした

Spiritual Southのインタヴューをしてきました。


元は2人組だったのですが、

現在はMark Richardsonのソロ・ユニットとなっています。

Markはロンドン出身ですが、

オーストラリアにも数年住んでいて、

その後ロンドンに戻って音楽制作を開始。

以前はグラフィック・デザイナーだったそうで、

またパーカッションもマスターしたそう。

そんな諸々の話しをしてくれました。


現在、ファースト・アルバムを制作中で、

Raw Fusionから来春にリリース予定。

インタヴューの模様は、次のリリースに合わせて

Dance Music Reportに載る予定です。


で、インタヴューとは関係無い話ですが、

今回のDJで彼は1枚もレコードを持ってきていません。

持ってきたのはラップトップのみ。

トラクター(農作業で使うそれではなく音楽ソフトのこと)を使い、

PCにダウンロードしたMP3やWAV音源でDJをしたのです。


でも、これは彼に限ったことではなく、

今や世界を飛び回る欧米のDJ間では当たり前のこと。

ファイナル・スクラッチというソフトもあり、

こちらはパソコンの音源を特殊なレコードに信号として伝え、

まるでレコードを扱うようにDJが出来るもの。

(ということは、スクラッチやバックスピンも出来るのです)


このファイナル・スクラッチやトラクター、

最初はテクノやエレクトロニカ系のDJ間より広まり、

今ではヒップホップ、ハウスのDJも大体使ってます。

日本ではまだ少ないのでしょうが、

海外ではQ-Tipやラージ・プロフェッサーといった、

まさかこんな人までが、というようなDJも使っています。


これらが使用される一番の理由は、

重いレコードを持ち運ぶ必要が無いこと。

それはそうでしょう。

僕も以前、海外でDJをやったことがあるのですが、

レコード・バッグ2つにスーツケース、

それで帰りにお土産などを買った日には、

ほんとよく日本に帰ってこれたなと思います。

まさに体力勝負の世界なのです。


それと、航空会社によっては

持ち込み荷物の重量オーバーで

何万円もの追加料金を取られることも。

それを考えると、パソコン1台でDJが出来る今の時代、

何て楽チンなことか。


今から4、5年程前から急速に普及してきているのですが、

当初問題とされていた音質も向上し、

今では音質の悪いアナログ盤でプレイするより良いことも。

また、アナログは音の劣化があるのですが、

デジタルにはそれがほぼ半永久的にありません。

高いレア盤もデジタルに落として持ち運べば、

紛失や破損の危険も無い訳です。


それと、簡単に音源を交換出来るので、

今回、僕もMarkから彼の未発表の音源をCDRに焼いてもらいました。

(音源のコピーは著作権に関わる問題も孕んでいるのですが、

長くなるので今回は特に触れないこととします)


と、いいことずくめなのですが、

もちろん色々と音楽業界では波紋を呼んでいる訳で、

レコード会社やCDショップ、レコード・ショップにとっては

死活問題に関わる新兵器でもあるのです。


DJにとっても賛否両論があり、

昔からDJをやっているアナログに思い入れがある人にとっては、

やはり馴染めないところがあるようです。

例えば、僕はそうなのですが、

アナログ盤のジャケットから色々と情報を汲み取るタイプなので、

かける曲を選ぶ際、

ジャケが無いとどうもイメージが沸かないのです。

このブログのタイトルである『エサ箱の片隅から』のように、

DJブースのエサ箱でレコード盤をパラパラと見ている時に、

インスピレーションが出てくるのです。


これから先、DJのスタイルはどう変わっていくのでしょう?

ひょっとしたらDJブースからエサ箱が消え、

アナログ盤やCDが無くなり、

音楽はダウンロードで聴くもの、

という時代が来るのかも知れません。


音楽は聴く為だけのソフトではなく、

ジャケットにパッケージされたモノとしてコレクトするという側面もある為、

(現にMarkは色々とアナログ盤を買っていきました)

