||Φ|(T|T|)|Φ||    監獄☆日記    ||Φ|(T|T|)|Φ|| -29ページ目

平成16年7月10日(土) 勾留61日目

 ガーナ人と中国人は昨日喧嘩をしたので、仲が険悪になっている。

 一言も互いに口を利かず静かだが、いつまた勃発するかもしれず、保険金詐欺の提案で場所を少しだけ変えることにした。

 

 保険金詐欺

 中国人        

 ガーナ人

 私


 という順番で並んでいたのを、


 ガーナ人

 保険金詐欺

 中国人

 私


 と変え、2人が隣り合わないようにしたのである。


 保険金詐欺は、今調べを受けている件について強硬に否認していたのだが、検事調べでついに認めたそうだ。

 「認めちゃったよ、認めなきゃ娘を証人で呼ぶとか言いやがるからさ」と憤慨していた。

 拘置所に行けば取調べがないので、早く移監になりたいと言っていた。

 

 

 【 無間地獄  】


 工業高校卒業後、闇金融に勤務経験のある新堂冬樹の4作目。

 昨日馳星周に代表される暗黒文学、ノアールについて少し書いたが、この本の著者新堂冬樹もかなりすごい。旧作中に、ネズミに食い散らかされた女の死体の膣からネズミが顔を覗かせているという描写があって、何考えてんだと思ったが、この無間地獄は著者の才能が一気に爆裂した感がある。

 極貧の幼少時代、実父からの性的虐待、極道渡世、10日で3割の金を貸す闇金としての非常極まりない取立て、追う人でなし逃げる人でなし、殺し、同性愛、キャッチにはめられて地獄に堕ちる女…。

 顔ではめるキャッチには、とんでもない地獄が待っているが、それはあえて書かない。

 そういう話が大作中途切れることなく続き、しかも何らのカタルシスも用意されていない。

 読み終えて、救いようのない気分になる一冊。

 

平成16年7月9日(金) 勾留60日目

 ついに勾留2か月を超えた。

 1か月目は不安との闘いだったが、2か月目は退屈との闘いだ。

 

 朝飯のあと、中国人とガーナ人が喧嘩をした。

 中国人が水をこぼしたのを拭かずにいたところ、ガーナ人が「stupid , ワカル? アナタバカ」と言って、仲が険悪になったのだ。

 

 中国人は黒人に偏見を持っているようで、ガーナ人も中国人全般が嫌いだ。

 先行き心配である。

 


 【 火の粉  】

 

 私は先日上告が棄却された和歌山カレー事件を、欠陥裁判だと言った。

 最近になって、以前も取り上げた「火の粉」を読み返していたら、冒頭部分から、和歌山カレー事件に密接に関連する文章があった。

 特に3つめの文章は、友人夫婦を町民、撲殺をヒ素混入に置き換えれば、これはもうこのまま、カレー事件の批評として通用する。

 

 気をつけなければならないのは、メディアが作り出すヒステリックな正義だ。被害者にも加害者にも会ったことがない何千万という人間がメディアを介して、世論という凶器を被告人の喉元に突きつける。

 

 それでも検察は力業で起訴まで持ち込んだ。司法のベルトコンベアに載せてしまえば、あとは九十九.九パーセントの精度で有罪にしてくれる。不良品は千個に一個しか出ない。彼らがその神話を頼りにしていたかどうかは知らないが、少なくとも、何とかなるだろうという甘えたところはあったはずだ。

衝動殺人。検察側はそう主張する。金の貸し借りなどのトラブルもなかった友人夫婦を撲殺したというのだから、動機としてはそういうところに落ち着かざるを得ないのだろう。しかしそうであるなら、衝撃を生むほどのマグマが武内に隠されていたという事実を、検察側は全力を挙げて明らかにしてみせなければならなかった。


 【 雫井 脩介 

 

 雫井脩介を評価するのは難しい。

 東野圭吾ファンでもある私は、本格(推理)かなと思って読み進めていたのだが、そういうわけではない。

 じゃあ人間の闇の部分をひたすら書き述べた、馳星周に代表されるノワールかというと、そういうわけでもない。

 エンターテイメント小説とくくるのは、あまりに拙速すぎて、かくして犯罪小説、クライムノベルといった、なんだかよくわからないジャンルで呼ばれたりもする。

 要するに評価は人それぞれなのだが、「読み出したらやめられない」「グイグイ読み進めてしまう」という、かなりの読書好きをも引き付ける圧倒的な力(リーダビリティというらしい、きっと訳語がないのだろう)は、驚嘆するしかない。

