表題の件です。


今年は去年にもまして「減らす減らす!」と息巻いておいて、音楽会の数は昨年の61件から63件に増加。

主な要因としては今シーズンよりN響は定期ABC全て会員のフルスペック。

さらに新国立Zチャレンジによりオペラが増加


…ま、来年に向けてちゃんと、本当の意味でN響主軸を徹底し、

無駄な出費を抑えた財政健全化を目指したいと思います😅


さて、それでは今年は先にトップテンの発表から…!




①アンドラーシュ・シフ×CAB バッハ:ピアノ協奏曲集

②ルイージ×N響 フランツ・シュミット:交響曲第4番 他

③ゲアハーハー×フーバー 東京春祭;シューマン歌曲集 ※全2夜

④ビシュコフ×チェコ・フィル ショスタコーヴィチ:交響曲第8番 他

⑤尾高×大フィル エルガー『ゲロンティアスの夢』

⑥デュトワ×N響 『ダフニスとクロエ』全曲 他

⑦内田光子 ベートーヴェン後期3大ソナタ

⑧ルイージ×N響 マーラー:交響曲4番 他

⑨尾高×読響 エニグマ変奏曲 他

⑩ブロムシュテット×N響 『讃歌』 他


…以下選考理由など。


⑩ブロムシュテット×N響 『讃歌』 他

https://x.com/werther_zu_2d/status/1979504815475675490?s=61

 

 讃歌マニアとしては元GHOカペルマイスター:ブロムシュテットの讃歌を

しかも最良のコンディションで聴けて感無量。

ここ数年何故か讃歌を聴く機会に比較的恵まれたものの、今年の讃歌は本当に心温まる素晴らしいものであった。

前半の詩篇交響曲もブロムシュテットの驚くをど切れ味の鋭い解釈には驚愕。

この人は98歳にして常に進化している。まさに奇跡の人。


⑨尾高×読響 エニグマ変奏曲 他

https://x.com/werther_zu_2d/status/1922986998429585835?s=61

 

 もう何も付け加えることのない、存命中エルガーメダルを所持する世界最高のエルガー指揮者のエニグマ。

これ以上望むものがあるというのか?

彼のエルガーを聴くことは私にとっては生きる活力なのである。


⑧ルイージ×N響 マーラー:交響曲4番 他

賛否分かれるルイージのマーラーであるが、今回の4番は歌と響きとデモーニッシュさに溢れた快演!

ひたすらに幸福に満ちた美音に酔いしれた。

欧州公演に持って行くN響の気合いを感じたものの、ルイージ×N響の進化はここから先だぞ、という展望もちらっと予感させることにもなった。


⑦内田光子 ベートーヴェン後期3大ソナタ

https://x.com/werther_zu_2d/status/1983870713552674946?s=61

 

 この人のピアノの音をずっと聴いていたい…!

ベートーヴェンの駆けた人生をなぞるそうな苦悩と希望を表現し切った堂々たる芸術。

いかに内田光子が作曲家に敬意を払っているかがわかるひたすら尊い演奏であった。


⑥デュトワ×N響 『ダフニスとクロエ』全曲 他

https://x.com/werther_zu_2d/status/1989591382470922569?s=61

 

 職人の十八番の極致!

これ以上のダフクロを聴けるのだろうか?

デュトワの日本の聴衆への愛着も感じられる感動的な公演であった。

ずっと日本に足を運んでくださいね、マエストロ。


⑤尾高×大フィル エルガー『ゲロンティアスの夢』

https://x.com/werther_zu_2d/status/1910694531139592316?s=61

 

 9位のエニグマに続き尾高さんの世界遺産級のエルガー。

彼はエルガーの使徒としてこの先もずっと温かみのある、しかし飾り気はない、

それでいてじんわりと心に残る音を紡ぐのだろう。

尾高さん、長生きしてくださいね。


④ビシュコフ×チェコ・フィル ショスタコーヴィチ:交響曲第8番 他


 

 これもやや思い出補正が多少あるものの、正直近年では井上道義に匹敵するかそれを超える凄まじいショスタコーヴィチだった。

ショスタコーヴィチメモリアルイヤーを飾る堂々たる、そして確固たるビシュコフの解釈に導かれたチェコ・フィル!

