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⊂O–O⊃あしべ
2024年4月現在、ロシアとカザフスタンの国境をまたがる大洪水が発生しています。
詳しいことはわかりませんが、非常に大規模な水害であることは間違いないようです。
被災された方々へお見舞いを申し上げます。
水害が速やかに収束となりますように願っております。

TURAN ethno-folk ensembleのInstagramではこの大洪水へのメッセージを3回も投稿していて、言葉のわからないワタシでもこの災害の深刻さを伺うことができます。

日本に住むからには、明日は我が身、いつかは我が身。



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(6∀6)シカタケル

当ブログの最大目的は、

うみひぢ_あしべという図書館利用者のど素人が、

一般人の凡人の遠慮もわきまえも大祓詞の大海原の根の国底の国まで放り投げて、

『zither中近東起源理論』、

小島美子国立歴史民俗博物館名誉教授が提唱したこの理論へ、カザフスタンと日本を繋ぐユーラシアのlyre文化の展開から考察を挑むことである。

いよいよ今回は相川考古館所蔵・弾琴男子像氏の真の実力をお見せする投稿だ。
彼が奏でるzitherは、和琴の謎を解く鍵となり、ユーラシアの北西の果ての同胞を指し示す…

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(ŎᴗŎ)シカハタビ
…それは古代カザフスタンの弦楽器Dzhetyasar(Жетіасар)のqossaz(қоссаз)と結びついた時から始まる。
そして『zither中近東起源理論』がよみがえる…

素人ブログが分際を弁えずに身の程を超えた煽りを申しましたが、たまにはイキってみせても良いと思うのですよ(笑)

⊂O–O⊃あしべ
そりゃもう、相川考古館の弾琴男子像さんという埴輪は、日本の枠を超えた評価を得るに相応しい潜在的実力を秘められているのですからね!

今回の投稿の趣旨はこちらです。
「北ヨーロッパのlyreと『Dzhetyasar(Жетіасар)のqossaz(қоссаз) 』がcousin(イトコ)ならば、
『Dzhetyasar(Жетіасар)のqossaz(қоссаз) 』と相川考古館所蔵の弾琴男子像さんも多分?マタイトコですし、
カザフスタンの民族楽器のqossaz(қоссаз) と日本の和琴も多分?マタイトコです。」

それでは大后さま、いつもの前口上をお願いします。

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(ŎᴗŎ)シカハタビ
その前にちょっとしたお知らせを。
なお今回からしばらくは考古学ネタに注力しますので、TURAN ethno-folk ensemble の皆さまのご登場はおやすみとさせていただきます。
それではいつも通りにはじめましょう。

古代史と音楽で、日本とカザフスタンのコミュニケーション・ギャップを越えましょう!

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(6∀6)シカタケル
当ブログはブログカテゴリー「弓と弦楽器、日本とカザフ」の中の企画として、《TURAN ethno-folk ensembleと日本の文化財のクロスオーバー》を投稿している。

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(ŎᴗŎ)シカハタビ
ブログカテゴリー「弓と弦楽器、日本とカザフ」では、これらの企画をお送りする予定です。
 
《TURAN ethno-folk ensembleと日本の文化財のクロスオーバー》
《アメノウズメとаруақ(先祖霊) 〜太鼓と琴と大地〜》
《鳴弦はどこから来たのか》
《弓道とэ т н о с о л ь ф е д ж и о (エスノソルフェージュ)》

これらの企画が日本とカザフスタンのコミュニケーション・ギャップを越える一助になれれば幸いです。

そしてブログカテゴリー「弓と弦楽器、日本とカザフ」では、日本とカザフスタンの文化財を取り上げる予定であります。
その意見はあくまで『太平洋の斜め上な島国に住む考察厨のブログ』の意見であり、文責はブログ主うみひぢ_あしべが負います。
文化財の所蔵者、並びに文化財の研究者、これらの方々と当ブログは全くの無関係であります。
これらの方々のお考えと、当ブログの意見は全く無関係です。
その上で、当ブログの素人丸出しな考えをご笑覧くださいませ。

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(6∀6)シカタケル
《TURAN ethno-folk ensembleと日本の文化財のクロスオーバー》、その第一回シリーズとして
【TURAN ethno-folk ensemble のBaurzhan  Bekmukhanbetov さんと相川考古館所蔵・弾琴男子像さんのクロスオーバー】
を連載し、相川考古館所蔵の弾琴男子像氏の画像を貼り続け、Baurzhan  Bekmukhanbetov 氏に関係する動画を貼り続けている。
前回の投稿で、むりやり?力ずく?でこの両氏を結びつけた。