 ちなみに私は文庫新品を800円出して買ったが、読み終わったあと、「3,000円出しても惜しくないかも」と思った。

平成16年7月8日(木) 勾留59日目

 中国人は、日本に姉と義兄がいるが、姉は出産のため中国の実家に帰っており、義兄が面会に来て、相当に怒られたという。でも、3千円差し入れしてくれたらしい。

  「姉にも家族にも今回のことは言わないから、中国に帰って、自分の人生をやり直せ」と言われたという。


 あと昨日の当番弁護士を、間違って私選として選任してしまった、と焦っていた。

 

 

 【過去の過ちを振り返って】

 

 

 中国では、家族から犯罪者が出ると、問答無用で勘当されてしまうらしい。

 だからこの義兄の配慮は、相当に気が利いているのだ。

 

 

 【 兄弟仲 】

 

 

 双子山親方の納骨のときに、押し掛けたやじ馬から、「兄弟仲良くしろ!」というやじが飛んだという。

 大きなお世話だ。

 家族関係について考えるときに、私はいつも寺山修司の古いエッセイの一節、「母親のいない青年の不幸は取るに足らないが、いない母親を必要とする青年の不幸はかなり根深いものがある」というのを思い出す。

 意味はまったくその通りだが、この文章は、家族愛や兄弟愛は絶対的なものではないのだということの示唆でもある。

 福岡の刺殺少年にとって兄は、桎梏(しっこく)以外の何者でもなかっただろうし、成増の爆発少年にとっては、今後本当に両親は必要でなかったのかもしれない。

 ところで出生率は、もう長いこと2.0を下回っているわけで、これは近い将来、「兄弟間のトラブル」そのものが、「珍しいこと」になることを意味するだろう。

 だから今のところの兄弟仲の悪さも、味わっている人にとっては、将来的には、得がたい経験をしたと言える日が来るのかもしれない。

 

 


平成16年7月7日(水) 勾留58日目

 中国人が、「自分は起訴されるのかどうか」とうるさい。

 保険金詐欺も一日中、何度も同じことを聞かれ、辟易している。

 

 彼は○○大学日本語学科を中退していて、一応今年9月まで有効の学校ビザを持っているから、不法滞在ではない。

 日本語はかなり達者だが、謝罪文を書けるほどには上手くない。だから私が文面を考えて下書きをし、それを彼が書き写した。

 本来は弁護士を通じて出すべきものだが、そそのかして、留置場から直接投函させてしまった。

 見も知らない中国人から突然手紙が届いた被害者は、きっと驚くだろう。

 

 頭を丸刈りにした。

 生まれて初めての丸刈りだ。

 

 

 【過去の過ちを振り返って】

 

 留置場にあったのは、松下電工のホームバリカンだった。

 1ミリ、3ミリ、6ミリ、12ミリの長さで調節できるタイプだったが、初めての丸刈りということもあって12ミリにした。

 

 

 【 TOSHI その3 】

 

 としみつ、という名が示すとおり、TOSHIは三男だ。

 本人は、「X-JAPANの人気ではYOSHIKIとHIDEが1、2位を争っていて、僕は3位。どこへ行っても三男坊」と自嘲している。

 日記を読んでもらえればわかるとおり、私も三男で末っ子だ。

 私が妙に、TOSHIにシンパシーを感じるのは、そのせいだろう。

 

 眞鍋かをりは長女らしい。

 

  3人きょうだいの末っ子にはよくありがちなことですが、
とにかく要領よくおいしいところだけさらっていくんですよね。
それでも、末っ子だから怒られないの。
上の子は「お姉ちゃんなんだから」といって我慢を強いられる。
昔からそう。

 

 と書いているが、どうだろう?

 

 実感としては、頼られる、とか、責任を取る、ということは、結構苦手だ。

 加藤茶が「なんかあったら全部長さんにおっかぶせちゃえばいいんだから、俺たちは気楽だった」と言っていたが、感じとしてはそれに近い。

 

 アニキ金本も、実は三男で末っ子だ。

 だから本人は、アニキと呼ばれることについては、面映い思いをしているのかもしれない(ちなみに高見盛も三男)。

 

 

 【 どうでもいいけど 】

 

 食べたものを淡々と記録するよ というブログがある。

 誰かが画像つきで、「出たウンコを淡々と記録するよ」というブログを思いついても不思議ではない。

 100万のブログがあれば100万の価値観があるはずで、入るもののブログがあって、出るもののブログがないというのも、不自然だ。

 かなりな話題には、なるだろう。

 私はやらないけどね。誰かやってください(人任せなところが末っ子)。

 

 

平成16年7月6日(火) 勾留57日目

 中国人に当番弁護士が来た。

 「当番弁護士を呼んでください」という日本語を教えてやったのは、私だ。

 とりあえず、被害者に謝罪の手紙を書くように言われたという。


 中国人は、左手甲に4か所も根性焼きがある。

 といってもイジメではなくて、高校のとき、酔っ払って友達と一緒にやったと言っていた。

 お父さんには怒られたという。

 

 

 【 貴乃花親方 】

 

 双子山部屋と藤島部屋の平成の大合併で、上位陣はほとんど双子山部屋が占め、上位陣同士の同部屋対決もなく、この部屋は末まで安泰かと思われた。

 しかし寄る年波で、貴ノ浪、安芸乃島、貴闘力らが続々と引退してしまい、かつ同門とはいえそれぞれが独立して部屋を構えてしまったものだから、今の貴乃花部屋には、幕下でしかも低位の力士しかいない。

 貴乃花は、この窮状を立て直せるだろうか?

