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文字数制限のためタイトルは↑となりましたが、本当のタイトルはこうなるはずでした。
『Yedil Khussainov師とzither中近東起源理論の奇跡・チャトハンの伏線回収編』



⊂O–O⊃ あしべ ブログ主 顔文字はメガネ

/)ЧЧ/)  シカタケル大王
(6∀6)    当ブログのツッコミ役。顔文字は牡鹿

/")/")  シカハタビ大后
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⊂O–O⊃あしべ
今回はTURAN ethno-folk ensembleをはじめとするカザフスタンのethno-folkの音楽家たちの先駆者であり先生にあたる方についての投稿です。
そして当ブログがこの方の"お名前"を通して目の当たりにした« 奇跡 »のお話しをいたします。

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(6∀6)シカタケル
まずはファンブログとしてのタスクとして、その師匠である音楽家とTURAN ethno-folk ensembleが共演した2022年5月4日コンサート『Өртолғау』のYouTube動画のリンクを貼る。

こちらはチケット販売会社のチャンネルの動画
Ticketon
Өртолғау
こちらはコンサート会場の公式YouTubeチャンネルの動画
Астана Филармония
"Қорқыт" пен "Тұран" этно-фольклорлық ансамблдері көрерменге "Өртолғау" концертін ұсынды
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それでは、いつも大后さまにお願いしている前口上に続けます。

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(ŎᴗŎ)シカハタビ
ブログカテゴリー「弓と弦楽器、日本とカザフ」では、これらの企画をお送りする予定です。
 
《TURAN ethno-folk ensembleと日本の文化財のクロスオーバー》
《アメノウズメとаруақ(先祖霊) 〜太鼓と琴と大地〜》
《鳴弦はどこから来たのか》
《弓道とэ т н о с о л ь ф е д ж и о (エスノソルフェージュ)》

これらの企画が日本とカザフスタンのコミュニケーション・ギャップを越える一助になれれば幸いです。

そしてブログカテゴリー「弓と弦楽器、日本とカザフ」では、日本とカザフスタンの文化財を取り上げる予定であります。
その意見はあくまで『太平洋の斜め上な島国に住む考察厨のブログ』の意見であり、文責はブログ主うみひぢ_あしべが負います。
文化財の所蔵者、並びに文化財の研究者、これらの方々と当ブログは全くの無関係であります。
これらの方々のお考えと、当ブログの意見は全く無関係です。
その上で、当ブログの素人丸出しな考えをご笑覧くださいませ。



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当ブログの最大目的である『zither中近東起源理論』。
当ブログの『zither中近東起源理論』は、小島美子名誉教授の論考にユーラシア大陸のlyre文化を上乗せした考察です。
その論考は、1992年に千葉県佐倉市の国立歴史民俗博物館で行われた「第12回歴博フォーラム コト・フエ・ツヅミ・銅鐸 ー日本楽器の源流と日本的改造ー」を、1994年に振り返るかたちで記述されていました。

以下の引用文中にある『企画展』とは、このフォーラムに先立って開催されたこの企画展示を指します。
国立歴史民俗博物館でその頃(一九九二年一〇月一〇日から十一月二九日まで)行われていた企画展示「弾・吹・打ー日本の楽器とその系譜ー」

また、引用文中の『コト』とは日本の伝統楽器である和琴の前身であり、当ブログが『祖型のzither』と呼ぶ古代日本の弦楽器を指します。

同様に引用文中にある『ルワンダのイナンガ』については前回の投稿で取り上げました。
 それでは、当ブログが『zither中近東起源理論』と呼ぶ国立歴史民俗博物館の小島美子名誉教授の論考を引用します。

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(ŎᴗŎ)シカハタビ
『日本楽器の源流―コト・フエ・ツヅミ・銅鐸 (歴博フォーラム)
編集・出版 国立歴史民俗博物館
制作 第一書房』

『コトとツヅミをめぐる新しい問題
ー音楽考古学の成立と民俗音楽学の役割ー』
筆者:小島美子
(国立歴史民俗博物館名誉教授)

