◎【サントリーホール開館40周年記念】サー・アンドラーシュ・シフ  ピアノ・リサイタル2026

2026年4月1日(水) 19:00開演@サントリーホール 大ホール


出演

ピアノ:サー・アンドラーシュ・シフ


曲目

J. S. バッハ:フーガの技法 BWV 1080


(アンコール)

J. S. バッハ:半音階的幻想曲とフーガ ニ短調 BWV 903

J. S. バッハ:ゴルトベルク変奏曲 BWV 988 より「アリア」

J. S. バッハ:平均律クラヴィーア曲集 第1巻 第1番 前奏曲とフーガ BWV 846 ハ長調

J. S. バッハ:イタリア協奏曲 BWV 971 





すでに2週間近く経ってしまっているが、それでもなお色褪せ得ぬ音楽体験。

これ程まで心に残る演奏というのは一生に幾つあるかどうか…。

そのレベルの至高の音楽会であった。


今回のアジアツアーで唯一、東京公演のみ《フーガの技法》がプログラムに組み込まれた。

本来であれば当職の本格的な閑散期前のプチ繁忙期の只中であったが、

無理を言ってシフトを替わってもらい、何がなんでもサントリーホールへ!

そもそもシフの膨大なバッハ録音の中にあって、フーガの技法は未だに録音がないという特異な作品。

シフ曰く、フーガの技法は70を超えてからでないとレパートリーに組み込まないと決めていたそうで

(これはプログラムノートにもあり、事前情報としても有名な話)

シフ・ファンからしても謎多き奥の院的なプログラム。


…はてさて一生に聴けるチャンスが今後来るか?

ということで無理を押して入来。


結論は冒頭の通り。


もはや文に起こすことも烏滸がましい、筆舌に尽くし難い芸術の極致であった。

ここから先は備忘も兼ねた細かい気づきの乱筆なメモがわり。


今日の開始前の本人アナウンスは「曲終了後に静寂を」という、フライング拍手を厳に慎むよう促すもの。

そもそもこの《フーガの技法》を聴くためにこのホールを満杯にした(ここまできっちりサントリーが満杯になったのを見たのはそうない)

