◎ ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 アジアツアー2023 東京公演@サントリーホール大ホール 2023年11月25日14:00
管弦楽:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 Berliner Philharmoniker
指揮: キリル・ペトレンコ Kirill Petrenko, conductor
レーガー:モーツァルトの主題による変奏曲とフーガ Op.132
Reger: Variations and Fugue on a Theme by Mozart, Op.132
R.シュトラウス:交響詩『英雄の生涯』 Op.40
R.Strauss: “Ein Heldenleben“, tone poem Op.40
カラヤンフリーク&半分オーストリア人(笑)としては
どーしてもアバド以降のベルリン・フィルが好きになれなかったのが正直なところ。
まずアバドの振るベルリン・フィルが生理的に受け付けず…。
後にルツェルンとか自前?のモーツァルト管とかを振りはじめてようやっとアバドが克服できた感があり、
正直アバドの最盛期はシカゴ時代では…?と時々思ってしまったり。
(アバドファンの方ゴメンナサイ…)
あと、ラトルは正直ベルリン・フィルでちゃんと実演を聞いてはいるんだけど、
正直操縦が抜群なだけで、ロンドン響での感銘が深く…。
ほんと大変失礼ながら、物心ついた時からずっとモヤッとしたものがあった。
しかし、今日の演奏を聴いてどうだろう!
カラヤン時代が帰ってきた、と言うのは烏滸がましいが、
好きだった精緻さや室内楽的でもあり、モダンでいて、そして何よりも歌が上手い
私が長年思い描いたベルリン・フィルを聴けた気がして(?)感無量。
今までそこはかとなく感じていた「ターミネーター的精密機械集団」と言うのはそこに全くない
非常に有機的な音を出せる集団がそこにいた。
まずマックス・レーガーのモーツァルト変奏曲だが、
正直超地味な曲だし、やはりレーガーの中でもよく取り上げられる曲とはいえ
無骨な感じが拭えない曲で、正直曲としてはベックリン組曲のが好き。
…それがどういうことだろう!
一つひとつの変奏にドラマをたっぷりと込め、キャラクターもくっきりとさせる、キリル・ペトレンコの演出力が絶妙。
そして何より節回しが絶妙なのだ。
久々にドイツの歌劇場で下積みをしてきた指揮者然とした、鈍色に輝く節回し。
そして締めくくりのフーガまで、寸分たりとも気の抜けない、なのに安心感のあるドライブには脱帽。
終演後もこの地味な曲が頭の中で、うーん、ドイツ語ではOhrwurmというが、頭にこびりつく。
そして何よりも歌心…!オペラのマエストロの真骨頂。
濃厚さも程よい、硬質な程よい音響構築も素晴らしく、やはり「カラヤンサーカス」を範としたサントリーホールも綺麗に鳴る。
続くメインの英雄の生涯は何のことはない、餅は餅屋なのだ。
ベルリン・フィルの英雄の生涯が世界最高でないはずがない!
しかし、今回圧巻はペトレンコの構築したドラマツルギーの凄み。
歌い方も絶妙に濃厚で、しかも重厚な鳴らし方も
あのサントリーホールの甘い音響で団子にならず、解像度も高いのには驚いた!
最初からゾクゾクするのではなく、物語が完結した終曲でしっかりと多幸感が訪れる
精密さと充足感が「是ぞベルリン・フィルだよね」と言うことで納得。
なお、樫本コンマスの英雄の生涯ソロ、実は二度目だけど、今日はおらが村の大将登場で気合い入ってたな〜。
…まあ、御託を並べましたがね、ちょっと今まで聴いたことのない新しい響きですかね。
ただ、まだこの人、ベルリン・フィルの限界点を狡猾に探ってそうな、絶妙な楽団との間もそこはかとなく感じた。
実はここからものすごいことが起きるか、それはもうちょっと時を積まねばわからないな、と言う感じはした。
やっぱりベルリン・フィルはラトルといいペトレンコといい、操縦の上手い指揮者しかシェフは務まらないなと思いつつ。
《小ネタ》
ちなみに、今日開演前にフラッと譜面台の調整にペトレンコが何気なく舞台に現れたのは驚いた!
やっぱこうなると次はこの人の振るオペラが観たい。バーデンバーデンに行くのが目標になったw