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(ŎᴗŎ)シカハタビ
それでは、前回「баба домбыраと相川考古館の弾琴男子像さん・ドシプルール編」の投稿の最後から始めましょう。




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(6∀6)シカタケル
トゥヴァの民族音楽家集団『Alash Ensemble』 の英語サイトにあるトゥヴァの撥弦楽器ドシプルール(doshpuluu/дошпулуур)の説明のページにあった、あしべがびっくりするようなことがなんだったのか。
Alash Ensemble
TUVAN INSTRUMENT 
DOSHPULUUR
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(ŎᴗŎ)シカハタビ
このページの右側にはダブルネックのドシプルール(The double-necked doshpuluur )の画像があり、ページの下にはその演奏の動画がありました。

⊂O–O⊃あしべ
いやあ〜もう驚いた。
カザフの民族楽器であるqossaz(қоссаз)は、平たく言うとダブルネックのドンブラなわけですよ。
そこからDzhetyasar(Жетіасар)のqossaz(қоссаз)をどうのこうのとしている時に、ダブルネックのドシプルール(The double-necked doshpuluur )に出くわしたわけですよ!
予想外の不意打ち、見つけた時は嬉しかったですね。

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(6∀6)シカタケル
考察厨にエサを与えたようなもんだ。

⊂O–O⊃あしべ
そうですね、ワタシは考察厨ですのでこういう発見が大好物ですw
トゥヴァにもカザフにqossaz(қоссаз)があるように、伝統的楽器の中にダブルネックのドシプルール(The double-necked doshpuluur )があるかも⁈
Dzhetyasar(Жетіасар)のqossaz(қоссаз)のような存在だってあるかも⁈

ひゃっほーい、調べろ調べろ…
ってGoogleで画像検索とかして探してみましたが。
残念ながら見つかりませんでした、トゥヴァでは(苦笑)

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(6∀6)シカタケル
世の中そんなに甘くないw 

⊂O–O⊃あしべ
しかし!
いた。いましたよ。見つけた。
トゥヴァでは見つけられなかったけど、サハ共和国の民族楽器、弓奏楽器の「кырыымпа」。
luteのような有柄タイプとは別に、lyreタイプが二つありました。
このYouTube動画のなかにあります。

Центр дополнительного образования детей Борогонцы
Курбуһах төрүт дорҕоон кыһата. Кырыымпа, чуһуурба.


サムネイルの奥の方に見えるのがそれです。

Dzhetyasar(Жетіасар)のqossaz(қоссаз)に近い楽器を見つけたのはサハ共和国だけでしたが、見つけられてうれしいですよ。
こういう発見が考察厨の道楽なんですよね。

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(6∀6)シカタケル
「韓国土偶裝飾長頸壺とSiberian lyreと相川考古館・弾琴男子像さん」の投稿で紹介した韓国の新羅琴やロシア連邦のハンティ・マンシ自治管区・ユグラ(Ханты-Мансийский автономный округ — Югра)のSiberian lyreを合わせると、カザフスタンのDzhetyasar(Жетіасар)のqossaz(қоссаз)から日本の弾琴男子像氏へ結ぶ繋がりがさらに強くなったようだな。

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(ŎᴗŎ)シカハタビ
ただし「кырыымпа」はもちろん新羅琴もSiberian lyreも『弦が二組に分かれて張られている』わけではありません。
ですが、この日本にDzhetyasar(Жетіасар)のqossaz(қоссаз)と同じように『弦が二組に分かれて張られている』楽器があるのです。
それがこれからのお話になりますw

⊂O–O⊃あしべ
見比べていて気がついたんですが…
相川考古館の弾琴男子像さんのzitherは、Dzhetyasar(Жетіасар)のqossaz(қоссаз)よりも、現代カザフの民族楽器であるqossaz(қоссаз)やトゥヴァのダブルネックのドシプルール(The double-necked doshpuluur )の方に似ています。
というわけで、現代カザフの民族楽器qossaz(қоссаз)の画像を貼りましょうか。

アメリカ合衆国アリゾナ州フェニックスの『Musical Instrument Museum』の画像で、撮影は2018年のものです。
この画像の右上にあるのがqossaz(қоссаз)です。
https://commons.m.wikimedia.org/wiki/File:Phoenix-Musical_Instrument_Museum-Mongolia_exhibit.jpg
CC BY-SA 4.0