1 コトについて
 日本ではコトといえば、大体において細長い板の上に多数の弦を張った琴箏類を思い浮かべるのが普通である。そしてこの琴箏類についてはこれまで東アジアか、広げても中国文化が直接大きな影響を与えた一部の東南アジアあたりまでを視野に入れて論じられることが多かった。しかし今回のフォーラムや企画展では、遠くアフリカにも大変似た構造の弦楽器があることも明らかになったし、改めて世界のチター類を視野に入れて論じることの必要性がはっきりしてきた。楽器一つの動きにしても、世界の文化史の流れと決して無縁ではないのである。
 さてフォーラム以後、こうした見方から考えると、考慮しておきたい二つのデータが現れた。その一つは、このフォーラムのパネリストでもある郡司すみ氏が館長をつとめられる国立音楽大学の楽器学資料館が出された「楽器資料集Ⅱ 琴 Zither」である。ここでは文字通り古今東西のチター類が楽器の構造によって説明されている。これを見ると、アフリカでは前にあげたルワンダのイナンガよりも、さらにコトに似て、まさに箏柱のようなものをたてたコンゴの Totombitoなどもある。さらにカザフ共和国の Zhetygeneや、ロシア共和国のハカス族の Tschatchanなども琴箏類に似た構造をもっている。こうした例はまだ他にもある可能性を感じさせられるが、もちろんそれらの例が直接に日本のコトと関係があるとは考えられない。おそらくはチター類の楽器をひじょうに早く作りだし楽器制作センターがあって、その波が四方に広がり、さまざまな変形をくり返して現在のような形があちらこちらに残ったと考えた方がいいのではないだろうか。その場合、中国では曽侯乙墓(紀元前五世紀)に残されていたりっばな瑟など、ひじょうに古い出土品や記録類がいろいろあって、これまでは琴箏類の故郷は中国であるかのように思われ勝ちであった。しかしこうした類似品の広がりをみると、たとえばひじょうに早く古代文明をつくり上げた中近東地域が、その楽器制作センターだった可能性も考えられる。

引用以上。

上記の引用文から、一連の記載のポイントとなる部分を抜き出します。

>さらにカザフ共和国の Zhetygeneや、ロシア共和国のハカス族の Tschatchanなども琴箏類に似た構造をもっている。

>おそらくはチター類の楽器をひじょうに早く作りだし楽器制作センターがあって、

>たとえばひじょうに早く古代文明をつくり上げた中近東地域が、その楽器制作センターだった可能性も考えられる。

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(6∀6)シカタケル
小島美子名誉教授は1997年に上梓した『音楽からみた日本人 NHKライブラリー』の中で『日本楽器の源流』の論考を振り返りながら、このように言い添えている。
なお文中の『また今回は取り上げなかったが』とは小島美子名誉教授のこの著作『音楽からみた日本人』についてだ。

それでは『音楽からみた日本人』のP196を引用する。

それでもう一度中国の琴箏類の歴史を調べてみると、中国の戦国時代(紀元前四〇三〜二二一年頃)に、箏は中国の最西端にあった秦の国で使われ始めたので、箏は西方起源ではないかという説もあることがわかった。それでいささか思い切っていってみると、コトやツィターなどの祖型のようなものが中近東で作られ、それが東西に広がり、東では琴や箏の形を生み、その一端が日本のコトになったのではないだろうか。
 考えてみると、もっとも素朴な枠なし締め太鼓の形、篳篥やチャルメラのようなダブルリードの形、また今回は取り上げなかったが琵琶の形などのオリジンがみんな中近東である。まさに人類文化の故郷は楽器の故郷でもある。
引用以上。

⊂O–O⊃あしべ
『日本楽器の源流』の『カザフ共和国の Zhetygene』の部分は、カザフ人の民族楽器ののジェティゲン(zhetygen/жетіген)で、『ロシア共和国のハカス族の Tschatchan』はハカス人の民族楽器のチャトハン(чатхан/chatkhan)でしょう。
当ブログでは以下の3回の投稿で古い時代のジェティゲン(zhetygen/жетіген)を考察しました。


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(6∀6)シカタケル
Yedil Khussainov(Еділ Құсайынов)師とジェティゲン』の投稿で、著名なジェティゲン奏者としてのYedil Khussainov(Еділ Құсайынов)師を紹介した。

