◎英国ロイヤル・オペラ 2024年日本公演 『リゴレット』(公演初日)@神奈川県民ホール 大ホール 2024年6月22日 15:00


指揮:アントニオ・パッパーノ 
演出:オリヴァー・ミアーズ


ロイヤル・オペラハウス管弦楽団 


マントヴァ公爵:ハヴィエル・カマレナ

リゴレット:エティエンヌ・デュピュイ

ジルダ:ネイディーン・シエラ


ロイヤル・オペラ合唱団





今年前半のハイライト。

去年のローマオペラ座に続き神様仏様NBS様のU39席で確保、18,000円也!

なお、当日までは席がわからない仕様だが、今回も前回同様良席、しかも平土間に通され歓喜!

…もうなんすか、この神チケット😭


ところでなぜこの演目を選んだか?

というのもやっぱりイギリスの歌劇場だし、シェークスピア調というか

できれば(私のような元中欧在住者からすると)西側のオペラ座なんだし

ペレアスとメリザンドというか、三銃士というか、ハムレットといか※累計滅茶苦茶です(爆)

そういう暗めな悲劇を観てみたかった。

で、片や(もちろんこちらも好きだけど)もう一つの演目:トゥーランドットは

去年観たし、なんというかなんだかんだ童話展開なスペクタクルだし

こちらはイタリアの歌劇場にどうしてもお鉢がいってしまいそうだし。

もちろん両方見る選択肢もあったが、流石に予算が限界と仕事が入り見送り。


でも自分の選球眼、当たっていたかも!(自画自賛)

ズバリこの演目を選んでよかったと心から思えた。


まずミアーズの演出に最大の賛辞を贈りたい。

近年、これだけお芝居で緻密な心理描写、キャラクター設定、

さらにはハードの面でも美術、証明に至る微に入り細に入り

一貫性があり、伏線回収まで見事な演出を私は見たことない。


演者の表情、所作まで実に凝っているのにまるで作為がなく舌を巻く。


故に、どの歌手も素晴らしいのだが、いい意味で役自体に埋没しており、自然とキャラが立つ。

パッパーノの棒も音楽で圧倒させるものではなく、あくまで劇の流れを作る超自然体。

ここまで舞台が一つの方向を向いて芝居を造っているのはそうそう出会えるものではないと思った。


特に印象に残ったところをかいつまんで述べるなら1幕のジルダの誘拐のシーン。

公爵の子分たちがジルダの寝床にダミーのぬいぐるみを仕掛けてリゴレットがめくって絶望する伏線が

終幕の瀕死のジルダを袋から出して絶望するシーンに綺麗に繋がったこと。

また、ジルダの「麗しき御名」の妙に淫靡な演技も

「奴の名は罪、我が名は罰」のリゴレットのキーワードに掛け言葉となって伏線が回収される巧妙さ。

マントヴァ公爵の有名な「女は気まぐれ」の第一声に「ズドン」という

コントラバスのアインザッツで、まるで音だけでスポットライトを当てるなど

とにかく音楽の芝居に対する献身が破格すぎることも特筆すべき。


などなど、実に細部を述べ出すとキリがないのだが、

この積み重ねの先にはまさにいつの間にか劇に飲み込まれ

感動の渦に自然と巻き込まれる緻密極まる極上の舞台であった。


初日ということで音楽的充実はまださらに千穐楽までに進化するであろう。

王立の名に恥じない、そしてシェークスピアを産んだDNAが如実に顕れた

渋いながらも秀麗極まる、極上の観劇体験だった。


※写真は前回訪英時の際撮ったROHコヴェントガーデンの外観。この時は休館日で観劇できず…。無事リベンジを果たしたのであった。


追記:公式HPには主役3人のキャスト紹介しか出てなかったため、キャスティング表掲載。地味にジョヴァンナ役のアカマ=マキアも存在感を放っていた。