この公演の2日前に聴いた『我が祖国』も充分心に残る素晴らしい演奏だったものの

このショスタコーヴィチの凄演に吹っ飛ばされてしまった。それぐらい強烈な演奏。

またチェコ・フィルの個性ある美しいビロードの弦は

没個性的になった欧州のオーケストラにあってもはや超貴重な存在である。


③ゲアハーハー×フーバー 東京春祭;シューマン歌曲集 ※全2夜

やっとゲアハーハー様がコロナ明けて満を持してのシューマン・リーダーアーベント!

正確なディクション、時に伴う劇性と激情。

一つひとつの言葉が心に残る最高の歌曲の夕べ。

頼むからもっと日本に来てください!!


②ルイージ×N響 フランツ・シュミット:交響曲第4番 他

https://x.com/werther_zu_2d/status/1966821153743192540?s=61

 

 正直これはほぼ1位タイ。

1位はほぼ思い出補正ですからw

ルイージ×N響の4シーズン目の驚くほどの進化を証明する圧巻の名演であった。

で、来シーズンのオープニングも同作曲家の『七つの封印の書』というのだから背筋が凍るほどの期待である。


①アンドラーシュ・シフ×CAB バッハ:ピアノ協奏曲集

やっぱり思い出補正ってあるんだけど、

子供の頃から愛奏したバッハ。

聴き専になっても、やっぱり鍵盤音楽におけるバッハ音楽は自分にとってのモニュメント。


そんな中高校生のとき出会ったシフのピアノ協奏曲集。

あれから留学中のグラーツで彼のディアベッリを聴き涙を流し、

彼の来日の度に会いに行くようになってから久しい。

しかしこれ程までに心を揺さぶられる音楽があるかと言われればそうない。

そんな今年最も心に残った演奏会。

協奏曲が全曲終わった後に、

「お願いです。ゴルドベルクのアリアをお願いします…!」

と祈った次の瞬間に弾き始めたアリアを聴いて号泣。

今書きながらでも思い出して感極まってしまう…


【番外編】ルイージ×N響 サン=サーンス:交響曲第3番 他

https://x.com/werther_zu_2d/status/1996549353474015680?s=61

 

 いろんなことを思い出してしまい、涙が止まらなかった音楽会。

私がプレイヤーとして最後にプルトツとして演奏した曲。

その時の指揮者は今年亡くなられた汐澤安彦先生であった。

不死身と思っていた先生が急死されたのは今年の初め。

そんな汐澤先生のお葬式に伺ってもにわかには信じ難く、茫漠とした思いが去来するばかり。

しかし、この演奏会、オルガン付きの終曲でぐーんとチャージをかけたルイージの姿を見て、汐澤先生のあの振り姿が突如フラッシュバック!

拍手のさなかボロボロと嗚咽を漏らしてしまった。

何というか自分の青春の一角に汐澤先生という大きな存在が居たんだと身にしみて感じました。



…はい、ということで

湿っぽい感じに締めくくりますが以上です。

来年はますます期待募るN響に特化していくことになるのかもしれません。

まあ判りやすいN響信者として、クラシック桟敷のお歴々の皆様に

一層のご指導ご鞭撻のほどを宜しくお願い申し上げまする。

皆様も良いお年をお迎えください。



◎NHK交響楽団/ファビオ・ルイージ[首席指揮者]/リーズ・ドゥ・ラ・サール[ピアノ]

2025年5月5日(月・祝)16:15開場/17:00開演@所沢市民文化センター ミューズ アークホール


NHK交響楽団 

ファビオ・ルイージ[首席指揮者] 

リーズ・ドゥ・ラ・サール[ピアノ]


《ヨーロッパ・ツアー記念プログラム》

武満徹:3つの映画音楽

グリーグ:ピアノ協奏曲 イ短調 Op.16

ブラームス:交響曲第4番 ホ短調 Op.98


【ソリストアンコール】シューベルト/リスト編:音楽に寄せて

【オーケストラアンコール】ベートーヴェン:交響曲第8番から 第2楽章




今年ゴールデンウィークは遠出をせずにせっせとN響欧州遠征一人壮行会w

でも私がルイージ×N響に霊感を得て、「シェフになって欲しい!」と思った伝説の(?)ブラ4が再演されるというのだから行くしかないw

ちなみにかれこれ聴いたのは8年前だとか!ビックリw


 

あの頃は若くて、パーヴォ・ヤルヴィに鬱憤が溜まっていたらしい。

 

 

若い頃の自分辛辣wwやっぱ若い頃の自分、尖ってますねえ。叱ってやりたいなww

やっぱり「ちょっと苦手だな…」と思っても粘り強く聴くのは大事らしい。

その後の手のひら返しは当ブログを参照されたいw


さて、前半は事前の曲目発表では「ほか」とされていて、薄々やって欲しかった欧州遠征Dプロ:

プラハ、ドレスデン、インスブルックで披露される武満徹の弦楽のための『3つの映画音楽』と武満徹では最もポップな演目。

これがもうビックリ!!