このインタビュー記事によると、Yedil Khussainov(Еділ Құсайынов)師は『TURAN ethno-folk ensemble』と『HasSak Ethno-Folk Group』がこの方の生徒であったらしい。
Е. Құсайынов: "Күйші Динаның жыртысынан иткөйлек кидім"
https://ustinka.kz/kz/vko/71622.html

⊂O–O⊃あしべ
そういう事情があったものでして、思いつきから、この検索ワードでGoogle検索をしてみたんですよね。

『"Еділ Құсайынов" "жетіген"』

そのまま画像検索を続けて、ハカス人の民族楽器のチャトハン(чатхан/chatkhan)らしいWikipedia画像をみつけたんですよ。
…その画像に写っているモノに気がついた後はもう、脳みそがフリーズして使い物にならなくなりましたね。

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(6∀6)シカタケル
この画像だな。

https://en.m.wikipedia.org/wiki/File:Siberian_Musical_Instrument.jpg
(GNU Free Documentation License) 

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(ŎᴗŎ)シカハタビ
このzitherはКрасноярский краевой краеведческий музей(google翻訳:クラスノヤルスク地域郷土伝承博物館)の所蔵品でしたので、これを『クラスノヤルスクのチャトハン(чатхан/chatkhan)』を呼ぶことにしました。
これはその博物館のYouTube公式チャンネルにあった説明の動画です。
 
Чатхан — хакасский музыкальный инструмент



⊂O–O⊃あしべ
↑前回の投稿で、古代日本の弦楽器の特徴である「櫛歯状の突起」、和琴の「弭頭(はずがしら)」に相当するパーツが、日本の周辺の国々の弦楽器にはないと述べました。
しかしながら、ハカス共和国の民族楽器であるチャトハン(чатхан/chatkhan)のひとつに、その特徴があったんです。
まさにエウレカ!

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(6∀6)シカタケル
比較対象として、カザフ人民族楽器ののジェティゲン(zhetygen/жетіген)の画像の本体部の両端を見てほしい。


https://commons.m.wikimedia.org/wiki/File:Jetigen.jpg#mw-jump-to-license
CC BY-SA 3.0 

ジェティゲン(zhetygen/жетіген)では弦を留めるパーツの大きさが両側で違うのがわかるはずだ。

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(ŎᴗŎ)シカハタビ
これはTURAN ethno-folk ensembleのセンターのErzhigit Aliyevさんのご実家、Sherter ComoanyのInstagramにあったドンブラのパーツの投稿で、画像にあるのは白樺の木で作られたtuning peg(құлақ)とpin(түйме)です。
ジェティゲン(zhetygen/жетіген)でこのパーツに相当するのは、おそらく金属製だと思われますが、しかし形はドンブラと近いはずです。

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(6∀6)シカタケル
クラスノヤルスクのチャトハン(чатхан/chatkhan)の両端部にあるパーツはジェティゲン(zhetygen/жетіген)と違って、大きさや形に差はない。
つまりカザフの楽器で呼ぶところのtuning peg(құлақ)とpin(түйме)に相当するパーツは使われていない。


そして上方の部分をクローズアップしてみると、弦の端部を輪にしてパーツに引っ掛けているのが見て取れる。
下方は画像が暗くて判別できなかったが、おそらくこちらも同じように弦を輪にして引っ掛けていると思われる。
ということは?

⊂O–O⊃あしべ
前回の投稿『ハカスのЧатханと日本の弭頭(はずがしら)の奇跡』で紹介した小島美子名誉教授のイナンガへの記述をもう一度引用します。

ちょうど日本のコトの古い形のように、両端には刻みめといいましょうか、凸凹がありまして、そこに糸をかけ渡しております。

前回の投稿の前半で紹介した画像やYouTube動画で説明しましたとおり、イナンガは刻みめもしくは凹部分に弦を通すことで、凸部分に弦を引っ掛けています。
弦を引っ掛けるということでは、チャトハン(чатхан/chatkhan)もイナンガも同じです。

イナンガの突起(凹凸の凸部分)に引っ掛け類例ことが日本の「弭頭(はずがしら)」または「櫛歯状の突起」に近いのなら。
チャトハン(чатхан/chatkhan)も同じように近いはずです。

つまり、クラスノヤルスクのチャトハン(чатхан/chatkhan)の端部は、「弭頭(はずがしら)」または「櫛歯状の突起」と良く似ているという考察ができました! 

