||Φ|(T|T|)|Φ||    監獄☆日記    ||Φ|(T|T|)|Φ|| -28ページ目

平成16年7月19日(月) 勾留70日目

 さっきまでまったく気づかなかったのだが、今日は海の日で、祝日だそうだ。

 どうりで静かなわけで、なぜ静かかというと検事調べも何もないからだ。

  

 だからといって我々のやることに何か変わりがあるわけではなく、苦痛極まりない退屈な日常だ。

 私はとりあえず、母から来た手紙の返事を書くことにした。

 

 明日も移監はないようだ。移監があるときには領置品の返還手続きがあるし、看守に聞いても教えてくれる。

 

 中国人の取り越し苦労なのではないのか?

 「明日にでも移監の可能性がある」というのを、「明日移監になる」と聞き違えたというような。

 

 昨晩、彼は「日本人大好き」と寝言を言っていたので、今日「日本人好き?」と聞いてみたら、「日本の女の人は、優しくてかわいいから、大好き」と言っていた。


 彼は今日、ガーナ人のジャクソンをジェイソンと言い間違えて、怒られていた。

 

 

 【過去の過ちを振り返って】

 

 当初私にとって勾留生活は「非日常」だった。

 しかしつらさが退屈に変わるころから、もはや勾留生活のほうが「日常」になってしまっていることに、今でも空恐ろしさを感じる。

 

 

 【 移監 】

 

 ネット上では「移管」としているものも多くあるが、正しくは「移監」。

 検察官の移監指揮書によって行われるので警察権限ではないが、警察の捜査を指揮しているのは検察であることから、移監情報はまず刑事に伝えられ、それを伝聞で聞くことで自分の移監時期を知ることもあるし、前日に突然看守から知らされることもある。

 

 


平成16年7月18日(日) 勾留69日目

 俺も含めて4人中3人が、同じ臭いの屁をする。

 同じものを食って過ごしていると、屁まで同じになるのだと思ったのだが、ガーナ人の屁は少し臭いが違うようだ。

 

 ガーナ人と中国人は、日中穏やかに談笑していたから、どうやら仲直りしたらしい。

 

 この時間でまだ伝えられていないということは、明日は誰も移監がないようだ。

 今朝よくよく見てみたら、菓子の時間は日課時限ではなかった。

 課長に文句を言ってしまったので、案外私の移監も早いかもしれない。

 

 私が主任看守を「部長!」と呼ぶのを聞いて、ガーナ人が「あの人課長よりえらいの?」というようなことを聞いてきた。

 私は、「警察官の階級には2種類あって、ひとつは 巡査 → 巡査長 → 巡査部長 → 警部補 → 警部 ・・・・・ と進む」、「もうひとつは会社に似ていて、 係長 → 課長 → 副署長 → 署長 だ」、「主任は巡査部長だが、課長は警部なのだ」と教えたら、よく納得していた。

 なぜそんなこと気になるのか? と聞くと、「若いころ ditective(刑事) になりたかったんだ」と答え、照れて、笑った。

 

 

 【余白メモ】

 

 浜田寿美男 取調室の心理学  平凡社新書

 

【過去の過ちを振り返って】


 

 「やったことをやってないという人」がいても、「やっていないことをやったと言う人」がいるのはなぜだろうと、私もずっと思っていた。

 だから回ってくる新聞で読んだ書評に大きな関心を抱いてしまい、母に差し入れをお願いした本でもある。

 実際に当時の被疑者が書いた上申書(現物)や、法廷でのやり取りの再現などが多用され、読み物としても面白い。

 

 

平成16年7月17日(土) 勾留68日目

 洗剤が今日の分でなくなるから買って、と朝一で担当さんに言われた。

 次の購入日に買わなければならないということだ。

 お菓子をたくさん食べた。

 

平成16年7月16日(金) 勾留67日目

 今日はタバコも1番め、風呂も1番めだった。

 

 中国人が拘置所行きを、刑事から告げられたそうだ。近々にも、だそうだ。

 また義兄が来て怒られたというが、今日はTシャツ1枚とパンツ4枚を差し入れてもらっていた。

 1万円も入ってきていたが、それらはすべて本人持ちだそうで、キャッシュカード6枚を宅下げしていた。

 

 

 【余白メモ】

 

 母から手紙あり

 

 

 【 スピッツ 】

 