観客たちにそのような狼藉や粗忽を働く者はいないはずである。


冒頭からまるで無色透明の不思議な世界観に引き込まれる。

これまでのシフのリサイタルにもある、世界観に引き込まれて感情を揺さぶられることはあるが

今までと全く違うのが、色彩感の全く感じない、真に幾何学と規律に支配された世界観であること。

でもそれが、本来難解とされる同曲の特性を全く感じさせない超自然体で観客全体を引き込むのである。

ちょっとしたブラックホール。


そして今回はこの色彩感と併せて強く印象に残ったのが「推進力」


2曲目のコントラプンクトゥスIIから付点が歪に絡み合う、これぞバロック!というなかで

この付点が曲を前へ前へと進める力をこめていた気がした。

この付点の扱いは弾き手によってどうしてもばらつきがでがちな印象があったが、

冒頭の入りの色彩から、時間軸の緩急になり曲全体を構造物にするような仕掛けになっているようなだった。

同じことを中盤のコントラプンクトゥスⅧ(この指の回り具合には絶句…!!)→「12度のカノン」→コントラプンクトゥスⅨの圧巻の雪崩こみからも感じて、

とても一時間半を要する巨大曲に思えない、そして難解といつも言われているこの曲を絶対に飽きさせない仕組みが最後まで続く。


…そう、彼のバッハはどんな瞬間でも絶対に聴衆を世界に引き込んで飽きさせない。


飽きる、という言葉を使ってしまうのが不適切と思ってしまうぐらいもはや神聖な芸術であるのだが。

いや、それでも敢えていうとやはりアンドラーシュ・シフの芸術の裏側には

彼のライブの人としての「人を楽しませることのこだわり」なのか。

つまり常々彼が否定する「エンターテイメント」という言葉がどうしても過るのである。


だってこんなにも難しく、そして謎多き未完のままこの世に遺されてしまった《フーガの技法》


それを現代の聴衆に、現代ホールの極致であるサントリーホールで、

しかも使用するピアノはいつもの彼の愛器であるベーゼンドルファーではなくて

これまた現代の最も市場に流布するスタインウェイを使うという点。

まさに現代に生きる私たちに最高の素材で「《フーガの技法》はかく再現されるべし」

というのを具現化し、最良の状態で咀嚼し聴衆に提示してくれたような気がした。


後に残ったのは極上の感動のみ。


最後の【B-A-C-H】の音形が現れた瞬間「これで終わってしまうのか…」と

心底この瞬間に終わりが近づくのを心底惜しんだ。

頼むから終わらないでほしい、そう強く願ってしまったのである。


恥ずかしい話、肩を振るわせ泣いてしまった。


そして《フーガの技法》で終わることなくいつものようにたっぷりアンコールを大盤振る舞い。

最後のイタリア協奏曲は全曲弾いてくれた。

正直これには流石に《フーガの技法》で押しつぶされかけた気持ちを救ってくれて、

さわやかに会場を後にすることができた。

…こういうところまで含めて、やっぱり現代最高の芸術家でもあるが

生粋のライブの人、エンターテイナーであるのだなと。

またそれ以上にバッハ芸術を現代に至高の形で具現化する伝道師、奇跡の人である。

彼の生きる同じ時代に居合わせたことを心の底から感謝したい。







サー・アンドラーシュ・シフ ピアノリサイタル


2026年3月20日(金・祝)

開場 14:20

開演 15:00

@札幌コンサートホールKitara 大ホール


プログラム
演奏曲目は、シフ本人がステージ上でトークを交えながら発表いたします。


(以下公式発表ではないが札幌公演のセットリスト)

ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(※以下バッハ):ゴルドベルク変奏曲 BWV988より アリア

バッハ:カプリッチョ《最愛の兄の旅立ちに寄せて》BWV992

モーツァルト:アダージョ ロ短調 KV540

ハイドン:ピアノ・ソナタ 第32番 ト短調 Hob.XVI:44 作品54-1

バッハ:フランス組曲 第5番 ト長調 BWV81

ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第30番 ホ長調 作品109


シューベルト:

アレグレット ハ短調 D915

3つの小品 D946から 第1曲 変ホ短調

即興曲 変ト長調 D899-3

ハンガリーのメロディ D817

3つの小品 D946から 第2曲 変ホ長調

楽興の時 D780から 第3番 へ短調

3つの小品 D946から 第3曲 ハ長調


(※以下公式発表のアンコール)


・ショパン:ワルツ イ短調 作品34-2
・ショパン:マズルカ ハ長調 作品24-2
・ショパン:マズルカ イ短調 作品17-4
・モーツァルト:ピアノソナタ 第16番 ハ長調 K.545より 第1楽章
・J.S.バッハ:イタリア協奏曲 ヘ長調 BWV971より 第1楽章
・ブラームス:インテルメッツォ 変ホ長調 作品117-1
・メンデルスゾーン:無言歌集 第6巻 作品67より「紡ぎ歌」
・シューマン:「子供のためのアルバム」作品68より 楽しき農夫


…定番のもはやここまで書くのに疲れたww

記憶があやふやだったり、興奮の中で色々おぼろげだったりするのであくまでも参考まで。

公式が後日発表するらしいので、そちらを参照されたい。




さて、2時間45分。今回は前回のソロリサイタル3時間に比してさらに短くなったが

ここ数年、時に4時間越えで引き続ける、(主に聴く方にも)優しくない音楽会だったため

まあ本人にも途中で堪え兼ねて出て行く聴衆の物音で気分を害するよりも

この程度の時間が限界と考えてのことか?

はたまた本人の体力の事を考慮してか??

…一昨年の「いずみホールアラーム事件」を体験している者にとっては明らかに前者であろうが。


シフらしい、本当に考えられたプログラムであるのはさりながら、

今回の音楽会を一言だけで表現するなら


「楽しさの先の何か」


とでも言うだろうか。


前半はここ数年シフがリサイタルで取り組んできた定番曲を並べたシリアスモード。

(モーツァルトのアダージョだけは初聴きかな?)

