かつて日本に棲息するカマツカ類は一種類だとされていたが、2019年の富永&川瀬による論文により、カマツカ、スナゴカマツカ、ナガレカマツカの三種類に再分類された。
このうちスナゴカマツカは本州東部に分布している古い系統のカマツカ類とのことだが、この地域には琵琶湖産のコアユの放流に混じって移植されたカマツカが棲息している所もあって雑種化も起こっているという。
そこで、疑いのないスナゴカマツカを釣るために、上記の論文用の標本が採集された河川を2020年の秋から訪れ始めた。
まずは東北地方の第一の水系で探した。本流では見つからなかったものの、支流の一箇所で2尾のカマツカ類を見つけたが、細長系の猛攻の前になすすべもなかった。
次にその南を流れる第二の川で探したが、探した区域が上流すぎて砂場自体がほとんどなく、見つからなかった。
今年の春には第一の川で再び探したが、魚影自体がなかった。
そして今回、東北某所で初ゼニタナゴを釣った後で訪れた別の水系でのタナゴ探しが台風により中断されたため、台風から遠くへ遠くへと逃げる中、第三の川に到着。雨の中、橋の上や川岸から探したものの、見つからなかった。
翌日、第四の川へ。支流の流れ込みがいい感じの砂底になっていたのだが、カマツカ類はいなかった。
そこで、第五の川へ移動。ここの一角の砂泥底の上にようやくカマツカ類を見つけた。ただしどれも小さい!数センチしかなかった。新半月の脈仕掛けになるべく細いキヂ片を付けたもので釣獲を試みたが、最後はオモリやハリを見ると逃げてしまう始末で、日没終了。
翌々日、ウェーディングして本気モードでこの一角の上流部をチェックしたところ、数センチの釣獲不可能な個体の他に、キャッチャブルなサイズのものも何尾も見つけることができたのだが、それでもキヂを喰い込んではくれなかった。また15センチはある良型も一尾か二尾見つけたのだが、定置してくれず見失ってしまった。
そこで最後に前々日の一角へ戻った。すると、前回には見かけなかった、小ぶりだがキャッチャブルなサイズの個体が数尾群れていた。
そこへ、特に口元を意識せずにキヂを投入したところ、群れていて警戒心が薄れていたのか、そのうちのキヂの下流にいた個体がキヂの方ににじり寄ってモグモグとした仕草をした!
アワセると、激しく首を振る動作をしたので掛かったとわかった。そしてそのまま手元に落ちずにやってきた。「やっと釣れたー」と思わず口ずさんでいた。
初めて釣ったスナゴカマツカ、約7.5センチ
初スナゴカマツカの俯瞰
初スナゴカマツカの腹側
初スナゴカマツカの別影。カマツカと比べて小黒点が多く、ヒゲが長く、体側や背中の黒斑がやや不明瞭なところなどが特徴とされている。
初スナゴカマツカの近影。長いヒゲに加えて吻が短いため、ヒゲの末端は眼の前縁を楽に越える。
斜め前から見るとこんな顔
初スナゴカマツカの胸びれ
斜め上からみると、金色の縦破線が目立った
スナゴカマツカのハビタット
1年前に新潟県内の信濃川水系で釣った、移植由来のカマツカと思われる個体。スナゴカマツカと比べてヒゲが短く眼の前縁を越えず、吻が長い。
ちなみにスナゴカマツカという名前は、童謡「たなばたさま」に出てくる「きんぎん砂子(すなご)」に由来し、体の小黒斑の間の部分の鱗が金や銀にきらきらと光って見えるため、天の川にたとえて命名されたとのこと。とても素敵な命名だが、意外だった。てっきり砂の中に潜る性質から、どこかの地方でスナゴと呼ばれていて、それを採り入れたのだと思っていたのだが。