 今日は、私のいちばん好きな、スピッツについて。

 聴いたきっかけは、大学時代の彼女が好きだったから。

 

 スピッツの世界観は暗い。

 「片隅に捨てられて呼吸をやめない猫」とか、「削れて減りながら進む」とか、大前提的に生きることは苦しいことだという考えているのが感じられる。

 これはやはり、草野正宗のトラウマに起因するものだろう。彼は何も語らないが、内面に抱えているものには興味がある。

 またボーカル上の最大の特色は、何と言っても「ヴィブラートをまったく使わない」ということに尽きると思う。これは裏を返せば歌唱テクニックではなく、声質のみで勝負していることになる。

 

 「さわって変わって」「水色の街」あたりは、一時期の楽曲に比べれば、シングルとして出すほどのクオリティとも思えず、ずいぶんパワーが落ちたな、と思わざるを得なかった。

 

 しかしその後の、「スターゲイザー」「正夢」「春の歌」と続く快進撃は、私の考えがまったくの誤解であったことを思い知らされるものになった。

  

 「Way of Difference」はGLAYがあいのりのために書き下ろしたそうだが、やはり突貫工事のずさんさは否めず、春を感じさせる「こんな風に木漏れ日の中にいると」というフレーズと、冬の到来を思わせる「もうすぐここにも雪が降り積もり」というフレーズがどうにもチグハグで、結局季節のイメージが湧いてこない(しかもリリースは春先だったのではないか。これから初夏を迎えるというのに雪はないだろう)。

   

 「スターゲイザー」も、あいのりのタイアップ曲だが、これも依頼を受けて作られたものなのだろうか。

 もしそうだとしたら、曲作りのセンスとノウハウには、すさまじいものがあることを感じさせられる。

 曲の内容が、番組内容を、見事に表現しているからだ。

  

 スピッツは今後もますます成熟したバンドになっていくだろうが、ひとつだけ心配な点がある。

 それは多くの曲のテーマが、幼い恋愛感情にまつわるものだからだ。

 現時点で36歳、彼らはいつまで、中学生の恋愛のような曲を歌い続けられるのだろうか?

 

 

 【 Yahoo! ミュージック】

 

 しかしこのアーティスト情報というのは、誰が書いているんだろう。

 ライターの思い入れが激しく、GLAYをけなしたり尾崎を持ち上げたり、世間一般の大方の評価とは異なっているし、また合い間に勝手に作ったフレーズを臆面もなく挿入する図太さは賞賛に値するが、そこから紡ぎ出されるレビューは、ギャグにしかなっていない。

並べてみればわかるが、 


「わりとフォーキーで清潔なギター・ポップ・バンド」「アグレッシヴにギターが疾駆するパワー・ポップ・チューン」「先鋭的なテイストをもつ音楽とはまったくもって程遠い歌謡ロック」

「ニッポン・カントリー・コミック・ソング」「スラング演歌」

という言葉が独り歩きしている感じを受ける。

TB 梨元勝オフィシャルブログ

 「恐縮です!」が決まり言葉の梨元勝氏。

 氏がテレビで 恐縮です! と言うたびに、日本の多くの茶の間では、「ホントに恐縮してんのか!」というツッコミが入っているだろうことは、容易に想像できる(私もその1人だ)。

 

 しかし芸能リポーターは星の数ほどいるが、私のいちばんのお気に入りはこの人だ。

 例に挙げて恐縮だが、例えば須藤甚一郎には品がなく、冷たく、愛がない。

 しかし最近の梨元氏には、なんとなく「芸能ニュース」と「取材対象」への愛情と思いやりが感じられる。

 

 とにかくサービス精神が旺盛で、「いつかは自分のサービス精神を活かしてホテル経営をしてみたい」と、なにかの雑誌で語っていたのを読んだことがある。

 そのサービス精神が感じられるから、テレビにしてもエロ雑誌の小ネタにしても、梨元氏のものは面白いのだろう。

 

 ブログのきっかけは、サイバーエージェント藤田晋氏への取材時にブログ開設を勧められたから、だそうだが、IT業界の今後の展望とBlogビジネスの将来についてといった取材ではなく、どうせ奥菜恵だろう、という想像がついてしまうところが、なんとも悩ましい。

