平成16年7月12日(月) 勾留63日目 | ||Φ|(T|T|)|Φ||    監獄☆日記    ||Φ|(T|T|)|Φ||

平成16年7月12日(月) 勾留63日目

 ここの風呂は2人ずつ入るのだが、古参新参のめぐり合わせで、例の2人が一緒に入ることになった(保険金詐欺と私が先に入ったからだ)。

 中国人は困ったような顔をしていたが、私が少しのぞいてみると、1つしかないシャワーを2人で立って並んで、仲良く(?)使っていた。

 なぜか戻りも2人いっしょだった。

 

 ガーナ人が、「Mr.○(中国人の姓)は汚い。タオルを使わないで、石けんをちんこになするだけじゃないか」と言って(もちろん英語)、笑っていた。



 【余白メモ】


 ベーチェット病


 

 【過去の過ちを振り返って】


 この日保険金詐欺に聞いたところによると、保険金詐欺の奥さんは、1万人に1人の難病といわれるベーチェット病で、亡くなったらしい。

 出会いが学生時代、そのとき相手はバツイチでの学生結婚だったそうである。

 

 「介護があるから、会社も人が残業してるときに自分だけ早く帰るんだけど、そういうことが続くと、なんでアイツだけって話になる。だから会社も辞めざるを得なかった」

 「ステロイドの副作用でパンパンに太って、顔もまん丸になってたんだけど、それをポンポンって肩叩いてやるんだよ」

 「ステーキが好きだったから、ステーキ肉を買って帰って、焼いて食べさせたら、それが喉につっかえて、窒息して救急車を呼んだ。運び込まれた病院の当直医の手際が悪くて、バカ野郎! ここで死んだらてめえのせいだからな! って怒鳴ったこともある」

 

 「こっちも最後は介護に疲れ果てちゃって、病院のベッドで、おまえ頼むからもう死んでくれって、頼んだこともある。もう物があまりわかってないような状態だったけど、向こうもそれはなんとなくわかってたんじゃないかな」

 

 「死んでから、なんか3年ぐらい、胸のあたりがおかしかった」


 13年の闘病と、それに伴う介護は、妻の死によって解放されたが、その後心に開いた穴がふさがらず、仕事に就くこともできなかったため(働く意欲をなくし、意義を見失ったらしい)、彼は「飲み仲間と連日戯れること」で、その心の穴をふさごうとした。

 やがて生活に困り、その金をどうするか・・・と考えたのが、詐欺だったのだという。

 

 消灯から静かになるまでの数十分間、保険金詐欺は中国人に、手でコチョコチョコチョ! とか、ガーッ! とかやって遊んでいた。

 娘が小さいころ寝るときにこうやって遊んでたんだ、と言っていた。未来にひとすじも希望や夢や喜びを見出せないとき、人は過去を懐かしむことしかできなくなるのかもしれない。

 

 亡き妻の忘れ形見である一人娘。その娘に留置場まで突きつけられた絶縁状。

 明るさを装う彼の心情は、いったいどれほどの地獄を抱えていたのだろうか?

  

 この人は、「心の中に地獄を抱えている人間は、自分だけではないのだ」ということを、私に体感的に分からせてくれた人だった。

 

  

 

 【 橋本真也 死亡 】 再掲

 

 いやー、まったく信じられない。40年という人生は、あまりにも短すぎる。

 だがしかし…とあえて続けるが、プロレスラーとしての彼の人生としては、どうだっただろうか。

 

 ガチンコで小川直也にコテンパンにのされた(敗れたというよりこちらの方が的確だ)あとは、小川の軍門に下り、ハッスルハッスル! なんてやっていた。

 小川は、橋本サイドが八百長を申し入れてきていたことも暴露したりして、それ以来どうにも彼の「破壊王」という称号は、色褪せ、うさんくさく見えてしまっていた。

 だからもう、プロレスラーとしての橋本真也は、すでに死んでいたのだとも言える。

 

 プロレスラーとして死に体となったプロレスラーが、かつての栄光と体の故障だけを引っさげて生きていくのは、屈辱で、生き恥をさらす以外の何者でもなかっただろう。

 実生活では、たしか不遇な少年時代を過ごしていたように記憶している。

 

 破壊王としてではない、1人の男としての橋本真也は、なにを思って死んでいったのだろう。

 それを思うと、どうにもやりきれない気持ちがする。

 

 

 【 ステロイド 】

 

 ステロイドは、腎臓の上に乗っかっている副腎の表面、副腎皮質で作られるホルモンである。

 人工的に製造でき、医療用として用いられる。

 強い抗炎症作用を有していて、私はアレルギー鼻炎持ちなものだから、セレスタミンを飲んでいたことがあるし、鼻風邪のときに出してもらったコールタイジンスプレーは瞬時に鼻づまりを解消し、湿疹でもらったパンデル軟膏は、劇的に炎症を鎮めた。

 

 強弱5段階あり、強いものは医者でしか出せないが、弱いものは一般薬としてドラッグストアでも手に入る。

 アトピー性皮膚炎などではもはや第1選択薬でもあるし、若い医者は「切れ味がいい=効果がすぐ現れる」として、使いたがる傾向にある。

 

 しかしもともと体内で産生している物質を、体外から補うものだから、副腎をコントロールする視床下部では混乱が起こり、副腎にはサボリぐせがつくことになる。

 だから長期にわたって連用していると、今度はステロイドを中止したときの離脱症状(リバウンド)が激しく、さらに症状が悪化することもある。

 その意味でステロイドは、「諸刃の剣」とも称される。

 

 またステロイドには、筋肉増強作用を持つものがあり、それは劇的に筋肉を増大・肥大させる(長●剛を見よ)。

 

 転じて橋本であるが、脳こうそくとか、試合中の外傷性くも膜下出血だというならわかる。

 しかし40の人間が、脳幹出血で死亡というのが解せない。

 脳出血(いわゆる脳卒中)は、血管がもろくなった老人に多いものだからだ。

 

 古舘伊知郎は、受身の取りづらい技の犠牲となった殉職であるというような言い方をしていたが、その可能性も否定できない。

 しかしそれだったら、まずは有名なパンチドランカーであった「たこ八郎」のようになるのが先だっただろうし、仮に脳卒中でも、脳幹部ではなく、もっと出血しやすい部位からの出血になるのではないか(脳幹は脳の深層にあり、呼吸や脈拍などを司っている。ここの機能が破壊された状態が脳死。脳出血の好発部位とはいえない)。

 

 個人的には、ステロイドの副作用の疑いが濃いのではないかと思う。

 しかしそれにしたって、ウケる体作りのために使わざるを得ないから使ったのであって、殉職といえば殉職で、もしそうであるならやはり橋本は、プロレスラーという職業に殉じたのである。