恒例となった秋の遠征の三日目となる9月下旬のこの日、東北某所にて既に9箇所を回って全て徒労に終わっていた。

 

遠征を始める前は、今秋こそは何週間かけてでもゼニタナゴの顔を拝むぞと意気込んでいたのだが、この地域での探索開始をした前日に、2箇所での空振りの後、春にキタノアカヒレタビラがいることを知った某所で、キタアカを百尾釣ってでもゼニタナゴを狙うぞとしていた思惑が外れ、キタアカそのものが1ダース釣るのがやっとという結果に終わり、大きく意気を削がれてしまった。

 

そんなわけで、この地域で既に12箇所がハズレとわかり、春から数えると16箇所がダメだったので、もうやめて別の水系でのタナゴ探しに移りたい気がかなり大きくなっていた。だが、それほど遠くはないので最後にもう1箇所チェックしてみることにした。

 

そこはそれまでのポイントと大差のない場所だった。探索用のたなごころ七尺軟調にウキ仕掛けを結んだものを伸ばし、自家製黄身練りをつけた。ハリは新半月。

 

岸近くの水草の横に仕掛けを入れると、直ちにモゾモゾとしたさわりが出た。ここの魚影は濃いなと思った。そしてわずかにウキが押さえ込まれた。アワセる。

 

上がってきたのは、アブラボテで言えば豆サイズだったが、やけに黒ずんでおり、何より、それまでに一度もハリの下にぶら下げた経験のないたなごだった。と言うことは . . . . .

 

ゼニタナゴだと気付き、思わず「釣れたー!」を万感の思いで連呼していた。

 

全く期待していなかったので水の用意をしておらず、慌ててボウルに水を汲んだ。そして撮影開始。ついにこの瞬間が来たー!

 

初めて釣ったゼニタナゴ、オス。いつか釣り禁止になる前に間に合ってよかった。

 

初ゼニタナゴの俯瞰

 

初ゼニタナゴの腹側

 

この後、少し沖へ入れるとキンブナのようなフナが来たので、再び岸近くの別のスポットに送り込んだところ、他のたなごは一切来ず、ゼニタナゴが入れ食いで釣れるという、夢のような時間が過ぎていった。

 

続いて釣れたうちの一尾、オス。ゼニタナゴも腹びれの前縁が白くなることを初めて知った。

 

さらには、他の方々が釣られているのをネットで見ては、一度はこの手にしてみたいと思っていた、「巨ゼニ」まで釣れた。しかも婚姻色付きで。

 

フナかと思わせる、なかなか上がってこない強い引きだった

 

まだまだ釣れそうなのでメスが釣れるまでと思って続けたが、釣れないのでオス8尾を釣ったところで納竿とした。


撮影時間を含めて半時間弱の釣果。全てオスだった。この後全てリリースした。

 

ゼニタナゴを狙い始めたのは2016年の秋だったが、奇しくもこの年の春に横手市安本地区でのゼニタナゴなどの釣りが禁止となり、タッチの差で最大のチャンスを逃した。それ以降、5年をかけて総計84箇所を回った果てにようやく「当たり」の場所に辿り着いた。

 

これで釣りが可能な、あるいは可能だったたなご15種・亜種は全て釣り終えることができた。ヤリタナゴアブラボテセボシタビラカゼトゲタナゴを最初に釣ったのは80年代のことだったが、カゼトゲを除いてちゃんとした写真がなかったので、これらの公式な初物を釣ったのは2011年ということになる。それから実に10年かかってのたなごコンプリートとなった。