左手のピアノ曲とピアニスト | いつも心に音楽を

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クラシックの名曲等やピアノ演奏、音楽理論などを中心に展開。
また、尊敬する若きピアニスト牛田智大さんを応援します。

 

       とにかくお暑い炎晴れメラメラですね~!

 

         皆様、新型コロナ対策と共に熱中症にもくれぐれも気をつけてください。

 

 

 

    さて、

     ピアノは両手10本の指で弾くために作られている? 

 

      ん? いえいえ決してそういうものでもないかも知れません。

 

 

        

 

 

 

   ピアノを全く弾けない人が、最初は人差し指1本上差しで知ってるメロディをたどりつつ奏でる、

   音楽と触れ合う、最初の行為ともいえるでしょう。

 

 

 

  ピアノの世界では、とても稀ですが、何らかの事情で、片手(多くは左手)だけを使って弾くというスタイルが出てきました。

 

 

 

   クラシックピアノの歴史では、

  第一次世界大戦によって右手を負傷してしまったピアニスト、パウル・ヴィトゲンシュタインの存在は大きく、

彼のために何人もの作曲家が作品を残しています。

 

 ラヴェルも彼の委嘱で こんにちも有名な 左手のためのピアノ協奏曲 ニ長調を書きました。

 

 

           

                     P・ヴィトゲンシュタイン

 

  更に、プロコフィエフも 彼の委嘱で左手のための ピアノ協奏曲 第4番 変ロ長調を書きました。 しかし結局はビットゲンシュタインが演奏することは無かったとか・・・。

 

  ヴィトゲンシュタインの弟は哲学者ルードヴィヒ・ヴィトゲンシュタインで、父は裕福な実業家という大変恵まれた環境だったといえるでしょう。

 

 

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           ラヴェル 左手のためのピアノ協奏曲  より 終盤のカデンツア

 

  

                           プロコフィエフ  ピアノ協奏曲第4番    アレクセイ・ヴォロディン演奏

 

 

 プロコフィエフ・ピアノ協奏曲第4番はこんにちあまり取り上げられる機会は無いようですが、

ラヴェルの左手のためのピアノ協奏曲は、突出して有名な左手のための作品で、世界中の名ピアニストがこぞってレパートリーにしています。 全曲にジャズのテイストを多く含んだ自由なスタイルで書かれています。

 

 牛田智大さんも、ラヴェルのこの作品はいつか披露して欲しいです音譜 期待しています。

 

 

 

 

 しかし、第一次世界大戦以後の大きな戦争で、片手を負傷したり、病気で右手が使えなくなったピアニスト(裕福でも、高名でもなく)はかなりの数、いたといわれています。

 

 

          

 

 

        左手しか使えないピアニストのために書かれたもの以外に、左手の特別な鍛錬の目的や左手だけで演奏を完結させようとする試みも多くあります。

 

 

  名ピアニストであったゴドフスキー(-1938)が、ショパンのエチュード集の多くを左手用に編曲したものがあります。       

 

      

      ゴドフスキー・編曲左手版「革命のエチュード」。前半は通常の演奏  

       (左手版の難しさは相当なもの・・・💦)

   

 

      

         バッハ曲 ブラームス編曲 シャコンヌ(左手の為の) より

 

  シャコンヌ・・・ 有名な両手のバッハ / ブゾーニ編 は長くの間、牛田さんが盛んに熱演してましたね♪

 

 

 

    左手のためのピアノ曲は現在 約3000曲ほど存在するそうですびっくり

 

  それに対して右手のためのピアノ曲は、左手用より遥かに少ない数しかありません。

 

 

   それはピアノの構造と、それぞれ右手のみ、左手のみでの演奏のしやすさ、音楽として成り立つための特性にあるようです。

 

   ピアノの基本構造上(左へ行くにつれて音が低くなる)、左手だけでも、手や腕の「支え」と「重心」がしっかりして、ベース音や和声(特にアルペジオ)を演奏しやすいのに対して、右手だけの場合、支え、重心を求めるのはなかなか困難で、低音域を弾くには、腕や体をよじらなければならない事が多い、と考えられます。

 

         

        

 

 僕も実際右手だけでと、左手だけで適当に同じような即興を試してみましたが、音楽として成り立たせるには、弾きやすさがかなり違います。 右手のほうが指は早く動くのですが、それでも・・・

 

 

  

   しかし、3000曲あると言われる左手のピアノ曲も、ラヴェルの協奏曲以外、こんにち知られたものは無く(前出の編曲ものが偶に弾かれる位で)特にオリジナル曲となると全く無名なものばかりだそうです。 

 作曲されても、献呈された奏者が居なくなるとすぐに忘れ去られるそうです・・・ 

 その大きな理由の一つが演奏が難しいものばかりだという。

          

 

      

           左手のピアニスト有馬圭亮さんによるトークと、演奏。 2014年

 

 

 

   病気で左手しか使えなくなった世界的ピアニストで、とりわけ有名な舘野泉さん。

 

 最初、友人たちに「ラヴェルの左手のピアノ協奏曲を弾けば・・・」、と言われたが、指が曲がっても弾くかっ!と思ったそうです。 

 

それ以来ご自身の音楽観もおおきく変わったでしょうね。      

 

      

 

     

     

            

                   スクリャービン・左手の為の2つの小品から     舘野泉

 

 

 

 

 左手のピアノ国際コンクールと銘打った、ヴィトゲンシュタイン記念コンクールの第1回目が、2018年行われたそうです。 障碍とか、そういうものは関係なく、忘れられつつある(?)、左手ピアノ(片手ピアノ)の音楽文化の発展のためのものだそうです。   

 

 

  

 

 ピアノ音楽に、音楽の愉しみと多様性に新しい可能性を示してくれそうな、なかなか素晴らしい試みですね☆彡 

 追記 : 審査委員代表の智内威雄さん、近年、演奏活動以外に、左手ピアノ曲の発掘や教育活動も熱心にされている方です。

 

          

 

           

 

   

    現在、楽譜の出版面では、一般的な左手のための曲集ももちろんあるのですが、需要があまり無いらしく、内容も難しいものが大半だそうですが、

         簡単な 初心者向けの左手のピアノ教材・曲集というのも、あったのですね。本当に珍しいラブラブ

 

 

 

 

            ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 

 

   

 

                   

 

   既に他のファンブログ様でも告知が出てますが、 8月23日(日)午後9時~ Eテレ「クラシック音楽館」で 牛田さん出演の  N響・夏のフレッシュコンサート の模様が放送されます♪

 

  久々の牛田さんのコンサートで、N響との初の本格共演。 

  ファンの方はもちろんの事、少しでも興味ある方、ぜひご覧ください!

 

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