ラフマニノフ ピアノ協奏曲第3番 | いつも心に音楽を

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また、尊敬する若きピアニスト牛田智大さんを応援します。

 

  牛田智大さん6月27日のクローズドコンサート(習志野文化ホール)で初披露する

ラフマニノフ:ピアノ協奏曲 第3番 二短調 Op.30

 

ピアノコンチェルト史上、最高に演奏が難しいといわれて有名な作品。またラフマニノフのピアノ協奏曲の中で、第2番に次ぐ人気ある作品になっています。とても長大で演奏に40分以上を要します。

 

1909年に作曲され、ラフマニノフ自身のピアノで初演されたものの、これを弾きこなすピアニストは当時ほんのわずかしかいなかったと言われています。のちにホロヴィッツはこの曲を大変気に入り、生涯愛奏し続け、またこの曲の世界初録音を行ったそうです。

しかし第二次大戦後しばらくも、この難曲中の難曲を弾きこなすピアニストは決して多くは無かった(特に日本人では皆無に近く)と言われていますが、今日ではピアニストが挑戦するコンチェルトの最高峰としても、むしろ当然のようにレパートリーになっています。

 

 

 

 

ラフマニノフは身長190センチ以上あり、手がとても大きく、鍵盤の12度の音程(からオクターブ上のソまで)が届いたそう! またマルファン症候群との影響でその手が信じられない程柔軟だったことから、他のピアニストでは演奏不可能な難解なフレーズをも易々と弾きこなすことができたそうです

 

 

 

 

 この大曲作曲のエピソードの一つに

第1楽章のカデンツァに、オリジナルとossia(オッシア)版という2つを書きました。ossia」は「オリジナルを弾くのが難しければ、こっちの簡単ヴァージョンを弾いてもいいですよ」と、元より易しくなっているのが普通ですが、ラフマニノフは「弾けるものなら弾いてみな!」と喧嘩を売るようなものすごく難しいヴァージョンを作りました(一部引用)。

 

 ラフマニノフが当時、如何に凄いピアニストだったことをよく物語っていますね

 

 

      ブロンフマン            第1楽章 カデンツァ Ossia版

 

 

 

 

 思い出深い映画「シャイン」では主人公ピアニストデヴィット・ヘルフゴットがコンクールでこの曲に命を懸けるように取り組んで、演奏後ついに倒れてしまうシーンが印象的ですが、とにかく弾くものをクタクタにさせてしまうほど、一時も息を抜けないほど難解なフレーズの連続と、全曲を貫く雄大な楽想は、弾き終えた時の達成感も大きいでしょう。

 

 

  映画「シャイン」から   

 

 

 

 かなり以前ですが、カレーのCMで中村紘子先生第3楽章のラストを演奏する場面ありましたが、覚えておられますか? (紘子先生は同じカレーのCMシリーズでも色んな曲を演奏しておられましたが)、察するに、女性ピアニストの中で手も小さいほうの紘子先生が、この曲を弾きこなされたのは大変な努力も必要だったと思います。

 

追記:また紘子先生はこの曲について、”70年ほど前は日本人でまともに弾ける人が居なかったのに、今では音大ピアノ学生でも弾くような時代です”と新聞のコラムで語ってられたのが印象的でした。

 

 

    中村紘子     ~第3楽章~

 

 

 

 

 第1楽章 Allegro ma non tanto 二短調

哀愁を帯びたひなびた感じの第1主題がピアノとオーケストラで奏でられ(楽章全体を支配するような重要なテーマ)、ピアノは技巧的なフレーズで装飾しながら頂点を築き沈黙、続いて第2主題(3:19)が華やかにピアノとオケによって繰り広げられます。再度第1主題が奏でられながら展開部へ。その激しい頂点ではピアノが雪崩を打つようなフレーズ群も。楽章の2/3位の所でカデンツアに。長く激しいカデンツアにはより難しいossia版も待機。一旦曲想が落ち着きを取り戻したかにみえ、再び第2のカデンツアの後、三たび第1主題が奏でられ、長い楽章を終えます。

 

 

  第1楽章  演奏:ヴォロドス

 

 

第2楽章  Adagio 嬰へ短調 一種の変奏曲

オーケストラのみで哀愁を帯びた音楽が暫く奏でられ、ピアノは瞑想的な主題を奏しながらやがて熱っぽく展開されてゆきます。華麗なピアノの細かな動きの中に、ワルツ風の変奏も聴かれます。やがて静けさを破るピアノの動的なフレーズがオーケストラと激しく交錯し、そのまま 第3楽章 Alla breve 二短調 迸る炎のような第1主題がピアノを中心にくり広げられ、リリカルな第2主題(1:53~)を経て、中間部分では幾つもの目まぐるしいピアノの技巧の中で、管楽器ソロとの間にロマンティックな対話も交わされます。第1主題、第2主題の再現の後、行進曲風の曲想へ突入したかと思うと、これまでの憂いを振り払うようにニ長調に転じ、壮大な終結のテーマ(第2主題の拡大)がピアノとオーケストラに奏でられながら、息をのむような全曲の幕となります。

 

 

    第2楽章    ヴォロドス

 

 

    第3楽章    ヴォロドス

 

 

 

 牛田さんはこの曲を今回は、クローズドコンサートという、幾分限られた人たちのもとで初披露する形になりますが13歳のころ 早くラフマニノフ協奏曲第2番と第3番に挑戦したい! というようなコメントをしていましたので、この夢は早くも叶えた訳ですね。また、若干17歳での演奏会での披露も珍しいと言えるでしょう。僕の個人的な思い入れも強い曲なので、牛田さんの演奏を聴いてみたいです。近いうち公式のコンサートでもぜひ披露していただきたいものです!