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(ŎᴗŎ)シカハタビ
ブログカテゴリー「弓と弦楽器、日本とカザフ」では、これらの企画をお送りする予定です。
 
《TURAN ethno-folk ensembleと古代日本の文化財のクロスオーバー》
《アメノウズメとаруақ(先祖霊) 〜太鼓と琴と大地〜》
《鳴弦はどこから来たのか》
《弓道とэ т н о с о л ь ф е д ж и о (エスノソルフェージュ)》

これらの企画が日本とカザフスタンのコミュニケーション・ギャップを越える一助になれれば幸いです。

そしてブログカテゴリー「弓と弦楽器、日本とカザフ」では、日本とカザフスタンの文化財を取り上げる予定であります。
その意見はあくまで『太平洋の斜め上な島国に住む考察厨のブログ』の意見であり、文責はブログ主うみひぢ_あしべが負います。
文化財の所蔵者、並びに文化財の研究者、これらの方々と当ブログは全くの無関係であります。
これらの方々のお考えと、当ブログの意見は全く無関係です。
その上で、当ブログの素人丸出しな考えをご笑覧くださいませ。


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(ŎᴗŎ)シカハタビ 
企画《TURAN ethno-folk ensembleと古代日本の文化財のクロスオーバー》の第1回はこちらです。
【TURAN ethno-folk ensemble のBaurzhan  Bekmukhanbetov さんと古代日本の弾琴男子埴輪のクロスオーバー】

今回の投稿は、lyreの奏法をもちいる(あるいはもちいると思われる)日本の伝統楽器の和琴やその祖型のzitherと、年代と距離の両方で近い存在であるDzhetyasar(Жетіасар)のqossaz(қоссаз)についてご紹介します。

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(ŎᴗŎ)シカハタビ
こちらはカザフの民族楽器であるqossaz(қоссаз)の演奏のYouTube動画です。

Қоссаз аспабы. “Ақ кеме” күйі.


⊂O–O⊃あしべ
ここはTURAN ethno-folk ensembleのファンブログで、彼らがqossaz(қоссаз)を演奏している動画があったらぜひ貼りたいところなんですが、残念ながらありませんでした。
ですがそれに近いYouTubeのショート動画はありました。
興味深いですからぜひ見比べてください!
ちなみにこの曲はTURAN ethno-folk ensembleのコンサート定番の曲「Shabyt(Шабыт)」です。

@TURAN_ethno_folk
Шабыт - TURAN
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(6∀6)シカタケル
現代カザフの民族楽器qossaz(қоссаз)がどういう需要があって使われてきたのか想像できるw
現代カザフの民族楽器であるqossaz(қоссаз)の画像なんだが、どうにかこうにかWikipediaのパブリックドメイン画像で見つかったぞ〜

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(ŎᴗŎ)シカハタビ
アメリカ合衆国アリゾナ州フェニックスの『Musical Instrument Museum』の画像で、撮影は2018年のものです。
この画像の右上にあるのがそのqossaz(қоссаз)です。


https://commons.m.wikimedia.org/wiki/File:Phoenix-Musical_Instrument_Museum-Mongolia_exhibit.jpg
CC BY-SA 4.0

拡大しましょう。
手前にあるのががqossaz(қоссаз)です。



⊂O–O⊃あしべ
うわぁぁ、有ってよかったぁぁ!
有り難く使わせていただきます!!
…え〜ここはカザフスタンの民族音楽家集団『TURAN ethno-folk ensemble』のファンブログです。

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(6∀6)シカタケル
実質『TURAN』を出汁にして考察厨が自分の頭の中を吐き出しているだけだろうがw

⊂O–O⊃あしべ
それはそうなんですけどw
2023年に結成15周年を迎えた『TURAN』さんはこの年は精力的に国外ツアーを巡っていまして、この年の3月と12月にアメリカ合衆国の各所を訪問しコンサートを行いました。

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(ŎᴗŎ)シカハタビ
『TURAN』さんは12月にこの『Musical Instrument Museum』へ訪問しカザフスタンの楽器を寄附、ミニコンサートを開いています。
その時の様子がInstagramの投稿されています。

こちらは『Musical Instrument Museum』でのミニコンサートのYouTube動画です。

MIMphx
Ethno-Folk Ensemble Turan Pop-Up Performance | Musical Instrument Museum


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(6∀6)シカタケル
こちらの動画の曲も「Shabyt(Шабыт)」で、上で現代カザフの民族楽器の方のqossaz(қоссаз)のようなことをTURAN がやっているショート動画と、偶然同じ曲を演奏しているんだよ。

⊂O–O⊃あしべ
さて話を元に戻しましょう。現代カザフの民族楽器のqossaz(қоссаз)ですが、閲覧者の皆さんはこの形をどのように思われますでしょうか?