 

 人柄はかなりいい。優しい。

 

 報道ステーションで見たが、貴闘力が竹刀でふとももを打ち据えているところを、貴乃花はまわしの上を叩いていた(痛くも痒くもない)。

 

 貴乃花の生き方はどうしようもなく不器用で、頼りなさも感じさせるが、彼はかっての名声にすがるだけの男ではないと思う。

 

 私は、貴乃花部屋の隆盛を願う。

 

 ちなみに、私は別に相撲ファンではない。高見盛の熱烈なファンであるだけだ

 あとは闘牙かな。顔がとてつもなく怖くて、背中に毛が生えているというのがイイ。

 朝青龍はキライだ。高見盛をいじめるからだ。

平成16年7月5日(月) 勾留56日目

 中国人は25歳、住居侵入での逮捕。

 パン工場でのバイト帰り、スーパーで見かけた美人にひとめぼれしてしまい、あとをつけて、ベランダに潜んでいたところ、隣室の住人に通報されたのだ。サイレンを鳴らさずにパトカーが来て、気がついて逃げようとしたところ、警棒を抜いた警察官に、はさみうちにされたのだという。


 「男の声がしたから、そのうちやると思った」と言っていて、保険金詐欺が大笑いしていた。


 着の身着のままで、服を持っておらず、Tシャツ1枚とパンツ1枚、ズボン1本を留置から拝借していた。

 所持金もほとんどなし、その日銀行から1万円おろしていたのだが、風俗で使ってしまったのだという。

  

 

 【過去の過ちを振り返って】

 

 現行犯逮捕のような人間は、当たり前だが着替えなどを持っていない。

 そういう場合は、着衣を留置場から拝借することになるが、それにはマジックで「マル留」と書かれていて、まるでトメさんという人の持ち物のようである。

 パンツまで含めて借りることになるが、なんとも気持ちの悪い話だ。

 

 

 【 TOSHI その2 】

 

 それまでの不自然な生き方、感じ方から自己不全感に悩む人が、あることをきっかけに、まるで別人のようになることがある。

 それこそまるで宗教にはまったか、誰かに洗脳されたかのように見えることもあるが、それはおそらく原体験による自分の誤った思い込み像が破壊されただけで、本質的には自分の力だ(もちろん本当に宗教や洗脳による場合もあるが、事件の背景を見ると、TOSHIの場合はどうやらそうではないらしい)。

 例えれば、一方に大きく振り切っていた振り子が、今度は反対側に振り切っているような状態で、私は貴乃花も、その可能性が大きいのではないかと考えている。

 たかだか15歳ぐらいから、父親を師匠、母親をおかみさんと呼ぶような世界で、親に対する健全な甘えも許されない環境で、人間がまともに育つとは思えない。

 また本当に、家族関係の中ではいちばんの目下である貴乃花が、両親や兄にいいようにあしらわれてきた背景もあるのかもしれない。

 その過程で貴乃花には、ある思い込みが形成されてしまった可能性があって、今はその自分の過去も含めて否定したいような状態なのではないか。

 これは新たな自分を獲得するために必要な新しい行動でもあるから、それまでの古い人間関係と確執を生じるのは仕方のないことでもあるし、周囲から見れば、まるで本人が別人に変わってしまったかのように映ることもある。

 極端から極端への移行だからそう見えるのであるが、本人の精神的成長につれ、いずれ振り子の振幅の幅は小さくなり、それとともに、起こっている問題も沈静化していくだろう(おそらく10年単位の時間が必要だろうが)。

 貴乃花にしてもTOSHIにしても、遠く離れたところにいる一般人からは、彼らの個人的な自分との戦いを、静かに見守っているのが、いちばんの得策であり、また思いやりであるように思う。



 

平成16年7月4日(日) 勾留55日目

 【余白メモ】 

 

 AM4:00 中国人 根性焼き、のぞき(入)

 ジャクソンは 48歳 黒人は体毛も丸まっている

 【過去の過ちを振り返って】

 

 この通りで、朝の4時に、左手に4ヵ所も根性焼きのある中国人が、のぞきをやって入ってきたのだった。

 

 

 【 ホームオブハート TOSHI 不起訴 】

 