全く弛緩する事ない、彼のピアニズムの極致を体験する。

で、特に今回、最近ではお馴染みの彼の日本語でのMC(ちなみに奥様は日本人の塩川悠子女史)の中で

多分毎回言ってはいるのだろうが「音楽を楽しみましょう」と言う言葉がなぜか冒頭霊感を得てしまった。

これは後半に伏線が回収されるのではあるが…。

それにしても1曲目のアリアからいつものようにぐいーん、とシフの世界に引き込まれすでに涙が出そうになる。

そして最後のベートーヴェンの第30ソナタに至って、いつも以上に柔和で暖かな表情づくりを目にして

もはやこの芸風は神仙の領域に達しているのではと思うほど、悟りの境地。

でもその先に広がるのは多分作曲家につながる大自然であって、宇宙であって、しかも人の姿形や情までが

心象風景に登場するような表情の豊かさで、俗世に生きる聴衆をつなぐような。

…あぁ、尊い!いつの間にか拍手ではなくて合掌🙏

※いつもこんな感じです。


後半は驚いたのは一昨年に続きオールシューベルト!

一昨年は幻想ソナタまる一曲弾いて、MCで曲目発表された瞬間鼻血が噴出すると思ったが…!

今回大興奮してしまったのが、中央に配置された十八番『ハンガリーのメロディ』…!!


…いや〜とうとうこの時が来た!という、前から聴きたかったシフの『ハンガリーのメロディ』


しかし小品集の後半は、シフの音楽会でこんなにも楽しいと感じたのは初めて。

で、あの前半の霊感に繋がるのである。

ちなみにプログラムのコラムの中にも「フモール」(ユーモア)が題材としてあり

今回のツアーのコンセプトなのだろうと思ったところで

日本のツアーファイナルが最も難解な『フーガの技法』なのだから、一体どう言う境地に達するかはもはや想像を絶する。


とにかく楽しそうにシフも弾く。

有名な楽興の時を弾き始めるときに、いたずらっぽく「ニヤ」っと口元が動いたのを見逃さなかった。

時に厳粛に聴衆にも聴く姿勢を律するよう促すシフがこんな表情をするのには驚いたが。

でも底抜けに楽しい、多分ウィーンのサロンと酒場の絶妙な中間を行く

B級スレスレな歌と踊りの、清濁併せ持つ前半とは対照的な人の世の愉しみ、的なものがそこにあった。


アンコールはショパンコンクールに全力で苦言を呈していた彼が弾くショパンから。

「ホンモノのショパンはこれだぜ」という、なんのいうか彼の鋭い舌鋒を体現したかのような鋭いワルツにマズルカ。

一昨年もショパンのワルツはアンコールで弾いてくれたが、いや今回の鋭さは一体どういうことか。

ちょっとショパン弾きの血か、『ハンガリーのメロディ』に繋がる東欧への郷愁か、覚醒してしまった感に

あっけに取られ、また大興奮したところ、

こちらは定番のモーツァルト第16ソナタを弾き始めた瞬間、脳は耳から「楽しい!」と知覚するのに

なぜかポロポロっと涙が…。

自分でも驚いてしまったのだが、「楽しい」を超えた先に何か感じるところがあったのかもしれない。

またここからブラームスのインテルメッツォとか、これはこれで泣かせにきていてあざといけどさあ…


アンコールだけでも1時間弱。

凄まじい音楽体験がまた体に刻まれてしまった…。


最後全ての曲を引き終えた後、後ろのご婦人がニコニコしながら

「音楽って、いいね」と呟いたところでまた泣きそうになってしまった。


そう。音楽って、良いのである!

心の底から首肯しながら会場を後にした。





ちらっと彼が見せた、すでに彼は帰らないと宣言した祖国:ハンガリーへの郷愁からか、

その日はグーラッシュでも食べたいと思ったが当然札幌にあるはずもなく…


グーラッシュに似たもの(??)を食したww

絶品!ターメリックの味。

そういえば自分も在墺時代日本のカレーを食べたくて仕方なかったときがあったけ?

これもまた郷愁の味?