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(6∀6)シカタケル
ドンブラにネックをもう一本生やしただけ?
などと早合点をする者はいないだろうな?

⊂O–O⊃あしべ
上のTURAN さんのショート動画見るとそんなこと考えちゃうかもしれませんねw

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(6∀6)シカタケル
かもしれんw
まぁそう思ってしまうかもしれんが、それは早合点だぞ?
名高いSutton hoo lyre、古代北ヨーロッパのlyreの代表の画像を見てみるがいい。

British Museum 
Asset number
1044594001

Description
Full: Front
Replica of the Sutton Hoo large lyre. Maplewood, with electrotyped fittings, bone bridge and gut strings.



© The Trustees of the British Museum
(CC BY-NC-SA 4.0) 
https://www.britishmuseum.org/collection/image/1044594001

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(ŎᴗŎ)シカハタビ
カザフの民族楽器のqossaz(қоссаз)とイギリスのSutton hoo lyreを見比べながら、
lyreの構造的な特徴をまとめた文章を、この本から引用しましょう

楽器の歴史[上]
クルト・ザックス(Curt Sachs)著
柿木吾郎 翻訳
全音楽譜出版社 出版
日本の初版は1965年 

英語の書名
The History of Musical Instrument
by Curt Sachs, 1940

P62
第3章 スメルとバビロニア
《ライア》
たいていの弦楽器には胴もネック(さお)があるのに対して、ライアはネックの代わりに胴の上に突き出している2本の腕木と1本の横木とからなる首木型のわくを持っている。弦は前面の響板の上に張られ、横木に結びつけられている

引用以上。

/)ЧЧ/)
(6∀6)シカタケル
このCurt Sachs博士の著書「楽器の歴史」の英語原文版がKindleにあったので、上記に対応する部分を引用する。

The History of Musical Instrument by Curt Sachs, 1940
SECOND PART - Antiquity
3. Sumer and Babylonia 

LYRES. 
While most stringed instruments have a body and a neck, lyres have, instead of a neck, a yoke-shaped frame consisting of two arms and a crossbar that projects from the upper side of the body. The strings are stretched over the frontal soundboard and are fastened to the crossbar. 

引用以上。

⊂O–O⊃あしべ
付け加えますと、ここで「2本の腕木と1本の横木とからなる首木型のわく(a yoke-shaped frame consisting of two arms and a crossbar )」と呼ばれているのは、英語では「playing window」、ロシア語では「игровым окном」と呼ばれている部分です。(…間違ってたらすみません)
胴部分、つまり共鳴体と2本の腕木と1本の横木で囲まれた窓のように開いている部分のことです。

/)ЧЧ/)
(6∀6)シカタケル
qossaz(қоссаз)にはlyreの「playing window(игровым окном)」に相当する空間があり、また弦の張り方もlyreと同様だ。
だからqossaz(қоссаз)とSutton hoo lyreと本体部分の構造は似ていると言える。
だか、そっくりではない。
qossaz(қоссаз)は弦が2本のネックにそれぞれ設置されているから、弦は二組だ。
Sutton hoo lyreは弦がひと組になっている。
そういうはっきりとした違いがある。
そもそも、現代の楽器であるqossaz(қоссаз)と古代のSutton hoo lyreの両者の時間と空間の距離が開きすぎていて、比較にならない。
はいこの話は終わり…
….で終わらないぞこの話。
この両者の相似には紀元4世紀までさかのぼる考古学的な裏付けがあるんだ。

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(ŎᴗŎ)シカハタビ
それがDzhetyasar(Жетіасар)のqossaz(қоссаз)の"再発見"でした。