実はあんまり外国人指揮者のやる武満に感心したことがなくて、

代表例がサイモン・ラトル。

あー、やっぱ日本的なああいう侘びとかサビとか、苔むした湿気と竹林の芳香って再現できないよな、と。

それが今回、なるほどこういう攻め方かと感心した。

例えていうなら「コッテリ濃厚ジェノヴェーゼ(シェフのお袋の味)を和風出汁、魚醤、紫蘇と

和の食材をふんだんに使い、芳醇な芳香も楽しめるよう仕上げました…」的な創作料理的な武満。

これがまたN響の弦セクションという東洋最高の素材の美質を余すところなくふんだんに使う。

そしてルイージ様の美しく滑らかな振り姿は、時に艶やかさを感じさせ、聴衆を魅了して離さない…。

特に2曲目「黒い雨」の葬送の音楽では、よく現れる武満の和声が物凄く湿気を帯びてしっとりと響く…。

やっぱりこの人の根幹には「芳香」が潜んでいて、

多分日本で嗅ぎ取った香りを分析して音に変換しているのか?と思ったほど。

でも3曲目の「他人の顔のワルツ」は明らかに西洋人のふくよかさのそれ。

でもってN響の弦の昨今の柔軟さをそのまま引き出すので、あざとさは全くないのに濃厚な舌触りのみ残るという…。

いやあ、素晴らしい!これには驚いた。

ルイージさん、この独自路線でいいから武満徹沢山演ってくださいな!オネシャス!w

この前プロの終了後、周囲のお客さんからため息と共に「凄い…」とつぶやきが漏れたほど。

これ聴いた上記3都市の聴衆は度肝抜かれるでしょうよ。


続く中プロのグリーグのピアノ協奏曲。

これもリーズ・ドゥ・ラ・サールのピアニズムと不思議なほど噛み合った快演で舌を巻いた。


…え〜、このままラ・サールさんで欧州でも演った方がいいのでは←


ゲフンゲフン


ラ・サールの独奏は膨よかさもあるがとにかく強靭で、情熱一途!ロマンティック!!で伴奏するルイージ×N響に全くビクともしない音造り。

昨年秋山×田久保の名演がまだ記憶に新しいが、打鍵技巧は田久保に一歩譲るもののラ・サールのN響の厚みに全く揺るがぬ姿勢は見事この上ない。

またらサールの膨よかさがルイージの、今日の徹頭徹尾ロマンティックに耽溺する響きにうま〜く接続していく。

見ものはカデンツァと、何より2楽章!

この前のベルクとマーラーでもそうだが異様に弱音に拘るルイージ。

それに発音をハッキリさせて応えるラ・サールの美音…。

う〜ん、この2楽章だけあと100回お替わりしていいぞ!ww

嗚呼…コレも音源化して配って欲しいぐらい…。

こういうのが音楽の一期一会。

本当の醍醐味なんでしょうが…。


それにしてもベルクといい、このグリーグといい、コンチェルト出来過ぎでないか??

こりゃ予定調和なら後半のブラ4霞みそうww


アンコールはAn die Musikのリスト編。

これは先ほどの強靭なグリーグからすると驚くほど繊細。

この人の引き出し面白いなあ。

秋に読響でガーシュウィン演るらしいけど、ちょっと興味湧いてきた。

(ガーシュウィンよりシューマンとか聴いてみたいけどw)


さて、メインのブラ4。

これに関してはリハの短さゆえちょっと荒削りさもあって予定調和的な演奏。

…ともあれ前述の通り、コロナ前の名演宜しく大満足な演奏!