こちらがqossaz(қоссаз)です。
拡大しました。


現代カザフの民族楽器qossaz(қоссаз)は『2組の弦はそれぞれ別に離れて張られている』わけです…あ〜、見えずらいですね。
ネットやYouTubeとかでqossaz(қоссаз)を漁ると、現代のqossaz(қоссаз)はほぼ『2組の弦はそれぞれ別に離れて張られている』んですよね(苦笑)

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(6∀6)シカタケル
現代のqossaz(қоссаз)の弦の張り方はこちらのリンクで確認してほしい。

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(ŎᴗŎ)シカハタビ
次に相川考古館所蔵・弾琴男子像さんの画像を見てみましょう。

画像提供
所蔵館『公益財団法人 相川考古館』



弾琴男子像さんが演奏しているzitherのクローズアップはこちら

以上

©︎公益財団法人 相川考古館


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続いて弾琴男子像氏への専門家の論考だ。
以下引用。

埴輪の楽器―楽器史からみた考古資料
宮崎 まゆみ 著 三交社

P24
1.14 弾琴男子

群馬県前橋市朝倉出土。相川考古館蔵。
人物総高72.7cm。
(中略)
絃孔付近は、人物の右手の下に隠れはっきり確認できないが、孔が二個あるように見える。破損結果の孔なのか、意図的に二個表現しているのか、不明。だが絃は、各孔から二本ずつ出発しているようにも見える。第一、第二絃用の孔は、第三、第四絃用の孔より、頭端寄りに位置する。もし本例が事実の忠実な表現だとすれば、第一、第二絃すなわち奏者側の二本の絃は、第三、第四絃より音高が低かった可能性が出てくる。よってこの表現に注目するなら、楽器史、音楽史を考察する上で重要な資料となる。

引用以上。

ここでの弦の呼び方は和琴に倣った呼び方で、奏者側から第一、第二…と呼ばれている。

注意しておくが当ブログにおける弾琴男子像氏への考察はこの『埴輪の楽器』の論考をもとにしているが、しかしそれは『埴輪の楽器』で断言を避けている部分だ。

⊂O–O⊃あしべ
当ブログではここの部分を参考にして考察しています。

>孔が二個あるように見える。
>破損結果の孔なのか、意図的に二個表現しているのか、不明。
>絃は、各孔から二本ずつ出発しているようにも見える。
(埴輪の楽器 P24)

つまり相川考古館の弾琴男子像さんのzitherは、『埴輪の楽器』で断言を避けていますけれど、
『弦が二組に分かれて張られている』、 
『2組の弦はそれぞれ別に離れて張られている』、
という状態に「見える」。

/")/") 
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専門家の論考では推測に留まっていますが、当ブログでは、弾琴男子像さんのzitherが『弦が二組に分かれて張られている』という前提で進みます。

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推測ということは全否定ではない。
可能性はある!
弾琴男子像氏のzitherが『弦が二組に分かれて張られている』可能性は存在するんだよw

⊂O–O⊃あしべ
素人判断ですけど、その可能性は可能性はかなり高いとワタシは思うんですよねー。
…それでは今回の投稿の趣旨の話を始めます。
「北ヨーロッパのlyreと『Dzhetyasar(Жетіасар)のqossaz(қоссаз) 』がcousin(イトコ)ならば、
『Dzhetyasar(Жетіасар)のqossaz(қоссаз) 』と相川考古館所蔵の弾琴男子像さんも多分?マタイトコですし、
カザフスタンの民族楽器のqossaz(қоссаз) と日本の和琴も多分?マタイトコです。」

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(ŎᴗŎ)シカハタビ
この投稿で、以下のかんたんな説明をしました。

・Dzhetyasar(Жетіасар)のqossaz(қоссаз)と呼ばれる紀元4世紀の弦楽器によって、現代カザフスタンの民族楽器qossaz(қоссаз)が、古い歴史を持っていると判明したこと。

・また、Dzhetyasar(Жетіасар)のqossaz(қоссаз)が北ヨーロッパのlyreと同系統の楽器であること。

これはAzilkhan Tazhekeyev (Әзілхан Тәжекеев)博士とGjermund Kolltveit博士によって発表された研究です。

⊂O–O⊃あしべ
この研究を報じたネット報道の中に、このようなタイトルの記事がありました。
このサイトは考古学の記事専門のようです。

HeritageDaily
Lyre previously found at Sutton Hoo has cousin in Kazakhstan


タイトルを翻訳すると
「かつてSutton hooで発見されたlyreにはカザフスタンにイトコがいた』。
Sutton hooのlyreは古代の北ヨーロッパのlyreの代表格です。
つまりDzhetyasar(Жетіасар)のqossaz(қоссаз)は北ヨーロッパのlyreのイトコ的な関係ということなのでしょう。

