コロナ明け久々の外来オペラ座引越公演。
『トスカ』を初演したローマ歌劇場による引越公演。
ゼッフィレッリ演出による豪華な舞台をそのまま東京に持ち込んだ豪華な引越興行!
しかもカヴァラドッシには三大テノールの後継者との呼び声久しいスターテノール、
ヴィトーリオ・グリゴーロを配置するのみならず、
タイトルロールのヨンチョヴァ、難悪役であるスカルピアにはベテランのブルデンコを配置するという
現代最高の贅を尽くした舞台なのに、
興行元のNBSはU -39とかいう謎の年齢設定で15,000円という異常な爆安価格でチケットを大放出する始末…!!
しかも指定された席は3階のバルコニーA席設定という意味不明な太っ腹!??
神対応すぎて大草原不可避wwwww
しかも会場は世界有数の音響を誇る東京文化会館ですよ??
ということで欣喜雀躍して会場入り。
そして開幕の第1幕。
何なんですか、この王道をいくカトリック大聖堂を東京に再現した豪華極まる舞台は…??
冒頭からグリゴーロのカヴァラドッシが物凄い歌唱を披露するも(ちなみに演技はちょっと大袈裟すぎだったけどw)
堂守のコライアンニがまたベテラン然とした堂々たる道化役で絶妙で、全く主役負けしない。
トスカとの愛の二重唱も立派だったが、やはり1幕の白眉はブルデンコの堂々たる「テ・デウム」であった。
全く威厳を失わない狡猾で、高貴なスカルピアは、私が初めて目にしたレオ・ヌッチの渋みの強い歌唱を彷彿とさせた。
またミケーレ・マリオッティの、頑固さすら感じる伝統ゆかしい棒も立派で、
「テ・デウム」の大司教入場までのタイミングも、スカルピアをたっぷり邪心を歌わせての余裕さは圧巻であった。
2幕はひたすらトスカ役のヨンチョヴァとスカルピア役のプルデンコの丁々発止の心理戦が光る、極めて技巧の高い舞台だった。
個人的にツボだったのはスカルピア役ブルデンコの、全く気品を失わない「スカルピア男爵」の地に足がついた歌唱であった。
所作の一挙手一投足が、「これぞ悪役警視総監!」という堂々たるもので、惚れ惚れしてしまった。
それに感情を絶妙に調整しながらスカルピアをめった刺しにするクライマックスをドラマティックに引き立てるヨンチョヴァのトスカ…!
有名な「歌に生き、愛に生き」はなかなかクールだったが、スカルピアの絶妙な泰然自若さに合わせた感じで、これはこれで良かった。
何より、ヨンチョヴァは千変万化で感情ごとに発声を絶妙に変える、現代然とした絶妙なテクニックをモノにしていて、
これは昔のカラスやフレーニなどは真似できない芸当と感じた。
3幕。う〜ん、今脂が最高に乗り切ったスーパースターテノールの「星は光ぬ」にはぐうの音も出ない。
グリゴーロ、演技は大袈裟なのだが、感情の込め方は、もうこれは当代一としか言えない。
しかも声量でゴリ押しする訳でもないんですよ。
とにかく絶妙な感情を込めて、「嗚呼、カヴァラドッシって無念の死を遂げるのか…」ってのを
イタリア語がわからない聴衆にも伝える情熱があった。
また3幕もゼッフィレッリが巧みに設計したサンタンジェロ城のリアルで美しい舞台がひたすら輝きを放つ。
…何だろう、ここまで贅を極める舞台は今どき稀有では?
こういう舞台を招聘できる日本は、まだまだ捨てたもんじゃない。
最後のカーテンコールはもちろん、凄まじいスタンディングオーベーション…!
またそれを「もっともっと!」と煽ってくるグリゴーロ。
…ああ、こういうスターテノールの最盛期の舞台に居合わせることができて幸せだなあ、と噛み締めながら帰路へ。
ところで最後、マリオッティとグリゴーロが牧童役の、多分N児の団員のソリスト?にブラボーコールをさせていたところに
あぁ、そうか。この人はトスカの牧童役からここまでのスターダムに駆け上がってきたことを忘れてないんだな、
と感じることで、ますますこのグリゴーロというテノールのスター性に納得してしまった。
まあ、これほどの舞台を観たら、もう『トスカ』は良いかなw
また、全体を通じて明るく、南イタリアに近いローマオペラ座オケには
北のロンバルディアの真面目なスカラ座管との違いが如実で面白かった。
開演前のオケピで遊び半分でフルートとトロンボーンが「ワルキューレの騎行」を演り始めたのには笑ったw
そんなこんなで十二分に楽しめた久々の外来オペラ。
日本のオペラ座も、特にドイツものでは善戦してるとはいえ
今日みたいなスターがホームラン争いをするような舞台にはまだ勝てないなと
しみじみ感じた、芸術の秋の始まりなのでした。
ちなみに、帰宅後はこの前手に入った掘り出し物のランブルスコで一人乾杯!苦笑
最高の休日でした。