やっぱり第1ホルン福川さん、上手いわ。戻ってこないかなあ←

8年前と違うところは、やはり弦の精度と弱音への拘り、それに応える団員の反応力。

とにかく弦の精度と音の引き出しの多さはちょっと尋常ではない。

弦から色んな音のヴァリエーションが出る。

時にウィンズ、ブラス、オルガン的な音すら(特に4楽章のパッサカリアでは…)出てくる。

…う〜ん、これだけで充分欧州遠征で頭角を表せるのでは…?

少なくとも私はこれと同じ感覚があるにはもはやウィーン・フィルとチェコ・フィルくらい??

(言い過ぎかな。まあウィーン・フィルの弦はちょっと別格…)

そんな弦の凄みを聴かせられたらあっという間に曲が終わってた。

…う〜ん、響きの洗練でねじ伏せましたな…パワープレーっちゃ、パワープレー。


アンコールが有るのが、今日はオルガン横P席だったので譜面をチラ見してわかったが、これは全曲聴いたことのあるベト8。

所沢の聴衆も明らかに前回のブラ2より熱狂。

とは言え収穫は前半2曲かな?素晴らしかった。

これは文句なく欧州で日本代表を名乗れますね。


さて、最後に小ネタ。

前半は欧州のプログラムの都合もあり、B定に続き郷古がコンマスに座ったが

前半終了後、休憩のホワイエで隣にいたご夫妻が

「コンマスカッコよかったね!若いのに良いね」

…でしょでしょ!と言いたくなった。N響自慢のスーパーコンマス。

今日も終始ルイージの熱に呼応して体が動く郷古コンマス。

ここまでN響が熱いオケに成れてきたのも彼の存在は本当に大きいと思う。

彼は本当に日本クラシック界の大谷翔平みたいなもの。

願わくばN響コンマスをもう少しで良いので長く続けてください🙏


(N響欧州遠征本邦公開鑑賞記 完)

◎NHK交響楽団 第2037回 定期公演 Bプログラム

2025年5月1日 (木)

2025年5月2日 (金)

開演 7:00pm※2日程とも鑑賞

@サントリーホール


曲目

 N響ヨーロッパ公演2025 プログラム 

ベルク/ヴァイオリン協奏曲

マーラー/交響曲 第4番 ト長調*


指揮 : ファビオ・ルイージ

ヴァイオリン : 諏訪内晶子

ソプラノ : 森 麻季*








N響欧州遠征曲目其之二。

マーラー4番をサントリーで、というのは願ったり叶ったり。

以前、前任者パーヴォ・ヤルヴィで聴いた際は演奏自体は良かったものの、

やはりNHKホールでこの曲を演る限界を感じてしまった…。

今回はGWと重なり、珍しくB定を完捲りすることに。

職業柄GWが唯一の長期休暇であるのだが

5/1〜2の、いわゆるGWの中休みは平日で、

ここ数年短い旅行に出ていたが今回はパス。

満を持してN響B定へ!w


前回の3番の好演から(特に角笛歌曲に繋がる部分の)

4番は大いに期待できたが、結果としてはまさにどストライクを突くものだった!


さて、まずは諏訪内さんを迎えたベルクのヴァイオリン協奏曲。

今回ライナーノート執筆の小室さんが面白いことを書いていたが

この曲の構成はマーラーの9番に符合するようにできているという。

確かに、2楽章前半の「死への抵抗」をマーラー9番のブルレスケに充てるのは納得がいく。

…とはいえ、マーラーよりは文字通り変態なベルクは

ライナーノートにあるように17歳で家政婦を孕ませたりと

彼の音楽性には神経質なマーラーとは隔絶されている感はあるが…


で、実際の演奏だが、これが想定以上の名演!