 しかし「このところ ”若貴絶縁騒動” や ”杉田かおる離婚騒動” などで芸能界が大忙し」、「先月、風邪をこじらせて咳が続いた拍子に腹部の毛細血管が切れ1ℓ近くも内出血」のなか、本当にブログを開設してしまうところが、そのサービス精神の賜物ではないか。

 

 蛇足だが、朝の番組にいっしょに出演していた娘さんもかわいい。

 2人並ぶと、なんかちっちゃくて、華奢で、これが本当に梨元さんの娘? という感じだ。

 

 どうやらトラックバック第1号になるみたい…。

 そこで、梨元さんに逆取材させていただきます。

 

 スーパーモーニング  で、渡辺アナに「当番組を移籍した梨元さんの予想が当たってましたねぇー」と、チラッと嫌味を言われてましたが、朝の番組移籍の真相は??

 

 お答えいただければ幸甚です。 恐縮です!!!

 

 

平成16年7月15日(木) 勾留66日目

 課長に初めて文句を言った。

 業者の都合で購入品が時間に間に合わず、お湯だけ飲んでおやつの時間が終わりになった。

 それはおかしいのではないかといったのだ。

 

 

 【過去の過ちを振り返って】


 あとにあって、おやつの時間は日課時限には入っていなかったことを知り、見当違いのことを言ってしまったもんだと恥ずかしくなった。

 【日課時限】
 
 
 留置場の時間割みたいなもので、法令にその根拠がある。
 例えば時限には「運動」があるが、これを無視して取調べや検察庁には行かせることができず、先に房から出して運動させた後に行かせる。
 
 


 【留置管理課長】
 

 この課長は、「本来なら留置場には冷房もお菓子もいらない。なぜならばそれらは、不起訴になるかもしれない人のためにあるのであって、起訴された犯罪者には必要ないのだ」というようなことを言っていた。
 たしかに、有罪判決率99%の数字から見ればそうなのかもしれないが、被留置者はあくまで「推定無罪」の身なのだということを、忘れてもらっては困る。

  

 【 はるか17 】

 

 ドラマは見ないといいながら、これだけは食い入るように見ている。

 平山あやがかわいい。とてつもなくかわいい。問答無用でかわいい。

 ただ可愛いだけではなくて、演技力も相当なものだ。

 自由自在に泣いてみせ、わめいてみせている。

 脇を固めるキャストもいい。ケーシー高峰、古田新太、杉本哲太、金子貴俊ら、味のある男優がそろい、ドラマ中には、なにげに韓国ドラマのパロディもある。

 平山あやのスクール水着、セーラー服姿など、サービスショットも満載である。

 



平成16年7月14日(水) 勾留65日目

 昨夜は少し眠ってから眠剤を飲んだため、午前2時だった。

 そのせいで今日は眠く、よく居眠りをして、比較的時間が過ぎるのを速く感じて過ごした。

 おやつが、カスタードケーキ1個しかなくなってしまった。

 

 

 【過去の過ちを振り返って】

 

 ガーナ人と中国人が所持金がなかったため菓子が買えず、保険金詐欺と私とで分け与えていたが、人にあげるとすぐなくなってしまう。

 

 

 【 銀行の高利貸し 2 】

 

 

 銀行が高利貸しを始めるという状況には、なるべくしてなったのではないかという気持ちがすることがある。

 

 銀行という会社は、金を貸すことが商売だ。

 借り入れた金と、貸し出す金の金利の差、要するに「利ザヤ」でもうけている。

 そして銀行には、国から注入された金が、ジャブジャブに余っている。

 

 しかし、貸付金利がベラボーに低いものだから、いくら貸し付けても一向にもうけが出ない。

 そればかりか、銀行に金を借りたがっているところは、回収が焦げ付きそうで、銀行が貸したくないところばかりだ。

 財務が健全ないわゆる優良企業は、自前で株式を発行したり、社債を発行したりして、市場から直接金を集めればいいからだ。

  

 持っている資産は価値が大幅に低下して含み損となり、膨大な不良債権化しているから、処分しようにもできない。

 

 また、損失を出せば経営責任を問われ、株主代表訴訟を起こされる可能性もあるが、利益を出す分には、株主は何も言わない。

 こうした複合的な状況が背景にあり、銀行を破廉恥な高利貸しへと駆り立てているのである。

 