◎東京都交響楽団 【インバル90歳記念】都響スペシャル(2/16)・第1036回定期演奏会Aシリーズ ※2公演参加

2026年2月16日(月) 19:00開演/サントリーホール

2026年2月17日(火) 19:00開演/東京文化会館


指揮/エリアフ・インバル
ソプラノⅠ/ファン・スミ
ソプラノⅡ/エレノア・ライオンズ
ソプラノⅢ/隠岐彩夏
メゾソプラノⅠ/藤村実穂子
メゾソプラノⅡ/山下裕賀
テノール/マグヌス・ヴィギリウス
バリトン/ビルガー・ラッデ
バス/妻屋秀和
合唱/新国立劇場合唱団
児童合唱/東京少年少女合唱隊


マーラー:交響曲第8番 変ホ長調《千人の交響曲》








インバル×都響のマーラー8番は彼のプリンシパル・コンダクター(現在は廃位?)の就任記念公演以来18年ぶり。

当時は学生会員で「インバルがシェフになって都響でマーラーを振る!」というだけで確かB定期の会員になっていたはず。

後に学生オケの練習が忙しくなりすぎて辞めてしまうのであるが…。


18年前の演奏の時はとにかく大興奮でブルブル震えていた。

そのまま興奮冷めやらず、出待ちしてインバルにサイン貰いに行ったっけw

…という記憶だけなのだが。


場数も増えたオッサンの時分での感想はいかに…!?

と考えながら、逆に色々、これは考えていいものなのか??というのが正直な結論かもしれない。


とにかく圧倒された!

近年のマーラー演奏では、さすがインバルしかできない史上最高のマーラー8番!!

特に2部からはブルブル震えながら聴いていたぐらい感動しているのであるが。

どこがどう、こういうふうに良いんだよ!と総括を求められるともはやよく分からない。


確かに今回特筆すべきは特に声楽が良く、ソリストは本当にそれぞれ渾身の出来栄えだった。

特にソプラノ1番のファン・スミはすっかり気に入ってしまい、ぜひ彼女でマーラーのリートを引き続き聴きたいという発見もあったし、

(2部の罪深き女のソロは思わずその澄んだ声に泣きそうになった)

合唱は今回の同行者の方と「新国立劇場設立以来のみを結んだ!」と頷き合ったのではあるが。


とにかくそこにインバルの至芸があって

彼亡き後はもしかして世の中からマーラー指揮者というジャンルがなくなるかもしれないと思いつつ。

とにかくマーラーの音楽は偉大だ。

それ以上を語るのは烏滸がましくなってしまった。

正直、このブログを書きながらも震えは止まっていないし、

仕事が繁忙期を明け、思い切って2日間休日をとって

もしかしたら一生のうちのすごいモニュメントを刻んでしまったのかもしれないと思いつつ。
















表題の件です。


今年は去年にもまして「減らす減らす!」と息巻いておいて、音楽会の数は昨年の61件から63件に増加。

主な要因としては今シーズンよりN響は定期ABC全て会員のフルスペック。

さらに新国立Zチャレンジによりオペラが増加


…ま、来年に向けてちゃんと、本当の意味でN響主軸を徹底し、

無駄な出費を抑えた財政健全化を目指したいと思います😅


さて、それでは今年は先にトップテンの発表から…!




①アンドラーシュ・シフ×CAB バッハ:ピアノ協奏曲集

②ルイージ×N響 フランツ・シュミット:交響曲第4番 他

③ゲアハーハー×フーバー 東京春祭;シューマン歌曲集 ※全2夜

④ビシュコフ×チェコ・フィル ショスタコーヴィチ:交響曲第8番 他

⑤尾高×大フィル エルガー『ゲロンティアスの夢』

⑥デュトワ×N響 『ダフニスとクロエ』全曲 他

⑦内田光子 ベートーヴェン後期3大ソナタ

⑧ルイージ×N響 マーラー:交響曲4番 他

⑨尾高×読響 エニグマ変奏曲 他

⑩ブロムシュテット×N響 『讃歌』 他


…以下選考理由など。


⑩ブロムシュテット×N響 『讃歌』 他

https://x.com/werther_zu_2d/status/1979504815475675490?s=61

 

 讃歌マニアとしては元GHOカペルマイスター:ブロムシュテットの讃歌を

しかも最良のコンディションで聴けて感無量。

ここ数年何故か讃歌を聴く機会に比較的恵まれたものの、今年の讃歌は本当に心温まる素晴らしいものであった。

前半の詩篇交響曲もブロムシュテットの驚くをど切れ味の鋭い解釈には驚愕。

この人は98歳にして常に進化している。まさに奇跡の人。


⑨尾高×読響 エニグマ変奏曲 他

https://x.com/werther_zu_2d/status/1922986998429585835?s=61

 

 もう何も付け加えることのない、存命中エルガーメダルを所持する世界最高のエルガー指揮者のエニグマ。

これ以上望むものがあるというのか?