アナログやCDが全て消え去ることは無いとは思うのですが、

でも淘汰はされるでしょう。

つまり、ダウンロードで済ませればいいものと、

作品として手元に残しておきたいものと。

形として残すという行為、

文化とはそうしたものではないかと思います。

ラップトップに何千曲とダウンロードしようとも、

それは単にDJの為の商売道具に過ぎず、

文化として残るものではありません。


こうした文明の利器により、

音楽に接する形もどんどんと変わろうとしています。

それが良いことか、悪いことか、

今は僕も分かりません。

でも、そうした時代だからこそ、

ハードの変化に対応しつつも

音楽の本質にあるものは見失わないようにしたいと思います。

吉田修一 『初恋温泉』

普段、通勤の時は自転車を使っているのですが、

最近は雨の日が多いので、電車に乗る機会が増えます。

そして電車に乗ると、決まって読書タイムになります。

かといって、そうそう長い時間乗るわけではないので

そんな時は短編集やビジネス書を読むことが多いです。


あと、旅行や地方に行ったりする時は

新幹線や飛行機の中などまとまった時間が取れるので、

長編を読むのには丁度いいのです。


寝る前にも本を読むのですが、

大体途中で寝てしまっていて、

次の日にはまた少し前のページに戻って読み返すので、

あまり能率的とは言えません。

そうしてみると、僕にとって一番の読書タイムは

移動する乗物の中ということになるかも知れません。


さて、最近読了したもの(と言っても、ちょっと前なのですが)を1冊紹介すると、

吉田修一さんの『初恋温泉』(集英社)。


吉田 修一
初恋温泉

吉田修一さんの作品は好きで、

『最後の息子』、『熱帯魚』、『パレード』、『日曜日たち』、

『パーク・ライフ』、『ランドマーク』、『東京湾景』など

色々と読んでいるのですが、

登場人物や周囲の情景描写が非常に上手く、

文章自体はとても平易なものなので

すんなりと作品の中に入っていけます。

そういう意味ではクセは少ない作家なのかも。


でも、特に長編ではそうなのですが、

色々な仕掛が随所に施されていて奥が深く、

読めば読むほど話の底に横たわる影が見えてきます。

何の変哲もない普通の日常生活に潜む、

暗い欲望や不安感や焦燥感が

何かの拍子でひょっと顔を出す、

そんなものを描かせるととても上手い作家だと思います。

また終わりが突然に何の前触れもなく現れ、

中途半端な状態で読者は放り出されることもあります。

そうした宙ぶらりんな読後感が

色々とまた考えさせてくれるのでもあります。


それと主人公の一人称的な視点で描いた作品でも、

その目の奥にはどこか俯瞰するような

第三者的でクールな目がもう一つあります。

『最後の息子』がまさにそうですが、

まるでビデオカメラのファインダーから世界を覗いているような感覚。

そうした点では村上龍さんや村上春樹さんの系譜の作家です。


たとえ現実的に起こり得そうな話であっても、

リアリティーのある会話であっても、

共感出来るような内容であっても、

何とも言えない空虚さや喪失感が漂っていて、

そのパラレルな構造がとても現代的だと思うのです。

と言っても、別に小難しいものではなく、

『Water』のように爽快な作品も書いています。


今回は実在の5つの温泉を舞台にした5組のカップルを描いたオムニバスもので、

離婚の危機を迎えた夫婦、結婚間近のカップル、

不倫関係にある男女、高校生の初々しいカップルなど

色々なパターンの男女関係が描かれています。

『パレード』や『ランドマーク』のようにどんでん返しや衝撃性のある話ではなく、

それほど起伏に富んだストーリーという訳でもない。

まあ、ありがちな話かも知れません。


そして、あくまで恋愛小説なので、

他の作品に時折現れる暴力的描写も顔を出しません。

(あ、夫婦喧嘩の描写はあるか)

高校生カップルの表題作は、

『Water』に近い雰囲気なので

吉田作品の中ではストレートな部類に属するものでしょう。

『日曜日たち』のようにバラバラの話が最後に繋がるという仕掛もなく、

5話が夫々で独立した内容。

気軽にさらっと読めてしまう短編集かも知れません。


僕はこの5つの温泉は行ったことがありませんが、

どこも行ってみたいなと思わせる情景描写はさすがです。

そして、そんな温泉地を舞台に、

男女の心の触れ合いだったり、すれ違いだったりが、

緩やかに情景と共に流れていきます。

特に青森の青荷温泉の描写は雰囲気抜群です。

ここでの話は、ちょっとだけど心温まるものなので、

温泉とまさにピッタリという感じです。


吉田さんは男性の描き方はとても上手く、

それも色々な職業や様々な立場の男性を描いてきています。

でも、同じように女性の描き方も上手い。

(本作には登場しないが、オカマを描くのも上手い)