 もちろん、無節操な借り入れは個人を破滅へと追いやる。

 だが、国には一向に高利貸しを規制する気配がない。

 申し訳程度に、テレビCMに関する座談会を開いている程度だ。

 

 国には、銀行に収益を上げさせ、さっさと公的資金を返済させて歳入に組み込みたい思惑があるのではないだろうか。 

  

 銀行が高利貸しを始めるという状況には、なるべくしてなったのではないかという気持ちがすることがあるとは、そういうことである。

 

平成16年7月13日(火) 勾留64日目

 今日の調べで、全て終わりだそうだ。

 パソコンも含め、全部押収品、任提物品を返してもらった。

 ○○が私に告訴の構え、とは、驚きの話だ。

  捜査終了となるので、移監されての拘置所行きと公判を待つ身となるが、正直な話こんな暑いさなかに行きたくはない。

 

 刑事と雑談をした。

 「警察官になる気はなかったのか」と聞くので、「一度の人生、窮屈に生きるのは嫌だった」と答えたら、気に入らなかったのだろう、はんっ! と鼻で笑った。

 

 今日、中国人の彼は検事調べだ。

 前回、「この野郎! さっさと中国に帰れ!!」と怒鳴られたそうで、朝から緊張していたようである。

 

 

                  oushuu

              【押収品目録交付書。画像クリックで拡大するよ】

  

 

 【 サラ金について 】

 

 以前、新堂冬樹に関連して、闇金融について書いた。

 今日は、正規のサラ金について書く。

 

 プロミスのCMで、「わたしたちは三井住友銀行グループです」などというアナウンスが流れる。

 

 三井住友銀行は恥を知れ!と言いたい。

 

 DCキャッシュワンを展開する東京三菱銀行、モビットを展開するUFJ銀行も同様だ(SMBCにはアットローンもあったな)。

 

 

 従来は、「銀行は信用審査に時間がかかるが、低金利」「サラ金は店頭貸しだが、高金利」という、ある種の棲み分けができていた。

 また、公定歩合に連動した金利が、銀行金利の当然の原則であった。

 

 しかし、サラ金が出資法上の上限金利である29.2%、銀行ローンがせいぜい1~5%というのの間を取る形で、銀行は利息制限法上の上限である18.0%で金貸しを始めたのだ。

 

 銀行が公定歩合を無視した高利貸しをする。しかも、この超をいくつつけても足りないほどの、低金利時代にだ。

 

 自分たちが0.01%ほどの利息しかつけずにカキ集めた金に、あるいは日銀から無利息で借り入れた金に、18.0%という高利をつけて貸しているのだ。


 しかも、やり方が汚い。

 金を借りて犬を飼う、金を借りて飯を食いにいく、金を借りてハワイに行く。

 それらのことが、至極当たり前のようにアナウンスされている。

 


 重ねて言う。   恥を知れ!!!

 

 

 考えてみれば、住宅ローン、自動車ローンといった目的ローンでは、1%程度の利息で金を借りることができる。

 それを15.0~29.2%などいう高金利で金を借りることなど、キチガイ沙汰だ。

 しかし、借りるアホウに貸すアホウ、同じアホなら貸さなきゃソンソン、とばかりに、金融機関としてのモラルや良識なく金を貸すことは、健全感覚のマヒ、あるいはモラルハザードとしか、言いようがないのである。

 

 しかし、言っても無駄だろう。

 おかしいことをおかしいことだと指摘する、当たり前の感覚でさえ、バブル崩壊以後の長引く不況で、麻痺してしまっているのだ。

 だから私は、恥知らずの銀行業界に、ひとつだけ言っておく。

 

 

 

 貸した金返せよ。

 

 

 銀行業界には、数十兆円の公的資金が投入されてきている。

 公的資金といえば聞こえがいいが、それは我々の税金だ。

 

 

 

 恥知らずにカキ集めた金を、1日も早く、公的資金の返済に回せ!!!