彼のエルガーを聴くことは私にとっては生きる活力なのである。


⑧ルイージ×N響 マーラー:交響曲4番 他

賛否分かれるルイージのマーラーであるが、今回の4番は歌と響きとデモーニッシュさに溢れた快演!

ひたすらに幸福に満ちた美音に酔いしれた。

欧州公演に持って行くN響の気合いを感じたものの、ルイージ×N響の進化はここから先だぞ、という展望もちらっと予感させることにもなった。


⑦内田光子 ベートーヴェン後期3大ソナタ

https://x.com/werther_zu_2d/status/1983870713552674946?s=61

 

 この人のピアノの音をずっと聴いていたい…!

ベートーヴェンの駆けた人生をなぞるそうな苦悩と希望を表現し切った堂々たる芸術。

いかに内田光子が作曲家に敬意を払っているかがわかるひたすら尊い演奏であった。


⑥デュトワ×N響 『ダフニスとクロエ』全曲 他

https://x.com/werther_zu_2d/status/1989591382470922569?s=61

 

 職人の十八番の極致!

これ以上のダフクロを聴けるのだろうか?

デュトワの日本の聴衆への愛着も感じられる感動的な公演であった。

ずっと日本に足を運んでくださいね、マエストロ。


⑤尾高×大フィル エルガー『ゲロンティアスの夢』

https://x.com/werther_zu_2d/status/1910694531139592316?s=61

 

 9位のエニグマに続き尾高さんの世界遺産級のエルガー。

彼はエルガーの使徒としてこの先もずっと温かみのある、しかし飾り気はない、

それでいてじんわりと心に残る音を紡ぐのだろう。

尾高さん、長生きしてくださいね。


④ビシュコフ×チェコ・フィル ショスタコーヴィチ:交響曲第8番 他


 

 これもやや思い出補正が多少あるものの、正直近年では井上道義に匹敵するかそれを超える凄まじいショスタコーヴィチだった。

ショスタコーヴィチメモリアルイヤーを飾る堂々たる、そして確固たるビシュコフの解釈に導かれたチェコ・フィル!

この公演の2日前に聴いた『我が祖国』も充分心に残る素晴らしい演奏だったものの

このショスタコーヴィチの凄演に吹っ飛ばされてしまった。それぐらい強烈な演奏。

またチェコ・フィルの個性ある美しいビロードの弦は

没個性的になった欧州のオーケストラにあってもはや超貴重な存在である。


③ゲアハーハー×フーバー 東京春祭;シューマン歌曲集 ※全2夜

やっとゲアハーハー様がコロナ明けて満を持してのシューマン・リーダーアーベント!

正確なディクション、時に伴う劇性と激情。

一つひとつの言葉が心に残る最高の歌曲の夕べ。

頼むからもっと日本に来てください!!


②ルイージ×N響 フランツ・シュミット:交響曲第4番 他

https://x.com/werther_zu_2d/status/1966821153743192540?s=61

 

 正直これはほぼ1位タイ。

1位はほぼ思い出補正ですからw

ルイージ×N響の4シーズン目の驚くほどの進化を証明する圧巻の名演であった。

で、来シーズンのオープニングも同作曲家の『七つの封印の書』というのだから背筋が凍るほどの期待である。


①アンドラーシュ・シフ×CAB バッハ:ピアノ協奏曲集

やっぱり思い出補正ってあるんだけど、

子供の頃から愛奏したバッハ。

聴き専になっても、やっぱり鍵盤音楽におけるバッハ音楽は自分にとってのモニュメント。


そんな中高校生のとき出会ったシフのピアノ協奏曲集。

あれから留学中のグラーツで彼のディアベッリを聴き涙を流し、

彼の来日の度に会いに行くようになってから久しい。

しかしこれ程までに心を揺さぶられる音楽があるかと言われればそうない。

そんな今年最も心に残った演奏会。

協奏曲が全曲終わった後に、

「お願いです。ゴルドベルクのアリアをお願いします…!」

と祈った次の瞬間に弾き始めたアリアを聴いて号泣。

今書きながらでも思い出して感極まってしまう…


【番外編】ルイージ×N響 サン=サーンス:交響曲第3番 他

https://x.com/werther_zu_2d/status/1996549353474015680?s=61

 