私がこの曲を好きになるきっかけを与えてくれたフランク・ペーター・ツィンマーマン以来の深い感銘。

とにかくまずは諏訪内のヴァイオリンソロに言及しなければならないが

もうこれほどにもなると彼女は名匠の域に達していると確信した。

まず、柔らかい膨よかで、それでいて時に慟哭するような巧みなヴァイオリンソロに脱帽。

しかもそれが理性的にコントロールされていて、

ひょっとしてルイージの方がよっぽど情熱的かもしれない。

そのルイージに率いられたN響もまたとっても柔らかい音…

本当に十二音技法で書かれたのか怪しいくらいロマンティックで、溶けるような音。

ここまで響きを磨き上げているのは大したもので、

サントリーホールの美質を最大限引き出した高度な演奏と感じた。

諏訪内の匠の技に、ルイージの情熱的な音造りが上手い具合に混ざり

絶妙も絶妙な凄いベルクのコンチェルトが完成。

…コレCD化しないかなww

ちなみに今回初日はLA、2日目RAで試してみたが、

やはり背を向けるLAよりヴァイオリン協奏曲ならRAなんだなと学びが増えたw


さて、メインの4番。

定期的に私の狭窄した変なスイッチを全て押していくルイージ。

…つまり部類としては変態演奏の類。

一音目聴いた瞬間に、…うわあ、コレSNS荒れんぞとは思ったがw

私的、今年の暫定ベストです。本当にありがとうございます😭


第1楽章は妙に早い出だしの鈴に吃驚したものの、

全く別のゆったりとしたテンポ、しかも鄙びた柔らかな弱音で滑り込んだ瞬間

「あ、今日勝ったわ!」

と確信してしまったwwww

とにかくテンポはあざと過ぎるくらい揺らす。

しかし盛り上げるときはまるで花を散らすかの如き芳香を放つ音を

ヴァイオリンの明るい音でこれでもかという

しかも柔らかくて包み込むような音でじっくり聴かせるからたまらない…。

この時点でやはり第4のマーラーの交響曲全体の異質さが強調される。

とにかく明るく天国的。

その明るさにかつては辟易していたのだが、

ここ数年リートに傾倒するようになってすっかりお気に入りになってはいるが…

多分マーラーの暗さを求めるのならこの1楽章の明るさは御法度だったのでは。

この点で好みが割れてしまうのは仕方のないことだろう。

それにしても段々1楽章でルイージがヒートアップして煽っていく様が

かな〜りデモーニッシュに響き出して3楽章の「地獄落ち」の伏線になっていくのが

そこはかとなくわかりこの時点でニヤニヤしながら聴いてしまったw


第2楽章はコンマス、郷古廉の死神ソロが上手すぎてひっくり返ってしまった…

…元々ソリストとして大好きなヴァイオリニストであったが

貴方、そこの席に座ってそのソロは反則でしょ…

このスケルツォは様々な楽器のソロが飛び出すお祭り騒ぎだが

まぁN響上手いよなぁ…と言う中で明らかにレベチ。

ズルいよなあ…。

これだけで多分マーラーフェスの大半のオケのコンマス(たとえそれがベルリン・フィルでも)が

敵わなそうなとんでもないソロ。

これにはルイージも振りながらニヤけるのが止まらず

終演後はしきりに郷古を立たせていた。…そりゃそうだよね。



(郷古を無理やり立たせようとするルイージ。これは全客席納得のはず。ヴァイオリン上手すぎィww)


これで充分、N響は今欧州遠征で存在感を示せると確約されたように感じた。


…そして満を持しての3楽章。

あぁ、そうなの。これなんですよ!

(ちなみに、醜い乱筆ではありますが、私のマラ4ガイドラインはこちら)

もう冒頭から文字通りのRuhevoll。

弱音にとにかく磨きをかけ、澄んだ音。

なのにひたすら膨よかで明るく光を散らす、

そして咲き乱れる春の花の庭園。

花びらをブワッとそこらじゅうに散らしたようなむせかえる芳香。

その後にやってくる地獄落ち…。

さらにテンポを揺らし、急激に落とし

ホルンのゲシュトップ、コントラバス、コントラファゴットで見せる地獄の釜の底。

なんというか、ダンテの『神曲』すら感じる壮絶な3楽章。

私はただ目を瞑ってやり過ごすしかなかった…。


そしてアタッカで繋がる終楽章。

…嗚呼。

天国だよ。天国がそこにやってきたんだなあ。

また森麻季の透き通る歌声が天女のよう。

響きのタイプとしてはゲルネのような美声を見せるタイプで

発音としては不明瞭になりがちだが、

これがルイージの描く天国的なまでに明るい終楽章を幻惑的にしていて完璧。

最後の最後まで血が通った、徹頭徹尾情熱的でいて

しかもドラマに溢れた稀有な4番。

今後そう聴く機会は無い気がする。



















ますます己の劇性、情熱、響きの拘りの音楽性をN響で実現していくルイージ。

N響も最大限応え始めたと同時に

彼のある種特異な音楽性に合わない聴衆は益々離れていくだろうと強く感じた音楽会だった。

ともあれ、根強いファンも定着し始めた感もあり

この間の5月N響AB定は大変熱狂的に、ルイージファンの聴衆には迎えられたと思った。

これはかつての上岡×新日本フィルにも似たような現象が見られるような気もする。

新日を離れた上岡はすっかりカリスマ化して日本のマニア界では市民権を得たが。

同じようにルイージが退任してから評価が変わるかもしれないとは思いつつも。


(続く)