 

 

  

 【 金融情報バンク 】

 

 銀行・クレジットローンはCIC(俗にホワイト情報と呼ばれる)、サラ金はJDB(俗にブラック情報と呼ばれる。ブラックリストとは異なる)という情報機関で金融情報を参照していたが(表向きは多重債務の防止、本当は貸し倒れの回避)、数年前から両者を統合したテラネットというのが運用されている。

 これが何を意味するかというと、銀行はサラ金利用者を、「収支バランスを判断できない無節操な人間」としてしか見ていないので、将来的に住宅ローンを銀行で組もうとした場合に、「はるか昔のサラ金からの借り入れが問題にされ、銀行ローンが組めない」ということもありうるということである。

 

 

平成16年7月12日(月) 勾留63日目

 ここの風呂は2人ずつ入るのだが、古参新参のめぐり合わせで、例の2人が一緒に入ることになった(保険金詐欺と私が先に入ったからだ)。

 中国人は困ったような顔をしていたが、私が少しのぞいてみると、1つしかないシャワーを2人で立って並んで、仲良く(?)使っていた。

 なぜか戻りも2人いっしょだった。

 

 ガーナ人が、「Mr.○(中国人の姓)は汚い。タオルを使わないで、石けんをちんこになするだけじゃないか」と言って(もちろん英語)、笑っていた。



 【余白メモ】


 ベーチェット病


 

 【過去の過ちを振り返って】


 この日保険金詐欺に聞いたところによると、保険金詐欺の奥さんは、1万人に1人の難病といわれるベーチェット病で、亡くなったらしい。

 出会いが学生時代、そのとき相手はバツイチでの学生結婚だったそうである。

 

 「介護があるから、会社も人が残業してるときに自分だけ早く帰るんだけど、そういうことが続くと、なんでアイツだけって話になる。だから会社も辞めざるを得なかった」

 「ステロイドの副作用でパンパンに太って、顔もまん丸になってたんだけど、それをポンポンって肩叩いてやるんだよ」

 「ステーキが好きだったから、ステーキ肉を買って帰って、焼いて食べさせたら、それが喉につっかえて、窒息して救急車を呼んだ。運び込まれた病院の当直医の手際が悪くて、バカ野郎! ここで死んだらてめえのせいだからな! って怒鳴ったこともある」

 

 「こっちも最後は介護に疲れ果てちゃって、病院のベッドで、おまえ頼むからもう死んでくれって、頼んだこともある。もう物があまりわかってないような状態だったけど、向こうもそれはなんとなくわかってたんじゃないかな」

 

 「死んでから、なんか3年ぐらい、胸のあたりがおかしかった」


 13年の闘病と、それに伴う介護は、妻の死によって解放されたが、その後心に開いた穴がふさがらず、仕事に就くこともできなかったため(働く意欲をなくし、意義を見失ったらしい)、彼は「飲み仲間と連日戯れること」で、その心の穴をふさごうとした。

 やがて生活に困り、その金をどうするか・・・と考えたのが、詐欺だったのだという。

 

 消灯から静かになるまでの数十分間、保険金詐欺は中国人に、手でコチョコチョコチョ! とか、ガーッ! とかやって遊んでいた。

 娘が小さいころ寝るときにこうやって遊んでたんだ、と言っていた。未来にひとすじも希望や夢や喜びを見出せないとき、人は過去を懐かしむことしかできなくなるのかもしれない。

 

 亡き妻の忘れ形見である一人娘。その娘に留置場まで突きつけられた絶縁状。

 明るさを装う彼の心情は、いったいどれほどの地獄を抱えていたのだろうか?

  

 この人は、「心の中に地獄を抱えている人間は、自分だけではないのだ」ということを、私に体感的に分からせてくれた人だった。

 

  

 

 【 橋本真也 死亡 】 再掲

 

 いやー、まったく信じられない。40年という人生は、あまりにも短すぎる。

 だがしかし…とあえて続けるが、プロレスラーとしての彼の人生としては、どうだっただろうか。

 

 ガチンコで小川直也にコテンパンにのされた(敗れたというよりこちらの方が的確だ)あとは、小川の軍門に下り、ハッスルハッスル! なんてやっていた。

 小川は、橋本サイドが八百長を申し入れてきていたことも暴露したりして、それ以来どうにも彼の「破壊王」という称号は、色褪せ、うさんくさく見えてしまっていた。

 だからもう、プロレスラーとしての橋本真也は、すでに死んでいたのだとも言える。

 

 プロレスラーとして死に体となったプロレスラーが、かつての栄光と体の故障だけを引っさげて生きていくのは、屈辱で、生き恥をさらす以外の何者でもなかっただろう。

 実生活では、たしか不遇な少年時代を過ごしていたように記憶している。

 

 破壊王としてではない、1人の男としての橋本真也は、なにを思って死んでいったのだろう。

 それを思うと、どうにもやりきれない気持ちがする。

 