 いろんなことを思い出してしまい、涙が止まらなかった音楽会。

私がプレイヤーとして最後にプルトツとして演奏した曲。

その時の指揮者は今年亡くなられた汐澤安彦先生であった。

不死身と思っていた先生が急死されたのは今年の初め。

そんな汐澤先生のお葬式に伺ってもにわかには信じ難く、茫漠とした思いが去来するばかり。

しかし、この演奏会、オルガン付きの終曲でぐーんとチャージをかけたルイージの姿を見て、汐澤先生のあの振り姿が突如フラッシュバック!

拍手のさなかボロボロと嗚咽を漏らしてしまった。

何というか自分の青春の一角に汐澤先生という大きな存在が居たんだと身にしみて感じました。



…はい、ということで

湿っぽい感じに締めくくりますが以上です。

来年はますます期待募るN響に特化していくことになるのかもしれません。

まあ判りやすいN響信者として、クラシック桟敷のお歴々の皆様に

一層のご指導ご鞭撻のほどを宜しくお願い申し上げまする。

皆様も良いお年をお迎えください。



◎NHK交響楽団/ファビオ・ルイージ[首席指揮者]/リーズ・ドゥ・ラ・サール[ピアノ]

2025年5月5日(月・祝)16:15開場/17:00開演@所沢市民文化センター ミューズ アークホール


NHK交響楽団 

ファビオ・ルイージ[首席指揮者] 

リーズ・ドゥ・ラ・サール[ピアノ]


《ヨーロッパ・ツアー記念プログラム》

武満徹:3つの映画音楽

グリーグ:ピアノ協奏曲 イ短調 Op.16

ブラームス:交響曲第4番 ホ短調 Op.98


【ソリストアンコール】シューベルト/リスト編:音楽に寄せて

【オーケストラアンコール】ベートーヴェン:交響曲第8番から 第2楽章




今年ゴールデンウィークは遠出をせずにせっせとN響欧州遠征一人壮行会w

でも私がルイージ×N響に霊感を得て、「シェフになって欲しい!」と思った伝説の(?)ブラ4が再演されるというのだから行くしかないw

ちなみにかれこれ聴いたのは8年前だとか!ビックリw


 

あの頃は若くて、パーヴォ・ヤルヴィに鬱憤が溜まっていたらしい。

 

 

若い頃の自分辛辣wwやっぱ若い頃の自分、尖ってますねえ。叱ってやりたいなww

やっぱり「ちょっと苦手だな…」と思っても粘り強く聴くのは大事らしい。

その後の手のひら返しは当ブログを参照されたいw


さて、前半は事前の曲目発表では「ほか」とされていて、薄々やって欲しかった欧州遠征Dプロ:

プラハ、ドレスデン、インスブルックで披露される武満徹の弦楽のための『3つの映画音楽』と武満徹では最もポップな演目。

これがもうビックリ!!