それも女子高生から主婦まで、

様々な年代の女性がよく描かれてるなと

改めてこの作品集を読んで思いました。

吉田さんには男性ファン同様、女性ファンが多いのは

そんな女性の描き方にもよるのでしょう。


そして、不倫だの、離婚だの、

そんなどろどろした大人のカップルの後、

一番最後に高校生の初々しいカップルの話を持ってくる順番、

そんなところがミソだったりするのではないでしょうか。

バラバラの5つの話だけど、夫々に余韻を残し

そして最後に甘酸っぱくもほろ苦い気持ちで締め括る。

この終わらせ方が、吉田作品の象徴とも言えるものです。

グラント・グリーン

随分と更新をさぼっててスミマセン。

忙しいのもあったのですが、

ついまた明日でいいか、

なんて思っている内に1週間が、

10日が過ぎてしまったのです。


実は昨日書いていたのですが、

ほぼ書き終えようかというところで

アメーバのメンテナンスが入り、

保存していなかったので全部消えました汗

よくあるんですよ、これが。

まめにバックアップしないとダメですね。

で、気を取り直して書いているところです。


忙しかった理由の一つに、

ブルーノートのギタリストのグラント・グリーンの

未発表ライヴとベスト盤のライナー執筆があり、

ベスト盤は選曲と監修も務めたのでかなり大変でした。

先週末で何とか納品出来たのですが、

改めて久々にグラント・グリーンを聴きまくりました。

その数はレコードにして約25枚。


グラント・グリーンはいわゆる技巧派ではなく、

シングル・ノートでグイグイ弾き倒す、

どちらかと言えば不器用なタイプのギタリストです。

でも、ブルース・フィーリングやグルーヴ感は抜群で、

それはどんなうまいギタリストが弾いても出せるものではない。

ノリがあって味のあるギタリストなのです。


70年頃はジャズ・ファンクに傾倒していて、

ジェイムズ・ブラウンやミーターズ、

クール&ザ・ギャングのカヴァーをやるなど、

大ファンク大会のアルバムを沢山出してます。

オルガン奏者とやることが多く、

ハモンドもギンギンに入ってます。


最近、あまりコテコテのジャズ・ファンクを聴くことはなかったけど、

久々に聴くとやっぱりいいものです。

今のジャズ・シーンでは

どちらかというとソフトで洗練されたものが好まれる傾向にありますが、

でも、たまには黒くて荒々しくて、

ガッツがあってガツーンと体に響く音を

体内に注入することも必要だと思います。


今回グラント・グリーンを色々聴いて思ったのは、

もちろん僕はジャズが大好きだけど、

それと同じくらいソウルやファンクも好きなんだなと。

そもそも僕は最初はソウルやファンクからジャズに入ったので、

それは当然なのかも知れません。


でも、時にジャズ・ファンの中には

他の音楽に興味を示さず、

またジャズ・ファンクやラテン・ジャズを、

あんなのジャズじゃないと言う人もいます。

どうも敷居が高いのかな・・・。


前にある有名なジャズDJがDMRに来た時、

色々レコードを紹介してあげたのですが、

ソウルものなどを紹介すると、

彼曰く「ソウルは聴かない」と。

「ジャズだけを聴きたいんだ」と。


彼の作る作品は凄く好きなんだけど、

DJとしての姿勢には違和感を覚えました。

自身の、そして音楽の可能性を

自ら閉じるというか放棄しているような

そんな態度に思えたのです。


もちろん、彼には彼なりの美学があって

自分に相応しい音楽をチョイスしているのでしょうが、

僕には何だかそのチョイスする基準が

表面的なもの、浅いものにしか見えなかったのです。


まあ、彼も長いキャリアを持つ人なので

色々聴いてきた中での自分の結論だったのかも知れません。

でも、ソウルはやっぱり聴いた方がいいよな~。


若い人にはこうした聴き方は真似して欲しくないです。

とにかく、色んな音楽を聴くべきだと思います。

ジャズと一口に言っても色々あるのだから、

あるスタイルだけに固執するのではなく、

時にそれと逆のスタイルのものに

敢えて挑戦してみるというのもいいことだと思います。


話しは長くなりましたが、

グラント・グリーンの2枚は12月上旬に

東芝EMIさんから発売です。


なお、これを皮切りに

来年早々からブルーノートのコンピや

アーティストのベスト盤、再発ものを

色々出していくというシリーズに繋がっていく予定です。


それも動き出しているので、

もう色々と固めていかなければなりません。

とりあえずアーティストでは

ボビー・ハッチャーソンや

デューク・ピアソンをやりたいなと思ってます。

どうでしょう?