⊂O–O⊃あしべ
それではDzhetyasar(Жетіасар)のqossaz(қоссаз)の発掘から報道までの経緯を簡単にまとめます。

・1973年にシルダリヤ川沿いにあるQyzylorda(Қызылорда)州Bidayik-asar(Бидайық-асар)という場所からの考古学的発掘で、Dzhetyasar(Жетіасар)文化に属する4 世紀の木製の工芸品の破片が発見されました。 

・2018年にこの出土品はAzilkhan Tazhekeyev (Әзілхан Тәжекеев)博士によって再調査され、その結果、これがカザフスタンの民族楽器qossaz(қоссаз)の古代の形態であると"再発見"されました。

・ノルウェーのGjermund Kolltveit博士は、Dzhetyasar(Жетіасар)のqossaz(қоссаз)と、古代北ヨーロッパのGermanic lyre(Anglo-Saxon lyre)の構造的な相似を見い出しました。
Gjermund Kolltveit博士はAzilkhan Tazhekeyev博士に、英語への翻訳の許可を求めました。
おふたりはオンラインで長く議論したそうです。

・Gjermund Kolltveit博士によって英語で紹介されたDzhetyasar(Жетіасар)のkossaz(коссаз)は世界規模の評判を呼び、カザフスタン国内外のメディアによって報道されました。

以上がDzhetyasar(Жетіасар)のkossaz(коссаз)の"再発見"が世に広まるまでの簡単なまとめです。

この間の経緯については、Azilkhan Tazhekeyev博士のFacebookの投稿(2021年12月28日)を参照いたしました。そのFacebookのリンクはこちらです。


Facebookの自動翻訳の精度は高くありませんので、この投稿を読むときは文章をコピーしてGoogle 翻訳のカザフ語翻訳ににかけることをおすすめします。

Facebookの投稿で紹介されていたDzhetyasar(Жетіасар)のqossaz(қоссаз)のネット記事のリンクを貼ります。
この3件は英語記事です。

Nature
2021年12月15日
Silk Road tech transfer: this ancient lyre went global
https://www.nature.com/articles/d41586-021-03685-y
※この記事は限定公開なので全文を読めません

haaretz
HAARETZ
2021年12月14日
Ancient Lyre of Sutton Hoo Is Oddly Like One Centuries Older in Kazakhstan 4,000 Km Away
https://www.haaretz.com/archaeology/2021-12-14/ty-article/ancient-lyre-of-sutton-hoo-is-like-older-one-in-kazakhstan-4-000km-away/0000017f-e303-d9aa-afff-fb5b8a8d0000

Mail Online
2021年12月15日
Sutton Hoo instrument has a COUSIN 2,485 miles away! 800-year-old lyre discovered in Kazakhstan matches the type found at the famous early medieval ship burial in England
https://www.dailymail.co.uk/sciencetech/article-10309145/Sutton-Hoo-lyre-COUSIN-2-485-miles-away-study-reveals.html

/")/") 
(ŎᴗŎ)シカハタビ
Gjermund Kolltveit博士によるDzhetyasar(Жетіасар)のqossaz(қоссаз)についての英語の論文はこちらで見つかりました。

Cambridge Core
Antiquity
Volume 96 - Issue 385 - February 2022

The Sutton Hoo lyre and the music of the Silk Road: a new find of the fourth century AD reveals the Germanic lyre’s missing eastern connections 
「Cambridge Core」とは「ケンブリッジ大学出版局の学術プラットフォーム」であるとのことです。

参照:
紀伊國屋書店
教育と研究の未来
https://mirai.kinokuniya.co.jp/2018/01/2592/

このケンブリッジ大学とは、「Cambridge Core」のサイトに使われている紋章から判断すると、まさしくイギリスを代表するあの名高い大学であるようです。

⊂O–O⊃あしべ
うわぁ…名前だけは聞いたことはある超有名な大学ですか…
さて、Gjermund Kolltveit博士の論文から、Azilkhan Tazhekeyev博士がDzhetyasar(Жетіасар)のqossaz(қоссаз)について発表した論文についての情報が見つかりました。 