◎NHK交響楽団 第2036回 定期公演 Aプログラム 2025年4月26日 (土) 開演 6:00pm

NHKホール


曲目

― N響ヨーロッパ公演2025 プログラム ―

マーラー/交響曲 第3番 ニ短調


指揮 : ファビオ・ルイージ

メゾ・ソプラノ : オレシア・ペトロヴァ

女声合唱 : 東京オペラシンガーズ

児童合唱 : NHK東京児童合唱団




N響欧州遠征にして、今後アムステルダムのマーラーフェスの演目其之一。

またこのアムステルダムのマーラーフェスの招聘オケが凄くて

ホストはコンセルトヘボウ

それに名を連ねるのはブダペスト祝祭管、シカゴ響、ベルリン・フィルと

まるでクラシック音楽界のワールドカップみたいな様相…


コレにN響が招かれ2曲披露というのだから凄い話。

ただシェフのルイージはコンセルトヘボウに定期的に招かれ

最近だとマラ5の新盤もだして、コンセルトヘボウ主催のマスタークラスに講師として登場、

さらに昨年の日本ツアーも任されているし

多分彼がシェフでなければ招聘されていなかった?という邪推もある。


ともあれ、最初に披露するのはかつてギネスにも認定されていた

作曲家の最長大作のマーラー3番『夏の交響曲』


実は実演はインバルのものか一昨年のウォンしか触れたことがなく

(というか、かつてはマーラーはインバルしか選択肢の余地がないインバルマーラーカルトだったため致し方ない…)

角笛交響曲ゆえ好きなのだが、その長大さゆえあまり触れない曲。


個人的にはルイージはマーラーよりブルックナーの方が合っているのでは?と思うので

実はルイージ信者とはいえ期待は抑えめで着座。


…いや〜それがどっこいこれが意外や意外、

抑えめにしたとはいえ予想を超えて滅茶苦茶素晴らしいマーラーに仕上がっていた!


ルイージと言えば、どちらかというと響き職人系で

トスカニーニやカラヤンのシャープで厚めの

サウンド重視形に仕上がりやすいので、

鬱屈とした精神病体質なマーラーにはミスマッチ感もややあるのだが…

…いやいや、今回は「響きを極限に極めたマーラーも聴きものである」と感服した次第。


第1楽章。

マーラーでせかせかしたイメージのあるルイージだが

事前の予習で1番5番はじつは結構ゆったりテンポをとるのがわかり

この3番もかなり丁寧なテンポ設計。

だがやはり実物は響き!

こんな綺麗にまとめたサウンドがあのデッドなNHKホールを包み込む不思議!

しかもやたらにこだわるピアニシモにも芯があり聴きごたえ充分。

盛り上げ方も上手く、自分の中の否定的な「響き綺麗系マーラー」観が払拭された。


そして第2楽章の田舎メヌエットにも冒頭からの美しい弦奏!

明らかにルイージがシェフになってN響の弦は驚くほど柔和になった。

これは欧州遠征でもウィーンの聴衆には必ず喜ばれると思う。


そして最愛の3楽章!

「夏の歌い手」の戯けた角笛の旋律。

そこに長谷川首席の驚異的なバンダポストホルンソロが華を添える。

かはぁぁ…堪らん…!