 X-JAPANが好きだったので(といっても「紅」「ENDLESS RAIN」「Tears」しか知らないが)、TOSHIも引き続き好きだったのだが、さすがに一連の騒動はびっくりした。

 TOSHIのホームページ を開くと、いきなり出来損ないのさだまさしのような歌が流れてくる(かなりの曲数がタダで聴けるのでおトクかも)。

 本人が書いているように、今回の騒動はマスコミの誤報道の要素がかなり大きいが、そう思わされても仕方がないような大きな変化が、本人にはあった。

 またロングインタビューでいろいろと語ってもいるが、「僕の顔はアゴが出ていて醜いんです」とか、「声もキンキン声で嫌い」とか、「兄に虐待を受けていた」だとか、そんなに自分を卑下しなくてもいいのになという感じがする。

 ま、幸せそうに見える人でも、いろいろと悩みはあるんだなぁという、見本のような話だ。

 さてこの事件、少し裏に目を向けると、「紀藤正樹 VS 伊藤芳朗」の弁護士対決という側面もある。

 紀藤の追及に、伊藤(TBSの番組のために弁護士権限で戸籍を入手してやったとかで懲戒請求を申し立てられ、それ以来干された)が反撃していたという構図だが、これも結局は紀藤側の言いがかりであったという結果になりそうだ。

 この2人は、もともとオウム被害対策弁護団の盟友だったはずなのに、やれ弁護士業務の妨害だとか何だとか、かなりこちらもキナ臭い。何があったのだろうか?

 しかしまあ、この事件で私がいちばん驚いたのは、今となっては有名な話だが、TOSHIの本名が出山利三であったことだ。

 でやまとしみつ、という名の響きには、X-JAPANを一瞬にして殿さまキングスに変えてしまうぐらいのドメスティックなインパクトがあった。

平成16年7月3日(土) 勾留54日目

 ガーナ人のところに、面会者が来た。友達ではなく、○○商事という、不動産会社だ。

 オーバーステイと知りながら部屋を貸し、逮捕されたので、部屋のカギを取りに来たのである。

 不法就労者もタフだが、それを相手に商売をする日本人も、結構タフだ。

 

 不法就労者は、仕事のえり好みをせず、よく働く。

 日本人が嫌がる、重い仕事、暑い(熱い)仕事、臭い仕事も、日本人より安い賃金で一所懸命やる。

 

 不法就労者が一向に減らない原因は、ここにある。

 安く使いたい雇う側と、日本で稼ぎたい外国人で、利害が一致してしまっているのだ。

 入管は警察が悪いといい、警察は入管が悪いというが、結局は社会構造の問題なのだ。

 かと思えば悪い外国人もいて、薬物の密売に代表されるような人間である。

 

 ジャクソンは真面目だ。稼いだ金で娘を大学にやり、家も建てている。

 しかし逮捕されたので、1階部分しかできないらしい。

 次はニューヨークでタクシードライバーをやろうかな、とは言っているけど。


 

平成16年7月2日(金) 勾留53日目

 隣のオーバーステイ韓国人と並んで洗面をしたが、にんにく臭かった。

 長い間食べていると、しばらく食べなくても臭ってくるものらしい。



 【余白メモ】

 

 

 差し入れあり、母。

 

 

 【過去の過ちを振り返って】

 

 

 母は留置場に訪ねてきたのではない。

 遠方ということもあって、担当の刑事宛に、宅急便で荷物を送ってきてくれたのだ。

 トランクスが4枚、コンタクトレンズ、手紙、あと何が入っていただろうか。

 刑事が言うところでは、刑事あての謝罪の手紙も入っていたという。

 


平成16年7月1日(木) 勾留52日目

 【過去の過ちを振り返って】

 

 

 この日、日付を除いて、私の記述はない。


 男がいなくなってしまったことで、一気に気が抜けてしまったのだ。

 

 

 

 【 火の粉

 

 これだけでは寂しいので、本のご紹介。


 私は殺人犯を、野に放ってしまったのか?

  

 これ面白かったなー、って、これだけじゃ何だか分かりませんね。

 リンク先参考になさってください。

 レビュー書くの下手なんですよ私。

 

 ちなみに、今後の日記の中で、雫井脩介に特徴的なある表現(ヒント:擬声語)が、1か所だけ

出てきます。

 見つけられた方は、ぜひコメントでお知らせください。

 なにか出るわけではありませんが…。本好きの方はお楽しみに!

 

 

 【 これからどうなる? 】

 

 今から思うと、逮捕当初からこの日までの、「私、保険金詐欺、ヤクザ、男」のかかわりの中で描かれた日々は、「第1幕」だった。

 これから始まるのは、「私、保険金詐欺、ガーナ人、中国人」が中心となる、「第2幕」である。

 そしてその後は…。