タイトル:
Bizdiñ däwirimizdi ñ IV gă sirimen merzimdeletin «qossaz» dombira [A “kossaz” dombra, dated to the 4th century CE]
掲載:
Arxeologïyalıq qazba jumıstarınan tabılgă n köne mwzıkalıq aspaptar(Археологиялық қазба жұмыстарынан табылған көне музыкалық аспаптар)

残念ですが、この論文をネットで見つけることはできませんでした。

/)ЧЧ/)
(6∀6)シカタケル
続いてはYouTubeにあったカザフスタン国内のDzhetyasar(Жетіасар)のqossaz(қоссаз)へのテレビ報道のYouTube動画をふたつ紹介しよう。

地元の放送局である「Qyzylorda TV」が、2019年、つまりGjermund Kolltveit博士によって世界に紹介される前に報道番組で放送した動画がYouTubeに残っていた。
前回の投稿で紹介した「баба домбыра』の文言は、この動画のタイトルの中にあるように、2019年の最初の発表の段階で既に現れている。

QYZYLORDA TV / Қызылорда телеарнасы
Сыр бойынан баба домбыра табылды
そしてこれは2022年にYouTubeにアップされた動画なんだが、00:16頃にカザフ語が全くわからないあしべでも聞き取りできるくらいはっきりと、ニュースキャスターが「баба домбыра」と発言している。

Телеканал Хабар 24
Қызылорда облысынан табылған көне домбыра әлем назарын аударды
⊂O–O⊃あしべ
この投稿で「баба домбыра」という文言に「祖父のドンブラ」という日本語訳を当てました。

正直に申しますと、Azilkhan Tazhekeyev博士やGjermund Kolltveit博士の側から「баба домбыра」という文言が出たかどうかについてはワタシは確認できていません。
しかし公共放送で2回「баба домбыра」を確認できたので、当ブログでもこの文言を取り上げます。
但し、ワタシはAzilkhan Tazhekeyev博士やGjermund Kolltveit博士が「баба домбыра」という言葉に対してどのような見解を持っているのかを確認していないことをもう一度くり返します。
ですので、このブログで「баба домбыра」を取り上げて考察することは、ブログ主であるワタシうみひぢ_あしべの意見に過ぎないことをあらかじめ申し上げます。

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(6д6)シカタケル
あしべはGoogle翻訳を使って「баба домбыра」という言葉に「祖父のドンブラ」という日本語訳をあてたが、これが正しい翻訳なのかどうかさえも、実際のところ、カザフ語もロシア語も全く分からないあしべには確かめる手段がない。

/")/") 
(ŎᴗŎ)シカハタビ
現代日本語でzitherを表すコトという言葉は、古代の日本語では全ての弦楽器を意味しました。
それと同じように、カザフ語でもドンブラ(Dombyra,Домбыра)が全ての弦楽器を表す可能性もありえます。

⊂O–O⊃あしべ
ワタシとしては、
「баба домбыра」という言葉の日本語訳が「祖父のドンブラ」で大丈夫だよね?
という希望的観測で話を進めるしかないですね。
ともあれ「баба домбыра」のそういう語感から、ワタシは、こういう風に思いついたりしたんですよね。
…lyreの奏法がドンブラに移入した過程を示すのがDzhetyasar(Жетіасар)のqossaz(қоссаз)ということなんじゃないかなあ…?

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(6∀6)シカタケル
そのあたりの話に弾琴男子像氏は何か絡みはあるか?

⊂O–O⊃あしべ
弾琴男子像さんはその辺りと間接的に絡んでいただきます。
弾琴男子像さんのzitherを中心にしてあれこれ対照して考察してみたら、面白いんじゃないかなと思っています。

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(6∀6)シカタケル
また、Baurzhan Bekmukhanbetさんと古代日本の弾琴男子埴輪では相川考古館所蔵の弾琴男子像という埴輪を

・日本の枠を超えた評価を得るに相応しい潜在的実力
・カザフスタンの民族楽器qossaz(қоссаз)と同系統である可能性が高い

とあしべは評価した。
したんだが、お前はその説明もまだしていないぞ。

⊂O–O⊃あしべ
次の投稿でお話ししましょう。
目標ウクライナ、カザフスタン経由!
目指せウクライナ!
これがその説明です。


/")/")    次回の投稿は