 

 【 ステロイド 】

 

 ステロイドは、腎臓の上に乗っかっている副腎の表面、副腎皮質で作られるホルモンである。

 人工的に製造でき、医療用として用いられる。

 強い抗炎症作用を有していて、私はアレルギー鼻炎持ちなものだから、セレスタミンを飲んでいたことがあるし、鼻風邪のときに出してもらったコールタイジンスプレーは瞬時に鼻づまりを解消し、湿疹でもらったパンデル軟膏は、劇的に炎症を鎮めた。

 

 強弱5段階あり、強いものは医者でしか出せないが、弱いものは一般薬としてドラッグストアでも手に入る。

 アトピー性皮膚炎などではもはや第1選択薬でもあるし、若い医者は「切れ味がいい=効果がすぐ現れる」として、使いたがる傾向にある。

 

 しかしもともと体内で産生している物質を、体外から補うものだから、副腎をコントロールする視床下部では混乱が起こり、副腎にはサボリぐせがつくことになる。

 だから長期にわたって連用していると、今度はステロイドを中止したときの離脱症状(リバウンド)が激しく、さらに症状が悪化することもある。

 その意味でステロイドは、「諸刃の剣」とも称される。

 

 またステロイドには、筋肉増強作用を持つものがあり、それは劇的に筋肉を増大・肥大させる(長●剛を見よ)。

 

 転じて橋本であるが、脳こうそくとか、試合中の外傷性くも膜下出血だというならわかる。

 しかし40の人間が、脳幹出血で死亡というのが解せない。

 脳出血(いわゆる脳卒中)は、血管がもろくなった老人に多いものだからだ。

 

 古舘伊知郎は、受身の取りづらい技の犠牲となった殉職であるというような言い方をしていたが、その可能性も否定できない。

 しかしそれだったら、まずは有名なパンチドランカーであった「たこ八郎」のようになるのが先だっただろうし、仮に脳卒中でも、脳幹部ではなく、もっと出血しやすい部位からの出血になるのではないか(脳幹は脳の深層にあり、呼吸や脈拍などを司っている。ここの機能が破壊された状態が脳死。脳出血の好発部位とはいえない)。

 

 個人的には、ステロイドの副作用の疑いが濃いのではないかと思う。

 しかしそれにしたって、ウケる体作りのために使わざるを得ないから使ったのであって、殉職といえば殉職で、もしそうであるならやはり橋本は、プロレスラーという職業に殉じたのである。

 

平成16年7月11日(日) 勾留62日目

 昨夕も晩飯のとき、ガーナ人と中国人が、喧嘩をした。

 ガーナ人は、「I'll srap you ! I'll Srap you !」と激昂していた。

 直訳すれば「お前を平手打ちするぞ」ということだが、意訳すれば「はったおすぞ!」という意味だろう。

 きっかけは些細なことで、「Respect Me ! 」と叫んでいたところからすると、要するに、若い中国人がおっさんのガーナ人を敬わないのがしゃくに障るらしい。

 

 ちょうど配膳のときに騒いでいたので、看守が2人すっ飛んできて「どうしたの?」と慌てていたが(来ても騒いでいた)、英語なので「ジョーク飛ばしてるみたいですよ」とごまかしたら、「そんなふうに見えないよ!」と心配していた。


 2人とも本来は大おとなしい人間なので、座る位置と寝る場所を動かしたから、たぶんこれで収まるだろう。

 この大人しい2人を私は気に入っているので、房の移動や移監がなければよいと思う。

 

 

 【 寝る場所と座る場所を動かす 】

 

 1房には柔道畳が4枚あった。4人入れば1人1畳。

 1枚の畳をそれぞれのテリトリーと決め、一日中ほとんどそこから動かない。足が当たったのすべったのと、トラブルの素だからだ(食事はなぜか2人ずつ向かい合っていたが)。

 自然、隣り合う人と会話するのが多くなる。

 気の合わない同士だと何かとトラブルの種になるので、場所を動かすのは手っ取り早い対処法である。

 しかしなにせ24時間決まったポジションにいるものだから、見える視界や冷房の当たり具合、音の聞こえ具合などに慣れてしまっているので、安易に場所を替わると居心地が悪く、ストレスや不眠に悩まされることになるので、注意が必要だ。