中秋の北陸

10/6~8と福井県の敦賀市に行ってきました。
西脇親(チカシ)君という友人がやっている「TREE」という店があり、
遊びに行ってきたのです。




昼はカフェでオーナーのチカシ君が作るカレーが絶品。
夜はラウンジというかサロンとなって、
でも気取ったところはなくて、
気軽に踊ったり馬鹿騒ぎも出来る店です。



チカシ君はDJでもあるので、
音にはうるさく
アンプはマッキントッシュの真空管、
スピ-カーはタンノイという凝りようです。



僕も2夜連続でDJをしました。
地方でやるといつも思うのですが、
東京と違って頻繁にクラブ・イベントがあるわけではないので、
お客さんはその一晩を目一杯楽しんで帰ってくれます。

東京ほど情報が多くはないので、
音楽についてそんなに詳しい訳ではないでしょう。
でも、その分だけいい音楽を吸収して
楽しみたいという気持ちが強い。

この「TREE」の場合、
チカシ君の人柄もあってか
暖かいヴァイブを持ったお客さんが集ってくれて、
それはDJをやっていても伝わってくるので
僕も気持ちよかったです。

今回は半分遊びで行ったようなものなので、
あとは「リラ・ポート 」という温泉につかったり、
おいしいものを食べてゆっくりしてきました。

「リラ・ポート」は名前が洋風ですが、
れっきとしたアルカリ性の天然温泉で
露天風呂からプールまであります。
スーパー銭湯とか健康ランド感覚で
気軽にブラッと来てる人が多くて、
敦賀の人は週に数回は来ているそう。
 
敦賀は海も山もあって、
市内から車で15分もあれば
海水浴場にも温泉にも行けるいいところです。

若狭湾で獲れた魚は本当に新鮮で、
それを使ったお鮨などは
東京ではなかなか味わえないもの。
この辺りは鯖や甘鯛、それからアオリイカなどが名産で
特に今の季節は鯖が旬で美味しかった。

それから近江牛の産地の滋賀からも近いということもあって
ステーキもいただきました。
近江牛には特有の柔らかさと甘味があって、
レアでいただくステーキは実に美味しい。
近江牛の稀少な「はねした」を軽く炙って
握ってもらったお鮨がこれまた逸品でした。

来月も行く予定があるのですが、
その頃は蟹が旬なので
これまた楽しみです。

9月も最後です

長らく更新出来てませんでしたが、
もう1週間近くになろうとしているので
これはイカンと書いているところです。

9月は色々と忙しく
手掛けたライナーノートは5本となりました。
昨日も完徹に近い状況で1本仕上げました。
以下、執筆した順リスト(敬称略)
・沖野修也 / United Legends
(ジェネオン・エンタテインメント) 12/6リリース
・V.A. / GO !! レーベル・ベスト・ミックス of GOGO MUSIC
(ランブリング・レコーズ) 12/6リリース
・V.A. / For John Coltrane - Love is Supreme
(P-Vine) 10/20リリース
・KARMA / Latenight Daydreaming
(ヴィレッジ・アゲイン・アソシエイション) 10/25リリース
・吉澤はじめ / Hajime
(ヴィレッジ・アゲイン・アソシエイション) 11/8リリース

今月は個人的にも是非書きたいというアイテムが沢山あり、
とても充実したライター・ワークが送れたと思います。

でも、次の仕事がもう差し迫っていて、
東芝EMIさんからのBlue Note企画で、
グラント・グリーンの未発表ライヴのライナー執筆と
同じくベスト盤の監修をしなくてはなりません。
特にベストの選曲が大仕事で、
全部で25枚程あるアルバムを聴いて
1枚のCDにまとめるというものです。

今まで聴いたことのあるアルバムもありますが、
全く初めて聴くものもあり、
果たして期限内に全部出来るのやら?
期限は約2週間ですが、
来週末は地方に出掛けてしまうので
実質今日から数日が勝負です。
とりあえず、これから聴き始めるところです。

話は変わりますが、
今日の昼間はGroove誌さんの取材で
自宅のレコード棚を公開するというものがありました。
以前もGrooveさん、
須永辰緒さんの『Double Standard』で、
自宅のレコード棚を紹介したことがありますが、
新しい家に移って
新しい棚を作り付けてからは初公開となります。

何だかんだで2時間半ほど部屋の写真を撮られたり、
レコードを紹介したり、
インタヴューを受けたりしましたが
10月末発売号に載る予定です。