ここまで凄い集中で演奏し切るN響のアンサンブル力には脱帽。


4〜5楽章では弱音の響きにこだわるルイージの棒に難儀したか、

ブラスがエラーを連発したのが惜しかったものの

流れに悪影響を与えるものではあまりないし満足。

ただ、やはり世間のN響に対する期待と目は厳しいものがあり

SNSではかなり賛否割れたのはこの辺であったろう。


で、今回の公演の意外性は、実は終楽章に隠れていた。

響き響き響き…歌う歌う歌う…。

あまりの美しさに最後は涙してしまった。

ここ最近ではウォンの優秀な日フィルの演奏も素晴らしかったが

率直に響きの美しさと歌の妙味は今公演に明らかに軍配。















結論、響きへの拘りがここまで執念深くなると

「響きで魅せるマーラー」というのも最適解の一つと納得できた。

観客もそれを察したか素晴らしい集中と熱狂。

終演後はルイージへ盛大なダブルソロカーテンコールあり。


また、ルイージのこの歌心があれば同じく、

さらに角笛歌曲のリート臭さが必要なB定4番は大いに期待できそう。

なお、こちらは2デイズ参加予定。


(続く)

 東京春祭 歌曲シリーズ vol.43

クリスティアン・ゲルハーヘル(バリトン)&ゲロルト・フーバー(ピアノ) II

@東京文化会館 小ホール 2025年3月22日 [土] 18:00開演(17:30開場)

出演

バリトン:クリスティアン・ゲルハーヘル

ピアノ:ゲロルト・フーバー


曲目

シューマン:
 《6つの歌》op.107
  第1曲 心の痛み
  第2曲 窓ガラス
  第3曲 庭師
  第4曲 紡ぎ女
  第5曲 森で
  第6曲 夕べの歌
 《ケルナーによる12の詩》 op.35
  第1曲 あらしの夜の楽しみ
  第2曲 愛の喜びよ、消し去れ
  第3曲 旅の歌
  第4曲 新緑
  第5曲 森へのあこがれ
  第6曲 亡き友の杯に
  第7曲 さすらい
  第8曲 ひそやかな愛
  第9曲 問い
  第10曲 ひそやかな涙
  第11曲 だれがお前をそんなに悩ますのだ
  第12曲 古いリュート
 《3つの詩》 op.119
  第1曲 小屋
  第2曲 戒め
  第3曲 花婿と白樺
 《ガイベルによる3つの詩》 op.30
  第1曲 魔法の角笛を持つ少年
  第2曲 小姓
  第3曲 ヒダルゴ(スペインの郷土)
 《6つの歌》 op.89
  第1曲 夕べの空は荒れて
  第2曲 秘密の失踪
  第3曲 秋の歌
  第4曲 森との別れ
  第5曲 戸外へ
  第6曲 ばらよ、ばらよ
 《リートと歌 第4集》 op.96
  第1曲 夜の歌
  第2曲 松雪草
  第3曲 あなたの声
  第4曲 うたわれて
  第5曲 天と地


[ アンコール曲 ]

シューマン:

 歌曲集《ミルテの花》op.25より

  第17曲 ヴェネツィアの歌1

  第25曲 東方のバラより

 ロマンスとバラード集第2集 op.49より 第1曲 二人の擲弾兵





昨日のアンドラーシュ・シフに続き、

その道を究めた世界最強を愛でる夢のような一週間の掉尾を飾るのはゲアハーハー。


今日は水曜日のリーダークライスを中心に据えたファンタジックなプログラムに比して

『ケルナー歌曲集』や『ノインの6つの歌」など

詩の内容としては俗世を歌ったものが多い印象。


多分プログラムの好みとしては水曜日で、

別にユスティヌス・ケルナーの詩自体は嫌いではないのだが、

なんとなく浪曲調で、まあそれが多くの作曲家がリート造りにとっつきやすかったのだろうけど

なんというか『リーダークライス』や『詩人の恋』からすると感銘が薄くなってしまうのだ。

(尤も、やっぱりこの2作品は日頃聴き込んでるくらい好き、というのもあろうが…)


さて、シューマンとしては晩年の作となる「6つの歌」から。

やはり繋がりを意識するゲアハーハーとフーバー。

間の取り方など、当然2人で息がぴったりで、詩人もそれぞれ違うこの曲たちの物語を繋いでいく。

特に4曲目の、グレートヒェンの影響拭がたい「紡ぎ女」や最後の「夕べの歌」は絶品で

いつもながらの素晴らしい明瞭なドイツ語と巧みな語りの技術でスルスルと物語が入っていく。

どんなに強奏になっても失われないドイツ語の明瞭さと語り口の爽やかさ。

もはやドイツ語のリスニングとしても一級品であるのだが、

そこに物語と音楽的充実で聴くものの心を振るわせる…。


続く前半のメイン、ケルナー歌曲集。

もう、コレがね、喉からCD音源以上なんですわ。

え?ゲアハーハー様、こんなに熱く歌う人だっけ??