実はあんまり外国人指揮者のやる武満に感心したことがなくて、

代表例がサイモン・ラトル。

あー、やっぱ日本的なああいう侘びとかサビとか、苔むした湿気と竹林の芳香って再現できないよな、と。

それが今回、なるほどこういう攻め方かと感心した。

例えていうなら「コッテリ濃厚ジェノヴェーゼ(シェフのお袋の味)を和風出汁、魚醤、紫蘇と

和の食材をふんだんに使い、芳醇な芳香も楽しめるよう仕上げました…」的な創作料理的な武満。

これがまたN響の弦セクションという東洋最高の素材の美質を余すところなくふんだんに使う。

そしてルイージ様の美しく滑らかな振り姿は、時に艶やかさを感じさせ、聴衆を魅了して離さない…。

特に2曲目「黒い雨」の葬送の音楽では、よく現れる武満の和声が物凄く湿気を帯びてしっとりと響く…。

やっぱりこの人の根幹には「芳香」が潜んでいて、

多分日本で嗅ぎ取った香りを分析して音に変換しているのか?と思ったほど。

でも3曲目の「他人の顔のワルツ」は明らかに西洋人のふくよかさのそれ。

でもってN響の弦の昨今の柔軟さをそのまま引き出すので、あざとさは全くないのに濃厚な舌触りのみ残るという…。

いやあ、素晴らしい!これには驚いた。

ルイージさん、この独自路線でいいから武満徹沢山演ってくださいな!オネシャス!w

この前プロの終了後、周囲のお客さんからため息と共に「凄い…」とつぶやきが漏れたほど。

これ聴いた上記3都市の聴衆は度肝抜かれるでしょうよ。


続く中プロのグリーグのピアノ協奏曲。

これもリーズ・ドゥ・ラ・サールのピアニズムと不思議なほど噛み合った快演で舌を巻いた。


…え〜、このままラ・サールさんで欧州でも演った方がいいのでは←


ゲフンゲフン


ラ・サールの独奏は膨よかさもあるがとにかく強靭で、情熱一途!ロマンティック!!で伴奏するルイージ×N響に全くビクともしない音造り。

昨年秋山×田久保の名演がまだ記憶に新しいが、打鍵技巧は田久保に一歩譲るもののラ・サールのN響の厚みに全く揺るがぬ姿勢は見事この上ない。

またらサールの膨よかさがルイージの、今日の徹頭徹尾ロマンティックに耽溺する響きにうま〜く接続していく。

見ものはカデンツァと、何より2楽章!

この前のベルクとマーラーでもそうだが異様に弱音に拘るルイージ。

それに発音をハッキリさせて応えるラ・サールの美音…。

う〜ん、この2楽章だけあと100回お替わりしていいぞ!ww

嗚呼…コレも音源化して配って欲しいぐらい…。

こういうのが音楽の一期一会。

本当の醍醐味なんでしょうが…。


それにしてもベルクといい、このグリーグといい、コンチェルト出来過ぎでないか??

こりゃ予定調和なら後半のブラ4霞みそうww


アンコールはAn die Musikのリスト編。

これは先ほどの強靭なグリーグからすると驚くほど繊細。

この人の引き出し面白いなあ。

秋に読響でガーシュウィン演るらしいけど、ちょっと興味湧いてきた。

(ガーシュウィンよりシューマンとか聴いてみたいけどw)


さて、メインのブラ4。

これに関してはリハの短さゆえちょっと荒削りさもあって予定調和的な演奏。

…ともあれ前述の通り、コロナ前の名演宜しく大満足な演奏!

やっぱり第1ホルン福川さん、上手いわ。戻ってこないかなあ←

8年前と違うところは、やはり弦の精度と弱音への拘り、それに応える団員の反応力。

とにかく弦の精度と音の引き出しの多さはちょっと尋常ではない。

弦から色んな音のヴァリエーションが出る。

時にウィンズ、ブラス、オルガン的な音すら(特に4楽章のパッサカリアでは…)出てくる。

…う〜ん、これだけで充分欧州遠征で頭角を表せるのでは…?

少なくとも私はこれと同じ感覚があるにはもはやウィーン・フィルとチェコ・フィルくらい??

(言い過ぎかな。まあウィーン・フィルの弦はちょっと別格…)

そんな弦の凄みを聴かせられたらあっという間に曲が終わってた。

…う〜ん、響きの洗練でねじ伏せましたな…パワープレーっちゃ、パワープレー。


アンコールが有るのが、今日はオルガン横P席だったので譜面をチラ見してわかったが、これは全曲聴いたことのあるベト8。

所沢の聴衆も明らかに前回のブラ2より熱狂。

とは言え収穫は前半2曲かな?素晴らしかった。

これは文句なく欧州で日本代表を名乗れますね。


さて、最後に小ネタ。

前半は欧州のプログラムの都合もあり、B定に続き郷古がコンマスに座ったが

前半終了後、休憩のホワイエで隣にいたご夫妻が

「コンマスカッコよかったね!若いのに良いね」

…でしょでしょ!と言いたくなった。N響自慢のスーパーコンマス。

今日も終始ルイージの熱に呼応して体が動く郷古コンマス。

ここまでN響が熱いオケに成れてきたのも彼の存在は本当に大きいと思う。

彼は本当に日本クラシック界の大谷翔平みたいなもの。

願わくばN響コンマスをもう少しで良いので長く続けてください🙏


(N響欧州遠征本邦公開鑑賞記 完)