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(6∀6)シカタケル
日本とハカス共和国では遠すぎるという異論があるかもしれない。
だが当ブログはその異論を封じるための投稿を続けてきた!

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(ŎᴗŎ)シカハタビ
当ブログはこちらで和琴の奏法にlyreと共通する奏法があることを投稿しました。


こちらでカザフスタンのシル川流域で発掘された紀元4世紀の弦楽器Dzhetyasar(Жетіасар)のqossaz(қоссаз)が、北ヨーロッパのlyreと同系統と判明したとの考古学成果を投稿しました。
こちらで日本の和琴とDzhetyasar(Жетіасар)のqossaz(қоссаз)の平行関係を投稿しました。
そして、祖型のzitherに特有の『鴟尾之形』または『鳥の尾形』と呼ばれる部分、天板の奏者右手側にある弦の張られていない部分とそこに孔を開けて裏側から弦を通す取り付け方が、lyreの構造をもつフィンランドのヨウヒッコ(jouhikko)との一部と共通していることを説明しました。
そして、東スラブの民族楽器グースリがlyreからzitherに変化した弦楽器であることも説明しました。
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(6∀6)シカタケル
要するに日本の和琴と祖型のzitherは、lyreがzitherに変化した弦楽器なんだよ。
そしてその伝播ルートはDzhetyasar(Жетіасар)のqossaz(қоссаз)の発掘されたカザフスタンがある北ユーラシアルート。
そして最古のlyreが発掘されたシュメールは中近東にある。

⊂O–O⊃あしべ
当ブログの『zither中近東起源理論』は、小島美子名誉教授の論考にユーラシア大陸のlyre文化を上乗せした考察です!
…で、話を戻します。
上記で『古代日本の弦楽器にあって日本周辺にはない「櫛歯状の突起」、和琴の「弭頭(はずがしら)」に相当するパーツ』がクラスノヤルスクのチャトハン(чатхан/chatkhan)に有ると述べましたが、チャトハン(чатхан/chatkhan)はハカス人の民族楽器で、その故郷であるハカス共和国は北ユーラシアにあります。
だから、クラスノヤルスクのチャトハン(чатхан/chatkhan)の存在は、和琴と祖型のzitherが北ユーラシアルートだとする考察を強化する傍証になります。

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(6∀6)シカタケル
話をさらに戻すと、古代日本の弦楽器には有っても日本周辺には見つからない「弭頭(はずがしら)」または「櫛歯状の突起」がチャトハン(чатхан/chatkhan)の中のひとつにあったわけだがな?
上記で小島美子名誉教授は1995年に出版された『日本楽器の源流』のなかで、カザフ人のジェティゲン(zhetygen/жетіген)とともにハカス人のチャトハン(чатхан/chatkhan)をあげていたと述べたよな?

⊂O–O⊃あしべ
これがドラマだったら、小島美子名誉教授が『zither中近東起源理論』に張った伏線が回収されたことになりますね。
というか、クラスノヤルスクのチャトハン(чатхан/chatkhan)をGoogle検索で釣り上げることができたのは、『"Еділ Құсайынов" "жетіген"』という検索ワードを使ったからですから…

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(6∀6)シカタケル
伏線回収を行ったのはこのブログじゃあないな、Yedil Khussainov(Еділ Құсайынов)師が伏線回収をしたようなもんだ。

⊂O–O⊃あしべ
うわぁ、
Yedil Khussainov(Еділ Құсайынов)師には大変お世話になりました。

/")/") 
(ŎᴗŎ)シカハタビ
いいえまだです。
小島美子名誉教授は『日本楽器の源流』で
カザフのジェティゲン(zhetygen/жетіген)をあげていらっしゃいます。
zither中近東起源理論』にはジェティゲン(zhetygen/жетіген)の伏線もまた張られているのです。
そしてその伏線回収のためには、Yedil Khussainov(Еділ Құсайынов)師のご協力が必要なのです。


/")/")    次回の投稿は
(ŎᴗŎ)  「Yedil Khussainov師とzither中近東起源理論・2/2」です。