そして日本の伝統楽器である和琴にもlyre的性質があるのです。

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この投稿で、海外の楽器研究の権威の記したこの本に日本の和琴の奏法がlyreの奏法と共通しているとの記述を紹介しました。

日本語翻訳
楽器の歴史 [上]
クルト・ザックス(Curt Sachs)著
柿木吾郎 翻訳
全音楽譜出版社 出版
第2部 古代
第6章 ギリシャ,ローマ,エトルリア
ライア Lyres
P124

原著
The History of Musical Instruments by Curt Sachs, 1940
SECOND PART - Antiquity
6. Greece, Rome and Etruria

⊂O–O⊃あしべ
当ブログでは、後代の日本の伝統楽器の和琴の前身と見なされている、日本の古代遺跡から出土した特定の弦楽器、または起源5世紀から6世紀頃の古墳に据えられていた埴輪のなかの一部に表現されている弦楽器を「祖型のzither」と呼びます。
この投稿でその辺りを軽くまとめてます。


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それではSutton hooのlyreの画像をみてみよう。



https://commons.m.wikimedia.org/wiki/File:Sutton_Hoo_Lyre_reconstruction_BM_SHR_9.jpg#mw-jump-to-license
Public domain

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Dzhetyasar(Жетіасар)のqossaz(қоссаз)はこちらのリンク先の画像をご覧ください。

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Sutton hooのlyreも、Dzhetyasar(Жетіасар)のqossaz(қоссаз)にも、
・共鳴体と一体化した2本の腕木
・共鳴体下部の突起のstring holder
という構造が一致している。

違う点は腕木の間にある横木だな。
Sutton hooのlyreは共鳴体から腕木も横木も一体化している。
Dzhetyasar(Жетіасар)のqossaz(қоссаз)の横木は別材だ。
弦の張り方も違う。
Sutton hooのlyreこ弦は共鳴体下部の突起のstring holderからそのまま横木へ伸びて張られる。
Dzhetyasar(Жетіасар)のqossaz(қоссаз)の弦は、共鳴体下部の突起のstring holderから二股に分かれて両方の腕木の上に張られる。

⊂O–O⊃あしべ
双方には弦の取り付けの違いもあります。
Sutton hooをはじめとする北ヨーロッパのlyreには、『弦が二組に分かれて張られている』という点は認められていません。
Dzhetyasar(Жетіасар)のqossaz(қоссаз)は一点から『弦が二組に分かれて張られている』、というわけです。

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(ŎᴗŎ)シカハタビ
Dzhetyasar(Жетіасар)のqossaz(қоссаз)は、構造だけならウクライナのスキタイ時代の黄金の額飾りに打ち出しされたlyreがよく似ています。

所蔵館
Скарбниця Національного музею історії України
(Museum of Historical Treasures of Ukraine)

リンク先の画像はlyreが脇にあるのでちょっとわかりづらいのですが、この黄金の額飾りはこちらの本にも画像があり、lyreの正面画像も載っています。
この本から画像のキャプションを引用しましょう。

ウクライナ国立歴史宝物博物館 所蔵
黄金のシルクロード展
東西文明の交差を訪ねて
発行 黄金のシルクロード展実行委員会

P29
額飾り
展示番号65
前4世紀/チェルカッスィ州サスノフカ村・古墳出土/金/型押し/長36.5cm, 幅9.8cm
引用以上。

画像から判断すると、黄金細工の中のlyreの横木は別材で、そこはDzhetyasar(Жетіасар)のqossaz(қоссаз)と共通しています。
しかし弦の張り方は、lyreを演奏する奏者の手の位置を見ると、Sutton hooのlyreと同じのようですね。

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現代カザフの民族楽器のqossaz(қоссаз)はすでにあげたリンク先の画像にあります通りです。
というわけで、一連の流れをまとめます。

もともと北ヨーロッパ系統のlyreの弦は一点から張られていて、二組に分かれて張られてはいなかった、これを「第一世代」とする
Dzhetyasar(Жетіасар)のqossaz(қоссаз)は一点から『弦が二組に分かれて張られている、これを第二世代
現代カザフの民族楽器のqossaz(қоссаз)は二点から『弦が二組に分かれて張られている』、これを第三世代