もう円熟味がいよいよ増す響きの良さも加わって、

もういよいよ最強ではないか…。

ケルナー歌曲集では好きで仕方ないStirb, Lieb' und Freud'!が芯のある弱音とフーバーの絶妙なピアノの弦の震わせ方がたまらず

昨日シフ様がバッハで同じことをやっていたのを思い出し、ああ、超一流のリート伴奏者の匠ってみんな同じことできるんだ…と倒れそうになったw

因みにこの曲、みんな優しいタイトル訳だけど、直訳すると「恋も喜びも○ね」だからね。

キモヲタの古いスラング「リア充爆発しろ!」をすでに詠って、曲をつけたシューマンってやっぱ俺たちキモヲタの…(以下自主規制

いやでも本当にこんなヲタと厨二を拗らせた歌詞を真剣に、哀切に明瞭なドイツ語で語るゲアハーハー様を観ていて

いや、我々キモヲタは浄化せざるを得ませんもん…

なんかここら辺で「さよなら全てのナントカ…」と言われた数年前の当ブログメインコンテンツのもう一つ

シン・エヴァンゲリオンを観たときと同じ感情が湧き上がる不思議…。


シューマン凄いや(??)


…さてすみません、本当にアニヲタとクラシックヲタク兼務者ってこんな感じなんです😅


で、後半。

後半もプファリウスの歌曲集やガイベル歌曲集など、やはり世俗的な「人間の世界」に近いものか続く。

この2曲集は続けて演奏されたが、なるほど自然から人間への橋渡しというか。

…でもこのガイベル歌曲集はそこはかとなくBL臭がすると言うか、

ここもなんと言うかシューマンのサブカル臭が逆に私の「あちら側の血」をたぎらせて妙にハラハラする。

…また、ガイベルの詩って、難しい表現がなくどストレートなんですよねえ。

Nur ein Lächeln wird zum Preise(主人の微笑みこそ私の褒美です!)が小姓が呟くとか

う〜ん。

それをまたちゃんとゲアハーハーが高く澄んだ無垢な声で演るのが生々しい…。

ちょっとここら辺は聴いてて苦笑い😅

腐女子の皆様、こちらです…!!

(お、副文化研っぽくなってきたwww)


すみません遊びました。

さて、後半私が最も好きなのは『ヴィルフリート・フォン・デア・ノインによる6つの歌』であって、

ああ、ついにこれがゲアハーハー様の語りで聴けるのか…と思うと始まる前から心拍数上昇。

フォンデアノイン自体もシューマンと同世代の流行詩作家ではあるが、

特にIns FreieからRöselein, Röselein!の畳み掛けが見事に繋がって、そうか!と言う物語の構成には舌を巻いた。

この最後の「バラの歌」本当に春を思わせる時節柄ぴったりの歌。

思わずうっとりとしてしまう。


ここで結構満足してしまい最後の作品96が入って来ず、ちょっと惜しい感じがしたが、

2曲目のSchneeglöckchenの物語にまた聞き入る。

日本語だと松雪草と言うらしい?が、これはもちろん掛け言葉で

「雪を待つ」の意味。

その雪(冬)を待つ「松雪草」が結構辛辣な言葉を投げかけたりと、ちょっと面白さも有り

今日はどちらかと言うと人間くさいリートが並んでいたかな。

時に笑いそうになるような語り口もできるゲアハーハーには脱帽。

最後まで聴き切ってフラフラになってしまった。


…う〜ん、贅沢極まるリーダーアーベント2日間だった。






最後サイン会並んでしまったw

やっぱりキモヲタは「すす、すっごく良かったです!!汗汗」しか言えず

フーバーさん「ありがとう😅」と苦笑い。

ところでなんでシューマンではなくマーラー買ってるんだ??と言う時点でもうテンパってるけど、仕方ないね。


ところで、アンンコールにミルテの花来た瞬間、心の中でガッツポーズしたんだけど、また「東方のバラ」って桜の話題にするのが憎い。

この時点で特盛だったが、最後にDie beiden Grenadiere(ナポレオン戦争時代のロシアとの戦争の話)を最後にしたあたり

SPD(ドイツ社会民主党)支持者のゲアハーハーらしいなと思ったのでした。